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番外編

※ランヴァルト視点 搾取

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「朝一番にシルヴィアを呼び出すものだから、私も気になって来てみたら、また生還率の低い魔物の討伐に指名されてるんだもの!しかも、全員ハンターランクBのパーティが挑むのよ!?」

ハンナは大声で叫ぶと、部屋に飛び込んでくる。

コーヒーを飲みかけていたフェレミスが、驚いてゴホ!と、吹き出していた。

ハンナはそれに気づいて、フェレミスを見る。

「あんたも来てたの。」

「ゴホ!おはよう、ハンナ。」

「おはよう。あんた、相変わらず私を誘わないわね。いつでも、寝台の隣は空いてると言ってるでしょ。」

「ゴホゴホ!いや、ほら、君は俺には高級すぎてさ・・・。」

「骨抜きにしてあげるのに。」

「・・・砕くの間違いじゃない?」

そこへ、モーガンを肩に乗せたシルヴィアも入ってくる。

「ただいま、ランヴァルト。」

シルヴィアはそう言って、ハンナの隣に並んだ。

ハンナはすぐにシルヴィアの肩を抱くと、

「聞いてよ、ウィンスロット!シルヴィアばかりこき使うから、これだけこなせばランク上がるでしょ、て言ったら、彼女の査定はランクDのまま、ていうのよ!?」

と、言った。やっぱり、他のハンターもおかしいと思っているんだ。

「仕方ないよ。私は実力が低いもの。飛び級も、今はやってないと聞いたよ。」

シルヴィアは、ハンナをなだめるように言う。
ハンナは首を横に振った。

彼女も、最近飛び級しているからだ。

「何言ってるの!私はなかなかランクCから上がれなくて、思い切ってパーティを組み直してあんたと組んだ。そしたら、ランクAとSの討伐まで次々と成功して、今や私はSなのよ!?」

ハンナは目を血走らせて、俺たちを見回す。
ランクCからのSとはすごい。

元々ランクSクラスの実力はあったから、遅かったくらいだが。

「シルヴィアだって、ランクSに相当するはずだって、私は受付嬢のジェシカに言ったのに、なんて言ったと思う?」

ハンナが言った『ジェシカ』の名前に、今度はフェレミスが反応する。

「ん?ジェシカ・・・?あぁ!ランヴァルトに滅茶苦茶めちゃくちゃれてたじゃん。」

受付嬢のジェシカ?あぁ、そういえば前に一度、彼女に告白されたことがあったな。

もちろん断った。あの当時はディミトリのことで頭がいっぱいだったし、心も動かなかったから。

「ランヴァルト・・・を好きな人?」

シルヴィアが、不安そうに俺を見た。

なんだ?どうした?

ハンナはそれを見て、シルヴィアを安心させるように、話しかける。

「心配しなくていいのよ、シルヴィア。ウィンスロットは、美女という美女をその鉄面皮でお断りしてきたんだから。つまみ食いするフェレミスと違うの。」

シルヴィアが愛想笑いをして、それを見たフェレミスが口を尖らせた。

「なぁんだよぉ。来るものこばまずが、俺の信条なの!このシスコン野郎が、姉の魅力を超えられない女性全てをそでにしてきただけじゃん。」

・・・何故そうなる。
姉さんは確かに美人で大好きだったけど、いちいち比較してないぞ。

ムッとした俺は、仏頂面ぶつちょうづらでハンナを見た。

「フェレミス、静かに。ハンナ、彼女はなんて言ったんだ?」

俺は、ハンナを見つめて聞いた。

ハンナはフェレミスの隣に座ると、両手を机の上で組んで、まるで受付嬢のような態度で真似てみせる。

所詮しょせん吸血鬼の力で、強いだけでしょ。不死身で、攻守共に優れた力も使える。それは、修行でも、勉強して身につけたものでもないから、評価対象からはずれます。」

・・・なんだって?
俺は眉間みけんしわを寄せて、ハンナの話を聞いていた。

フェレミスも、ハンナの方を向いて机を叩く。

「なんだよ、それ!!俺だってダンピールの力を使ってここまで来たけど、そんなこと言われたことねーぞ!?」

ハンナは足を組んで、フェレミスの方を見た。

「ジェシカの話だと、査定基準改定があって、種族が持つ能力を使っての討伐は、無効になると決まったそうなの。シルヴィアが登録した時から。」

彼女の話で確信した。
意図的な改定だ。
シルヴィアを『道具』として、扱い続けられるよう、ランクDに据え置くための。

「ランヴァルト、怖い顔になってる。」

シルヴィアが殺気立つ俺のそばに来て、腕に触れてくる。

俺は、無言で彼女を抱き締めた。

俺たちとだけ仕事していれば、こんな目に遭わせなかったのに・・・いや、彼女が都合よく使われていると気づいていたのに、これも経験だと思い込んだ自分が歯痒い。

こんな思いは、今だけのことだと思ったからだ。

だが、評価する側に問題があれば、苦い思いだけをさせられることになる。

彼女はこのままでは、10年経ってもランクDのままだろう。

そもそも上げる気が、組織の方にないのだから。

「そういや、今各街のギルドの成果を競う決算期だ。高ランクの依頼をどれだけこなせたか、どのくらいのハンターが昇格しているかで、翌年の高配当の討伐依頼が優先的に回されるかが、決まる。」

フェレミスが溜息をついて、そう話した。

「それだ。」

俺は、ギルドがシルヴィアを道具として使いたい本音はそこにあると気づいた。

「彼女を使えば、低ランクのハンターも飛び級させられる。おまけに、高ランクの討伐も数が稼げる。結果、この街のギルドの評価が上がる。」

言いながら、胸糞が悪くなってきた。
シルヴィアを利用するだけする気だ。

それに、こんなことをしていたら、本来実力のないハンターまで、高ランクに飛び級することになる。

もし、シルヴィアの取り合いになって、彼女が行けない事態になったらどうする気だ。

それこそ、そのパーティは全滅してしまう。

ハンナは頬杖をついて、俺を見た。

「ここのところ、他所から来たハンターが、シルヴィアを指名し合ってる。今回も、最近きたレイモンドというランクBのハンターが指名したの。」

「・・・高ランクのハンターになれば、報奨金の取り分もでかくなるからな。名前も売れるし。そいつも飛び級狙いか?」

「多分ね。問題はもう一つ。シルヴィアを指名するハンターのほとんどに、必ずある男がついてくるの。」

「ん?別のハンターか?」

「一般人よ。」

ハンナが言うと、俺の腕の中のシルヴィアの肩がピクリと上がる。

・・・何かあるな。討伐に一般人が同行することは、基本的にない。

道案内とか、恨みがあって討伐を見届けたいとか、事情がない限り。

「そいつが、仕掛け人のようだな。」

「えぇ。怪しい奴よ。」

ハンナが確信を持って頷く中、シルヴィアは目を泳がせている。 

ポーカーフェイスが、うまくないからな。
シルヴィア。

この場で話してくれと言っても、彼女は口を割らない気がする。

どうしたものか。

俺はハンナに視線を戻して、気づかないフリをした。

「レイモンドが飛び級すれば、またこの街のギルドの評価が高くなるな。」

「えぇ。でもね、他のギルドも黙ってないの。何かあると思って調査に来るはず。」

俺は、ハッとしてシルヴィアから腕を解くと、ハンナの方に駆け寄る。
第三者が入るのか?

「ギルド本部が動くか?」

ハンナもニヤリと笑って頷いた。

「でしょうね。それより・・・いいこと考えついたの。のらない?ウィンスロット。」


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