9 / 9
一章-わーるど☆えんど
ep-8 提携
しおりを挟む
少女は今、古い、とても古い夢を見ていた。
「おいで───。ほら、ご飯の時間だ」
「うん、今行く‼︎」
広い庭の中、家の中から聞こえた声に走っていく小さな少女。
泥だらけでニコニコと笑いながら入って行くと、大きな優しそうな男女が机の前で座っている。上にはたくさんの料理が並び、女性が男性にご飯をよそっていた。
「あらあら、泥だらけじゃない───。ちょっとあなた、この子先に洗ってくるけど良いかしら?」
「ああ、ご飯の前は綺麗にしないとな。はっはっはっ」
「えへへ」
女性が男性に問い掛けると、男性はゆったりと笑いながら背後の棚から新聞を取り出して読み出す。
女性に抱き抱えられながら浴場に連れて行かれ、服を脱がされる。
「全くもう…元気な子ね」
「あのね、あのね、さっきお庭でね、キラキラ光る虫を見つけたの!きっとタマムシだと思うの!」
「あらあら、本当にやんちゃね」
「えへへ」
シャワーで暖かいお湯ををかけられながら少女は女性の言葉を笑いながら答える。
暫くして綺麗になり、しっかり拭き上げられた少女。綺麗な着替えのワンピースを着ると前を行く女性にトコトコとついて行く。
食卓に戻ると男性が新聞を読みながら待っていた。女性と少女に気がつくと、かけていた眼鏡を外し胸ポケットへとしまい込んだ。
「おや、お姫様のご帰還かい?」
「うふふ、お待たせあなた」
「おまたせーパパ‼︎」
「はっはっはっ、元気だなぁ。よし、じゃあ席に着こうか」
男性を見て駆けて来た少女を抱き上げ、座らせる。
女性も座った所で視界が切り替わった。
目の前では男性と女性が黒いコートの人物にすがっている。
「やめて下さい‼︎この子は人間なんです‼︎」
「お願いします‼︎そんな、そんな残酷な事…っ‼︎」
口々にそう懇願しながら縋り付いている2人。そのコートの人物の後ろでは、さっきの少女が拘束具で拘束された状態で担がれている。
「んー‼︎んんー‼︎」
「ああ、───っ‼︎お願いします、その子だけは‼︎」
パンッパンッと、膨らませた紙袋を叩き割る様な、乾いた簡素な音が部屋に鳴る。
男性も女性も、額から血を吹き出しながら地面に倒れこむ。コートの人物の手には消音器のついた拳銃が握られている。その銃口から紫煙がフワフワとまるで雲の様に漂う。
「…喧しいんだよ大陸生まれの猿どもが。大昔に寄生した害虫のくせに駆除されてないだけありがたく思え」
吐き捨てる様にそう言った声は、若い男性の声だった。
「さぁてと、その猿どもの最高傑作がお前か…精々役に立てよ?人形ちゃん」
少女の頭に布が被せられた所で、徐々に意識が覚醒してくる。
「…ここは…」
目を開けると薄暗いコンクリートの天井が見えた。
だが、先刻まで居た廃ビルとは違い天井にはしっかりと電気が灯されている。
「…っ」
起き上がり、全身の痛みに顔をしかめる。何かないかと少女…雨桐は周りを見渡した。
窓も無く、床も剥き出しになったコンクリートだ。
ふと服装を見ると少しボロボロになってはいるが、戦闘用のスーツでは無く、何世紀か前の簡素な病人服に着替えさせられている。
手足も折れていた筈だが、元に戻っている。
「起きたか」
「⁉︎」
突然の声に咄嗟に身構え、飛び掛かる。が、その手は空を切りそのまま掴まれる。
「元気そうでなによりだ」
「お前…」
ハンターだ。ただし、外装を全て解除した状態のだが。
「…何故、何故私を助けた?」
「…何だって良いだろう。お前は助かった。ただそれだけの話だ」
「納得出来るわけないだろう‼︎アンタはさっきまで私を含めて全ての人間を殺すのだろう⁉︎何故だ、何故助けたのだ‼︎」
意味が分からず声が大きくなる。その口を手で押さえつけられ苦しげにモゴモゴと声が消される。
「喧しい。お前は俺に助けられた。それ以上でもそれ以下でも無い」
「…」
「これでも食って寝てろ」
「もがっ⁉︎」
カロリーバーを口にねじ込まれ思わず驚きで固まる。
そんなのは御構い無しに、ハンターは黙々と雨桐を抱き上げてベッドに寝かせる。
「…これで良かったんだ…」
そう誰かに言い聞かせる様にぼそりと呟いた言葉は、コンクリートの壁に吸い込まれる様にして消え去った。
「おいで───。ほら、ご飯の時間だ」
「うん、今行く‼︎」
広い庭の中、家の中から聞こえた声に走っていく小さな少女。
泥だらけでニコニコと笑いながら入って行くと、大きな優しそうな男女が机の前で座っている。上にはたくさんの料理が並び、女性が男性にご飯をよそっていた。
「あらあら、泥だらけじゃない───。ちょっとあなた、この子先に洗ってくるけど良いかしら?」
「ああ、ご飯の前は綺麗にしないとな。はっはっはっ」
「えへへ」
女性が男性に問い掛けると、男性はゆったりと笑いながら背後の棚から新聞を取り出して読み出す。
女性に抱き抱えられながら浴場に連れて行かれ、服を脱がされる。
「全くもう…元気な子ね」
「あのね、あのね、さっきお庭でね、キラキラ光る虫を見つけたの!きっとタマムシだと思うの!」
「あらあら、本当にやんちゃね」
「えへへ」
シャワーで暖かいお湯ををかけられながら少女は女性の言葉を笑いながら答える。
暫くして綺麗になり、しっかり拭き上げられた少女。綺麗な着替えのワンピースを着ると前を行く女性にトコトコとついて行く。
食卓に戻ると男性が新聞を読みながら待っていた。女性と少女に気がつくと、かけていた眼鏡を外し胸ポケットへとしまい込んだ。
「おや、お姫様のご帰還かい?」
「うふふ、お待たせあなた」
「おまたせーパパ‼︎」
「はっはっはっ、元気だなぁ。よし、じゃあ席に着こうか」
男性を見て駆けて来た少女を抱き上げ、座らせる。
女性も座った所で視界が切り替わった。
目の前では男性と女性が黒いコートの人物にすがっている。
「やめて下さい‼︎この子は人間なんです‼︎」
「お願いします‼︎そんな、そんな残酷な事…っ‼︎」
口々にそう懇願しながら縋り付いている2人。そのコートの人物の後ろでは、さっきの少女が拘束具で拘束された状態で担がれている。
「んー‼︎んんー‼︎」
「ああ、───っ‼︎お願いします、その子だけは‼︎」
パンッパンッと、膨らませた紙袋を叩き割る様な、乾いた簡素な音が部屋に鳴る。
男性も女性も、額から血を吹き出しながら地面に倒れこむ。コートの人物の手には消音器のついた拳銃が握られている。その銃口から紫煙がフワフワとまるで雲の様に漂う。
「…喧しいんだよ大陸生まれの猿どもが。大昔に寄生した害虫のくせに駆除されてないだけありがたく思え」
吐き捨てる様にそう言った声は、若い男性の声だった。
「さぁてと、その猿どもの最高傑作がお前か…精々役に立てよ?人形ちゃん」
少女の頭に布が被せられた所で、徐々に意識が覚醒してくる。
「…ここは…」
目を開けると薄暗いコンクリートの天井が見えた。
だが、先刻まで居た廃ビルとは違い天井にはしっかりと電気が灯されている。
「…っ」
起き上がり、全身の痛みに顔をしかめる。何かないかと少女…雨桐は周りを見渡した。
窓も無く、床も剥き出しになったコンクリートだ。
ふと服装を見ると少しボロボロになってはいるが、戦闘用のスーツでは無く、何世紀か前の簡素な病人服に着替えさせられている。
手足も折れていた筈だが、元に戻っている。
「起きたか」
「⁉︎」
突然の声に咄嗟に身構え、飛び掛かる。が、その手は空を切りそのまま掴まれる。
「元気そうでなによりだ」
「お前…」
ハンターだ。ただし、外装を全て解除した状態のだが。
「…何故、何故私を助けた?」
「…何だって良いだろう。お前は助かった。ただそれだけの話だ」
「納得出来るわけないだろう‼︎アンタはさっきまで私を含めて全ての人間を殺すのだろう⁉︎何故だ、何故助けたのだ‼︎」
意味が分からず声が大きくなる。その口を手で押さえつけられ苦しげにモゴモゴと声が消される。
「喧しい。お前は俺に助けられた。それ以上でもそれ以下でも無い」
「…」
「これでも食って寝てろ」
「もがっ⁉︎」
カロリーバーを口にねじ込まれ思わず驚きで固まる。
そんなのは御構い無しに、ハンターは黙々と雨桐を抱き上げてベッドに寝かせる。
「…これで良かったんだ…」
そう誰かに言い聞かせる様にぼそりと呟いた言葉は、コンクリートの壁に吸い込まれる様にして消え去った。
0
お気に入りに追加
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません
abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。
後宮はいつでも女の戦いが絶えない。
安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。
「どうして、この人を愛していたのかしら?」
ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。
それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!?
「あの人に興味はありません。勝手になさい!」
愚かな父にサヨナラと《完結》
アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」
父の言葉は最後の一線を越えてしまった。
その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・
悲劇の本当の始まりはもっと昔から。
言えることはただひとつ
私の幸せに貴方はいりません
✈他社にも同時公開
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断
Hinaki
ファンタジー
16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。
23歳の公爵家当主ジークヴァルト。
年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。
ただの女友達だと彼は言う。
だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。
彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。
また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。
エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。
覆す事は出来ない。
溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。
そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。
二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。
これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。
エルネスティーネは限界だった。
一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。
初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。
だから愛する男の前で死を選ぶ。
永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。
矛盾した想いを抱え彼女は今――――。
長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。
センシティブな所へ触れるかもしれません。
これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる