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第1章

26 て、違〜〜う!!!口に〜!

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 石畳いしだたみの続く丘陵きゅうりょうに、古くはあるが美しく壮麗そうれい石造いしづくりの王城が見える。
(あれがストゥールの王城?
 何故だ?中の様子を感じる事が出来ない……行ってみるしか無いな……)

 気配を消し、バルコニー側まで飛ぶと、中の様子が見えてきた。
(フィオナは?……ああ……居た。中央ホールの床に座り込んでいる。それを何人かが取り囲んでいる。
 とにかく一応は無事な様だ。怪我とか、させられてないと良いけど……
 このまま気配を消し、近づいてみよう)
 そう思い、中に入った途端、浮遊が出来なくなり床に転げ落ちた。

「いててて……」
「誰だ貴様は!」
 あっという間に見つかり囲まれた。
「ぼ、僕はアルティスニャン♡」
 慌てて、ちょっと端折った。
「ふざけてるのか貴様!どうやってここに来た?」
 足でボリボリ頭を掻いて、誤魔化すアルティス。

「あ、アル?」
「し~~~し~~~ バレちゃうじゃん」
 いやいや、そんなんで、誤魔化される奴いね~し。
「貴様、この姫の知り合いか?」
 〝ボリボリボリボリボリボリ……〝
「ふ、ふざけてるのか? おい!お前達、このガキが喋りたくなる様にしてやれ!」
 囲まれて、されるがままボコボコにされても、無抵抗のアルティス。
 しばらくすると、動かなくなった。気を失っている様だ。
「もう良い。一旦姫と一緒に、地下に連れて行け」

 地下のホールの出入り口を、鉄格子で通れない様にして、即席の広い牢が作られていた。
 その床に、乱暴に投げられるアルティス。
 駆け寄るフィオナだが、アルティスは動かない。やはり、気を失っている様だ。

「フィオナ!」
「あ、エレノア?無事だったのね。どうなってるの?この城は」
 王族を始め数百人が、地下にとらわれている様だ。

「ううっ……」
「あ、アル……気が付いた?大丈夫?」
「うっ……痛い……か、身体が……動かせない……」
「何処を怪我してるの?私のヒールで……」
「ふ、普通のヒールでは……だめだ……ちょ……直接ヒールを……キ……キス……
 フィナの回復魔法を込めたキスで、助かるって、じいちゃんが言っている」
「そ、創造神様が……で、でも……ここで?皆んな見てるのに……」
「ううっ……」
「あ、アル!」
 フィオナが慌ててホッペにチュッ♡とする。
「て、違~~う!!!口に~!」
 目を釣り上げて、突然立ち上がるアルティス。
「……全然元気じゃない……」
「あっ…… 」
「あっ……じゃないわよ」
「あのね……地下に大勢の気配感じたから、やられたふりしてたの……
 そしたら、俺も、ここに連れてこられるんじゃ無いかなって思って……
 ほら、下手に暴れたら、皆んなに危険が及ぶかもでしょ?テヘペロッ」
「テヘペロ?どんだけ心配したと思ってるのよ?」 
「どもすいません」
「でも貴方、何で突然落ちてきたの?」
「急にエーテルの動きが乱れて、神聖力が効かなくなつて落ちた。びっくりしたよ」
「ここ神聖力を使えないの?」
「あのさ、偉そうに支持をしてたリーダー的な奴いたでしょ?
 で、その向こうで、不機嫌そうに座って居た奴、分かる?
 あいつが、何かの魔道具で、神聖力の動きを阻害してた」
「神聖力使えなくなってるなら、これからどうするの?」
「不意を突かれたから落ちたけど、原因が分かれば、なんて事ないよ」
「神聖力使えないのに、なんて事ない?どうして?
 それにしても、何で魔力じゃなく、神聖力を阻害したんだろ?
 貴方の事、知っていて?って事かしら?」
「いや、何にも分かってないんじゃ無いかな?そんな感じだったろ?」
「で、なんて事ないって……そう貴方が言うのは?」
「だから、不意を突かれたってだけ。
 あの程度の魔道具じゃ、俺の全力の神聖力を止めるのは無理」
「で、どうするの?」
「大勢捕まっているこの状況だと戦えないから、一旦皆んなを逃すよ。
 だからここに全員集めてくれる?」

 エレノア姫の協力のもと、皆んなを1箇所に集めると、両ほうの手のひらを、前に出し、
 全員の足元の中心に、魔法陣を浮かび上がらせる。
 それが広がり全員を囲み光出す。光るエーテルの粒が、囲みながら渦をなす。

 眩しい程の光が消え、皆んなの視界が戻ると、花の咲き誇る美しい庭園が、目に入って来た。
 何が起きたのか理解できず、途方に暮れる、ストゥール王国の人々。
 フィオナの説明で、そこがハルステイン王国、その王城の庭園だと分かると、
 安堵して、そこに、へたり込んでしまった。

「フィナ、具合の悪い人が居ないか、見てあげて。回復は任せて良いね?」
「アルはどうするの?」
「ストゥールの王城を取り返してくる。人質はもう居ないから、
 やりたい放題、俺を殴る蹴るした奴ら10倍返しだ~」
「ダメよ?やり過ぎないで。何者なのかとか、目的とか、色々聞き出さなきゃいけないからね?」
「ん?奴ら魔族だよ?それも魔王クラスが3人も居た」
「う、嘘でしょ~?」
「マジ。あいつらに色々動かれる前に、サクッと片付けてくる」
 そう言うと、アルティスはスッと消えた。

「なあフィオナ姫。何が何だか、理解が追いつかないのだが、彼は一体?」
「ノルマン王よ、あれが其方そなたが、会いたいと言っておった、
 フィオナの婚約者、アルティスだよ。間も無く、我が息子になる少年だよ」
「おお、これはリヴァルド王。命は無いものだと覚悟を決めていたのですが、
 何ともあっさりと助けられた様です。
 噂通り……いや、噂を遥かに超越した少年ですな。
 彼が、間も無くご子息となられるとは、何とも頼もしい……羨ましい限りです」
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