37 / 97
第1章
37 ね〜なになに?見せて〜
しおりを挟む
「数々の功績を讃え、アルティス・フェイトに、公爵位を授ける事とする」
「謹んでお受け致します。身を粉にして、この国に尽くす事を誓います」
玉座の間には、数十人もの貴族が並んでいた。
割れんばかりの拍手に包まれるアルティス。
神々しいまでのアルティスの姿に、素のアルティスを知らない貴族の面々は、眼を潤わせ息を呑んだ。
叙勲式の夜、盛大に舞踏会が開かれた。
神の子だの英雄だのの噂が広まった今、この強大な力を持つアルティスを、
どこの国も喉から手が出る程欲しがる。
今の内に、英雄アルティスは、ハルステイン王国のもので、
フィオナ王女との関係も公に知らしめる……
その為の、王国始まって以来1番盛大と言える舞踏会を、各国の元首を招待し開いたのだ。
「あいつさ~10年も行方知らずだったんだろ?まともな教育受けてないのに、舞踏会って、まともに踊れんの?」
突然現れた英雄に、嫉妬する若者は少なく無かった。
華やかに始まる舞踏会の中、フィオナは彼らに囲まれていた。
ダンスの誘いを受け、困っているフィオナ。
「いえ……ちょっと今晩は……」
「そうでしたね。今晩は先ず、婚約が決まりそうだと噂の、
アルティス様との踊りを、ご披露頂くのが先ですかね~?」
下心の有りそうな、にやけた顔が気持ち悪い。
(失念していたな~ アルがダンス出来る訳ないよね……それを分かっていてこの男達は……)
「アルっ!アルってば~ ご馳走ばかりガン見してないで……」
涎を垂らさんばかりに、豪華なご馳走を楽しんでいる周りの人々を、見つめるアルティス。
「だって、食べちゃダメってハートさんが……」
「私たちの分は、後でたくさん用意されてるから……」
耳元でボソボソと、何かを告げるフィオナ。
「ん?踊れるけど?」
「まじ?」
「まじ!何時かきっと必要になるはずだからって、姉さん女神から特訓受けてる。
教養も色々、人族が知らないような事まで完璧ニャン」
「だけど貴方、政治とか全然分からないとか言ってたでしょ?」
「そう言っとかないと面倒だったから~ テヘペロッ」
「ユフィは知ってましたよ?姉さま?」
まじらしい……
「それでは1曲。お相手頂けますか?我が婚約者殿」
そう言って、フィオナの手を取り歩き出す。
紳士然とした完璧な立ち振る舞い。
見目も良いこの2人に、観衆の注目が集まった。
曲が始まる。アルティスの体は流れる様に自然に動く。
髪の動きや、衣装のたなびく動きまでもが美しく、
観衆の目が釘付けになる。あちこちから感嘆の溜息と声が漏れてくる。
フィオナはアルティスとのダンスが、只々気持ち良く楽しかった。
割れんばかりの拍手と喝采の中、演奏が終わった。
「チッ、あいつ踊れんのかよ」
「何言ってんだよ?あれは踊れるとか言うレベルじゃないだろ。
誰だよ、踊れる訳ないって言ってたの?」
馬鹿にしてやろうと言う目論見が外れ、悔しそうに顔を歪める若者数名。
性懲りも無く、又近づいてきた。
「ダンスお見事でした。アルティス公爵。是非この辺で、一言ご挨拶でも頂けないかと……」
(誰だコイツ?フィオナが、さっき言ってた奴か?
ダンスでダメなら挨拶で恥をかかせようって?)
「フィオナ姫、この方々は?って、
あっ、思い出した!あんた10年前のお披露目会で、小便漏らしてた奴じゃん?」
5歳のアルティスの殺気に当てられ、漏らしたバンジャラス伯爵の嫡男コーリンだった。
「き、貴様っ!」
「そういえば貴方10年前、とんでも無いことをしでかした上に、
アルティス・フェイト公爵に大恥をかかされた、バンジャラス伯爵家の嫡男コーリン様でしたね。
私あの時私、テラスの上から全部見てましたのよ?それにしても貴方今、貴様とか仰って?
貴方は爵位も未だ持たぬ、唯の伯爵家嫡男。アルティス・フェイト公爵への不敬なのではありませんか?」
コーリンは何も答えず、顔を真っ赤にしてスゴスゴ消えていった。
一方アルティスは、壇上で挨拶をしなければならなくなった様だ。
「本日は、お忙しい中ご主席頂き誠に有難うございます。この度公爵を賜りましたアルティス・フェイトと申します。」
文句のつけようの無い、理路整然、完璧にて簡潔な挨拶……が続く。
誰だこのクールなイケメンは?
舞踏会は、アルティスとフィオナの婚約の発表で、大喝采の中、終演を迎えた。
「疲れたわね?」
「こう言うの慣れて無いからね……」
着替えを終え、記念すべきこの日の為に、
王城の最上階のバルコニーに用意されたディナー。
今は、フィオナの肩をそっと抱き、宝石を鏤めた様な満天の星空を見上げるアルティス。
「貴方が戻って来てくれて、本当に良かった……」
「随分心配させてしまったみたいでごめんね……それにしても今夜のフィオナは少し大人っぽいな」
珍しく胸元の開いた、真っ赤なドレスで身を飾ったフィオナ。
「今夜の為に、少し背伸びして用意したのよ?どう?」
「何時もの可愛いフィナも好きだけど、今夜のフィオナも良いね。
俺思うんだよ?幸せ者だなって。神界では家族になってくれた神々が居て。
地上に戻ったら、王家に父と母が出来。ハートさんという祖父まで出来た気分。
それで妹まで戻り、フィナが何時も側に居てくれる。
これが何時迄も続くと良いな」
そう言いフィオナをそっと抱き寄せる。
「私も、とっても幸せよ。アル大好き」
アルティスの胸に顔を埋めフィオナが呟いた。
自然に顔と顔が近づき唇が重なる。優しくゆっくりと時が流れた。
「アルの奴、あんなに尻尾を振りおって~」
「貴方、アル君には、尻尾は有りませんよ?」
「ね~なになに?見せて~」
「ユッフィーにはまだ早いです」
「え~~~~ずる~い!」
「フィオナ!やったね!」
「これこれ、のぞきはダメじゃぞ!ソフィア」
「自分だってじゃない!お父様」
「え~の~~若いものは」
「何、のぞいているのです?創造神様」
「いや、お前もじゃろ?」
アルティスとフィオナの、この姿は、皆んなの心を幸せにした様だ。
アルティスは、沢山の気配を、この夜だけは感じる事が出来なかったらしい……
(それどころじゃね~し!)
「謹んでお受け致します。身を粉にして、この国に尽くす事を誓います」
玉座の間には、数十人もの貴族が並んでいた。
割れんばかりの拍手に包まれるアルティス。
神々しいまでのアルティスの姿に、素のアルティスを知らない貴族の面々は、眼を潤わせ息を呑んだ。
叙勲式の夜、盛大に舞踏会が開かれた。
神の子だの英雄だのの噂が広まった今、この強大な力を持つアルティスを、
どこの国も喉から手が出る程欲しがる。
今の内に、英雄アルティスは、ハルステイン王国のもので、
フィオナ王女との関係も公に知らしめる……
その為の、王国始まって以来1番盛大と言える舞踏会を、各国の元首を招待し開いたのだ。
「あいつさ~10年も行方知らずだったんだろ?まともな教育受けてないのに、舞踏会って、まともに踊れんの?」
突然現れた英雄に、嫉妬する若者は少なく無かった。
華やかに始まる舞踏会の中、フィオナは彼らに囲まれていた。
ダンスの誘いを受け、困っているフィオナ。
「いえ……ちょっと今晩は……」
「そうでしたね。今晩は先ず、婚約が決まりそうだと噂の、
アルティス様との踊りを、ご披露頂くのが先ですかね~?」
下心の有りそうな、にやけた顔が気持ち悪い。
(失念していたな~ アルがダンス出来る訳ないよね……それを分かっていてこの男達は……)
「アルっ!アルってば~ ご馳走ばかりガン見してないで……」
涎を垂らさんばかりに、豪華なご馳走を楽しんでいる周りの人々を、見つめるアルティス。
「だって、食べちゃダメってハートさんが……」
「私たちの分は、後でたくさん用意されてるから……」
耳元でボソボソと、何かを告げるフィオナ。
「ん?踊れるけど?」
「まじ?」
「まじ!何時かきっと必要になるはずだからって、姉さん女神から特訓受けてる。
教養も色々、人族が知らないような事まで完璧ニャン」
「だけど貴方、政治とか全然分からないとか言ってたでしょ?」
「そう言っとかないと面倒だったから~ テヘペロッ」
「ユフィは知ってましたよ?姉さま?」
まじらしい……
「それでは1曲。お相手頂けますか?我が婚約者殿」
そう言って、フィオナの手を取り歩き出す。
紳士然とした完璧な立ち振る舞い。
見目も良いこの2人に、観衆の注目が集まった。
曲が始まる。アルティスの体は流れる様に自然に動く。
髪の動きや、衣装のたなびく動きまでもが美しく、
観衆の目が釘付けになる。あちこちから感嘆の溜息と声が漏れてくる。
フィオナはアルティスとのダンスが、只々気持ち良く楽しかった。
割れんばかりの拍手と喝采の中、演奏が終わった。
「チッ、あいつ踊れんのかよ」
「何言ってんだよ?あれは踊れるとか言うレベルじゃないだろ。
誰だよ、踊れる訳ないって言ってたの?」
馬鹿にしてやろうと言う目論見が外れ、悔しそうに顔を歪める若者数名。
性懲りも無く、又近づいてきた。
「ダンスお見事でした。アルティス公爵。是非この辺で、一言ご挨拶でも頂けないかと……」
(誰だコイツ?フィオナが、さっき言ってた奴か?
ダンスでダメなら挨拶で恥をかかせようって?)
「フィオナ姫、この方々は?って、
あっ、思い出した!あんた10年前のお披露目会で、小便漏らしてた奴じゃん?」
5歳のアルティスの殺気に当てられ、漏らしたバンジャラス伯爵の嫡男コーリンだった。
「き、貴様っ!」
「そういえば貴方10年前、とんでも無いことをしでかした上に、
アルティス・フェイト公爵に大恥をかかされた、バンジャラス伯爵家の嫡男コーリン様でしたね。
私あの時私、テラスの上から全部見てましたのよ?それにしても貴方今、貴様とか仰って?
貴方は爵位も未だ持たぬ、唯の伯爵家嫡男。アルティス・フェイト公爵への不敬なのではありませんか?」
コーリンは何も答えず、顔を真っ赤にしてスゴスゴ消えていった。
一方アルティスは、壇上で挨拶をしなければならなくなった様だ。
「本日は、お忙しい中ご主席頂き誠に有難うございます。この度公爵を賜りましたアルティス・フェイトと申します。」
文句のつけようの無い、理路整然、完璧にて簡潔な挨拶……が続く。
誰だこのクールなイケメンは?
舞踏会は、アルティスとフィオナの婚約の発表で、大喝采の中、終演を迎えた。
「疲れたわね?」
「こう言うの慣れて無いからね……」
着替えを終え、記念すべきこの日の為に、
王城の最上階のバルコニーに用意されたディナー。
今は、フィオナの肩をそっと抱き、宝石を鏤めた様な満天の星空を見上げるアルティス。
「貴方が戻って来てくれて、本当に良かった……」
「随分心配させてしまったみたいでごめんね……それにしても今夜のフィオナは少し大人っぽいな」
珍しく胸元の開いた、真っ赤なドレスで身を飾ったフィオナ。
「今夜の為に、少し背伸びして用意したのよ?どう?」
「何時もの可愛いフィナも好きだけど、今夜のフィオナも良いね。
俺思うんだよ?幸せ者だなって。神界では家族になってくれた神々が居て。
地上に戻ったら、王家に父と母が出来。ハートさんという祖父まで出来た気分。
それで妹まで戻り、フィナが何時も側に居てくれる。
これが何時迄も続くと良いな」
そう言いフィオナをそっと抱き寄せる。
「私も、とっても幸せよ。アル大好き」
アルティスの胸に顔を埋めフィオナが呟いた。
自然に顔と顔が近づき唇が重なる。優しくゆっくりと時が流れた。
「アルの奴、あんなに尻尾を振りおって~」
「貴方、アル君には、尻尾は有りませんよ?」
「ね~なになに?見せて~」
「ユッフィーにはまだ早いです」
「え~~~~ずる~い!」
「フィオナ!やったね!」
「これこれ、のぞきはダメじゃぞ!ソフィア」
「自分だってじゃない!お父様」
「え~の~~若いものは」
「何、のぞいているのです?創造神様」
「いや、お前もじゃろ?」
アルティスとフィオナの、この姿は、皆んなの心を幸せにした様だ。
アルティスは、沢山の気配を、この夜だけは感じる事が出来なかったらしい……
(それどころじゃね~し!)
10
お気に入りに追加
15
あなたにおすすめの小説
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~
くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】
その攻撃、収納する――――ッ!
【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。
理由は、マジックバッグを手に入れたから。
マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。
これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。
来訪神に転生させてもらえました。石長姫には不老長寿、宇迦之御魂神には豊穣を授かりました。
克全
ファンタジー
ほのぼのスローライフを目指します。賽銭泥棒を取り押さえようとした氏子の田中一郎は、事もあろうに神域である境内の、それも神殿前で殺されてしまった。情けなく申し訳なく思った氏神様は、田中一郎を異世界に転生させて第二の人生を生きられるようにした。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
ズボラ通販生活
ice
ファンタジー
西野桃(にしのもも)35歳の独身、オタクが神様のミスで異世界へ!貪欲に通販スキル、時間停止アイテムボックス容量無限、結界魔法…さらには、お金まで貰う。商人無双や!とか言いつつ、楽に、ゆるーく、商売をしていく。淋しい独身者、旦那という名の奴隷まで?!ズボラなオバサンが異世界に転移して好き勝手生活する!
異世界TS転生で新たな人生「俺が聖女になるなんて聞いてないよ!」
マロエ
ファンタジー
普通のサラリーマンだった三十歳の男性が、いつも通り残業をこなし帰宅途中に、異世界に転生してしまう。
目を覚ますと、何故か森の中に立っていて、身体も何か違うことに気づく。
近くの水面で姿を確認すると、男性の姿が20代前半~10代後半の美しい女性へと変わっていた。
さらに、異世界の住人たちから「聖女」と呼ばれる存在になってしまい、大混乱。
新たな人生に期待と不安が入り混じりながら、男性は女性として、しかも聖女として異世界を歩み始める。
※表紙、挿絵はAIで作成したイラストを使用しています。
※R15の章には☆マークを入れてます。
ギルドから追放された実は究極の治癒魔法使い。それに気付いたギルドが崩壊仕掛かってるが、もう知らん。僕は美少女エルフと旅することにしたから。
yonechanish
ファンタジー
僕は治癒魔法使い。
子供の頃、僕は奴隷として売られていた。
そんな僕をギルドマスターが拾ってくれた。
だから、僕は自分に誓ったんだ。
ギルドのメンバーのために、生きるんだって。
でも、僕は皆の役に立てなかったみたい。
「クビ」
その言葉で、僕はギルドから追放された。
一人。
その日からギルドの崩壊が始まった。
僕の治癒魔法は地味だから、皆、僕がどれだけ役に立ったか知らなかったみたい。
だけど、もう遅いよ。
僕は僕なりの旅を始めたから。
女神様から同情された結果こうなった
回復師
ファンタジー
どうやら女神の大ミスで学園ごと異世界に召喚されたらしい。本来は勇者になる人物を一人召喚するはずだったのを女神がミスったのだ。しかも召喚した場所がオークの巣の近く、年頃の少女が目の前にいきなり大量に現れ色めき立つオーク達。俺は妹を守る為に、女神様から貰ったスキルで生き残るべく思考した。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる