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ヒルデガルド愚連隊
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ドアをあけると、水がふってきた。うかつに踏み込んでいたら、まともに被っていただろう。ドアをあけるとき、正面には立たず壁に背を向け死角に位置取り、中を確認してから入るのは習慣だが、思わぬところで役に立った。
簡単なブービートラップ。誰が仕掛けたのかは、わかり過ぎるほどにわかる。
「……しょうもないことを……」
アルカードは研修船『ヒルデガルド』に足を踏み入れた。すでにマシンモードにトランスしている。マシンモードではアルカードは重装備な姿になる。かつてボディを取り替えなければならなくなったとき、最新の重装備で組んでもらったからだ。ヴィクトリアスのマシンモードとは似ても似つかない。マシンモードには表情もなく、アルカードは気に入っている。
船内にもメインブリッジにも人影はなかったが、ブービートラップがあったからには、無人ではあるまい。どこかに隠れているのだ。船内でモニターできない場所はない。
アルカードは船長席に歩み寄った。腰掛けずに、モニターを操作しようとして――何かが降ってきた。
巨大な急造人物大バスケットが、中に教官を閉じ込めたとき、物陰に隠れていた新兵たちは顔をだした。
「ひゃっほう! やったぜえ」
一人は浮かれて歓声をあげ
「ああ、なんて事を!」
一人は嘆いて顔を覆った。
「はぁ、本当にひっかかったんでっか」
のんびりと意見を述べる者。
「ふむ、この程度のトラップにかかるとは、情けない」
冷静に辛口の意見を述べる者。
「あああああ、怒られますよぅ! 怒られちゃうんだー! 止めたのにー! ひどいぃぃ、本意じゃないのにぃぃ!」
ひたすら脅える者。なかなかバラエティにとんだ顔触れのようだ。
「ビビんなって。親愛を込めたささやかなイタズラじゃねぇか。だいたい、こーんなちゃちなトラップにひっかかるなんて、気が緩んでるんじゃねーの。歴戦の勇士っても、もうスクラップじゃねーの。2世代も前の奴なんざ、ジジィよ、ジジィ」
首謀者らしい者が、得意そうに特製バスケットを引き上げ、驚いた。
「んなばかな、いないぜ!」
あわててバスケットの下に飛び込み、上から降って来た影に捕まった。後わずかに腕を引っ張られれば、ジョイントが破損すると思った瞬間、どこをどうされたのか、意志とは無関係にマシンモードからヒューマンモードにトランスした。おまけに、いきなりパワーダウンし、体を動かすのも難しい。
ヒューマンモードではいっさいの武器は使用できない。
元々はコモンヒューマンとの精神的な摩擦を緩和するため、本来機能別に必要だった姿とは別に、コモンヒューマンを真似たもう一つの姿を造ったのが、『トランサー』の名称のはじまりであるらしい。それまでは『アンドロイド』または『ヒューマノイド』と名称されていたのだ。
ルーツ・マトリクスを持つ者は、モデルとなった者の姿をいまでも忠実に受け継いでいる。ヒューマンモードのアルカードよりはやや低いが、それでも標準的戦闘用トランサーの中では背の高い方で、横幅もがっしりしているのは、ピンクのメッシュを入れた金髪を逆立たせ、やや目尻の下がった青い瞳の、面長の愛嬌のある顔をしている男性体だ。ジャック系の姿だが、このタイプは他の個体との差を出そうとして、ボディをいじる癖がある。
「無理に動くとシステムアウトするぞ」
テノールの、美しいが硬質な声にささやかれ、ジャック系の新兵ははめたつもりが、おびき出されたことを覚った。言われるまでもなく、このパワーダウンした状態で余計なエネルギーを使えば、マトリクスとメモリーを維持するため自動的に他の機能との接続が切れてしまう。寝っ転がっているしかないのだ。
ふとどきな悪戯者を床に転がし、襲撃者が立ち上がる。
「き、教官どの、我々は――」
「言っておくが、直に手を出していないとか、加担した覚えはないとか、言われたから嫌々やった、とかの言い訳なら聴かん。嫌ならばどのような目にあおうとも、加担するべきではない。でなければ、責任逃れと判断する。事実、姿を隠していたのは加担に値する直に手を出した者も、そうでなくとも計画を知っていた者も同罪だ。ひとりの発案者がいても、他のものが妨害、もしくは報告していれば、企みは達成しない。やる事を知っていながら積極的な妨害も、報告もしなかった時点で加担したものと判断する。黙認は奨励と同意だ」
冷徹に言うと、鬼教官は嘆いていたものを捕らえた。
アルカードよりも背が高く、なおかつ横幅はもっと細い。秀でた額を出すようにゆるいウェーブのかかったプラチナブロンドを後になでつけ、戦士というよりは文学者のようなおっとりとしたグリーンの瞳、線の細い容姿をしているのは、ハロルド系。
哀れな獲物を一瞬で転がすと、身構える間もあたえず、次を組み伏せる。
「は、早い」
毒舌家なのは、戦闘型としては平均的な体型をし、銀髪、碧眼、眉骨のたかいやや険のある面長の美貌を特徴とするアレクサンダー系。
「あ~れ~」
罰を当然と覚悟していたのか、派手な悲鳴のわりには、まったく抵抗せずヴィリー系が床に転がる。派手な悲鳴を上げて見せたのは、彼なりのおちゃめなつきあいであったのだろう。
標準的トランサーと同じ、つまりは戦闘型としては小柄な新兵は、ダークブラウンの髪と瞳、丸顔に頬と鼻の頭にそばかすがちっている。童顔で15、6の少年にしか見えない。が、コモン・ヴィリーの28歳のときの姿だという。
「ひぃ!」
捕まる前に自らヒューマンモードにトランスしたのは、ヴィリー系同様小柄なカッツェ系。赤毛に茶色の瞳、人目をひくものもないが、不愉快にさせる要素も全くない、あくと言うものを持たないおとなしめの顔。戦闘型とは思えない姿だ。
脅える姿に毒気を抜かれ、アルカードは手出しをひかえた。実のところ、ヒューマンモードではこの手は使えない。
「上官への侮辱、または反逆罪の罰則を述べよ」
「上官に一任されております。最小で口頭での注意、最大で銃殺も許可されます」
反射的に応えたのはハロルド系だった。カッツェ系が顔色をかえる。
「ま、まさか、これくらいで」
呟くのはジャック系だ。
「……覚えておくがいい。私はこの程度は大目に見るが、場合によっては上官への侮辱行為は命懸けだ」
アルカードはハロルド系の背中に手を伸ばした。
どこをどうされたのかは、まったく分からなかったが、ヒューマンモードなのはあいかわらずだったが、出力がもどりハロルド系は立ち上がった。
アレクサンダー系がぬけぬけと聴く。
「教官殿、後学のためにお聞きしますが、何をなされたのですか?」
「構造上、ある処置を施すと、ヒューマンモードへ移行し、身体機能の一分がシールされる。これは正規の授業では教えていない。歴戦のジジィは裏技に精通しているのだよ」
「はぁ、根に持ってはったんでっか、その言葉」
のんびりと、ヴィリー系が言う。
「……ジョークだ」
声には感情というものが込められていなかったので、本当はどちらなのかは、彼らの永遠の謎となった。
同じ処置を全員にほどこし、教官は命じた。
「紹介は後回しだ、全員トラップの後片付け。機材に戻せるものは機材に還元するように」
「はい」
全員が敬礼した。恐い教官の前から逃げたかったのか、特製バスケットを抱え、足早に出入り口に殺到する。
新兵一同がメインブリッジを出て一人になると、アルカードは独り言のように上空に語りかけた。
「新しい体の具合はどうだ、ヒルデガルド」
「上々よぉ。と言いたいところだけどぉ、怒ってるのね、アルカード。怒らないでぇ」
スペースシップに組み込まれた疑似人格ヒルデガルドが甘ったるい声で応えた。
「なぜ勝手をさせた?」
「だぁって、軽ーいスキンシップじゃなぁい。つきあってあげないと、かわいそうよぉ。あたしの存在すら失念するような、ひょっこちゃんじゃなーい」
「ヒルデガルド」
「いやん、いつものよーに、ヒルダって呼んで。あんまり無下にすると、コミニケーションとれないわよぉ。あたしだってぇ、なんらかの支障がでるよーなら、トラップ解除するわよぉ。あの子たちにはいい経験よぉ。最悪でもちょっと笑われるだけじゃない。それよりぃ、あれの方はどう?」
