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第1章
36 フィナ……悪魔
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それから数千年の後、ハルステイン王国のフェイト伯爵の下に、男の子が誕生する。
元気な産声に導かれる様に、1粒の光りが惹かれる様に寄せられ、その赤ちゃんに吸い込まれる。
その一粒は、やっと宿主を見付けたとばかりに、幸せな歓喜で満たされる。
その幸福感が、彷徨い漂っていた全宇宙のエーテルに伝わる。
一瞬にして、とてつもない量のエーテルが、時空を飛び越え、その赤ちゃんに集まり宿る。
目が開けられない程、輝く赤ちゃんに、動揺する両親達。
暫くすると、その輝きが消え、周囲は落ち着きを取り戻す。
夜空に輝く星々の様に、瞳が、小さな粒で輝いている事に気付き、驚くのはこのすぐ後だった。
いつの間にか、その胸に、赤ちゃんの瞳そっくりなペンダントが輝いていた。
何がどうなっているのか?突然現れたペンダント。
どうやってもこの赤ちゃんから引き離す事は出来なかった。
「う~~ん、想定外じゃの~ 昔、わしが宿していた量に匹敵する力が、
何と1人の赤ちゃんに宿ってしまうとは……」
こんな膨大な力に、赤ちゃんの身体も、心も耐えられるはずが無かった。
創造神は、自分に力を戻すしかないと考えたが、
赤ちゃんからエーテルを、自らの身体に戻す事は出来なかった。
そこで、その赤ちゃんに、1つの星が、すっぽり入る程の容量を持つペンダントを持たせ、
エーテルが、自由に行き来出来る様にして、大半のエーテルをそちらに逃した。
(取り敢えず、暫くは何とかなるじゃろ?)
神の力を授かり、星が輝くサファイアの瞳を持った、アルティスの誕生だ。
胸には、その瞳そっくりなペンダントが光輝いていた。
心を持つ神聖力……エーテルを宿し、それだけでも、とてつもない潜在能力を得たアルティス。
エーテルと遊び、その中で、いつしか、人の目では追えない程の身体能力を得、
エーテルから学び、真似る事で、有り余る魔力の使い方を覚えた。
5歳になる頃には、人外とも思える程の力を既に持っていた。
そして更に10年にも及び、神々の下で暮らし、磨かれたその力は、
既に、神の域すらも超えているのではと、創造神の下に集う12柱の神々は囁く。
「だけど、その‘’一生‘’ってのが問題……」
「…………?」
創造神から聞いた、自分の誕生の物語を、打ち明けるアルティス。
神々に寿命などは無い。この力を授かった以上、自分に寿命は無いだろう……
「つまり貴方を残し、私だけが老いて死んでいくって事? ……それが問題?」
「俺と一緒に生きていく。何度となく肌でお互いの温もりを感じあう……
きっと、フィナにも神聖力が宿る」
「私にも、神聖力が宿る?私も神になるって事? 想像付かないけど……
でも、家族や友人、自分たちの子供の死を看取る……それは辛いわね……」
「…………………………」
「あっ、肌を合わせなけれ良いじゃない……?」
「………………無理………………フィナ……悪魔………………悪魔の神………………」
顔を赤らめながら〝クスッ〝と笑うフィオナ。
「フィナ、一緒になったら、俺たちは歳を取らない。
でも、歳をとった様に見せる事は出来る。創造神のじいちゃんがそうしてる様にね。
そしていつか子供達より早く、天に召された様に見せかける……じゃダメ?
いつか子供達も寿命を迎えるだろうけど、前にも言った様にいつでも会えるから……
だから、思うところは色々有るだろうけど、そばにいて欲しいんだ……」
「私達の子供は、神にならないの?」
「と、思うよ。そうじゃ無ければ、いつか地上も神だらけになっちゃうからね。
この力は俺達の子孫とは言え、そうそう宿る事は無いって聞いてる。
俺の様にちょっとした例外はある……あとユッフィ……とか……」
「ん?……何て?」
「何も……」
「……でもまあ……そう……なんか、何の問題もない気がしてきた。
私は、やっぱり貴方の側に、一生いたい……」
「本当?ありがと……長~~~~~~~~い、一生だけど宜しく」
「うん……私こそ宜しく。それにしても永遠の一生って想像つかないけど……
猫は移らないわよね……?」
「なんか言った?」
「言ってない」
「よく似合っておりますよ。アルティス様」
子供の時以来の正装だった。
「王族の風格すら漂っております。他国の王子、貴族の御子息が、霞む程の美しさと凛々しさですぞ」
何故か目に涙を溜め、孫を見る様なハートさん……ちょっとお願いしづらいけど……
「ねえ、ハートさん。なんか動き辛いんだけど……これ全部着なきゃダメ?」
「そうですな……窮屈かとは思いますが……それが正装故、今日だけは我慢して下さいませ」
「せめて、この固めた頭ぐらい何とかならない?
常に髪で不穏な気配を感知をしてるから……ちょっと困るニャン……」
アルティスは嘘が下手だ。直ぐ目が泳ぎ、猫言葉になる。
(嘘だな……)
ハートは苦笑いをしながら……
「左様で御座いますか?まあ髪くらい固めずとも許されましょう。でも感知は嘘でございましょ?」
「ドキッ!」
(この人には敵わないなあ……)
でもハートさんの眼はとても優しかった。
元気な産声に導かれる様に、1粒の光りが惹かれる様に寄せられ、その赤ちゃんに吸い込まれる。
その一粒は、やっと宿主を見付けたとばかりに、幸せな歓喜で満たされる。
その幸福感が、彷徨い漂っていた全宇宙のエーテルに伝わる。
一瞬にして、とてつもない量のエーテルが、時空を飛び越え、その赤ちゃんに集まり宿る。
目が開けられない程、輝く赤ちゃんに、動揺する両親達。
暫くすると、その輝きが消え、周囲は落ち着きを取り戻す。
夜空に輝く星々の様に、瞳が、小さな粒で輝いている事に気付き、驚くのはこのすぐ後だった。
いつの間にか、その胸に、赤ちゃんの瞳そっくりなペンダントが輝いていた。
何がどうなっているのか?突然現れたペンダント。
どうやってもこの赤ちゃんから引き離す事は出来なかった。
「う~~ん、想定外じゃの~ 昔、わしが宿していた量に匹敵する力が、
何と1人の赤ちゃんに宿ってしまうとは……」
こんな膨大な力に、赤ちゃんの身体も、心も耐えられるはずが無かった。
創造神は、自分に力を戻すしかないと考えたが、
赤ちゃんからエーテルを、自らの身体に戻す事は出来なかった。
そこで、その赤ちゃんに、1つの星が、すっぽり入る程の容量を持つペンダントを持たせ、
エーテルが、自由に行き来出来る様にして、大半のエーテルをそちらに逃した。
(取り敢えず、暫くは何とかなるじゃろ?)
神の力を授かり、星が輝くサファイアの瞳を持った、アルティスの誕生だ。
胸には、その瞳そっくりなペンダントが光輝いていた。
心を持つ神聖力……エーテルを宿し、それだけでも、とてつもない潜在能力を得たアルティス。
エーテルと遊び、その中で、いつしか、人の目では追えない程の身体能力を得、
エーテルから学び、真似る事で、有り余る魔力の使い方を覚えた。
5歳になる頃には、人外とも思える程の力を既に持っていた。
そして更に10年にも及び、神々の下で暮らし、磨かれたその力は、
既に、神の域すらも超えているのではと、創造神の下に集う12柱の神々は囁く。
「だけど、その‘’一生‘’ってのが問題……」
「…………?」
創造神から聞いた、自分の誕生の物語を、打ち明けるアルティス。
神々に寿命などは無い。この力を授かった以上、自分に寿命は無いだろう……
「つまり貴方を残し、私だけが老いて死んでいくって事? ……それが問題?」
「俺と一緒に生きていく。何度となく肌でお互いの温もりを感じあう……
きっと、フィナにも神聖力が宿る」
「私にも、神聖力が宿る?私も神になるって事? 想像付かないけど……
でも、家族や友人、自分たちの子供の死を看取る……それは辛いわね……」
「…………………………」
「あっ、肌を合わせなけれ良いじゃない……?」
「………………無理………………フィナ……悪魔………………悪魔の神………………」
顔を赤らめながら〝クスッ〝と笑うフィオナ。
「フィナ、一緒になったら、俺たちは歳を取らない。
でも、歳をとった様に見せる事は出来る。創造神のじいちゃんがそうしてる様にね。
そしていつか子供達より早く、天に召された様に見せかける……じゃダメ?
いつか子供達も寿命を迎えるだろうけど、前にも言った様にいつでも会えるから……
だから、思うところは色々有るだろうけど、そばにいて欲しいんだ……」
「私達の子供は、神にならないの?」
「と、思うよ。そうじゃ無ければ、いつか地上も神だらけになっちゃうからね。
この力は俺達の子孫とは言え、そうそう宿る事は無いって聞いてる。
俺の様にちょっとした例外はある……あとユッフィ……とか……」
「ん?……何て?」
「何も……」
「……でもまあ……そう……なんか、何の問題もない気がしてきた。
私は、やっぱり貴方の側に、一生いたい……」
「本当?ありがと……長~~~~~~~~い、一生だけど宜しく」
「うん……私こそ宜しく。それにしても永遠の一生って想像つかないけど……
猫は移らないわよね……?」
「なんか言った?」
「言ってない」
「よく似合っておりますよ。アルティス様」
子供の時以来の正装だった。
「王族の風格すら漂っております。他国の王子、貴族の御子息が、霞む程の美しさと凛々しさですぞ」
何故か目に涙を溜め、孫を見る様なハートさん……ちょっとお願いしづらいけど……
「ねえ、ハートさん。なんか動き辛いんだけど……これ全部着なきゃダメ?」
「そうですな……窮屈かとは思いますが……それが正装故、今日だけは我慢して下さいませ」
「せめて、この固めた頭ぐらい何とかならない?
常に髪で不穏な気配を感知をしてるから……ちょっと困るニャン……」
アルティスは嘘が下手だ。直ぐ目が泳ぎ、猫言葉になる。
(嘘だな……)
ハートは苦笑いをしながら……
「左様で御座いますか?まあ髪くらい固めずとも許されましょう。でも感知は嘘でございましょ?」
「ドキッ!」
(この人には敵わないなあ……)
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