85 / 91
番外編
※ランヴァルト視点 未来
しおりを挟む
「まーだ、この手配書、誰も受けてないのぉ?」
フェレミスが、ギルドの手配書が貼り付けられた掲示板の前で首を傾げている。
妖婆の討伐か。
これが貼り出されて、1週間になる。
破格の値段が書かれているが、誰も引き受けてない。広域手配もされてるようだが、よそのギルドも担い手がいないようだ
「邪眼を取り戻した妖婆は、余計危ない。おまけに肝心のイバリンが、法王府に逃げ込んだんだろ?」
俺が、フェレミスの隣で補足してやった。
そう、あれからイバリンたちは、夜も眠れなくなったそうだ。
あちこち泊り歩いていたけれど、妖婆の追跡は振り切れなかったとか。
むしろ、奴らの宿泊先の他の人間が、巻き添えを食って怪我をする始末。
怯えた彼は、キャロン元法王補佐官のコネを使って、法王府に保護を求めたらしい。
法王府に保護されるには、それなりの理由を説明しないといけない。
法王府の調査部が動いて、ギルド本部の調査と重なった。その結果、イバリンの悪事が次々と露呈したのだ。
邪眼に生気を抜かれたと言い張った、ギルドマスターと事務長だったが、本部に責任を問われて交代させられた。
意識不明で監禁されていた、ハンターのOBも保護されたらしい。
ジェシカは、聴取を受けて処分された後、ギルドを去ったと聞く。
彼女はシルヴィアへの嫉妬心から、協力していただけだったのだ。
イバリンが関わって、飛び級したハンターたちは再査定を受けた。
実力不足と判定を受けた者は、降格かそのランクのハンターのパーティーへの強制加入が義務付けになったとか。
シルヴィアへの、逆恨みもなかった。妖婆の討伐で、実際対峙することの難しさを痛感したらしく、皆納得したそうだ。
「イバリンにのせられて、シルヴィアを利用したハンターの報告もちゃーんとしたのにねぇ。ほとんど除名かと思ったけど、全員残留したね。」
フェレミスが、俺の方を見る。
まぁ、シルヴィアがイバリンに唆されていたことは、他のハンターには関係ないから、こうなるとは思っていたけどな。
「やることは、やった結果だ。どのみち、これから実力不足の連中は、現場で苦労することになる。魔物は事情なんて忖度しないからな。」
と、俺は言った。
せいぜい苦労すればいいと思ってる。
「それよりも、シルヴィアに余計なことを吹き込むなよ。」
俺はフェレミスに釘を刺す。
「先週のこと、まだ怒ってんの?」
フェレミスが、俺を流し目で見た。
「フェレミス、俺は彼女が叱れと言うから叱ったけど、そこまで怒ってなかったんだぞ。」
「ランヴァルト、彼女は誰かに、やってしまったことを注意されたかったんだ。周りが遠慮して言わないからさ。
昔、俺がそれで失敗したんだよ。」
「?」
「自分の最愛の女性に、『みんなが遠慮して言わないことでも、あなたは言ってほしい』と言われてさ。俺は彼女を責めたくなくて、言わなかった。」
「・・・。」
「でもさ、守ってたのは、彼女を傷つける悪者になりたくない俺自身だったのよ。彼女のためじゃなかった。後から気づいた時には遅かった。」
「そうか・・・。」
「シルヴィアは、お前に叱られることで、けじめをつけたかったんだと思う。きっと、心は軽くなったはずだ。」
「・・・そうか。ありがとうな、フェレミス。辛い体験から来たアドバイスだったんだな。」
「ん?辛い?」
「別れたんだろ?その女性と。」
「いや?後からちゃんと言ってあげたから、今も俺の恋人よ?いっちばん長く続いてる彼女だから、参考になると思って。」
「なんだと!?」
「わー!なんで怒るんだよ!」
「あの話の流れからしたら、別れた話かと思うだろうが!」
「話をちゃんと聞かずに、結論出すそっちが悪いだろうが!!わからなかったら、聞けよ!」
「紛らわしい言い方しやがって!!」
俺たちがギャーギャー言い合っていると、ギルドの奥からシルヴィアが戻ってきた。
「お待たせ。」
彼女は肩にモーガンを乗せ、手にはハンターランク認定書を持っている。
シルヴィアが、改めて成績を査定してもらえたのだ。
吸血鬼の能力で達成した分が評価されるのかどうか・・・査定の人員が変わったし、あのおかしな規定も変わったから、問題ないはず。
だが、彼女はイバリンに加担してハンターたちに、成果を譲渡していた事実がある。
実力はSクラスでもおかしくはないが、どうかな・・・。
「ランク・・・Aか!」
認定書を見て、俺はほっと胸を撫で下ろす。
Sは無理でも、Aなら妥当だ。
いずれSにもなれるだろう。
フェレミスもシルヴィアを抱き上げて、クルクル回っていた。
「シルヴィア!おめでとうー!!」
「きゃ!ありがとう、フェレミス。」
「お祝いに、何か食べに行こうよ。」
「う、うん、あの。フェレミス、降ろして?」
「えへへへ、このまま行こうよぉ。」
フェレミスがニヤニヤして、シルヴィアを抱っこしたまま歩き出そうとする。
この野郎!!
「返せ!」
俺はフェレミスから、シルヴィアを奪い返した。
「あぁー!ランヴァルトのケチ!!」
「俺の恋人だ。」
「いいじゃん!俺、俺最近ハンナの相手ばかりさせられて・・・。疲労困憊なのよ。」
フェレミスが、俺の肩にもたれてくる。
そういや、ここんところ、フェレミスはハンナの家に連れ込まれていると聞いてたな。
「お前、ハンナに気に入られてるもんな。」
「毎日この胸で泣かせてあげてるのよぉ。でもさ、おかげで俺の彼女たちに会いに行けないのぉ。」
「それは、気の毒に。」
「シルヴィア、慰めて!今夜は俺を指名して!」
「ふざけんな!」
俺はシルヴィアを抱えて、外へ飛び出す。
フェレミスは後ろから追いかけてくると、俺の背中にしがみついた。
「意地悪しないでぇー、ランヴィー。」
「その名前で呼ぶな!ったく!」
「ふふふ。」
シルヴィアが、俺の肩に手を置いたまま笑っている。
素直な笑顔。
俺は、嬉しくなって彼女を降ろして抱き締めた。
「本当によかったな。」
「えぇ、ランヴァルト。あなたやみんなのおかげよ。ありがとう。」
それを聞いたフェレミスが、シルヴィアの後ろから俺ごと抱き締めてくる。
「よかった。いつものシルヴィアだ。」
「フェレミス・・・。」
「ランヴァルトの慰めが効くとは思ってたけど、心の傷は見えないからさ。」
「えぇ、大丈夫。ランヴァルトがね、とても大切にしてくれるから。」
「成長したよね、シルヴィア。」
「えぇ、みんなのおかげ。」
彼女を真ん中に挟んで、フェレミスと目が合う。
「大丈夫みたいだな。」
フェレミスが言うので、俺も答える。
「あぁ。彼女は強いよ。」
あれだけ利用されていたのに、なんとか乗り越えようとしている。
俺はこれからも、できることはなんでも協力したい。
シルヴィアは、俺の胸から顔を上げると、
「さ、今日の討伐に行きましょう。」
と、言った。
おいおい、休まなくていいのか?
「食事はいいのか?」
と、俺が聞くと、彼女は頷いた。
「後で行きましょう。妖婆の討伐が済んでから。」
と、シルヴィアが言う。
「イバリンが出てきちゃうよ?第一、あいつが俺らに任せない、て、宣言したんだぜ?」
フェレミスが不満そうに言うと、シルヴィアが笑った。
「私はもぅ、弱味は掴まれてないもの。怪我人が出ている以上見過ごせない。
それに、妖婆を討伐できるのは、私たちしかいないわ。」
あー、そうくるか。やっぱり言うと思った。
「誰も取らない依頼だしな。」
「ま、イバリンがここに戻っても、ハンターの掟を犯した以上、安全じゃないからねぇ。」
「そう!私たちは最強のチームでしょ。」
シルヴィアの笑顔が眩しい。
俺たちもつられて笑顔になる。
やっぱりこの3人だよな!
