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ヒルダさんとの合流2
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以前と同様に午前中に治療院に赴いて、ティーロさんの体調面の確認をしてもらいながら応接室で待っていた。
ペトラさんは午後にこの治療院に表向きの用事で来ることになっていて、それまでは治療院の奥で比較的自由に過ごすことが出来る。
前回は暇つぶしグッズを持ってなかったので、今回は刺繍なども持参している。
ヒルダさんに教えてもらった護符をハンカチに縫っていたけれど、これはティーロさんにプレゼントするための物で恋人や妻がハンカチなどに刺繍をして渡すアレ。
本当はこっそり作って渡したかったんだけど、あまりにも二人だけの時間があり過ぎてこっそり作る時間のほうがなかったので
「これはティーロさんのだから」
と本人に見られながら作ってたりする。
前回よりは早めにやってきたペトラさんは忙しそうで、少しやせた感じがする。
「待たせたね、マナは元気そうでなによりだわ」
「こんにちは、ペトラさんは痩せました?」
「あぁ、食事はしっかり摂ってるんだけどね、何せ動かないといけない事があり過ぎて時間が体が幾つあっても足りないくらいに仕事が増えてるのよ」
書類らしき物を沢山持ったまま部屋へ入って来て応接室のテーブルの上に重ねた書類を置いた。
「ちょっと待ってね、この中からマナとティーロさんに関する物を選り分けるからね」
私達に渡す書類もその中にあるのだろうけど、表向きの用事で治療院から渡された書類もどうも多いみたいだった。
「大変ですね、その書類は全部ペトラさんが目を通すんですか?」
「そうよ、ちょっと待ってね、これと・・・聖女の仕事って言っても事務作業も含まれてるからね、昔みたいに被害を訴えた場所に行って戦いに参加してって以外にね、上にどんな場所でどんなことをしたかって提出しなければいけないのよ。まったく面倒なんだけどね、この仕事内容次第で評価されて中央神殿に呼ばれる人もいるみたいだから誇張して書く人もいるのよ」
実績を書類にして提出するのなら、その実績が多ければ多い程事務処理の負担が増えるのだろう。
「最近って、聖女の出動が多いんですか?」
「うちは今は森に立ち入るのは禁止になっているけれど、それでもこっそり森に入って怪我をして治療院や神殿に来る人達は後を絶たないわ。森に入るなって言われてもね、蓄えがなければたちまち生活出来なくなるから難しいのよ。神殿で回復魔法を使用することになった人も月ごとに集計しているけれど、ここ最近はその数も増えているし魔物の数が増えているのかしらね」
討伐隊が近々調査に向かってくれるけれど、領民達が倒せるレベルの魔物や魔獣の増加ならともかく、この前のように魔物狩りの手練れが囲まなければ倒すことが出来ない強さの魔物が増えているのであれば森に入ることは禁止となる。
きっとそれでも自分達は大丈夫と思い込む集団が出てくるだろうとペトラさんが嘆いていた。
「はい、あったわ。これがティーロさんの分ね」
ペトラさんが渡した書類にはプロスペル侯爵領の神殿からの書類で離縁を無効にする手続きは一旦停止するが、近々にプロスペル侯爵領の神殿を訪ねるようにといった内容の書類だった。
マデカント領の神殿を介したやり取りで一時的に停止させてはいるが、当事者同士が会って話すようにという内容だった。
場所は離縁届けを出したプロスペル侯爵領の神殿だったが、ティーロさんがすぐに向かえるはずもなく、とりあえず一旦停止のままで日にちの調整を神殿同士で行うことにしてもらった。
「マナに対しては何もないのよ」
指輪の件で訪れた者達がその後再び訪れることはなかったが、唯一の手掛かりのあるこの地にまた来ることはあるだろうと警戒はしている。
「ヒルダさんと合流したらまた相談に乗ってもらうつもりなんですけど・・・いろいろ報告することがあり過ぎて」
ヒルダさんの目の届かない場所で新婚生活を送っているのだから、そちらも含めて話さないといけない。
「あーーでもね、それは大丈夫よ、何てったってヒルダさんは恋愛話が好きな人だからね。身近で幸せになってる人がいればまず喜ぶわよ」
ヒルダさんって恋愛話が好きなんだ・・・
「反対されないのは嬉しいけれど、根堀り葉掘り聞かれるとかってありますかね?」
「それはあるかもしれないからとっておきの甘い話は用意しておいたほうがいいと思うわね」
そう言いながらペトラさんがにやりと笑った。
私とティーロさんは困った顔で思わず視線を合わせてしまったけれど、今この場所ではティーロさんと相談出来ないわ。
「ヒルダさんだけど、もう近くの町までは来ていてね、明後日にはこっちに合流するみたいだから」
ペトラさんに連絡が届くのは、神殿への手紙などは確実に手紙が受け取れるからで、この街にきちんと住民登録すれば私達が住む家にも手紙は配達してもらえる。
ただ、その住民登録の手続きも結構大変で、特に入って来た時には焼き印もあったしで住民登録しても却下になるだろうし、短期滞在なんで届けは出してないまま。
行商しているヒルダさんに連絡を取る場合は、ヒルダさんからはマデカントの神殿あてに送ればいいだけで、手紙には次に行く予定の街の名前が記されているからその街のヒルダさんの常宿宛に返事を書いたりするらしい。
今回の手紙には、他の領では街道に魔物が出る事などが書かれており、この国の主要な街道が使えなくなった場合には物資の供給や人の流れが断たれてしまうし、たちまちヒルダさんの行商にも影響が出てくる。
「この街に来るまであと少しでも街道は通りますし、ヒルダさん大丈夫なんでしょうか・・・?」
魔物から武器を持たぬ者が逃げるのは容易ではないはずで、高齢のヒルダさんがその状況から怪我無く逃げ切れるのだろうか?
「あぁ・・大丈夫よ、ああ見えてヒルダさんは元聖女だし、武闘派だったからね」
魔物の襲撃に関して心配してなさそうな口調だけど、昔のことだろうか?聖女ってそんなに強いのかな?
聖女としての力がなくなったから神殿を出たって言ってたけれど・・・
「聖女の力って回復とかだと思ってたんですが、後方支援以外にも力が使えるってことですか?」
「ヒルダさんはほとんど聖女としての力はないけれど、強力な防御魔法がかけられているから寿命以外では亡くなることはまずないのよ。ただ、性格が元来好戦的だったから、魔物に襲われている人がいれば放って自分だけ逃げることはないと思うわ。ヒルダさんが街道にいたほうが魔物にとっては脅威かもしれないわね。ただ寿命がね・・・こればかりは気を付けてもらうって言っても神様次第の所だからね・・・」
襲われたり怪我ではヒルダさんは亡くなることはないってことなのか?
ヒルダさんが到着するまで安心は出来ないけれど、出来る限り安全なルートで来て欲しい。
「今滞在している町がわかっているなら迎えに行けるがどうだろう?」
森に入れない人を雇って迎えに行ってもいいとティーロさんが提案したけれど、今の寄り合い馬車は護衛の傭兵を雇っているので待っていても大丈夫だとペトラさんが教えてくれた。
それにマデカント領は昔から魔物が多いし、それを退治することに馴れている土地柄なので他の領より安全なんだって。
武闘派のヒルダさんか・・・思わぬ過去を知ってしまった。
◇◇◇
ヒルダさんの到着はペトラさんが教えてくれた通りだったので、予定通りに馬車移動が可能だったみたい。
お昼前にはヒルダさんはこの街に到着して、それからティーロさんに案内されて私達が住む家へとやって来た。
「ヒルダさん!!」
「マナ!久しぶりだね、元気みたいでよかったよ」
久しぶりに見たヒルダさんは少し疲れたような表情だったけれど、長旅のせいだと本人は言っていた。
いつもなら物を売買しながらゆっくりと移動出来るし、宿まで着かなければ野宿したり気ままに移動出来ていたけれど、それが難しくなりしばらくは行商が難しいとボヤいていた。
街道沿いで魔物に襲われた話を聞いて肝を冷やしたけれど、ヒルダさんは無傷だし、他の人がどんな被害を負ったのかはヒルダさんもその場から転移魔法石で逃げたのでわからないらしい。
逃げる前の戦況は確認出来た限りでは、馬車を襲ってきた魔物はせん滅出来ただろうけど、馬車の被害が大きい所もあり、保護されたり面倒くさいことに巻き込まれたくないから逃げたって。
襲われている人を放置して逃げる人ではないってペトラさんが言ってたけれど、確かにヒルダさんは困っている人とか弱者に背を向ける人ではない。
とっても面倒くさがり屋なのは一緒に生活していて知っているけどね。
元聖女のヒルダさんも非常事態だと招集がかけられるのか訊ねると、退職者リストがあって惜しまれて退職した人には声がかかるかもしれないけれど、ヒルダさんはそれはないから大丈夫って。
二度と神殿になんて足を踏み入れないって誓いを立てて、以降一度も神殿すら訪れたことがないそうだ。
ヒルダさんは離れていた時の私達の事を案の定根堀り葉掘り訊ねたけれど、夫婦として一緒に生きていくことをすごく喜んでくれた。
「相思相愛ってのがいいね、お互いに同じ時に惹かれ合わないと出来ない愛の形だよ、二人がいいなら私がどうこう言うもんじゃないよ。しかし・・マナがティーロを拾った時にはねぇ・・・」
「今は行商も難しいし、俺が魔物討伐に参加して生活費を稼げればいいと思ってるんだが」
しばらくはティーロさんが私とヒルダさんを養うと提案してくれた。
「何言ってるんだ、私はまだまだ働けるのに私に働くなって言ってるのかい?こんなご時世だからこそ私だって働くつもりさ」
ティーロさんはヒルダさんにゆっくり休んでもらいたいのに、ヒルダさんの労働意欲の何かに火を付けたみたいで断固として働かないことを拒否されてしまった。
「で、でもヒルダさんと私は今は売る商品も持ってないじゃないですか?」
私の手元にあるのは神殿に卸す魔取り線香とかポーション作りの材料しかないし。
「こんなご時世って言っただろう、商品なんか売るつもりはないさ、魔物退治のノウハウを高く売り込もうと思ってるんだよ」
全商品を失ってもヒルダさんはただでは起きない人だった。
ペトラさんは午後にこの治療院に表向きの用事で来ることになっていて、それまでは治療院の奥で比較的自由に過ごすことが出来る。
前回は暇つぶしグッズを持ってなかったので、今回は刺繍なども持参している。
ヒルダさんに教えてもらった護符をハンカチに縫っていたけれど、これはティーロさんにプレゼントするための物で恋人や妻がハンカチなどに刺繍をして渡すアレ。
本当はこっそり作って渡したかったんだけど、あまりにも二人だけの時間があり過ぎてこっそり作る時間のほうがなかったので
「これはティーロさんのだから」
と本人に見られながら作ってたりする。
前回よりは早めにやってきたペトラさんは忙しそうで、少しやせた感じがする。
「待たせたね、マナは元気そうでなによりだわ」
「こんにちは、ペトラさんは痩せました?」
「あぁ、食事はしっかり摂ってるんだけどね、何せ動かないといけない事があり過ぎて時間が体が幾つあっても足りないくらいに仕事が増えてるのよ」
書類らしき物を沢山持ったまま部屋へ入って来て応接室のテーブルの上に重ねた書類を置いた。
「ちょっと待ってね、この中からマナとティーロさんに関する物を選り分けるからね」
私達に渡す書類もその中にあるのだろうけど、表向きの用事で治療院から渡された書類もどうも多いみたいだった。
「大変ですね、その書類は全部ペトラさんが目を通すんですか?」
「そうよ、ちょっと待ってね、これと・・・聖女の仕事って言っても事務作業も含まれてるからね、昔みたいに被害を訴えた場所に行って戦いに参加してって以外にね、上にどんな場所でどんなことをしたかって提出しなければいけないのよ。まったく面倒なんだけどね、この仕事内容次第で評価されて中央神殿に呼ばれる人もいるみたいだから誇張して書く人もいるのよ」
実績を書類にして提出するのなら、その実績が多ければ多い程事務処理の負担が増えるのだろう。
「最近って、聖女の出動が多いんですか?」
「うちは今は森に立ち入るのは禁止になっているけれど、それでもこっそり森に入って怪我をして治療院や神殿に来る人達は後を絶たないわ。森に入るなって言われてもね、蓄えがなければたちまち生活出来なくなるから難しいのよ。神殿で回復魔法を使用することになった人も月ごとに集計しているけれど、ここ最近はその数も増えているし魔物の数が増えているのかしらね」
討伐隊が近々調査に向かってくれるけれど、領民達が倒せるレベルの魔物や魔獣の増加ならともかく、この前のように魔物狩りの手練れが囲まなければ倒すことが出来ない強さの魔物が増えているのであれば森に入ることは禁止となる。
きっとそれでも自分達は大丈夫と思い込む集団が出てくるだろうとペトラさんが嘆いていた。
「はい、あったわ。これがティーロさんの分ね」
ペトラさんが渡した書類にはプロスペル侯爵領の神殿からの書類で離縁を無効にする手続きは一旦停止するが、近々にプロスペル侯爵領の神殿を訪ねるようにといった内容の書類だった。
マデカント領の神殿を介したやり取りで一時的に停止させてはいるが、当事者同士が会って話すようにという内容だった。
場所は離縁届けを出したプロスペル侯爵領の神殿だったが、ティーロさんがすぐに向かえるはずもなく、とりあえず一旦停止のままで日にちの調整を神殿同士で行うことにしてもらった。
「マナに対しては何もないのよ」
指輪の件で訪れた者達がその後再び訪れることはなかったが、唯一の手掛かりのあるこの地にまた来ることはあるだろうと警戒はしている。
「ヒルダさんと合流したらまた相談に乗ってもらうつもりなんですけど・・・いろいろ報告することがあり過ぎて」
ヒルダさんの目の届かない場所で新婚生活を送っているのだから、そちらも含めて話さないといけない。
「あーーでもね、それは大丈夫よ、何てったってヒルダさんは恋愛話が好きな人だからね。身近で幸せになってる人がいればまず喜ぶわよ」
ヒルダさんって恋愛話が好きなんだ・・・
「反対されないのは嬉しいけれど、根堀り葉掘り聞かれるとかってありますかね?」
「それはあるかもしれないからとっておきの甘い話は用意しておいたほうがいいと思うわね」
そう言いながらペトラさんがにやりと笑った。
私とティーロさんは困った顔で思わず視線を合わせてしまったけれど、今この場所ではティーロさんと相談出来ないわ。
「ヒルダさんだけど、もう近くの町までは来ていてね、明後日にはこっちに合流するみたいだから」
ペトラさんに連絡が届くのは、神殿への手紙などは確実に手紙が受け取れるからで、この街にきちんと住民登録すれば私達が住む家にも手紙は配達してもらえる。
ただ、その住民登録の手続きも結構大変で、特に入って来た時には焼き印もあったしで住民登録しても却下になるだろうし、短期滞在なんで届けは出してないまま。
行商しているヒルダさんに連絡を取る場合は、ヒルダさんからはマデカントの神殿あてに送ればいいだけで、手紙には次に行く予定の街の名前が記されているからその街のヒルダさんの常宿宛に返事を書いたりするらしい。
今回の手紙には、他の領では街道に魔物が出る事などが書かれており、この国の主要な街道が使えなくなった場合には物資の供給や人の流れが断たれてしまうし、たちまちヒルダさんの行商にも影響が出てくる。
「この街に来るまであと少しでも街道は通りますし、ヒルダさん大丈夫なんでしょうか・・・?」
魔物から武器を持たぬ者が逃げるのは容易ではないはずで、高齢のヒルダさんがその状況から怪我無く逃げ切れるのだろうか?
「あぁ・・大丈夫よ、ああ見えてヒルダさんは元聖女だし、武闘派だったからね」
魔物の襲撃に関して心配してなさそうな口調だけど、昔のことだろうか?聖女ってそんなに強いのかな?
聖女としての力がなくなったから神殿を出たって言ってたけれど・・・
「聖女の力って回復とかだと思ってたんですが、後方支援以外にも力が使えるってことですか?」
「ヒルダさんはほとんど聖女としての力はないけれど、強力な防御魔法がかけられているから寿命以外では亡くなることはまずないのよ。ただ、性格が元来好戦的だったから、魔物に襲われている人がいれば放って自分だけ逃げることはないと思うわ。ヒルダさんが街道にいたほうが魔物にとっては脅威かもしれないわね。ただ寿命がね・・・こればかりは気を付けてもらうって言っても神様次第の所だからね・・・」
襲われたり怪我ではヒルダさんは亡くなることはないってことなのか?
ヒルダさんが到着するまで安心は出来ないけれど、出来る限り安全なルートで来て欲しい。
「今滞在している町がわかっているなら迎えに行けるがどうだろう?」
森に入れない人を雇って迎えに行ってもいいとティーロさんが提案したけれど、今の寄り合い馬車は護衛の傭兵を雇っているので待っていても大丈夫だとペトラさんが教えてくれた。
それにマデカント領は昔から魔物が多いし、それを退治することに馴れている土地柄なので他の領より安全なんだって。
武闘派のヒルダさんか・・・思わぬ過去を知ってしまった。
◇◇◇
ヒルダさんの到着はペトラさんが教えてくれた通りだったので、予定通りに馬車移動が可能だったみたい。
お昼前にはヒルダさんはこの街に到着して、それからティーロさんに案内されて私達が住む家へとやって来た。
「ヒルダさん!!」
「マナ!久しぶりだね、元気みたいでよかったよ」
久しぶりに見たヒルダさんは少し疲れたような表情だったけれど、長旅のせいだと本人は言っていた。
いつもなら物を売買しながらゆっくりと移動出来るし、宿まで着かなければ野宿したり気ままに移動出来ていたけれど、それが難しくなりしばらくは行商が難しいとボヤいていた。
街道沿いで魔物に襲われた話を聞いて肝を冷やしたけれど、ヒルダさんは無傷だし、他の人がどんな被害を負ったのかはヒルダさんもその場から転移魔法石で逃げたのでわからないらしい。
逃げる前の戦況は確認出来た限りでは、馬車を襲ってきた魔物はせん滅出来ただろうけど、馬車の被害が大きい所もあり、保護されたり面倒くさいことに巻き込まれたくないから逃げたって。
襲われている人を放置して逃げる人ではないってペトラさんが言ってたけれど、確かにヒルダさんは困っている人とか弱者に背を向ける人ではない。
とっても面倒くさがり屋なのは一緒に生活していて知っているけどね。
元聖女のヒルダさんも非常事態だと招集がかけられるのか訊ねると、退職者リストがあって惜しまれて退職した人には声がかかるかもしれないけれど、ヒルダさんはそれはないから大丈夫って。
二度と神殿になんて足を踏み入れないって誓いを立てて、以降一度も神殿すら訪れたことがないそうだ。
ヒルダさんは離れていた時の私達の事を案の定根堀り葉掘り訊ねたけれど、夫婦として一緒に生きていくことをすごく喜んでくれた。
「相思相愛ってのがいいね、お互いに同じ時に惹かれ合わないと出来ない愛の形だよ、二人がいいなら私がどうこう言うもんじゃないよ。しかし・・マナがティーロを拾った時にはねぇ・・・」
「今は行商も難しいし、俺が魔物討伐に参加して生活費を稼げればいいと思ってるんだが」
しばらくはティーロさんが私とヒルダさんを養うと提案してくれた。
「何言ってるんだ、私はまだまだ働けるのに私に働くなって言ってるのかい?こんなご時世だからこそ私だって働くつもりさ」
ティーロさんはヒルダさんにゆっくり休んでもらいたいのに、ヒルダさんの労働意欲の何かに火を付けたみたいで断固として働かないことを拒否されてしまった。
「で、でもヒルダさんと私は今は売る商品も持ってないじゃないですか?」
私の手元にあるのは神殿に卸す魔取り線香とかポーション作りの材料しかないし。
「こんなご時世って言っただろう、商品なんか売るつもりはないさ、魔物退治のノウハウを高く売り込もうと思ってるんだよ」
全商品を失ってもヒルダさんはただでは起きない人だった。
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