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第3章

73 瘴気龍

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「どうしたのだ?アルティス」
「あっ、陛下。何でも、西の魔物の森の洞窟から、ものすごい瘴気が出ているらしいです。
 逃げ惑う魔物達が、今にも障壁を破り、西の街に出没するのではないかと報告が。
 我が領地も近いので、見て参ります。午後の会議は欠席させて頂いて宜しいでしょうか?」
「うむ、あい分かった。ところでアルティスは、何でそんなに話し方が硬い?」
「公式の場ですから」
「そこまででなくて良いじゃろ?お前の事は皆んなよく理解しているのだから。
 そういうのは、外交の時とかだけで良いよ」
「そ?」
「してその後ろの者は?」
「フィオナが同行するって聞かないんだよ?リヴァルド父さんからも一言言ってやってよ」
「は~~ 又か?エーテルを宿してから、直ぐ最前線に行きたがる。
 力を得たからと言っても、限度があるだろうに?」
「私は夫の力になりたいだけよ?お父様?」
「ぅそつけ……」
「小声で何か言いました?貴方?」
「言ってない……ストレス発散したいからとか……言ってない」
「今夜はお預けね?」
「え?マジ?」
「お前達毎晩か?」
「さっ、行くわよ……アルッ」
「え?マジ?」


「濃過ぎね?ここの瘴気。フィオナに、瘴気を防ぐバリア貼るよ?」
「大丈夫よ私は。エーテルが守ってくれるもの」
「そう?大丈夫なら良いんだけど?苦しくなったら直ぐ言うんだぞ?
 それと洞窟の中では大きな攻撃魔法は禁止な」
「え~ 貴方に教わってから、ずっと練習して、凄く上達したのに……
 エーテルのおかげで、魔力も底なし……ってほどでも無いけど爆上がりよ?」
「洞窟で大きなのやったら、壁、天井が崩れて危ないだろ?」
「あ~ 了解しましたご主人様」
「よし!行くぞ!ポチッ」
「う~~ワンッ!」
「この洞窟の中に瘴気を放つ魔物が?」
「それと逃げ遅れて、瘴気にやられて正気を失った小物がうじゃうじゃ。
 小物とは言え油断すると、我らに勝機は無いぞ?」
「瘴気に、正気に、勝機?何か余裕ね?貴方こそ油断しないでよね?」
 〝シャンシャンシュシュ……シャキンシャキン、シャンシャン〝
「ちょっと~アルティス~!貴方ばっかり攻撃しないでよ~私にもやらせてってば~」
 〝シャンシャンシュシュ……シャキンシャキン、シャンシャン〝
「あ~も~ 目で追えないじゃ無い。音しか聞こえないし」
 無言で魔物を倒しながらどんどん進むアルティス。魔物の落とす魔石だけが残る。
「ア~ル~ッ!攻撃魔法、ド~ンするわよ~」
「お預け!この先に、広い場所あるから、そこまで待て!はい、お手っ!」
「も~~」
「犬じゃなくて、牛かフィオナは?ほらここ。魔物うじゃうじゃ居るじゃん。お好きにどうぞ~。俺は一休みしてるよ?」
「よっしゃ~ 指にマナを集めて~~ えい、えい、えい~ そらそらそら!」
「あいつメチャストレス溜まってない?何で? っと、あっぶね~ めちゃくちゃするな~?バリア貼っとこ」
 ところ構わず、攻撃を放つフィオナ。アルティスにも、魔法が飛んできていた。

「ふ~~スキリした」
「何がお前をそうさせる?何でそんなにストレス溜まってんの?」
「王妃教育!私、女王の教育しか受けてこなかったから、急に王妃教育とか詰め込まれて、
 もう大変なんだからね?」
「何で今更王妃教育を?」
「貴方が王になって、私が王妃になるからじゃない!」
「おお~~ そんなら、フィオナが女王で良くない?何で俺が、王?」
「私を始め、貴方が王になる事で、皆んな納得してるからでしょ?それより今はこっちに集中でしょ?」
「それなんだけど、フィオナはここで待っててくれ」
「嫌よ。こんな所で1人待つなんて」
「だから、付いてくるなって言ってるのに…… 
 見ろよこの大きなドア。隙間から尋常じゃない量の濃い瘴気が漏れ出してる。
 そして中にいる奴。普通じゃないぞ?」
「そんなに?」
「そ。だからここで待ってること」
「ここにいたら、どんな奴が来るか分かんないじゃない?私を1人残すの?」
「しょうがない一度フィオナを王城に戻すよ」
「い・や・で・す~」
「我がまま~ 今夜はお預けだからな」
「良いですよ?」
「いやですよ?ってなんでよ?」
「怖いのよ……」
「怖いんだろ?だから王城に……」
「違う、怖いのは貴方に、万が一、何かあったらって……我がままなのは分かってる。
 でも、結婚してから益々、貴方が大切な存在になって……」
 アルティスに向かい、上目遣いで涙を溜めるフィオナ。後ろを向いてテヘペロしている。
「ごめん。扉の向こうの奴、そこまでじゃない。
 フィオナ危ない目に合わせたくなくて嘘ついた。一緒に行くか?……」
 フィオナの涙にめっぽう弱いアルティス。
「うん……私こそごめんね?」

 〝ギギギギギ~~〝少し錆びついているドアをこじ開ける。
「うわ!霞むほどの瘴気。目が痛い。でかいのがいるな?」
「あれ、龍かしら?」
「紫色に染まった瘴気龍って奴だな?最大魔力で浄化してみるか?
 フィオナも一緒にピリフィケーションな?せ~の!」
「「ピリフィケーション!」」
 瘴気が浄化されている気配は全くなかった。

「うわ~全然ダメ?」
「汝らは何者ぞ?」
「「しゃべった!」」
「汝らは何者ぞ?」
「お前の瘴気で、魔物が混乱していて、街が危険にさらされている。
 浄化出来ないのであれば、悪いが消滅させてもらうしかない」
「そうか。色々な所に迷惑をかけておるのだな?構わん。消滅出来るのであればやってくれ」
「……良いのか?」
「よい。我はここからは出られん。ただ瘴気を吐くだけ。生に何の意味があろうか?」
「出られんとは?」
「この瘴気の沼から、どうやっても出られんのだよ?いっそ消えてしまった方が、どれほど楽か」
「何か気の毒だな?聞いた事があるよ。大人の龍は瘴気をものともしないが、
 子供は瘴気に囚われると、瘴気龍になってしまうと。子供の頃ここに?」
「いや分からん。我は何処で生まれ、何故ここにおるのか。何一つ記憶がない。
 ずっとここに1人で居た……」
「それは……やりきれないだろうに……お前の記憶、探ってみても?」
「我の生い立ちを探れるのか?」
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