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国王&冷酷公爵VSマリー&チャールズ

帰る前に

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夜会が行われた次の日の朝、チャールズは執務室で項垂れていた。

「ハァー、今度は何ですか?」

主人が想い人と夜会を楽しんだと思っていた彼の側近ウェスタンは、器用に片眉を上げながら心底面倒臭そうにそう聞いた。

「違うかった。」

チャールズはそう言ったが、その言葉の真意が分からずウェスタンは細い目を更に細めて考える。

「抱いてみたけど相性が悪かったと言う事ですか?」

今回2人が上手くいかなかったのは残念だが、主人が童貞を捨てれたならまぁ一歩前進かとウェスタンはそう片付けた。

「…違う。」

しかしチャールズはさらに元気の無い声でそう言った。
本格的に面倒臭くなったと思いながらも
、ウェスタンは先程より優しく問いかけた。

「じゃぁ、どうしたんですか?」

仕事が溜まってるんですよ?と言う言葉を飲み込みそう聞けば、ようやくチャールズはウェスタンの方を見た。

「出会った時は運命だと…そう思ったんだ。でも昨日会った時は何も思わなかった。何も感じなかったんだ。いや、違うな…何も感じないならその方が良かったのかもしれないな…。むしろ俺の女嫌いセンサーが反応した。」

獅子の様なイカツイ風貌な上に、血塗られた道を歩き続けてきたチャールズがすっかり乙女の様になってしまっている。

ウェスタンはその事に細い目を見開いて驚いた。
滅多に見られないウェスタンの美しい青い瞳が現れたが、チャールズには何にも見えていないようだ。

「夜会の後、マリーアンジュ嬢を送って行かれたから、てっきり上手くいったとばかり思ってました。」

夜会の終わり、チャールズはマリーアンジュの手を取り大広間を出て行っていた。
本来なら護衛も兼ねてウェスタンもそれに付き添うのだが、チャールズは強い。それもかなり。
ここにいる者で彼を傷付けれる者はいないだろうと、ウェスタンはその日一緒に過ごす花を見つけに夜会会場へ戻っていたのだ。

「送ったさ。馬車まで。彼女は俺のせいで国王に呼び立てられ1日緊張し通しだっただろう。労うは当たり前だ。」

「はぁ。で、送り狼にはならなかったという事ですね?」

ウェスタンの言葉にチャールズはまた項垂れる。

「そうだ。違うと感じれば身体の熱は急速に冷えていった。というか、センサーが反応したせいで、ずっと鳥肌が立っていたぐらいだ。」

「そうですか。」

その場の空気がどんどん重く暗くなる。
ウェスタンは仕事を諦め席を立つと、彼には珍しい爽やかな笑顔を見せた。

「この国にいられるのももう明日まです。皆に土産を買う為に城下街へ出掛けませんか?」

「あぁ?」

明らかに乗り気で無い主人を無理やり立たせると、ウェスタンはチャールズの背中を押しながら歩き始めた。

「お、おい!」

「良いから良いから。息抜きも大事ですし、結局この国に来てからどこも見回ってないじゃないですか。異文化を学ぶのも国王の仕事ですよ。」

「ハァー、まぁそうだな。」

ウェスタンが自分を元気付けようとしているのが分かり、チャールズは諦めて自分の足で歩き始めた。

幸いにも、

童貞は面倒臭いですね。

と呟いたウェスタンの声はチャールズの耳には届かなかった。
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