「ホーホゥ!」
モーガンも、羽をバサバサさせて鳴く。
ごめん、この3人と1羽だな。
討伐はもちろん大成功。
俺たちの評価もまた上がった。
破格の報奨金も出たし、しばらく仕事をとらなくても済みそうだ。
久しぶりに、シルヴィアとゆっくり過ごそう。
シルヴィアにそう伝えると、嬉しそうに笑った。
妖婆が討伐された後、イバリンは法王府を出て、キャロン元法王補佐官と国外へ逃げたそうだ。
シルヴィアと同じ『共闘の盟約』に従った吸血鬼が、新たに来たという国へ。
また、利用する気だな。
だが、そいつはシルヴィアと同じようにはいかなかったらしい。
なんでも、2人とも魔物討伐に同行した時、怪我を負って瀕死状態になったそうだ。
その吸血鬼は、救命という名目で咬んだらしい。2人とも今では僕として、こき使われているとか。
俺は、都合よく利用しようとしたのを察知されて、反撃を受けたのだと思っている。
人を吸血しない、シルヴィアに慣れすぎたな。
彼女のような吸血鬼は稀なのに。
それから、時は流れた。
シルヴィアはまた少し変わった。
何もかも背負い込もうとせず、俺たちによく相談もするし、自分の能力を安売りしなくなった。
そして、俺に対する信頼も、以前より増したと思う。
俺も、彼女に背中を預けられるようになった。
フェレミスも、同じだが。
「ランヴァルト、心から愛してる。」
と、シルヴィアが、今日も俺のそばで言ってくれる。
「俺も、愛してる。」
俺が応えると、シルヴィアがそっと身を任せてくるので、部屋の明かりを落とした。
色々あったが、なんとか乗り越えていけた。
これからも、俺たちは支えあってやっていく。
今日も、明日も明後日も。
大切な彼女と一緒に。
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~
読んでくださってありがとうございました。
お気に召したら、お気に入り登録してくださるとうれしいです♫ とても励みになります。
※この物語はフィクションです。表現や人物、団体、学説などは作者の創作によるものです。
次話は、キャロン視点に切り替わります。隣国で吸血鬼の僕となったイバリンと彼は、シルヴィアを罠にかけようと待ち構えますが・・・?
フェレミスが、ギルドの手配書が貼り付けられた掲示板の前で首を傾げている。
妖婆の討伐か。
これが貼り出されて、1週間になる。
破格の値段が書かれているが、誰も引き受けてない。広域手配もされてるようだが、よそのギルドも担い手がいないようだ
「邪眼を取り戻した妖婆は、余計危ない。おまけに肝心のイバリンが、法王府に逃げ込んだんだろ?」
俺が、フェレミスの隣で補足してやった。
そう、あれからイバリンたちは、夜も眠れなくなったそうだ。
あちこち泊り歩いていたけれど、妖婆の追跡は振り切れなかったとか。
むしろ、奴らの宿泊先の他の人間が、巻き添えを食って怪我をする始末。
怯えた彼は、キャロン元法王補佐官のコネを使って、法王府に保護を求めたらしい。
法王府に保護されるには、それなりの理由を説明しないといけない。
法王府の調査部が動いて、ギルド本部の調査と重なった。その結果、イバリンの悪事が次々と露呈したのだ。
邪眼に生気を抜かれたと言い張った、ギルドマスターと事務長だったが、本部に責任を問われて交代させられた。
意識不明で監禁されていた、ハンターのOBも保護されたらしい。
ジェシカは、聴取を受けて処分された後、ギルドを去ったと聞く。
彼女はシルヴィアへの嫉妬心から、協力していただけだったのだ。
イバリンが関わって、飛び級したハンターたちは再査定を受けた。
実力不足と判定を受けた者は、降格かそのランクのハンターのパーティーへの強制加入が義務付けになったとか。
シルヴィアへの、逆恨みもなかった。妖婆の討伐で、実際対峙することの難しさを痛感したらしく、皆納得したそうだ。
「イバリンにのせられて、シルヴィアを利用したハンターの報告もちゃーんとしたのにねぇ。ほとんど除名かと思ったけど、全員残留したね。」
フェレミスが、俺の方を見る。
まぁ、シルヴィアがイバリンに唆されていたことは、他のハンターには関係ないから、こうなるとは思っていたけどな。
「やることは、やった結果だ。どのみち、これから実力不足の連中は、現場で苦労することになる。魔物は事情なんて忖度しないからな。」
と、俺は言った。
せいぜい苦労すればいいと思ってる。
「それよりも、シルヴィアに余計なことを吹き込むなよ。」
俺はフェレミスに釘を刺す。
「先週のこと、まだ怒ってんの?」
フェレミスが、俺を流し目で見た。
「フェレミス、俺は彼女が叱れと言うから叱ったけど、そこまで怒ってなかったんだぞ。」
「ランヴァルト、彼女は誰かに、やってしまったことを注意されたかったんだ。周りが遠慮して言わないからさ。
昔、俺がそれで失敗したんだよ。」
「?」
「自分の最愛の女性に、『みんなが遠慮して言わないことでも、あなたは言ってほしい』と言われてさ。俺は彼女を責めたくなくて、言わなかった。」
「・・・。」
「でもさ、守ってたのは、彼女を傷つける悪者になりたくない俺自身だったのよ。彼女のためじゃなかった。後から気づいた時には遅かった。」
「そうか・・・。」
「シルヴィアは、お前に叱られることで、けじめをつけたかったんだと思う。きっと、心は軽くなったはずだ。」
「・・・そうか。ありがとうな、フェレミス。辛い体験から来たアドバイスだったんだな。」
「ん?辛い?」
「別れたんだろ?その女性と。」
「いや?後からちゃんと言ってあげたから、今も俺の恋人よ?いっちばん長く続いてる彼女だから、参考になると思って。」
「なんだと!?」
「わー!なんで怒るんだよ!」
「あの話の流れからしたら、別れた話かと思うだろうが!」
「話をちゃんと聞かずに、結論出すそっちが悪いだろうが!!わからなかったら、聞けよ!」
「紛らわしい言い方しやがって!!」
俺たちがギャーギャー言い合っていると、ギルドの奥からシルヴィアが戻ってきた。
「お待たせ。」
彼女は肩にモーガンを乗せ、手にはハンターランク認定書を持っている。
シルヴィアが、改めて成績を査定してもらえたのだ。
吸血鬼の能力で達成した分が評価されるのかどうか・・・査定の人員が変わったし、あのおかしな規定も変わったから、問題ないはず。
だが、彼女はイバリンに加担してハンターたちに、成果を譲渡していた事実がある。
実力はSクラスでもおかしくはないが、どうかな・・・。
「ランク・・・Aか!」
認定書を見て、俺はほっと胸を撫で下ろす。
Sは無理でも、Aなら妥当だ。
いずれSにもなれるだろう。
フェレミスもシルヴィアを抱き上げて、クルクル回っていた。
「シルヴィア!おめでとうー!!」
「きゃ!ありがとう、フェレミス。」
「お祝いに、何か食べに行こうよ。」
「う、うん、あの。フェレミス、降ろして?」
「えへへへ、このまま行こうよぉ。」
フェレミスがニヤニヤして、シルヴィアを抱っこしたまま歩き出そうとする。
この野郎!!
