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番外編

イサキオスの誕生日

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イサキオスの誕生日は2月14日だ。
フロランティル王国にもバレンタインデーはある。
なぜあるのか、なぜ日本と同じ日なのか、、謎ではあるが、乙女ゲームの中でバレンタインがあったのと関わりがあるのかもしれない。

今日は10日、バレンタインに1番近い学園の休日だ。
お菓子作りが上手なイザベルの家で女子3人集まり、バレンタインに向けて燃えていた。

「イザベルのお家って広いよね!私の家だって広い方だと思うけど、ここはもう宮殿って感じ。」

私はキョロキョロとする。
シャルロットも頷く。

「そんな事より始めるわよ!2種類か3種類ぐらいは作りたいんだから。」

イザベルの提案で、チョコレートクッキー、マフィン、トリュフを作る予定だ。
本命には3種類をちょっとずつセットにして可愛くラッピングし、義理用に大量にクッキーを焼こうと話した。

「ほら、自分の物は自分で作るのよ、ちゃんと見てないと出来ないわよ!」

イザベルは粉を振るったり、計量したり、テキパキ動いていく。
今日は皆汚れても良いように、身軽な服装で集まっていた。
私は男装の時の服装で行こうとして、リサに止められ、ワンピースを着せられている。

「イザベルすごーい。さすがに手慣れてるね。」

「ティーナ、感心してないでちゃんと手を動かしなさい!」

イザベルも最近私をティーナと呼ぶ。

「はぁーい。」

今日は何だかお母さんのようだ。
しばらくして、チョコレートクッキーが完成した。
イザベルのはお店に出しても良いぐらいの出来だった。
シャルロットはそれに比べれば見劣りするが、良い出来だと思う。
そして、私のはというと、、

「ねぇ、私の手本を本当に見てたの?」

「、、うん。」

シャルロットが私のクッキーに手を伸ばす。

「えっ?ティーナのだって綺麗じゃない。見た目だけで言えば1番かもしれないわ。」

そして一口噛んだとたん、ボキッ!!クッキーとは思えないような咀嚼音が響きわたる。
シャルロットは固まった。

「、、ティーナ?あなた乾パンを作ったの?しかも何百年でも保ちそうな最高級の乾パンね。」

「乾パン何て作った事ないよ、、うぅっ、こんなのさすがに渡せれないよ。」

私は泣きべそをかく。

「あなた魔法のセンスは抜群なのに、こういった事はてんで駄目なのね。」

イザベルはため息を吐いた。

「分かったわ。マフィンは手取り足取り教えてあげるわ。」

こうして、イザベル先生直伝のマフィン作りが始まった。
今は焼き上がったマフィンを冷ましているところだ。
トリュフを作る前に一度休憩しようと、メイドさんに紅茶を入れて貰い、3人は食堂でお茶を始めた。

「シャルロットはカイトに渡すんでしょ?」

私はシャルロットとカイトが今どういう関係なのか気になっていた。
しかし、上手くいってなかったらと思うと聞けなかったのだ。
今回バレンタインを一緒に作ろうとなり、彼と良いお付き合いをしている事を知った。

「えぇ、もちろんよ。でも簡単に渡したりしないわ。帰りの時ギリギリで渡すの!くれると思ってたのに貰えないと思ってガッカリしたところで渡す。あぁ考えただけでも悶えるわ。」

シャルロットは自分の身体を抱きしめて悶えている。
イザベルが冷たい目で言った。

「シャルロット、、あなたはまともな人間だと思ってたのに、想像以上に変態ね。」

シャルロットはキョトンとした。

「違うわ。彼を愛してるだけなの。」

イザベルと私は青い顔になる。
何だかホラー映画一本分見た時の恐怖感と重なった。

「愛し方は人それぞれだわ。」

シャルロットは優しく微笑んだ。
逆に怖い。
私は話題を変えた。

「イザベルは最近ヘンリーとどうなの?仲良さげだよね?」

イザベルは嬉しそうな顔をした後に、少し不満そうな顔になった。

「確かに前より仲良くなった気はするの。でも、何だか刺激が無いというか、、贅沢な話しなのよ。分かってるの、分かってはいるのよ。」

イザベルは下を向いて真っ赤になった。
消え入る様な声で、

「でも、私、、彼とキスもした事もないの。」

私とシャルロットはイザベルを抱きしめた。
何と可愛い生き物なのだろう。

「ちょっとやめなさいよ!」

イザベルが急に元気になる。やはり彼女は怒っている時の方が彼女らしい。

「あんたはどうなの?」

「えっ?私?私は、、特に変わりないよ。あぁ、でも、、。」

私とイサキオスは付き合い出したのだが、特に関係が変わった気はしなかった。元々イサキオスはベタベタ触って来るタイプだったので、手を繋いだり、頭を撫でたり、さらにスキンシップが増えたとは感じないのだが。

「はぁ、、騎士の訓練に前から一緒に行ってたでしょ?今でも時間があれば一緒に行ってるんだけど、訓練にならないんだよ。」

そう、イサキオスは私に向かって木刀を振るえなくなってしまったのだ。
むしろ男だと思っていた時の訓練で、自分が振った木刀が私に当たり青アザを作ってしまった事を思い出しては落ち込む始末。

「それはしょうがないわ。私もヘンリー様に木刀で向かって行けと言われれば無理だもの。むしろ何でティーナが向かって行けるのかが謎だわ。」

イザベルが得意のバカにした顔で私を見る。

「だって、まだ私イサキオスに一回だって勝ったこと無いのに。木刀が当たれば罪悪感も出るかもしれないけど、今はただ悔しくて悔しくて。戦ってもくれないなんて、、勝ち逃げだなんてあんまりだ。」

イザベルは心底分からないといった表情になり、シャルロットは自分が優位に立てない関係は嫌と言った。
彼女はそこで思い出した様に口を開く。

「それにしても、イサキオス様もっと独占欲の塊なのかと思ったわ。ティーナとの関係がアルルーノ様もマグリット様もびっくりするぐらい変わらなかったけど、イサキオス様怒ったりしないわね。」

私は首を傾げた。

「独占欲の塊?イサキオスが?そんな人かなぁ?おおらかで優しくて、もう何かお父さんみたいな人だよ。」

それを聞いたイザベルが嘆息する。

「それ本人に言ったら落ち込むからやめなさいよ。」

「???」

私は褒めたつもりだったのだが。

「さて始めますか?」

イザベル先生によるお菓子作りは佳境を迎えた。
私はチョコレートクッキー以外は上手に作れたので、マフィンとトリュフをセットにして彼に贈る事にした。

そして、誕生日プレゼントには、、フフフッ、彼は喜んでくれるかな?
私達3人は愛する人の為、心を込めてラッピングするのだった。
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