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第1章

15 魔族も人族も何も変わらないよ?

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「焼き串、う・ま~~~!」
 フィオナにお金を貰い、両手に抱え、
 幸せそうに屋台の焼き串を、頬張っているアルティス。
「かわい……」
 そんな事を呟きながら、頬を赤らめるフィオナだった。
 でも結婚するなら、地上を離れていた10年分の常識教えなきゃダメね。
 そう思うとフィオナの顔は更に赤くなっていく。
 仲睦まじく2人で歩けたのはここまでだった。

 2人を見つけ集まって来る民衆。
 魔王軍討伐の感謝を伝える人々に囲まれ、身動きが取れなくなってしまった。

 美しく聡明。それでいて気取らない。
 平民にすら、気さくに接する性格もあって、
 国中から愛されている王女……それがフィオナだった。
 そして突如として出現した英雄、神の子アルティス。
 その噂は瞬く間に王国中……いや外の国々にも、
 そして魔族の大陸にまで流れていた。
 そんな2人が、揃っていれば、民衆が集まってくるのは当然だろう。

 花火がきらびやかに打ち上げられ、周りの皆んながそれに目を奪われた瞬間、
 アルティスは、自分とフィオナに、猫耳と尻尾のアクセサリーを素早くつけ、
 変装して逃げ出す。
 いつの間に、こんなもの買ったんだろう?
 そう言えば串焼きの屋台の横にアクセサリー屋が有った。
 だがしかしそうは上手くいかない。
「姫様達、どちらへ?」
「「ニャッ!」」
 変装はバレバレだった様だ。
 仕方ない、皆んなで一緒に花火を見よう♡ 

「ねえ?お兄ちゃんが、魔族をやっつけてくれたの?」
 小さな女の子が、アルティスを見上げながら話しかけてきた。
「そうよ。この英雄アルティス様が、魔王軍を撃退してくれたのよ?」
 アルティスの代わりに、どこかのおばさんが答える。
「お兄ちゃん、すごく勇気が有るのね?あたしね、魔族が凄く怖いの……」
「大丈夫よ。あの、にっくき魔族達は、いつだって、この英雄様が、やっつけてくれるわよ!」
「え?憎い?皆んな魔族がそんなに憎いの?」
「それはそうですよ。魔族は人の敵ですから」
「敵?そんな事無いよ?魔族も人族も何も変わらないよ?
 分かり合えば、良い友になれるのに……」
「まさか?冗談がきついですよ~?」
「………………」
 少し寂しそうな顔をするアルティスだった。
(まあ、攻め込まれたんだから仕方ない事なののかもしれないけど……
 人族と魔族……なんにも変わらないんだけどな?
 だからこそ俺、奴ら誰1人も殺してないんだけど……
 それにしても、大賢者の結界のおかげでもあるけど、
 人族と魔族……しばらく争いはなかったはず。
 何故今になって突然攻め始めるんだ?何かが変だ)
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