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※カミュンは怒らせたら怖いのーだ(ノアム視点)

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ここは、離れ小島の石切場。

船でしか行き来が出来ず、逃げ場のない場所。

信じられなーい。
理事長の私が石切場の、下働きだーとー?

なぜーだ!?
四方八方から、用事を言いつけられる。
リタと離れてから、また一時停止を起こしながらの生活ーだ。

「・・・はい。」

毎回、蚊の鳴くような声で、働くのがせいぜーい。
下働きは、こんなにきついのだーな。

「おい、ーーー そこが終わったら、霊廟跡の見回りに ーーー 行け。」

と、一時停止しながら言われーる。

この離れ小島は、かつて王家の霊廟があったそうーだ。

それが千年前の淀みによる破壊で崩れ去り、霊廟そのものは移転していーる。

一部移動できなかった亡骸が、その後も残り続け、『化けて出る』という噂の場所になっていーる。

これはもう、是が非でも行きたくな・・・。

「行かないなんて言わねーよな。」

ゴツい現場監督に詰め寄られーる。

「い、行きまーす・・・。」

私は肩を落として向かーった。
そこで、折れて重なった柱の向こうに、ぼんやりと輝く光を見つけーた。

な、なんーだ?

近づくたびに、何やら人の声まで聞こえてくーる。

重なった柱の一番下は潜れそうーだ。
私は床を這いながら、そこをくぐーった。

「クスクス・・・」

うぉぉ、確かに女の笑い声が、聞こえーる。
やはりここに、お化けがいるのーか?

霊廟の太い柱の影に、誰かいーる。
んん?

誰か鎖で繋がれているようだーが?
そして、すぐそばで、羽の生えた誰かが笑っていーる。

なぬ!?
カミュンではないーか!!
せ、石化している!!
そして、そこにいるのはティルリッチ!

確か・・・、確か天界に帰ったとか聞いたーぞ?

私は瓦礫の影に隠れながら、様子を伺う。

ティルリッチは俯いたまま、

「もうすぐ ーーー もうすぐよ、カミュン。
最後の時までこうしてようね。」

と、言っていーる。
奴らも時々一時停止するんだーな、
その時、カミュンの全身に光の粒が舞い降りてきて、身体の中に吸い込まれていーった。

彼女は気づいてないが、なんだあれーは?

そこへ天井がさっと光って、もう一人の天族が現れた。
あいつは、確かアシェリエル?

「ティルリッチ様!
リタになんてこと ーーー をしたんです!!」

と、一時停止しながら怒鳴ーった。

ティルリッチは、カミュンに抱きついて、

「黙って!
私はここで、精霊の産み直しを待つわ!
原初の精霊の中で、彼と一つになるの!」

と叫ぶが、アシェリエルは、

「約束が違うではありませんか!
罪を償うという話は?」

と、言ーった。

「気が変わったの。
彼が私に応えてくれないから、こうなったのに。」

その言葉にアシェリエルは、俯きながら、

「あなたも、私の愛に応えることはないのに?」

と、言ーった。
ティルリッチはツンとそっぽを向いて、

「好きでもない人に、何を応えるの?」

と言って、そっとカミュンの顔を撫でていーる。
その様子を見たアシェリエルは、ため息をついて、

「カミュンを解放してください。
天王様もお探しなのです。」

と、言うと、

「嫌よ、アシェリエル。
私を好きなら、このまま最後まで当たり前のその真心を尽くしなさい。
天王の妹として、あなたに命令するわ。」

と、ティルリッチは言っていーる。
他人の好意に乗っかって、いいとこ取りーか。

「・・・な。」

ん?誰が喋ーった?

「ふざけるな!」

その声と同時に石化していた、カミュンの石がひび割れていーく。

「そん・・・な!
そんな、だめよ!」

ティルリッチが慌てて、

「つ ーーー 土の精霊よ!
この者の体を石と化して縫いとめよ!
セキ・ト・スー・・・。」

「 ーーー 火の精霊よ!
この身を守り、群がる石を焼き尽くせ!
イ・ファ・ヒエン!」

カミュンの詠唱が早くて、ティルリッチの石化の魔法が駆逐されていーく。
やはり魔法の詠唱時は、一時停止が露骨に出るーな。

「きゃあ!」

石化の魔法が破られて、ティルリッチが思わず吹き飛ばされーた。

カミュンは気合と共に、全身の筋肉を使って、鎖を引きちぎーった。

きゃー、かっこいーい!
細く見えるのに、がっちりしてたものーな。

カミュンは、ティルリッチを見ると、

「俺はもうあなたを信用しない。
クロスノスに聞きました!
淀みたちは『結びの間』の死角を抜けて三界に入ったらしいが、天族の管理区域の危険な裂け目がわざと放置されていたと!
結びの間の死角の入り口を、ハーティフに教えたのは、あなたか!?」

と、怒鳴ーった。

「そ、それは・・・。」

ティルリッチは、カミュンにこんなに怒られたことがないのだろーう。
涙目になっていーる。

「何をしたのか、わかっていますか!?」

カミュンはそう言うと、ちぎれた鎖を床に叩きつけーた。

「あなたが悪いの・・・あなたが私のものにならないから!
私は天王の妹なのよ!」

「だから、ハーティフと組んだと?
最初から騙していたのですか?」

「そう。ハーティフの作戦に乗ったのよ!
人間界で迷ったと言えば、お兄様があなたを手配して天界に送れと命令する。
あなたは私を口実にリタの元へ行く。
あとは、結びの間の死角の入り口を教えて、リタを黒竜に変身させれば、あなたが手に入るはずだった!」

カミュンがそれを聞いて、額に手を当てて、呆れかえっていーる。

「呆れてものが言えねぇ。」

そう話す彼の手に、薄い桃色の短冊が届ーく。
なんーだ?
カミュンがそれに気づいて、その短冊を読むと嬉しそうに懐にしまい、薬指を唇にあてた後、何か空中にその指で書いて上に弾いていーる。

「何してるの?」

ティルリッチが、訝しそうに見ていーる。

「石化していたから、遅れて届いたな・・・。
俺の最愛の人が呼んでいます。
戻らなくては。」

と、カミュンに言われたティルリッチは、顔を真っ赤にして怒り出しーた。

「リタね?
まだ出会って日も浅いはずなのに、なぜなの?
昔から想い続けた私より、あいつを選ぶ理由は!?」

「愛してるからです。」

そ、即答しーた!?
ティルリッチも驚いていーる。
すぐに立ち上がって、

「許さないわよ!!
あなたは私のものなんだから!!」

と、叫んーだ。

「違います。
俺の心はリタのものです。」

と、カミュンは言い切ーる。

「私に逆らうの!?
他の女ところへ行かせるくらいなら、この場で葬ってやるわ!!
光の精霊よ!
ーーー王家の敵を、討ち果たせ!
キオ・ケウ・ヒリ・カノテ!!」

カミュンの周りに、10人ほどの大剣を持った戦士たちが光を纏って現れーる。

「歴代の最高の戦士の技を継承させた、王家を守護する力の化身たちよ。」

あわわ!
なんちゅう女ーだ!!
思い通りにならない相手は命を奪おうなんーて!!

私?
私なーら、もちろん今は引いて次を待ーつ。

ん?
永遠に待つことになるだーと?

やかましーい!!
ゴン!!

私は興奮しすぎて頭をぶつけーた。
でかいタンコブを撫でる私の前で、カミュンと光の化身たちの死闘が幕をあげーた。


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