「返せ!」
俺はフェレミスから、シルヴィアを奪い返した。
「あぁー!ランヴァルトのケチ!!」
「俺の恋人だ。」
「いいじゃん!俺、俺最近ハンナの相手ばかりさせられて・・・。疲労困憊なのよ。」
フェレミスが、俺の肩にもたれてくる。
そういや、ここんところ、フェレミスはハンナの家に連れ込まれていると聞いてたな。
「お前、ハンナに気に入られてるもんな。」
「毎日この胸で泣かせてあげてるのよぉ。でもさ、おかげで俺の彼女たちに会いに行けないのぉ。」
「それは、気の毒に。」
「シルヴィア、慰めて!今夜は俺を指名して!」
「ふざけんな!」
俺はシルヴィアを抱えて、外へ飛び出す。
フェレミスは後ろから追いかけてくると、俺の背中にしがみついた。
「意地悪しないでぇー、ランヴィー。」
「その名前で呼ぶな!ったく!」
「ふふふ。」
シルヴィアが、俺の肩に手を置いたまま笑っている。
素直な笑顔。
俺は、嬉しくなって彼女を降ろして抱き締めた。
「本当によかったな。」
「えぇ、ランヴァルト。あなたやみんなのおかげよ。ありがとう。」
それを聞いたフェレミスが、シルヴィアの後ろから俺ごと抱き締めてくる。
「よかった。いつものシルヴィアだ。」
「フェレミス・・・。」
「ランヴァルトの慰めが効くとは思ってたけど、心の傷は見えないからさ。」
「えぇ、大丈夫。ランヴァルトがね、とても大切にしてくれるから。」
「成長したよね、シルヴィア。」
「えぇ、みんなのおかげ。」
彼女を真ん中に挟んで、フェレミスと目が合う。
「大丈夫みたいだな。」
フェレミスが言うので、俺も答える。
「あぁ。彼女は強いよ。」
あれだけ利用されていたのに、なんとか乗り越えようとしている。
俺はこれからも、できることはなんでも協力したい。
シルヴィアは、俺の胸から顔を上げると、
「さ、今日の討伐に行きましょう。」
と、言った。
おいおい、休まなくていいのか?
「食事はいいのか?」
と、俺が聞くと、彼女は頷いた。
「後で行きましょう。妖婆の討伐が済んでから。」
と、シルヴィアが言う。
「イバリンが出てきちゃうよ?第一、あいつが俺らに任せない、て、宣言したんだぜ?」
フェレミスが不満そうに言うと、シルヴィアが笑った。
「私はもぅ、弱味は掴まれてないもの。怪我人が出ている以上見過ごせない。
それに、妖婆を討伐できるのは、私たちしかいないわ。」
あー、そうくるか。やっぱり言うと思った。
「誰も取らない依頼だしな。」
「ま、イバリンがここに戻っても、ハンターの掟を犯した以上、安全じゃないからねぇ。」
「そう!私たちは最強のチームでしょ。」
シルヴィアの笑顔が眩しい。
俺たちもつられて笑顔になる。
やっぱりこの3人だよな!
「ホーホゥ!」
モーガンも、羽をバサバサさせて鳴く。
ごめん、この3人と1羽だな。
討伐はもちろん大成功。
俺たちの評価もまた上がった。
破格の報奨金も出たし、しばらく仕事をとらなくても済みそうだ。
久しぶりに、シルヴィアとゆっくり過ごそう。
シルヴィアにそう伝えると、嬉しそうに笑った。
妖婆が討伐された後、イバリンは法王府を出て、キャロン元法王補佐官と国外へ逃げたそうだ。
シルヴィアと同じ『共闘の盟約』に従った吸血鬼が、新たに来たという国へ。
また、利用する気だな。
だが、そいつはシルヴィアと同じようにはいかなかったらしい。
なんでも、2人とも魔物討伐に同行した時、怪我を負って瀕死状態になったそうだ。
その吸血鬼は、救命という名目で咬んだらしい。2人とも今では僕として、こき使われているとか。
俺は、都合よく利用しようとしたのを察知されて、反撃を受けたのだと思っている。
人を吸血しない、シルヴィアに慣れすぎたな。
彼女のような吸血鬼は稀なのに。
それから、時は流れた。
シルヴィアはまた少し変わった。
何もかも背負い込もうとせず、俺たちによく相談もするし、自分の能力を安売りしなくなった。
そして、俺に対する信頼も、以前より増したと思う。
俺も、彼女に背中を預けられるようになった。
フェレミスも、同じだが。
「ランヴァルト、心から愛してる。」
と、シルヴィアが、今日も俺のそばで言ってくれる。
「俺も、愛してる。」
俺が応えると、シルヴィアがそっと身を任せてくるので、部屋の明かりを落とした。
色々あったが、なんとか乗り越えていけた。
これからも、俺たちは支えあってやっていく。
今日も、明日も明後日も。
大切な彼女と一緒に。
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~
読んでくださってありがとうございました。
お気に召したら、お気に入り登録してくださるとうれしいです♫ とても励みになります。
※この物語はフィクションです。表現や人物、団体、学説などは作者の創作によるものです。
次話は、キャロン視点に切り替わります。隣国で吸血鬼の僕となったイバリンと彼は、シルヴィアを罠にかけようと待ち構えますが・・・?
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
私はお母様の奴隷じゃありません。「出てけ」とおっしゃるなら、望み通り出ていきます【完結】
小平ニコ
ファンタジー
主人公レベッカは、幼いころから母親に冷たく当たられ、家庭内の雑務を全て押し付けられてきた。
他の姉妹たちとは明らかに違う、奴隷のような扱いを受けても、いつか母親が自分を愛してくれると信じ、出来得る限りの努力を続けてきたレベッカだったが、16歳の誕生日に突然、公爵の館に奉公に行けと命じられる。
それは『家を出て行け』と言われているのと同じであり、レベッカはショックを受ける。しかし、奉公先の人々は皆優しく、主であるハーヴィン公爵はとても美しい人で、レベッカは彼にとても気に入られる。
友達もでき、忙しいながらも幸せな毎日を送るレベッカ。そんなある日のこと、妹のキャリーがいきなり公爵の館を訪れた。……キャリーは、レベッカに支払われた給料を回収しに来たのだ。
レベッカは、金銭に対する執着などなかったが、あまりにも身勝手で悪辣なキャリーに怒り、彼女を追い返す。それをきっかけに、公爵家の人々も巻き込む形で、レベッカと実家の姉妹たちは争うことになる。
そして、姉妹たちがそれぞれ悪行の報いを受けた後。
レベッカはとうとう、母親と直接対峙するのだった……
【R18】もう一度セックスに溺れて
ちゅー
恋愛
--------------------------------------
「んっ…くっ…♡前よりずっと…ふか、い…」
過分な潤滑液にヌラヌラと光る間口に亀頭が抵抗なく吸い込まれていく。久しぶりに男を受け入れる肉道は最初こそ僅かな狭さを示したものの、愛液にコーティングされ膨張した陰茎を容易く受け入れ、すぐに柔らかな圧力で応えた。
--------------------------------------
結婚して五年目。互いにまだ若い夫婦は、愛情も、情熱も、熱欲も多分に持ち合わせているはずだった。仕事と家事に忙殺され、いつの間にかお互いが生活要員に成り果ててしまった二人の元へ”夫婦性活を豹変させる”と銘打たれた宝石が届く。
マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました
東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。
攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる!
そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
売られていた奴隷は裏切られた元婚約者でした。
狼狼3
恋愛
私は先日婚約者に裏切られた。昔の頃から婚約者だった彼とは、心が通じ合っていると思っていたのに、裏切られた私はもの凄いショックを受けた。
「婚約者様のことでショックをお受けしているのなら、裏切ったりしない奴隷を買ってみては如何ですか?」
執事の一言で、気分転換も兼ねて奴隷が売っている市場に行ってみることに。すると、そこに居たのはーー
「マルクス?」
昔の頃からよく一緒に居た、元婚約者でした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる