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出会い編

チャールズの過去

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 チャールズ事、チャールズ・ジョン・マッキンダムはアベロン王国に接した隣国の王だった。
 26歳で早々と国王に君臨した彼は列国の中でも一番年若い王だ。

 マリーが聞けばその事にではなく、彼が26歳だという事に驚いただろうが、彼の見た目が30歳後半に見えようが26歳なものは26歳である。

 彼の生い立ちは複雑だ。
 第一王妃を母に持つ彼は、産まれた時から将来は国を背負って立つ事は決定事項だった。
 こんなにも早く国王になる予定では無かったのだが、一重に元国王、つまりチャールズの父親が愚王だったせいだ。

 国民を奴隷の様に扱っていたチャールズの父は、国民から厳しい税を取り立て、そのくせ恩恵は何も与えなかった。

 湯水の様に金を使い、気に食わない者がいれば拷問だ処刑だと喚き散らし、手の付けられない彼は愚王の見本の様な人物だった。

 チャールズは幼い頃からそんな父親に虐待を受けて育っていた。
 泣くとは何ごとだ強い男になれとチャールズを殴って蹴って罵って育て上げた。
 王妃はそんな王に怯え、息子に救いの手を差し伸べる事は無かった。

 しかし、チャールズは決して腐らなかった。
 父を反面教師とし、自分は民のための政治をすると勉強に励み、身体を鍛え、その時を静かに待っていた。
 そんな彼に転機が訪れたのはちょうど彼が20歳の誕生日を迎えたその日だった。

 彼の叔父ウィリアム・バードン公爵がチャールズの後ろ盾となりクーデターを起こす計画を打ち明けてきたのだ。
 その時チャールズはすでに隣国アベロンから協力を得る手筈を整えていた。

 チャールズの母イザベルはアベロン王国出身で、国王の叔母にあたる人だった。

 そのつてを使い協力をこぎ着けたチャールズだったが、もちろん母との絆だけではアベロンも動いてはくれない。
 アベロン王国は金と食糧を提供し、さらに兵を貸し出す代わりに対価をチャールズに求めた。

 チャールズは自分が国王になったのならこの様な政策を立て国を回復し、必ず恩を返すと約束をし、アベロンはそれを承諾した。

 入念な準備を整えた後、国王と国王派の人間は一掃されたのだった。
 若き王が産まれた背景は血塗られていたが、国民は希望を抱いた。
 新しい王を歓迎し、復興のため皆で必死で働いた。特にチャールズはほとんど眠る事なく働き続けた。皆の頑張りで次第に国は活気を取り戻していったのだ。

 それから5年、チャールズはアベロン王国に訪れていた。
 あの時受けた恩に対しての対価を払う為に。
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