終わり

千夜 すう

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第一章

厄介と親切な人

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内容証明書が送られてきたのだろう。

着信音とメールの通知で携帯が煩く鳴っている。

本来なら連絡を取らなくてもいいが、付き合った惰性の気持ちで着信音に答えた。


「もしもし」


「あれはなんだ?」


「何が?」


「惚けるな。内容証明書だよ」


「あぁ...。 うん。送ったよ。送った通りの内容だから、後は一緒に入れといた私が雇ってる弁護士の名刺入ってるから、今後はその人に通して」


「はあ?ふざけr」


「じゃ」


問答無用で切った。後は着拒。


それと、潤のご両親も申し訳ないけど着拒。



岡崎さんに言われてメールやLINEなどは敢えて残してる。

返信等は一切しなくていいと言われた。

相手の反応や動向を知る為らしい。



話し合いが終わるまでは、一人暮らしの部屋で寝泊まりするのは危険と言われて、今は実家から出社してる。


通勤や帰り道は充分に気をつけてとも言われた。
 
弁護士の岡崎さんを通さずに、待ち伏せ等して直接にあってきたら、対応せずに逃げる事が優先で、直ぐに岡崎さんに連絡する事も言われた。


岡崎さんからの注意事項を聞いていたら、怖いなと感じるようになり、仕事に行く時や帰り道はビクビクしていた。


内容証明書を送った、この1週間は会社の最寄り駅等を警戒していたが、見かけなかった。


部屋は行かないようにしてるし、潤が仕事終わりから会社の最寄り駅を来られる時間逆算して、早めに仕事を終わらせてる。


主任にも事情を話して、有難い事に定時キッチリに帰らせてもらってる。



全てが無事に終わったら、いつもの所で奢ろうと心に決めた。



いつも通りに、仕事はキチンと終わらせて定時の帰りは、他の同僚に怪しまれてない。

1週間と言えども、ずっと警戒心を持ちながら帰るのは精神的に疲れる。

浮気を知ってから精神的にやられて、強制的なダイエットに成功してしまった。



自分の体型の好みで言えば、もうちょっとと太りたい。


電車に窓に映る私の体型は、以前より、やつれて細くなったしと思う。

今日も会わずに帰れたと思いながら、実家まで歩いてると、恐れてた事に会ってしまった。


潤のご両親である。


「あの、優香ちゃん...」


潤よお母様が私に話しかけようとした時


「ごめんなさい。私からは何も...弁護士を通して下さい」


「そう言われてもね。信じられないのだ。潤が浮気してると...」


「えぇ、そうよ。何かの勘違いだと思うの。だから、話し合いましょう。話せば、誤解が解けるわよ」


「それも含めて話し合いは、弁護士を通して下さい。今の私からは何も言えません。失礼します」


スタスタと2人を抜き去って帰ろうとしたら腕を掴まれて止められたり


「ちょっと待ってよ。弁護士なんて...ねぇ」




「離して下さい。何度も言いますけど私からは何も言えません。弁護士を通して下さい」


潤のお母様は、その腕からは想像出来ない腕を強く掴まれていて痛い。

潤のお父様の視線も怖くなってきて、誰か気づかないかなと祈りながら、声を大きくして抵抗した。

そして、願いが叶った。


「ちょっと、お姉さんが嫌がってるようにみえるのですが、その手を離して下さいませんか?」


見目麗しい高校生位の男の子が話しかけてきた。


「関係ない人は黙っててくれ」


「通りすがりですけど、嫌がってる女性の方に無理強いをしてる行為を見たら、助けに行くのが普通だと思います。それと、痣になるのではないかと傍目からでも分かる位に、強く掴まえる腕を離して帰った方がいいですよ。」


風貌は、ブロンドヘアに堀の深い顔立ちは、The外国人だ。そんな人からスラスラと達者な日本語で話していた。


「痛い」

私が本気で痛いと漏らした声にハッとして手を離してくれた。

その隙に見目麗しい男の子の所まで行く。


「そんなに強くは掴んでないわよ。大袈裟ねぇ」

いやいや、嘘つけ。

私も痣になってるか心配になるくらいに痛かった。


「通報する前に直ちに去った方がいいですよ。」


「通報って...」



片手に携帯持ちながら見せつけるように110番を押し、通報しますよと念を押した。

本気なのが伝わって、苦々しそうな表情で立ち去った。


「助けてくれて、ありがとうございます」


「いえ、腕は大丈夫でしょうか?」



「大丈夫です」



「そうですか...ご自宅は近いでしょうか?あの二人が待ち伏せするかもしれないので送っていきましょうか?」


「いえいえ、そんな事させられません。助けてて頂いて有難かったです。何かお礼を...」


「いえ、困ってる人をそのままにしておけないので...」

押し問答してると


「優香」


「父さん...」


「いつもより帰る時間が遅れてたから迎えに来たんだ。大丈夫か?...と、こちらの方は?」



「潤のご両親に、ここで足止めされて...この人は、それで困ってた私を助けてくれたの」

「それは....娘がお世話になりました。助けて頂き、ありがとうございます」


頭を下げる父に、頭上げて下さいと、それを止める男の子は、大した事をしてませんと言い、腕時計の時間を確認した。

「もう、こんな時間だ。すみません。本当に大した事はしてませんので気にしないで下さい。では、ボクはこれで失礼します。」


そう言って、そそくさと去ってしまわれた。


「今どき、あんなに礼儀正しくて正義感が溢れる子がいるんだな」


感心しながら呟く父に、私も同意の頷きを返す。



無事、家に帰った後は、岡崎さんに今回の件を報告した。


このような事が無いようにすると言って下さった。

後は、腕が痣になったら病院で診断書を取るように言われたので、翌日は病院に行った。

長い爪が肌に食いこんで、傷ついた。
通常の生活では、お風呂に染みて痛い。
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