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罪3

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 そりゃあ、我ながら性格悪いと思うよ?
 でもいいじゃん。別に、あのオタク共の女じゃねぇんだし。
 それに、オレだって飽きちまう。だって、よく言うだろ。

『美人は三日で飽きる』って。
 いや、だからってブスは三日で慣れないけどな。
 むしろ、三日目から本気で嫌気差すんじゃないの? 少なくてもオレはそう。
 それに、ああいうブスのくせに調子に乗ってる女って滑稽でムカつくんだよな。
 それにホイホイだまされてる男もムカつくんだけど。

 女に困らないオレだからこそ、女の怖さも本質も知ってるわけ。
 むしろあんな女を、姫とかなんとか言ってチヤホヤしてる自分たちを恨めっつーの。
 そんなんだから、いつまで経っても童貞なんだよ。あのオタク共は。

「……相変わらず、お前の恋愛観は歪み過ぎている」
「ケッ、は頭の中も筋肉なのかぁ?」
  
 久しぶりにサシで飲もうって言うから、わざわざ来てやってんだけど。
 つーか男と飲む酒ってやっぱり、なんか違うんだよなぁ。確かに楽しくないワケでもないし、美味くないわけでもない。
 しかもコイツ、いつも奢ってくれるしさ。
 でもなんだかなぁ。

「だれか、女の子呼ぼうか。あ、この前言ってた女の子達とかどう?」

 隣の女子短大の子で、お世辞にも清楚系とはいえないけど。それでも、まぁそれなりにカワイイし。ノリも良いから楽しめるだろう。
 なのに。
 
「……いらねぇ」

 だって。相変わらず、つまんねぇ男だ。
 オレは大きくため息をついて、枝豆の皮を奴に向かって投げつける。

「ンだよぉ。人の好意を無にしやがって」
「お前の場合、ほとんど下心だろう」
「下心のナニが悪い!」

 人類はそうやって繁殖して、繁栄してきたんだぞ。
 ったく。コイツもオタク共も、何も分かってない。
 
「女がいたらハメたくなるのが男ってもんだろ」
「そこに恋愛感情とかはないのか」
「ハァ? そりゃあ無いってワケじゃねぇけど」

 オレだって、完全に気持ちがないままにセックスしてるわけじゃない。そうだったら、こんなにモテるわけねぇだろ。
 どんな女だって、ベッドの中ではそれなりに可愛く思えるものだ。
 まぁ、出しちまったら夢もなにもかも冷めちまうけどな。そういう生き物だろ、男って。

「……最低だな」
「うるせぇ、童貞」

 そう、この男も童貞だ。
 筋トレ趣味のガチムチだが、それでも顔は悪くない。いや、むしろイケメンの部類に入るだろう。
 それなのに、理想がやたら高いのか。それとも肝心な所で萎えちまうのか、二十歳にもなって童貞だなんて。笑っちまうよな、まったく。

「俺は、相手を大切にしたいだけだ」
「へいへい。どーせ、オレはヤリチンのクズですよーだ」

 確かにあのオタサーの姫はヤリ捨てしたけど、それも別にオレがレイプしたワケじゃない。
 ちょいとこっちのコミュ力と、顔面を使って誘っただけ。あとは適当に楽しく酒を飲んで、ベッド・イン。
 ほら簡単だろ? そんなんでいいんだよ、男女関係なんて。

「そろそろやめとけ」
「おい、なにすんだよ」

 飲んでいた酒を取り上げられそうになって、伊織を睨みつける。
 くそ、女みたいな名前しやがって……って、それはオレもか。
 この名前が嫌で嫌でたまらなかったっけな。

「飲みすぎだ」
「お前は飲まなさすぎ」

 いつもならもっと飲むのに、今日は最初の一杯もあけられてない。
 そうこうするうちに、オレは今度何のもうかなってメニューをのぞく。

「あー。これしよっかなぁ」
「だからもうやめとけ」
「やーだね。筋肉バカは、プロテインでもガブ飲みしとけ」
「あのなぁ……」

 太い眉が困ったように下がるのをみると、なんだか面白い。
 ケタケタと笑い始めたオレに、伊織は今度は顔をしかめた。

「伊織ちゃーん。もしかして、おこってんのぉ?」

 せっかくの男前が台無しだ。
 そう思って、眉間に寄った深いしわに触る。

「お、おい」
「黙っとけばいい男なんだからさぁ」

 今度ちゃんと可愛くて清楚系な女の子、紹介してやらねぇとな。
 いつもいつも奢ってくれる、お礼だ。

「もっと笑ってよ、ね」
「……」

 あれ? なんかイキナリ目の前がボヤボヤしてきたぞ。
 しかも、口が上手く回らない。頭の中が回ってきて、上だか下だかよく分からなくなってきたんだけど。
 あ、やばい。景色がおかしい。
 ぶっ倒れる――と思った瞬間。

「大丈夫か、晶」

 いつの間に隣に来たんだろう。
 筋肉のたっぷりついた固い腕が、オレの背中をがっちりホールドしていた。

「あぇ?」

 こいつなんだか、めちゃくちゃいい匂いする。
 甘いような、それでいて女の香水とは違う何か。

「い、伊織……オレ……なんか……」

 変なんだ。ただ酔っ払うにしては、早すぎる。それに、こんな一気に酔いが回るって。
 オレの声に、優しく微笑んだであろうコイツはいつになく低い声で囁いた。

「大丈夫だ。優しくしてやる」

 優しく……? オレ、優しく……なにされるんだ?
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