軽目に聞かれた重大な問題に、アルカードはそれ以上の追及をやめた。
「大丈夫だ。どれほど外見が同じでも、彼らはやはりちがう。かさならない。出会ったときよりも未熟で、それが外見に出ている」
『彼ら』と出会ったとき、『彼ら』もすでにいくつかの経験をかさね、成熟した精神を持っていた。精鋭部隊として恥ずかしくない『彼ら』と、まだ自らを知らず他人を理解するまでにもいたらない新兵たち、類似する部分はあっても、区別はたやすい。
自分と出会う前、実戦を経験してない、『彼ら』にならないかも知れない彼ら。彼らがどう成長するかはアルカードしだいなのだ。
「荷が重いな……私には……人を教える資格などないというのにな……」
「後片付け、終わりました」
一仕事終えた新兵たちは教官の前に並び敬礼した。
「よろしい。では、対面式を行う。ばかばかしい形式だが、伝統だからな」
アルカードはヒューマンモードにトランスした。ヒューマンモードのアルカードを目にしたとたん、新兵たちにざわめきが起こった。
「なんだ?」
「教官どのはジーニアス系でありますか」
「そうだ、見て分からないか」
「いえ……自分達の同期にもジーニアス系はいましたが……」
「言っておくが、私はまだ子供は造っていない。別の系統の者だろう」
「……はい……わかります……」
こそこそとジャック系がほかのものと内緒話をする。
「ジーニアス系って、穏やかな奴が多いってゆーけどよ、そうでもないんだな」
「はぁ、意外でしたなぁ。けど、言われてみれば、声がジーニアス系でしたわぁ。きっついこと言うもんで、別系統かと思ったりましたわ。先入観ちゅうやつでんな」
アルカードは自分が質問の意味を取り違えた事を覚った。
「……我々は自らの経験によって、思考パターン――マトリクスを変更していく機能がある。よって、ルーツ・マトリクスとは似てもにつかぬ思考パターンを持つ者も出てくる。私はその一例だと思えばいい」
全員同じことを考えていたようで、わずかに腰を引いた。
アルカードは真っすぐハロルド系を見た。何かを言われたわけではないが、ハロルド系は敬礼した。
「自分は、ハロルド系14世代ラリックであります」
「ジャック系14世代ブレッドでーす」
「アレクサンダー系14世代コンラット」
「ヴィリー系13世代ハインリッヒでおます。よろしゅう」
「カッツェ系15世代スタンですぅ」
アルカードは鷹揚に頷いた。
「私はこれから研修期間、諸君らを預かることになる、ジーニアス系12世代アルカードだ。アルカードと呼べばいい」
『ジーニアス系12世代アルカード!』
ヒューマンモードを披露したとき以上のざわめきが起きた。
「あの、ライガ戦で、たった一人で敵陣営を突破し大打撃を与え、味方を勝利に導いたという……」
「うぇっ、バリバリの現役じゃん。なんでそんなのが」
「いや、現在では情勢も落ち着いているので、人材を育てるため優秀な人物を教官にするのは、珍しくないという」
「敵からも狂戦士と恐れられた人ですよぉ。ああ、そんなおっかない人だったなんてぇ」
「はー、こりゃ、箔がつきまんなぁ。自分ら、期待されてるんちゃいます?」
「うふふふ、その英雄に学んで、晴れて研修期間を終えれば、そのままチームとして編成されるのよぉ。光栄でしょう。がんばってねぇ、ひょっこちゃん♪」
いきなり甘ったるい声を掛けられ、新兵一同があたふたと辺りを見回す。
「だ、誰かいるのかよ、教官一人、教習生5人のはずだぜ」
「誰っていわれてもぉ、さっきからあなた達があたしの中にいるのよぉ。姿があった方が話やすいかしらぁ」
「船の! メインコンピューターのマトリクスだ!」
端末機のひとつがすい、と皆の前に出てきて、ホログラフィを落とした。
渦を巻くプラチナブロンド、大きめのグリーンアイ、グラマーなボディにコケティッシュな美貌。小首をかしげて彼女は名乗った。
「あたしが『ヒルデガルド』よん。ヒルダって呼んでね。みんなのお世話を刺せて貰うわぁん。優しくしてね」
実のところ、ヒルデガルドのようなコンピューターとトランサーに大差はない。その気があればヒルデガルドを人型のボディに移植することもできる。トランサーに組み込まれていたマトリクスがメインコンピューターに移植されるように。直にトランサーと接する必要のあるコンピューターは、精神的なケアという役目もあるため、ルーツ・マトリクス――思考パターンの実在のモデル――を持たなくとも、人間的な性格を持っている。最後にして最大のメンバーであろう。
ご丁寧に投げキッスまでするヴィジョンに、思わずアルカードを振り返る新兵一同。
「私の趣味ではないぞ。私と始めてあったとき、彼女はすでにこういう性格だった」
「しかし、メインコンピューターのマトリクスは、乗組員の性格を考慮して組まれるはずですが」
硬質の声に、わずかに動揺をにじませつつコンラットが言う。
「やぁねぇ色々と、特殊な事情があるのよぉ。あんまり男と女の仲を詮索しないでぇ、ヤボねぇ」
「誰が男と女だ」
思わず呟くアルカード。
「あたしよ、あたしぃ。スペースシップのメインコンピューターは女性ってきまってるの。戦闘型トランサーは男でしょう。だーかーら、男と女の仲」
「……トランサーは生殖しない。男性もしくは女性というのは、形式だけのものだ。機能的、能力的差異はない。雌雄に別れいるわけではなく、厳密には性別というものはないし、必要ともしない」
「つめったぁい、アルカードはあたしを愛してないのぉ」
「……ふざけるのは止めたまえ、ヒルデガルド。遊んでる時間は無い。予定を過ぎているのではないか」
「怒らないでよぉ、ヒルダって呼んでってばぁ。そーなの。そろそろ出港準備しないと。もっともぉ、予定どおりの艦はひとつもないみたい。やっぱりぃ、研修船は手間取るのよねぇ、よけいな悪戯しなくともぉ。管制室だって大目に見てくれると思うけどぉ」
アルカードは気を取り直し、新兵に向き直った。
「聞いてのとおりだ。本艦はこれより目的地惑星ミシュカに向かう。これは訓練ではあるが、不測の事態に陥ったときは実戦となる。気を引き締めて行くように。では各員席に着け」
アルカードは船長席につき、ラリックが一番近い右隣りの席に着く。コンラットは中央部左隣りの席。そして――残りは動かない。
「どうした?」
「教官、席――」
「ブレッドが前方左の。ハインリッヒは前方中央。スタンは前方右の席ですよ」
ラリックが席を指示し、他の者が怪訝な表情で教官を仰ぎ見る。
「……各自、目的地につくまでに、配布されたデータをもう一度確認したまえ。規則、目的地、その他にも席位置などが記されていたはずだ。ラリックを副官に任命する。今後そのつもりでいたまえ」
『ラジャー』
思わぬところで手抜きの発覚した3人は合唱した。
全員が席に着いたところでヒルダがすべての計器のチェックにはいる。
「システム、オールグリーンよぉ。いつでも発進できるわ」
しばらく静観していたアルカードは溜め息とともに助言した。
「ハインリッヒ、出港前にすることはなんだ」
「あはは、うっかりしてましたわ」
ハインリッヒは管制塔へのチャンネルを開いた。
「コントロール、こちら、研修船ヒルデガルド。出港許可おねがいします。どーぞ」
『こちらコントロール、どうも研修船は予定より遅れがちだな。ヒルデガルドの出港を許可する。しっかりしごかれてくるんだな 航海の無事と、諸君らの未来の幸運を祈る。どうぞ』
「こちらヒルデガルド。了解しました。以上」
管制塔との交信を終えたハインリッヒが振り返る。
「相手はカッツェ系でしたな。経験積むとああなるんでっか? 出港許可でました」
ゲートが開き、誘導用ビーコンがともる。
「ヒルデガルド、発進」
「らじゃあよぉ」
ビーコンに誘導され、ヒルデガルドの船体が優雅に、漆黒の宇宙に滑り出す。さすがに緊張と不安、期待と歓喜の微妙にミックスされた輝きが新兵たちの瞳にやどる。訓練とはいえ、彼らにとっては初の航海なのだ。だから彼らの気概をそがないように、次のヒルダとアルカードの会話は声を使用しない通信で行われた。
『なんか、前途多難ねぇ。以前のチームは精鋭部隊だったんでしょお。彼らもそうなれるかしらぁ』
『……いまのところは、私に言わせれば愚連隊だな』
『うふふふ。ヒルデガルド愚連隊ってとこかしらぁ。すてきね』
簡単なブービートラップ。誰が仕掛けたのかは、わかり過ぎるほどにわかる。
「……しょうもないことを……」
アルカードは研修船『ヒルデガルド』に足を踏み入れた。すでにマシンモードにトランスしている。マシンモードではアルカードは重装備な姿になる。かつてボディを取り替えなければならなくなったとき、最新の重装備で組んでもらったからだ。ヴィクトリアスのマシンモードとは似ても似つかない。マシンモードには表情もなく、アルカードは気に入っている。
船内にもメインブリッジにも人影はなかったが、ブービートラップがあったからには、無人ではあるまい。どこかに隠れているのだ。船内でモニターできない場所はない。
アルカードは船長席に歩み寄った。腰掛けずに、モニターを操作しようとして――何かが降ってきた。
巨大な急造人物大バスケットが、中に教官を閉じ込めたとき、物陰に隠れていた新兵たちは顔をだした。
「ひゃっほう! やったぜえ」
一人は浮かれて歓声をあげ
「ああ、なんて事を!」
一人は嘆いて顔を覆った。
「はぁ、本当にひっかかったんでっか」
のんびりと意見を述べる者。
「ふむ、この程度のトラップにかかるとは、情けない」
冷静に辛口の意見を述べる者。
「あああああ、怒られますよぅ! 怒られちゃうんだー! 止めたのにー! ひどいぃぃ、本意じゃないのにぃぃ!」
ひたすら脅える者。なかなかバラエティにとんだ顔触れのようだ。
「ビビんなって。親愛を込めたささやかなイタズラじゃねぇか。だいたい、こーんなちゃちなトラップにひっかかるなんて、気が緩んでるんじゃねーの。歴戦の勇士っても、もうスクラップじゃねーの。2世代も前の奴なんざ、ジジィよ、ジジィ」
首謀者らしい者が、得意そうに特製バスケットを引き上げ、驚いた。
「んなばかな、いないぜ!」
あわててバスケットの下に飛び込み、上から降って来た影に捕まった。後わずかに腕を引っ張られれば、ジョイントが破損すると思った瞬間、どこをどうされたのか、意志とは無関係にマシンモードからヒューマンモードにトランスした。おまけに、いきなりパワーダウンし、体を動かすのも難しい。
ヒューマンモードではいっさいの武器は使用できない。
元々はコモンヒューマンとの精神的な摩擦を緩和するため、本来機能別に必要だった姿とは別に、コモンヒューマンを真似たもう一つの姿を造ったのが、『トランサー』の名称のはじまりであるらしい。それまでは『アンドロイド』または『ヒューマノイド』と名称されていたのだ。
ルーツ・マトリクスを持つ者は、モデルとなった者の姿をいまでも忠実に受け継いでいる。ヒューマンモードのアルカードよりはやや低いが、それでも標準的戦闘用トランサーの中では背の高い方で、横幅もがっしりしているのは、ピンクのメッシュを入れた金髪を逆立たせ、やや目尻の下がった青い瞳の、面長の愛嬌のある顔をしている男性体だ。ジャック系の姿だが、このタイプは他の個体との差を出そうとして、ボディをいじる癖がある。
「無理に動くとシステムアウトするぞ」
テノールの、美しいが硬質な声にささやかれ、ジャック系の新兵ははめたつもりが、おびき出されたことを覚った。言われるまでもなく、このパワーダウンした状態で余計なエネルギーを使えば、マトリクスとメモリーを維持するため自動的に他の機能との接続が切れてしまう。寝っ転がっているしかないのだ。
ふとどきな悪戯者を床に転がし、襲撃者が立ち上がる。
「き、教官どの、我々は――」
「言っておくが、直に手を出していないとか、加担した覚えはないとか、言われたから嫌々やった、とかの言い訳なら聴かん。嫌ならばどのような目にあおうとも、加担するべきではない。でなければ、責任逃れと判断する。事実、姿を隠していたのは加担に値する直に手を出した者も、そうでなくとも計画を知っていた者も同罪だ。ひとりの発案者がいても、他のものが妨害、もしくは報告していれば、企みは達成しない。やる事を知っていながら積極的な妨害も、報告もしなかった時点で加担したものと判断する。黙認は奨励と同意だ」
冷徹に言うと、鬼教官は嘆いていたものを捕らえた。
アルカードよりも背が高く、なおかつ横幅はもっと細い。秀でた額を出すようにゆるいウェーブのかかったプラチナブロンドを後になでつけ、戦士というよりは文学者のようなおっとりとしたグリーンの瞳、線の細い容姿をしているのは、ハロルド系。
哀れな獲物を一瞬で転がすと、身構える間もあたえず、次を組み伏せる。
「は、早い」
毒舌家なのは、戦闘型としては平均的な体型をし、銀髪、碧眼、眉骨のたかいやや険のある面長の美貌を特徴とするアレクサンダー系。
「あ~れ~」
罰を当然と覚悟していたのか、派手な悲鳴のわりには、まったく抵抗せずヴィリー系が床に転がる。派手な悲鳴を上げて見せたのは、彼なりのおちゃめなつきあいであったのだろう。
標準的トランサーと同じ、つまりは戦闘型としては小柄な新兵は、ダークブラウンの髪と瞳、丸顔に頬と鼻の頭にそばかすがちっている。童顔で15、6の少年にしか見えない。が、コモン・ヴィリーの28歳のときの姿だという。
「ひぃ!」
捕まる前に自らヒューマンモードにトランスしたのは、ヴィリー系同様小柄なカッツェ系。赤毛に茶色の瞳、人目をひくものもないが、不愉快にさせる要素も全くない、あくと言うものを持たないおとなしめの顔。戦闘型とは思えない姿だ。
脅える姿に毒気を抜かれ、アルカードは手出しをひかえた。実のところ、ヒューマンモードではこの手は使えない。
「上官への侮辱、または反逆罪の罰則を述べよ」
「上官に一任されております。最小で口頭での注意、最大で銃殺も許可されます」
反射的に応えたのはハロルド系だった。カッツェ系が顔色をかえる。
「ま、まさか、これくらいで」
呟くのはジャック系だ。
「……覚えておくがいい。私はこの程度は大目に見るが、場合によっては上官への侮辱行為は命懸けだ」
アルカードはハロルド系の背中に手を伸ばした。
どこをどうされたのかは、まったく分からなかったが、ヒューマンモードなのはあいかわらずだったが、出力がもどりハロルド系は立ち上がった。
アレクサンダー系がぬけぬけと聴く。
「教官殿、後学のためにお聞きしますが、何をなされたのですか?」
「構造上、ある処置を施すと、ヒューマンモードへ移行し、身体機能の一分がシールされる。これは正規の授業では教えていない。歴戦のジジィは裏技に精通しているのだよ」
「はぁ、根に持ってはったんでっか、その言葉」
のんびりと、ヴィリー系が言う。
「……ジョークだ」
声には感情というものが込められていなかったので、本当はどちらなのかは、彼らの永遠の謎となった。
同じ処置を全員にほどこし、教官は命じた。
「紹介は後回しだ、全員トラップの後片付け。機材に戻せるものは機材に還元するように」
「はい」
全員が敬礼した。恐い教官の前から逃げたかったのか、特製バスケットを抱え、足早に出入り口に殺到する。
新兵一同がメインブリッジを出て一人になると、アルカードは独り言のように上空に語りかけた。
「新しい体の具合はどうだ、ヒルデガルド」
「上々よぉ。と言いたいところだけどぉ、怒ってるのね、アルカード。怒らないでぇ」
スペースシップに組み込まれた疑似人格ヒルデガルドが甘ったるい声で応えた。
「なぜ勝手をさせた?」
「だぁって、軽ーいスキンシップじゃなぁい。つきあってあげないと、かわいそうよぉ。あたしの存在すら失念するような、ひょっこちゃんじゃなーい」
「ヒルデガルド」
「いやん、いつものよーに、ヒルダって呼んで。あんまり無下にすると、コミニケーションとれないわよぉ。あたしだってぇ、なんらかの支障がでるよーなら、トラップ解除するわよぉ。あの子たちにはいい経験よぉ。最悪でもちょっと笑われるだけじゃない。それよりぃ、あれの方はどう?」
軽目に聞かれた重大な問題に、アルカードはそれ以上の追及をやめた。
「大丈夫だ。どれほど外見が同じでも、彼らはやはりちがう。かさならない。出会ったときよりも未熟で、それが外見に出ている」
『彼ら』と出会ったとき、『彼ら』もすでにいくつかの経験をかさね、成熟した精神を持っていた。精鋭部隊として恥ずかしくない『彼ら』と、まだ自らを知らず他人を理解するまでにもいたらない新兵たち、類似する部分はあっても、区別はたやすい。
自分と出会う前、実戦を経験してない、『彼ら』にならないかも知れない彼ら。彼らがどう成長するかはアルカードしだいなのだ。
「荷が重いな……私には……人を教える資格などないというのにな……」
「後片付け、終わりました」
一仕事終えた新兵たちは教官の前に並び敬礼した。
「よろしい。では、対面式を行う。ばかばかしい形式だが、伝統だからな」
アルカードはヒューマンモードにトランスした。ヒューマンモードのアルカードを目にしたとたん、新兵たちにざわめきが起こった。
「なんだ?」
「教官どのはジーニアス系でありますか」
「そうだ、見て分からないか」
「いえ……自分達の同期にもジーニアス系はいましたが……」
「言っておくが、私はまだ子供は造っていない。別の系統の者だろう」
「……はい……わかります……」
こそこそとジャック系がほかのものと内緒話をする。
「ジーニアス系って、穏やかな奴が多いってゆーけどよ、そうでもないんだな」
「はぁ、意外でしたなぁ。けど、言われてみれば、声がジーニアス系でしたわぁ。きっついこと言うもんで、別系統かと思ったりましたわ。先入観ちゅうやつでんな」
アルカードは自分が質問の意味を取り違えた事を覚った。
「……我々は自らの経験によって、思考パターン――マトリクスを変更していく機能がある。よって、ルーツ・マトリクスとは似てもにつかぬ思考パターンを持つ者も出てくる。私はその一例だと思えばいい」
全員同じことを考えていたようで、わずかに腰を引いた。
アルカードは真っすぐハロルド系を見た。何かを言われたわけではないが、ハロルド系は敬礼した。
「自分は、ハロルド系14世代ラリックであります」
「ジャック系14世代ブレッドでーす」
「アレクサンダー系14世代コンラット」
「ヴィリー系13世代ハインリッヒでおます。よろしゅう」
「カッツェ系15世代スタンですぅ」
アルカードは鷹揚に頷いた。
「私はこれから研修期間、諸君らを預かることになる、ジーニアス系12世代アルカードだ。アルカードと呼べばいい」
『ジーニアス系12世代アルカード!』
ヒューマンモードを披露したとき以上のざわめきが起きた。
「あの、ライガ戦で、たった一人で敵陣営を突破し大打撃を与え、味方を勝利に導いたという……」
「うぇっ、バリバリの現役じゃん。なんでそんなのが」
「いや、現在では情勢も落ち着いているので、人材を育てるため優秀な人物を教官にするのは、珍しくないという」
「敵からも狂戦士と恐れられた人ですよぉ。ああ、そんなおっかない人だったなんてぇ」
「はー、こりゃ、箔がつきまんなぁ。自分ら、期待されてるんちゃいます?」
「うふふふ、その英雄に学んで、晴れて研修期間を終えれば、そのままチームとして編成されるのよぉ。光栄でしょう。がんばってねぇ、ひょっこちゃん♪」
いきなり甘ったるい声を掛けられ、新兵一同があたふたと辺りを見回す。
「だ、誰かいるのかよ、教官一人、教習生5人のはずだぜ」
「誰っていわれてもぉ、さっきからあなた達があたしの中にいるのよぉ。姿があった方が話やすいかしらぁ」
「船の! メインコンピューターのマトリクスだ!」
端末機のひとつがすい、と皆の前に出てきて、ホログラフィを落とした。
渦を巻くプラチナブロンド、大きめのグリーンアイ、グラマーなボディにコケティッシュな美貌。小首をかしげて彼女は名乗った。
「あたしが『ヒルデガルド』よん。ヒルダって呼んでね。みんなのお世話を刺せて貰うわぁん。優しくしてね」
実のところ、ヒルデガルドのようなコンピューターとトランサーに大差はない。その気があればヒルデガルドを人型のボディに移植することもできる。トランサーに組み込まれていたマトリクスがメインコンピューターに移植されるように。直にトランサーと接する必要のあるコンピューターは、精神的なケアという役目もあるため、ルーツ・マトリクス――思考パターンの実在のモデル――を持たなくとも、人間的な性格を持っている。最後にして最大のメンバーであろう。
ご丁寧に投げキッスまでするヴィジョンに、思わずアルカードを振り返る新兵一同。
「私の趣味ではないぞ。私と始めてあったとき、彼女はすでにこういう性格だった」
「しかし、メインコンピューターのマトリクスは、乗組員の性格を考慮して組まれるはずですが」
硬質の声に、わずかに動揺をにじませつつコンラットが言う。
「やぁねぇ色々と、特殊な事情があるのよぉ。あんまり男と女の仲を詮索しないでぇ、ヤボねぇ」
「誰が男と女だ」
思わず呟くアルカード。
「あたしよ、あたしぃ。スペースシップのメインコンピューターは女性ってきまってるの。戦闘型トランサーは男でしょう。だーかーら、男と女の仲」
「……トランサーは生殖しない。男性もしくは女性というのは、形式だけのものだ。機能的、能力的差異はない。雌雄に別れいるわけではなく、厳密には性別というものはないし、必要ともしない」
「つめったぁい、アルカードはあたしを愛してないのぉ」
「……ふざけるのは止めたまえ、ヒルデガルド。遊んでる時間は無い。予定を過ぎているのではないか」
「怒らないでよぉ、ヒルダって呼んでってばぁ。そーなの。そろそろ出港準備しないと。もっともぉ、予定どおりの艦はひとつもないみたい。やっぱりぃ、研修船は手間取るのよねぇ、よけいな悪戯しなくともぉ。管制室だって大目に見てくれると思うけどぉ」
アルカードは気を取り直し、新兵に向き直った。
「聞いてのとおりだ。本艦はこれより目的地惑星ミシュカに向かう。これは訓練ではあるが、不測の事態に陥ったときは実戦となる。気を引き締めて行くように。では各員席に着け」
アルカードは船長席につき、ラリックが一番近い右隣りの席に着く。コンラットは中央部左隣りの席。そして――残りは動かない。
「どうした?」
「教官、席――」
「ブレッドが前方左の。ハインリッヒは前方中央。スタンは前方右の席ですよ」
ラリックが席を指示し、他の者が怪訝な表情で教官を仰ぎ見る。
「……各自、目的地につくまでに、配布されたデータをもう一度確認したまえ。規則、目的地、その他にも席位置などが記されていたはずだ。ラリックを副官に任命する。今後そのつもりでいたまえ」
『ラジャー』
思わぬところで手抜きの発覚した3人は合唱した。
全員が席に着いたところでヒルダがすべての計器のチェックにはいる。
「システム、オールグリーンよぉ。いつでも発進できるわ」
しばらく静観していたアルカードは溜め息とともに助言した。
「ハインリッヒ、出港前にすることはなんだ」
「あはは、うっかりしてましたわ」
ハインリッヒは管制塔へのチャンネルを開いた。
「コントロール、こちら、研修船ヒルデガルド。出港許可おねがいします。どーぞ」
『こちらコントロール、どうも研修船は予定より遅れがちだな。ヒルデガルドの出港を許可する。しっかりしごかれてくるんだな 航海の無事と、諸君らの未来の幸運を祈る。どうぞ』
「こちらヒルデガルド。了解しました。以上」
管制塔との交信を終えたハインリッヒが振り返る。
「相手はカッツェ系でしたな。経験積むとああなるんでっか? 出港許可でました」
ゲートが開き、誘導用ビーコンがともる。
「ヒルデガルド、発進」
「らじゃあよぉ」
ビーコンに誘導され、ヒルデガルドの船体が優雅に、漆黒の宇宙に滑り出す。さすがに緊張と不安、期待と歓喜の微妙にミックスされた輝きが新兵たちの瞳にやどる。訓練とはいえ、彼らにとっては初の航海なのだ。だから彼らの気概をそがないように、次のヒルダとアルカードの会話は声を使用しない通信で行われた。
『なんか、前途多難ねぇ。以前のチームは精鋭部隊だったんでしょお。彼らもそうなれるかしらぁ』
『……いまのところは、私に言わせれば愚連隊だな』
『うふふふ。ヒルデガルド愚連隊ってとこかしらぁ。すてきね』
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