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第2話 縁を切った

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 次の日。日曜日が過ぎ、月曜日。週の最初の日だ。

 目に隈を作った状態で、颯は登校した。

 本当は登校せず、休みたかった。

 なぜなら。

「おはよう! 天音君!! 」

 NTRされた聖羅は同じクラスだからだ。

 笑顔で元気よく、聖羅は朝の挨拶をする。以前と全く同じ態度で。罪悪感など微塵も感じた様相も見えない。完全に普段通り接する形だ。

(何だよ。どうしてお前はそんなに明るいんだよ。イケメンとヤレて気分が良いってか)

 心の中で、颯は悪態をつく。ただ嫌悪感を表面化させないため、表情筋に力を込める。

「おはよう…」

 違和感を与えないよう、普段通りに挨拶する。本当は教室で激怒したいところである。だが、ここは教室である。その上、スクールカーストは圧倒的に聖羅の方が上である。

 ここで聖羅に激怒すれば、多くのクラスメイト達を敵に回す可能性がある。俺のクラス内で居場所が消えるかもしれない。

 これが陰キャの残酷な現実である。

「目の隈どうしたの? 昨日もしかして寝れなかったの? 大丈夫? 」

 颯の目の下辺りを指さす聖羅。顔において目立つ隈に目が行ったのだろう。

(誰のせいだと思ってるんだ。お前のせいだぞ! お前が学年1のイケメンの石井にNTRされたからだぞ!! )

 胸中で颯は激怒する。怒りが起因し、身体中が熱くなる。少しでも気を緩めれば、顔が真っ赤に変化しそうだ。それほど怒りの沸点は爆発していた。

 だが、怒りを覚えるのも一瞬だった。すぐに憂鬱で虚しい気分になった。

 自分を差し置いて石井にNTRれた。おそらく、聖羅が石井に身体を許したのだろう。NTRれることを了承したのだろう。

 その事実に辿り着くと、一瞬で怒りは冷めた。冷めて空っぽな気持ちが颯の胸中を支配する。気持ちは収まらない。

「どうしたの? 元気ないよ~? お~~い」

 颯の気持ちなど無視し、注意を引くように、聖羅は彼の顔の前で手を左右に振った。普通の人間が受ければ、鬱陶しいだろう。

 だが、颯は鬱陶しくなかった。無意識にスルーした。現在の心の状態では、対応できなかった。

「おいお前!! 余計なことをするなよ 」

 突如、後ろの教室の戸から姿を現した女子が、聖羅を注意する。女性の声は凛としていた。姿勢も整っており、態度も堂々としている。

 その女子は銀髪のロングヘアに、水色の瞳を保持する。外国人のような乳白色の艶々の肌も際立つ。日本人離れした厚いプルンッとした唇も所持する。

「な、なに。いきなり登場して」

 不快感を露にする聖羅。当然の反応だろう。突然の登場なのだから。

「やかましい! クソは口を開くな! 」

 だが、現れた女子は全く動じず、聖羅を睨みつける。まるでゴミを見るような軽蔑した眼差しを向ける。

「お、おい! あれって学年1イケメンの石井と良くつるんでる」

「そうそう。あの石井君と仲が良い美少女の内の1人だよね」

「石井君とつるむ女子って美少女しか居なかったよね? 」

 クラスが騒がしくなる。

 どうやら突如、登場した女子の知名度は高いみたいだ。聖羅もクラスメイト達の反応から、自身に敵対心を向ける人物の正体を認知する。

 颯も何度か学校で目にした経験はあった。だが、名前までは存じ上げなかった。

「皆まで騒ぐな。だが1つ諸君に伝えとくべきことがある」

 こほんっと咳払いする。準備を整えたようだ。

「私は既に石井和久の友達ではない。彼とは先ほど縁を切った」

 衝撃的な発言を口にした。あまりにも唐突過ぎる発言である。当然、その言葉は教室全体に伝わる。大部分の生徒達の鼓膜を刺激しただろう。

「「「「「え、え~~~~」」」」」

 クラスの全員が驚愕した。誰もが目を丸くし、唖然とした。

 クラスメイト達の大きな声が教室中に響き渡った。

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