32 / 96
三章
とどめの一撃
しおりを挟む
ゾンビダラボッチを追って、俺たちは走る。
走るスピードは、やはり半人半馬のギルバートの方が速い。
「その足では遅い! 乗って! アーチロビン!!」
「ありがとう!」
聖騎士ギルバートの背に乗って、俺たちはシャーリーを握ったまま、砲台の方へ向かうゾンビダラボッチを追う。
「ぎゃあぁぁぁぁーあぁぁぁ!!」
その時、急に悲鳴が響き渡った。
よく見ると、ゾンビダラボッチの手に握られたシャーリーの全身が、ゾンビのような肌の色に変わっていくのが見える。
「ゾンビ化させられてるよ!!」
聖騎士ギルバートは、スピードを上げて並走すると、槍を構えて気を込め始めた。
聖騎士の槍は聖なる力を宿す。
「我らが神よ、この槍に力を宿らせ、悪きものを滅ぼしたまえ!」
聖騎士ギルバートは、助走をつけて槍をゾンビダラボッチに放つ。
ドォォォン!!
光を纏った槍はまっすぐ飛んで、シャーリーを掴んでいる手を打ち砕いた。
シャーリーはそのまま落ちていったが、柔らかい光が彼女を受け止めて、ゆっくり運んでいく。
フィオか? それともティト?
いや、それより。
砕かれた手を瞬く間に再生させて、ゾンビダラボッチは俺たちを睨む。
こっちに気をよせられるか?
ドドーン!!
そこへまた大砲が飛んできて、ゾンビダラボッチはまた砲台を目指して歩き始めてしまった。
「仕方ない!! スピードを上げるよ、アーチロビン! 奴を追い越して、先に進もう!」
「ああ!」
聖騎士ギルバートの俊足で、ゾンビダラボッチを追い越して、砲台を目指す。
「アーチロビン、見えてきた!! あそこに砲台がある!!」
聖騎士ギルバートが叫んで、指を差す方向に砲台が見えてきた。
街の端にある外壁が砲台になっていたのか。
どおりで、遠距離から撃っていると思った。
「やめろー! 撃つなぁ!!」
俺は砲台の砲手に向かって、叫ぶ。
兵士たちは驚いたように俺たちを見た。
「そこを退け!! 街を守らねばならんのだ!!」
司令官らしき兵士が、身を乗り出すようにして手を振る。
俺はギルバートの背から飛び下りると、彼らに大声で呼びかけた。
「逆効果だ! 奴には攻撃が効かない! 結界の準備が整うまで、控えてくれ! 俺が止める!!」
「何!?」
「頼む!!」
「……」
「ガァァァァァァァ!!」
ゾンビダラボッチが雄叫びをあげ、城壁に向かって、口を開いたまま突進してくる。
口の中には光が溢れ、高熱のビームを吐き出すつもりのようだ。
全体攻撃だ。俺も射程範囲内に入る!
「総員、構えー!!」
それを見た司令官は、再び砲撃を開始しようとした。
「動くな!!」
俺は後ろを見ずに叫んだ。
頼む、何もしないでくれ!!
ピタリ。
ゾンビダラボッチの攻撃が止まる。
攻撃抑止の再発動だ。
後ろの兵士たちも、驚きと感嘆の声をあげていた。
「おお……!」
「い、一体なぜ?」
攻撃範囲内に俺がいれば、大丈夫。
ゾンビダラボッチ、そのまま俺を見てろ!!
時間稼ぎだ!!
「グルルル……ググ!!」
その時、急にゾンビダラボッチが苦しみ出す。
なんだ!?
何かに吸い込まれるように、ゾンビダラボッチの体が引っ張られ始める。
まさか、大聖殿の神器が元に戻されて、結界内に押し戻されそうになっているのか?
なら、早く……早く!!
「ゴガァァァ!!」
ゾンビダラボッチはもがきながら、大聖殿の方を振り向いた。
あそこにあるものが原因だと、わかっているんだ!!
ゾンビダラボッチは、吸われる力に抵抗しながら、大聖殿へと戻り始める。
ボロボロと、土の塊のような体が崩れて吸い上げられていくのに、奴は歩みを止めない。
俺はもう一度弓矢を射たけれど、大聖殿の方にゾンビダラボッチの関心が集中していた。
「ダメだ! こっちを向かない!!」
俺は慌てて聖騎士ギルバートと一緒に、大聖殿へと急いだ。
ギュイイイイイ……。
独特な音がして、ゾンビダラボッチは残された体で大きな口を開き、魔力を溜めていった。
光線を放つ気だ!!
「させるか!! 熱線、解放!!」
俺の全身がカッと熱くなり、顔を上げた目から熱線が放射されて、ゾンビダラボッチの胸を貫く。
大帝神龍王の攻撃の1つ、高熱ビームだ。
やったか!?
───あ!!
奴の体は胸から穴が広がって、空の彼方へ吸い込まれていった。
けれど、吐き出された光線は、まっすぐ大聖殿に向かっていく。
「フィオ!! ティト!!」
「ケルヴィン殿下あ!!」
ドガガガ!!
シールドと、ゾンビダラボッチの光線がぶつかり合う衝撃。
凄まじい力だ。
くそ! みんな無事でいてくれ!!
「あぁ……! シールドが……割れる!」
聖騎士ギルバートが、上空に張られたシールドを見て緊迫した声を漏らした。
見上げると、シールドにヒビが入っていき、今にも割れそうになっている。
みんなが……フィオが!!
パキッ!!
その時、何かが弾けるような音がした。
シールドがついに壊れた? いや、違う。
大聖殿の方から、九本の大きな柱が天に向かってそびえていく。
柱じゃない、あれは……尻尾!?
やがて、大きくて白い塊が膨れ上がっていき、純白で蜃気楼のように透けた姿が、はっきり見えた。
白狐!!
九本の尻尾をなびかせた、巨大な四本足の白狐が、大聖殿の方に現れる。
あれは、まさか……フィオ!?
白狐の全身が光ると、シールドはたちまち回復していった。
その間に、俺たちは元の通りに戻る。
シュオォォォォ……!!
シールドに力負けをした光線は、虚しく消滅していった。
巨大な白狐は、それを見届けると、シールド共に消えていく。
危なかった。
シールドがなかったら、今頃この辺り一帯は消し飛んでいたかもしれない。
フィオは、無事か!?
なんだか、胸騒ぎがする。
「アーチロビン!こっちじゃ!!」
魔道士ティトが、奥まった通りで必死に手招きしていた。
なんだ、どうしたんだ!?
俺は魔道士ティトと、ケルヴィン殿下が待つ場所へと急いだ。
「フ、フィオが……」
走るスピードは、やはり半人半馬のギルバートの方が速い。
「その足では遅い! 乗って! アーチロビン!!」
「ありがとう!」
聖騎士ギルバートの背に乗って、俺たちはシャーリーを握ったまま、砲台の方へ向かうゾンビダラボッチを追う。
「ぎゃあぁぁぁぁーあぁぁぁ!!」
その時、急に悲鳴が響き渡った。
よく見ると、ゾンビダラボッチの手に握られたシャーリーの全身が、ゾンビのような肌の色に変わっていくのが見える。
「ゾンビ化させられてるよ!!」
聖騎士ギルバートは、スピードを上げて並走すると、槍を構えて気を込め始めた。
聖騎士の槍は聖なる力を宿す。
「我らが神よ、この槍に力を宿らせ、悪きものを滅ぼしたまえ!」
聖騎士ギルバートは、助走をつけて槍をゾンビダラボッチに放つ。
ドォォォン!!
光を纏った槍はまっすぐ飛んで、シャーリーを掴んでいる手を打ち砕いた。
シャーリーはそのまま落ちていったが、柔らかい光が彼女を受け止めて、ゆっくり運んでいく。
フィオか? それともティト?
いや、それより。
砕かれた手を瞬く間に再生させて、ゾンビダラボッチは俺たちを睨む。
こっちに気をよせられるか?
ドドーン!!
そこへまた大砲が飛んできて、ゾンビダラボッチはまた砲台を目指して歩き始めてしまった。
「仕方ない!! スピードを上げるよ、アーチロビン! 奴を追い越して、先に進もう!」
「ああ!」
聖騎士ギルバートの俊足で、ゾンビダラボッチを追い越して、砲台を目指す。
「アーチロビン、見えてきた!! あそこに砲台がある!!」
聖騎士ギルバートが叫んで、指を差す方向に砲台が見えてきた。
街の端にある外壁が砲台になっていたのか。
どおりで、遠距離から撃っていると思った。
「やめろー! 撃つなぁ!!」
俺は砲台の砲手に向かって、叫ぶ。
兵士たちは驚いたように俺たちを見た。
「そこを退け!! 街を守らねばならんのだ!!」
司令官らしき兵士が、身を乗り出すようにして手を振る。
俺はギルバートの背から飛び下りると、彼らに大声で呼びかけた。
「逆効果だ! 奴には攻撃が効かない! 結界の準備が整うまで、控えてくれ! 俺が止める!!」
「何!?」
「頼む!!」
「……」
「ガァァァァァァァ!!」
ゾンビダラボッチが雄叫びをあげ、城壁に向かって、口を開いたまま突進してくる。
口の中には光が溢れ、高熱のビームを吐き出すつもりのようだ。
全体攻撃だ。俺も射程範囲内に入る!
「総員、構えー!!」
それを見た司令官は、再び砲撃を開始しようとした。
「動くな!!」
俺は後ろを見ずに叫んだ。
頼む、何もしないでくれ!!
ピタリ。
ゾンビダラボッチの攻撃が止まる。
攻撃抑止の再発動だ。
後ろの兵士たちも、驚きと感嘆の声をあげていた。
「おお……!」
「い、一体なぜ?」
攻撃範囲内に俺がいれば、大丈夫。
ゾンビダラボッチ、そのまま俺を見てろ!!
時間稼ぎだ!!
