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※私は妖精界に名を残す・・・はずーが(ノアム視点)

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気がつくと、リタたちは居なくなっていーた。
私は具合が悪くて、あのまま眠ってしまっていたのーだ。

隣の椅子には、まだ顔が青白いテルシャが、ぐったりしていーる。

私は、慌ててトムジェルに話しかけーた。

「つ、連れはどうなーった!?」

私の言葉に、トムジェルは首を傾げて、

「ガルンティス様から、あなた方をここで介抱してくれと、頼まれましてな。
皆様は近くの宿屋で休まれてますよ。」

と、言ーった。

なんだーと!?
ガルンティスめ!

わざと置いていったーな!?

妖精界をまだ、見て回っていなーい!
怒りのあまり立ち上がるが、クラクラして座り込んーだ。

「ご無理なさいますな。
下手すると、その肉体が崩壊します。
魂が分離したら、そのまま冥界に飲まれて死んでしまいますよ。」

トムジェルが、私の額の汗を拭ってくれーる。

「ふん!
そうなったら、冥界で黄泉の一族に取り憑いて、その知識の全てを吸収してやるーわ!」

「できぬことは言わぬことです。
冥界に耐性のある黄泉の一族ですら、死んで魂だけになると、問答無用で死魂にさせられて、混沌の神の元へと送り出されます。」

「そ、それに抗える者もいるだろーが!」

「強固な意思、強靭な精神力、力の流れを理解できる聡い方であれば、或いは・・・。
しかし、どれほど魂の力を高めようと、時間と共に弱ります。
他者に取り憑いて仮初の肉体を得ても、そう長くはもちません。」

「肉体に拒絶されるーか。」

「えぇ。
かつて黄泉の一族の賢者に取り憑いたその魂も、怪物の魂を作った直後に力尽き、死魂にすらなれずに、霧散したと聞いています。
その欠片は、他の死魂と一緒に混沌の神に吸い上げられたそうです。」

トムジェルの言葉で、私はウロンの最期を知ーった。

もしかしたら、怪物の一部になっているのではないかと、淡い期待を持っていたが、摂理に逆らうのは簡単ではなーい。

しかしーだ・・・。

なぜ怪物の魂は、混沌の神に吸い込まれなかーった?
すぐにハーティフが召喚したからーか?
冥界は命を生み出す場所ではなーい。

肉体のない魂の融合体が、ウロンと同じようにならなかったのはなぜーだ?

それこそが、秘技なのーか?

そう考えていると、何やら大きな地響きが近づいてきーた。

「なんーだ・・・!?」

私が顔を上げて、音のする方を見ると、トムジェルが、

「今日の分の回収に来たか・・・。」

と、言って神殿の入り口へと飛んでいーった。

テルシャもゆるゆると立ち上がり、

「なんですかね・・・。」

と、トムジェルが飛び去った方を見ーる。

私は椅子を引きずりながら、見に行くことにしーた。

「今日の分の妖精花の蜜の結晶です。
もう、これがこの世界中の花をかき集めた量なのです。
これ以上は無理ですよ。」

トムジェルの声が聞こえーる。

「やかましいぃぃぃぃー!
よいか、差し出せぬ時は妖精たちを喰らうまでだぁぁぁぁ!」

恐ろしく大きな声がして、私は椅子ごとひっくり返りそうになーった。

よく見ると、神殿の入り口が暗くてよく見えなーい。
外が暗いという、だけではなーい。
何か大きなものが、神殿の入り口に来ているのーだ。

「それだけはおやめください!
クタヴィジャ姫様は、そんな方ではなかったはず!!」

トムジェルが悲鳴のような声で訴えていーる。

「精霊の神殿を任された神官のくせに、姫を治療する術すら知らぬ愚か者めがぁぁぁぁぁ!
噂によれば、漆黒の狼が来ているそうだなぁぁぁぁ。
奴を見つけたら教えろぉぉぉぉ!
わかったかぁぁぁぁ!」

再び大声を響かせて、その何かが地響きをたてながら去っていーった。

しばらくすると、肩を落としたトムジェルが帰ってきーた。

「い、今のーは?」

私がビクビクしながら尋ねると、

「クオ・リンゴブという、恐ろしい戦闘妖精です。
ま、客人には関係ございません、
お部屋を準備しましたので、そちらでお休みください。」

と、トムジェルは言ーった。

どうすることもできないので、言われた通りに客室で休むことにしーた。

問題は翌日起きーた。

目を覚ますと、リタたちの声とクオ・リンゴブの雄叫びが響いていーた。

寝過ごしたーか!!

体は昨日よりも動ーく。

私は、同じように客室から出てきたテルシャと一緒に、神殿の入り口まで様子を見に行ーった。

そこで私はクオ・リンゴブを初めて見ーた。

なんて大きくて恐ろしーい!!

リタがつまみ上げられているが、奴など一飲みではないーか!

ガルンティスや、アシェリエルが交戦しているが、その体液から、クオ・リンゴブは次々と増えて、手の打ちようがなーい。

待て待ーてー!
その狼を連れ去られたら、私が困ーる!!
慌てて駆け寄るが、手段は何もなーい。

どうすれーば・・・。

その時誰かが、煙玉をはなってクオ・リンゴブを追い払ーった。

「げほっ、ごほ!!」

煙の凄まじさに、思わず神殿の外に出てしまーった。
まずーい!

そしてリタを狙うクオ・リンゴブの腕を蹴り上げる者がいーる。

おお!
カミュンではないーか!!

私を助けに来てくれたのーか!?

感動していると、別のクオ・リンゴブが私を掴んで走り出しーた。

「ぎゃー!!」

「ノアム元理事長!?」

顔を出したテルシャも捕まえられーる。

リタたちは気づいていなーい。

カミュン!
助けーて・・・!

ぐんぐん神殿から遠ざかっていーく。

遠目に、カミュンがリタを抱き締めているのが見えーた!

あんの雌狼!!
その男に触るんじゃなーい!!

そいつは狼の雄じゃないんだーぞ!!

覚えてろーよー!!

私たちはそのまま連れ去られ、大きく美しい湖の中を進み、気がつくと見知らぬところへ置いて行かれーた。

「人間二人じゃのぅ。」

顔を上げると、長い階段の上に御簾が降りていて、その向こうに巨大な影が見えーる。

「人間は、大した妙薬にはならんが・・・。
薬草と煮込めばあるいは・・・。」

と、声が聞こえーる。

私もテルシャも、ガタガタ震えてきーた。

「お、おま、お待ちくださーい。」

「命乞いは、聞かぬぞえ。
それとも、何かお前は持っているのか?」

腹に響くような恐ろしい声ーだ。

「お、恐れながら・・・し、漆黒の狼をさ、差し上げまーす・・・。」

「なに!?」

「あれは、元は私の所有物なのでーす。
リ、リタをあなた様の妙薬に・・・。」

「リタ・・・、つまり雌狼か。
そうか・・・。
先代のアムが死んでもう、千年になるのか・・・。」

「え?」

「お前の言葉は嘘だな。
漆黒の狼は、殺さぬ限り誰も所有などできぬ。
もう、よい。
とりあえず厨房に連れて行け。」

「ぎゃー!!
お助けくださーい!!」

私はそのまま、テルシャと共に厨房に連れて行かれーた!

「うぅ、食われーるー。」

私が嘆いていると、厨房には、沢山の妖精たちが働いていーた。

「あ、新しい下働きの人間だ~。」

妖精たちが口々に叫ーぶ。

「下働き・・・!?
馬鹿な、私ーは!!」

「やらないと、その日の晩御飯になるよ?」

「やりまーす・・・。」

私とテルシャは、しばらく厨房で働く羽目になーった。












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