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マデカント領10
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私は今ティーロさんに連れられてマデカント領で一番大きな本屋に来ています。
神殿にある図書室には様々な良本があるんだけど、あるジャンルの本はそこには置かれていないので。
『今夜は夫をその気にさせる』
却下
『人妻の誘惑』
却下
『愛される女になる100の方法』
ちょっと!愛されるには100も努力が必要なのね!!
・・・・・・・保留
元の世界で彼氏もいなかった私が男心を察知するとか、自然に見せかけた色っぽい仕草とか出来るわけがない。
この世界で誰に聞いたら答えを知っているかわからないから本に頼ることにしたんだけど・・・
ティーロさんに気付かれないように細心の注意を払いながらそのジャンルの背表紙をこっそりこっそりと見て回った。
ちなみに私の手にはダミーで試読しているフリをしている『優しい家庭菜園』なんて本がある。
人妻のオーラがないってペトラさんの言われたけれど、その人妻のオーラを手に入れることによりティーロさんとより本物に近い偽夫婦を演じる事が出来るからね。
あっ・・・これは!新妻の心得シリーズを見つけた。
私が唯一このシリーズで持っているのは食事編。
『新妻の心得ー楽しい子作りー』
ダメ・・・
『新妻の心得ー夫を喜ばせる仕草とテクニックー』
やった!もしかしてこれ?
この仕草ってのをマスターすれば人妻のオーラを身に纏うことが出来る気がする。
たぶん
どうやら私が求めている答えが書かれている本らしきものを発見したんだけど、これをティーロさんに見つからないように購入するのがまた大変。
気になっていた裁縫の本と神殿で読んでよかった植物図鑑の間に挟んで買うことにした。
今は神殿で読めるけれどここを離れた時にこの植物図鑑が必要なことが度々ありそうなんで買っておくことにした。
普段は食材以外は買い渋る私が本を同時に何冊か買うなんて珍しい光景だろうけれど、家の中で楽しめるし、裁縫はいずれ布から服を作って見たかったので無駄ではないしね。
持参していた袋の中に購入した本を入れてティーロさんに見つからないように隠した。
「お待たせしました、ティーロさんは何か欲しい本見つかりましたか?」
「もういいのか?普段一人で街に来れないから欲しい物があれば今買っておいたほうがいいぞ」
普段街に一人で来れないのはティーロさんが危ないからって禁止にしているからなんだけど・・・
でも確かに街を歩く人は男性の方が多い気がする。
週に一度の休みの日はゆっくりとティーロさんと街を歩いて新しい店を開拓して楽しむんだけどね。
ティーロさんは狩猟系の本を1冊買ったみたい。
森での狩りがすっかり生業になっているので動物別とか魔獣別の仕留めた獣の捌き方をもう少し勉強したいらしい。
やっぱりティーロさんは努力家よね。
ティーロさんは森への行き帰りとか商店に肉を卸す時に街に一人で出かけてるので神殿の奥で働いている私よりも街に知り合いが出来ているみたい。
商店の人が何度もティーロさんを討伐隊に参加しないかって誘ってる位に森の中でのティーロさんは半端なく強いらしい。
真実の指輪があるから一般人として何処にでも出入り出来るし、仕事も選べるようになるからもっと安全な仕事をしてもらえばいいんだけど、ティーロさん自身が一人で狩りする生活が気に入っているって聞かなかった。
近々の大規模な討伐隊の森への派遣以外にも領民の中で腕に自信のある者は何人か集まって魔獣を狩りに行くこともあるんだって。
というか、本当はそれが一般的な狩りのスタイルで独り狩りのティーロさんが異常ならしい。
魔獣を仕留めればその素材や肉は大層高価ならしくって、多少危険があっても良いお金になるんだって。
なので今はすっかり小金持ちになってしまったティーロさんは、懐に溜まってゆく小金にまみれてしまい清貧さを忘れてしまったのか、街に出ると私に何か買おうと常にその隙を狙ってる。
アクセサリーも要らないし、ドレスだって数枚あれば十分なので断ると、美味しいとかって私がうっかり漏らした言葉を覚えていて大量にその食材をまた買って帰って、私が渋い顔をしてしょげるというループが何度かあったのよね。
街の中をゆっくりと歩いていると急にバタバタと騒いでいる人が街に入って来た小さな馬車に集まって来た。
騒ぐ声の中に医者って言葉があったので、病人か怪我人が出たのだろうか?
ここからだと神殿まではまだ先だけど、街に入って来た馬車はかなりの距離を無理矢理馬を走らせた様子で、馬の口の端からは涎と泡がみえる。
ああなるとこれ以上馬を走らせるのは馬自体が危険だ。
馬車から数人の若者が街の人達に引きずり出されるが、全員血まみれだった。
「あっ・・・何かに襲われたんでしょうか?」
私がティーロさんに訊ねるとティーロさんも血まみれの若者を見ながら頷いた。
「あの様子だと恐らく狩りに出て襲われたんだろうな、早く神殿に行って聖女に手当をしてもらうか誰かポーションを飲まさないと危ないだろう」
あの状態で森から街まで逃げ戻ることが出来ただけでも奇跡だろう。
怪我人の中に同じ仕事をしているティーロさんの知った顔も居たようで、私達も人だかりの輪の側に近づいた。
ポーションはとても高価な物なので、この辺りで持っている人はいなかったみたいで怪我人をこれ以上動かせないと誰かが神殿に聖女を要請したらしい。
ペトラさんかカーリンさんが来るまでの間にこれ以上出血しないように止血しているがどうだろう・・・
若い青年の側で泣き叫んでいる年配の女性が居た。
一番重傷の青年の母親のようで、横たわる青年はペトラさん達が来ても間に合わないかもしれない。
そう考えるともしかしたら何か出来ないかと自然に体が動いてしまい、私は横たわる青年の側に駆け寄ってしゃがみ込み、ダメかもしれないけれどペトラさんに教わってたヒーリングをかけてみた。
私は聖女じゃないから聖女のように出来ないかもしれないけれど、聖水が作れたこともあり効き目が悪くってもペトラさん達が来るまで青年の命を繋げればって思ったから。
家で練習していた時には対象者がいなかったのでそれが出来ているかどうかわからなかったけれど、止血している部位に手を添えて治りますようにって思いを込めた瞬間に体からごっそりと何かが抜ける感覚がした。
◇◇◇
私の初めてのヒーリングは結果的には成功したのだけど、力の加減が出来ていなかったので怪我をして横たわっていた青年の傷だけを完全に治すことが出来たけど、一度にごっそりと体から何かが抜ける感覚に一瞬意識を失ってしまっていたらしい。
その後ペトラさんが街はずれまで単身馬で駆けつけて、残りの怪我人の重傷者から治療を始めたって。
大幅に遅れてカーリンさんが馬車でやって来た頃にはペトラさんが治療をあらかた終わらせていたという早業だったらしい。
カーリンさんが駆けつけた辺りでは私も意識を戻し、頭が重くって割れるような痛みがあったのでティーロさんが私の体を横抱きに抱えてくれた。
聖女のヒーリングも限りがあるので、完全には治さないらしい。
治せないというべきかな、怪我人は死なない所まで治してくれるけれど、それ以降は自力で治せってことらしい。
そうしないと死にかけては聖女に治してもらいを繰り返す輩が出てくるから、死なないラインまで治してもらい以降は医者にかかりながら治すんだって。
そうしないと聖女の力にも限りがあるから多くの人を治すことが出来ないっていう理由もわかる。
それが出来なかった私は重傷者だった青年一人を完璧に治してしまったが、私が歩けなくなったもんね。
「それにしても・・・すごいわねマナ・・」
ペトラさんはすでに立ち上がっている重傷だった青年の様子を見ながら私に声をかけてくれた。
青年は少しふら付いているのはきっと出血量が多かったからだろうが、しっかり食事を取れば大丈夫だろう。母親らしき人は今度は安堵の中で涙を流していた。
「ペトラさんに教えてもらった事を試してみたんですけれど・・・何人もの人を治してそれでも立ってられるなんて凄いですね」
やっぱり聖女は違うなぁ
「ううん、この位は力の配分さえ出来ればマナなら出来るわよ」
「どうして聖女じゃないのかしら・・・」
ペトラさんが小さく呟いたけれど何度測定しても聖女ではないので聖属性の魔力があるだけなんだろうな、あぁでもこれでもしヒルダさんの家で冬に暮らす時にもしティーロさんが怪我をしても私が治すことが出来るのよね。
人の輪が怪我人からペトラさんと私とティーロさんの周りにと自然と出来た。
街の人達がペトラさんに感謝をし、私にも何度もありがとうって言ってくれる。
私は一人しか治していないんでそこまで感謝されるのは・・・
いつの間にかペトラさんの側へとやって来たカーリンさんが何故だか私を睨んでいる。
「聖女じゃない者がヒーリングを行うなどと!今回はたまたま治ったかもしれないけれど、聖女ではない人間が行うべきではないわ」
そうだよね・・・聖女じゃないのに勝手にヒーリングを使ってしまうのは越権行為だったのかもしれない。
カーリンさんの言葉にペトラさんがすぐに反応した。
「あら、カーリンはお勉強しなかったのかしら?聖属性の魔力があれば治癒の術は聖女でなくとも出来るでしょう。貴女も久しぶりに現場に復帰したからうっかり勘違いしたのかしら?」
カーリンさんは先輩聖女からの嫌味を含んだ言葉に顔を赤くして、言ったペトラさんではなくって私を睨んだ。
嫌味を言われた原因の発端は私ですけれど、その睨みは逆恨みってやつではないでしょうか?
街まで命からがら戻って来た人達は一先ずその場から病院へと移動するみたいで、騒ぎを鎮めるために街の警備を担当する騎士が出動していた。
ペトラさんは神殿にたまたま着ていた騎士の馬をかっぱらって現場まで駆けてきたらしくって。
有事には仕方がないことだし、第一訓練された軍馬のほうが確実に速い。
おっしゃる通りだけれど、ペトラさんが罰せられないか心配していると、聖女は貴族と同等の立場を保証されているし、ちゃんと人を見てやってるから大丈夫なんだって。
因みにペトラさんがかっぱらった馬の持ち主は騎士のアルフォ様で、また神殿に来てたみたい。
神殿に置き去りにされたアルフォ様は別の馬車で後から現場に到着し、警備の騎士と何やら話していたけれど私はティーロさんの腕の中で軽く会釈をした。
この体勢で挨拶もきっと失礼なんだと思うけれどまだ自分で立つ自信がなかった。
神殿にある図書室には様々な良本があるんだけど、あるジャンルの本はそこには置かれていないので。
『今夜は夫をその気にさせる』
却下
『人妻の誘惑』
却下
『愛される女になる100の方法』
ちょっと!愛されるには100も努力が必要なのね!!
・・・・・・・保留
元の世界で彼氏もいなかった私が男心を察知するとか、自然に見せかけた色っぽい仕草とか出来るわけがない。
この世界で誰に聞いたら答えを知っているかわからないから本に頼ることにしたんだけど・・・
ティーロさんに気付かれないように細心の注意を払いながらそのジャンルの背表紙をこっそりこっそりと見て回った。
ちなみに私の手にはダミーで試読しているフリをしている『優しい家庭菜園』なんて本がある。
人妻のオーラがないってペトラさんの言われたけれど、その人妻のオーラを手に入れることによりティーロさんとより本物に近い偽夫婦を演じる事が出来るからね。
あっ・・・これは!新妻の心得シリーズを見つけた。
私が唯一このシリーズで持っているのは食事編。
『新妻の心得ー楽しい子作りー』
ダメ・・・
『新妻の心得ー夫を喜ばせる仕草とテクニックー』
やった!もしかしてこれ?
この仕草ってのをマスターすれば人妻のオーラを身に纏うことが出来る気がする。
たぶん
どうやら私が求めている答えが書かれている本らしきものを発見したんだけど、これをティーロさんに見つからないように購入するのがまた大変。
気になっていた裁縫の本と神殿で読んでよかった植物図鑑の間に挟んで買うことにした。
今は神殿で読めるけれどここを離れた時にこの植物図鑑が必要なことが度々ありそうなんで買っておくことにした。
普段は食材以外は買い渋る私が本を同時に何冊か買うなんて珍しい光景だろうけれど、家の中で楽しめるし、裁縫はいずれ布から服を作って見たかったので無駄ではないしね。
持参していた袋の中に購入した本を入れてティーロさんに見つからないように隠した。
「お待たせしました、ティーロさんは何か欲しい本見つかりましたか?」
「もういいのか?普段一人で街に来れないから欲しい物があれば今買っておいたほうがいいぞ」
普段街に一人で来れないのはティーロさんが危ないからって禁止にしているからなんだけど・・・
でも確かに街を歩く人は男性の方が多い気がする。
週に一度の休みの日はゆっくりとティーロさんと街を歩いて新しい店を開拓して楽しむんだけどね。
ティーロさんは狩猟系の本を1冊買ったみたい。
森での狩りがすっかり生業になっているので動物別とか魔獣別の仕留めた獣の捌き方をもう少し勉強したいらしい。
やっぱりティーロさんは努力家よね。
ティーロさんは森への行き帰りとか商店に肉を卸す時に街に一人で出かけてるので神殿の奥で働いている私よりも街に知り合いが出来ているみたい。
商店の人が何度もティーロさんを討伐隊に参加しないかって誘ってる位に森の中でのティーロさんは半端なく強いらしい。
真実の指輪があるから一般人として何処にでも出入り出来るし、仕事も選べるようになるからもっと安全な仕事をしてもらえばいいんだけど、ティーロさん自身が一人で狩りする生活が気に入っているって聞かなかった。
近々の大規模な討伐隊の森への派遣以外にも領民の中で腕に自信のある者は何人か集まって魔獣を狩りに行くこともあるんだって。
というか、本当はそれが一般的な狩りのスタイルで独り狩りのティーロさんが異常ならしい。
魔獣を仕留めればその素材や肉は大層高価ならしくって、多少危険があっても良いお金になるんだって。
なので今はすっかり小金持ちになってしまったティーロさんは、懐に溜まってゆく小金にまみれてしまい清貧さを忘れてしまったのか、街に出ると私に何か買おうと常にその隙を狙ってる。
アクセサリーも要らないし、ドレスだって数枚あれば十分なので断ると、美味しいとかって私がうっかり漏らした言葉を覚えていて大量にその食材をまた買って帰って、私が渋い顔をしてしょげるというループが何度かあったのよね。
街の中をゆっくりと歩いていると急にバタバタと騒いでいる人が街に入って来た小さな馬車に集まって来た。
騒ぐ声の中に医者って言葉があったので、病人か怪我人が出たのだろうか?
ここからだと神殿まではまだ先だけど、街に入って来た馬車はかなりの距離を無理矢理馬を走らせた様子で、馬の口の端からは涎と泡がみえる。
ああなるとこれ以上馬を走らせるのは馬自体が危険だ。
馬車から数人の若者が街の人達に引きずり出されるが、全員血まみれだった。
「あっ・・・何かに襲われたんでしょうか?」
私がティーロさんに訊ねるとティーロさんも血まみれの若者を見ながら頷いた。
「あの様子だと恐らく狩りに出て襲われたんだろうな、早く神殿に行って聖女に手当をしてもらうか誰かポーションを飲まさないと危ないだろう」
あの状態で森から街まで逃げ戻ることが出来ただけでも奇跡だろう。
怪我人の中に同じ仕事をしているティーロさんの知った顔も居たようで、私達も人だかりの輪の側に近づいた。
ポーションはとても高価な物なので、この辺りで持っている人はいなかったみたいで怪我人をこれ以上動かせないと誰かが神殿に聖女を要請したらしい。
ペトラさんかカーリンさんが来るまでの間にこれ以上出血しないように止血しているがどうだろう・・・
若い青年の側で泣き叫んでいる年配の女性が居た。
一番重傷の青年の母親のようで、横たわる青年はペトラさん達が来ても間に合わないかもしれない。
そう考えるともしかしたら何か出来ないかと自然に体が動いてしまい、私は横たわる青年の側に駆け寄ってしゃがみ込み、ダメかもしれないけれどペトラさんに教わってたヒーリングをかけてみた。
私は聖女じゃないから聖女のように出来ないかもしれないけれど、聖水が作れたこともあり効き目が悪くってもペトラさん達が来るまで青年の命を繋げればって思ったから。
家で練習していた時には対象者がいなかったのでそれが出来ているかどうかわからなかったけれど、止血している部位に手を添えて治りますようにって思いを込めた瞬間に体からごっそりと何かが抜ける感覚がした。
◇◇◇
私の初めてのヒーリングは結果的には成功したのだけど、力の加減が出来ていなかったので怪我をして横たわっていた青年の傷だけを完全に治すことが出来たけど、一度にごっそりと体から何かが抜ける感覚に一瞬意識を失ってしまっていたらしい。
その後ペトラさんが街はずれまで単身馬で駆けつけて、残りの怪我人の重傷者から治療を始めたって。
大幅に遅れてカーリンさんが馬車でやって来た頃にはペトラさんが治療をあらかた終わらせていたという早業だったらしい。
カーリンさんが駆けつけた辺りでは私も意識を戻し、頭が重くって割れるような痛みがあったのでティーロさんが私の体を横抱きに抱えてくれた。
聖女のヒーリングも限りがあるので、完全には治さないらしい。
治せないというべきかな、怪我人は死なない所まで治してくれるけれど、それ以降は自力で治せってことらしい。
そうしないと死にかけては聖女に治してもらいを繰り返す輩が出てくるから、死なないラインまで治してもらい以降は医者にかかりながら治すんだって。
そうしないと聖女の力にも限りがあるから多くの人を治すことが出来ないっていう理由もわかる。
それが出来なかった私は重傷者だった青年一人を完璧に治してしまったが、私が歩けなくなったもんね。
「それにしても・・・すごいわねマナ・・」
ペトラさんはすでに立ち上がっている重傷だった青年の様子を見ながら私に声をかけてくれた。
青年は少しふら付いているのはきっと出血量が多かったからだろうが、しっかり食事を取れば大丈夫だろう。母親らしき人は今度は安堵の中で涙を流していた。
「ペトラさんに教えてもらった事を試してみたんですけれど・・・何人もの人を治してそれでも立ってられるなんて凄いですね」
やっぱり聖女は違うなぁ
「ううん、この位は力の配分さえ出来ればマナなら出来るわよ」
「どうして聖女じゃないのかしら・・・」
ペトラさんが小さく呟いたけれど何度測定しても聖女ではないので聖属性の魔力があるだけなんだろうな、あぁでもこれでもしヒルダさんの家で冬に暮らす時にもしティーロさんが怪我をしても私が治すことが出来るのよね。
人の輪が怪我人からペトラさんと私とティーロさんの周りにと自然と出来た。
街の人達がペトラさんに感謝をし、私にも何度もありがとうって言ってくれる。
私は一人しか治していないんでそこまで感謝されるのは・・・
いつの間にかペトラさんの側へとやって来たカーリンさんが何故だか私を睨んでいる。
「聖女じゃない者がヒーリングを行うなどと!今回はたまたま治ったかもしれないけれど、聖女ではない人間が行うべきではないわ」
そうだよね・・・聖女じゃないのに勝手にヒーリングを使ってしまうのは越権行為だったのかもしれない。
カーリンさんの言葉にペトラさんがすぐに反応した。
「あら、カーリンはお勉強しなかったのかしら?聖属性の魔力があれば治癒の術は聖女でなくとも出来るでしょう。貴女も久しぶりに現場に復帰したからうっかり勘違いしたのかしら?」
カーリンさんは先輩聖女からの嫌味を含んだ言葉に顔を赤くして、言ったペトラさんではなくって私を睨んだ。
嫌味を言われた原因の発端は私ですけれど、その睨みは逆恨みってやつではないでしょうか?
街まで命からがら戻って来た人達は一先ずその場から病院へと移動するみたいで、騒ぎを鎮めるために街の警備を担当する騎士が出動していた。
ペトラさんは神殿にたまたま着ていた騎士の馬をかっぱらって現場まで駆けてきたらしくって。
有事には仕方がないことだし、第一訓練された軍馬のほうが確実に速い。
おっしゃる通りだけれど、ペトラさんが罰せられないか心配していると、聖女は貴族と同等の立場を保証されているし、ちゃんと人を見てやってるから大丈夫なんだって。
因みにペトラさんがかっぱらった馬の持ち主は騎士のアルフォ様で、また神殿に来てたみたい。
神殿に置き去りにされたアルフォ様は別の馬車で後から現場に到着し、警備の騎士と何やら話していたけれど私はティーロさんの腕の中で軽く会釈をした。
この体勢で挨拶もきっと失礼なんだと思うけれどまだ自分で立つ自信がなかった。
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◻︎◾︎◻︎◾︎◻︎
本編完結しました。
読んでくれる皆様のおかげで、ここまで続けられました。
ありがとうございました!
時々彼らを書きたくてうずうずするので、引き続きオマケやifを不定期で書いてます。
◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
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◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
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ってもう一年経つ。月日の経つのがああああああ!
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