「グルルル……ググ!!」
その時、急にゾンビダラボッチが苦しみ出す。
なんだ!?
何かに吸い込まれるように、ゾンビダラボッチの体が引っ張られ始める。
まさか、大聖殿の神器が元に戻されて、結界内に押し戻されそうになっているのか?
なら、早く……早く!!
「ゴガァァァ!!」
ゾンビダラボッチはもがきながら、大聖殿の方を振り向いた。
あそこにあるものが原因だと、わかっているんだ!!
ゾンビダラボッチは、吸われる力に抵抗しながら、大聖殿へと戻り始める。
ボロボロと、土の塊のような体が崩れて吸い上げられていくのに、奴は歩みを止めない。
俺はもう一度弓矢を射たけれど、大聖殿の方にゾンビダラボッチの関心が集中していた。
「ダメだ! こっちを向かない!!」
俺は慌てて聖騎士ギルバートと一緒に、大聖殿へと急いだ。
ギュイイイイイ……。
独特な音がして、ゾンビダラボッチは残された体で大きな口を開き、魔力を溜めていった。
光線を放つ気だ!!
「させるか!! 熱線、解放!!」
俺の全身がカッと熱くなり、顔を上げた目から熱線が放射されて、ゾンビダラボッチの胸を貫く。
大帝神龍王の攻撃の1つ、高熱ビームだ。
やったか!?
───あ!!
奴の体は胸から穴が広がって、空の彼方へ吸い込まれていった。
けれど、吐き出された光線は、まっすぐ大聖殿に向かっていく。
「フィオ!! ティト!!」
「ケルヴィン殿下あ!!」
ドガガガ!!
シールドと、ゾンビダラボッチの光線がぶつかり合う衝撃。
凄まじい力だ。
くそ! みんな無事でいてくれ!!
「あぁ……! シールドが……割れる!」
聖騎士ギルバートが、上空に張られたシールドを見て緊迫した声を漏らした。
見上げると、シールドにヒビが入っていき、今にも割れそうになっている。
みんなが……フィオが!!
パキッ!!
その時、何かが弾けるような音がした。
シールドがついに壊れた? いや、違う。
大聖殿の方から、九本の大きな柱が天に向かってそびえていく。
柱じゃない、あれは……尻尾!?
やがて、大きくて白い塊が膨れ上がっていき、純白で蜃気楼のように透けた姿が、はっきり見えた。
白狐!!
九本の尻尾をなびかせた、巨大な四本足の白狐が、大聖殿の方に現れる。
あれは、まさか……フィオ!?
白狐の全身が光ると、シールドはたちまち回復していった。
その間に、俺たちは元の通りに戻る。
シュオォォォォ……!!
シールドに力負けをした光線は、虚しく消滅していった。
巨大な白狐は、それを見届けると、シールド共に消えていく。
危なかった。
シールドがなかったら、今頃この辺り一帯は消し飛んでいたかもしれない。
フィオは、無事か!?
なんだか、胸騒ぎがする。
「アーチロビン!こっちじゃ!!」
魔道士ティトが、奥まった通りで必死に手招きしていた。
なんだ、どうしたんだ!?
俺は魔道士ティトと、ケルヴィン殿下が待つ場所へと急いだ。
「フ、フィオが……」
0
お気に入りに追加
20
あなたにおすすめの小説
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
愚かな父にサヨナラと《完結》
アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」
父の言葉は最後の一線を越えてしまった。
その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・
悲劇の本当の始まりはもっと昔から。
言えることはただひとつ
私の幸せに貴方はいりません
✈他社にも同時公開
いきなり異世界って理不尽だ!
みーか
ファンタジー
三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。
自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
転生したら神だった。どうすんの?
埼玉ポテチ
ファンタジー
転生した先は何と神様、しかも他の神にお前は神じゃ無いと天界から追放されてしまった。僕はこれからどうすれば良いの?
人間界に落とされた神が天界に戻るのかはたまた、地上でスローライフを送るのか?ちょっと変わった異世界ファンタジーです。
ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い
平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。
ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。
かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。
クラス転移で神様に?
空見 大
ファンタジー
集団転移に巻き込まれ、クラスごと異世界へと転移することになった主人公晴人はこれといって特徴のない平均的な学生であった。
異世界の神から能力獲得について詳しく教えられる中で、晴人は自らの能力欄獲得可能欄に他人とは違う機能があることに気が付く。
そこに隠されていた能力は龍神から始まり魔神、邪神、妖精神、鍛冶神、盗神の六つの神の称号といくつかの特殊な能力。
異世界での安泰を確かなものとして受け入れ転移を待つ晴人であったが、神の能力を手に入れたことが原因なのか転移魔法の不発によりあろうことか異世界へと転生してしまうこととなる。
龍人の母親と英雄の父、これ以上ない程に恵まれた環境で新たな生を得た晴人は新たな名前をエルピスとしてこの世界を生きていくのだった。
現在設定調整中につき最新話更新遅れます2022/09/11~2022/09/17まで予定
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる