上 下
33 / 94

女の子はお喋りがお好き

しおりを挟む
夏休みが終わり、待ちに待ったクラス替えの発表だ。

私の横でイザベルが目を瞑り、手を胸の前で組み、ブツブツ言っている。
私はもう結果を見ているので、Aクラスにイザベルが入った事を知っているのだが、、。

「ねえ、見ないの?」

私は何度目かのセリフを吐く。

「見るわよ。見るに決まってるじゃない。」

私を睨む。
睨んだついでに見れば良いのに、また目を瞑る。
あとどれだけここで居なくてはいけないのだろう。
私はため息を吐いた。
シャルロットは髪の毛を弄りながら、自分の世界に入っているようだ。

後ろでパタパタと足音がしたので、顔だけそちらに振り返るとアルが私の背中に抱き付いて来た。

「久しぶり!!元気にしてた~?」

勢いが強過ぎて私がヨロけると、誰かが私の腕を取って支えてくれる。
イサキオスだと疑わなかった私は、前を見て、ゲッと漏らしてしまう。
私の腕を取ったのは、マグリットだった。

私の言動が彼の癇に障ったのか、腕を払われてしまい、アルと一緒に倒れる。

バターン!!!!

「ヴェッ。し、死んだ。」

アルが上で笑っている。
、、早くどいてくれ。
少し遅れてイサキオスとヘンリーも来た。

「何やってるんだ?」

イサキオスが私を立たせてくれて、付いた砂を払ってくれる。
今朝も短パンを履かされていた私の膝小僧は、擦りむけて血が出ていた。

彼はその傷を見て眉をひそめた。
光魔法で治療してくれたので、傷はすぐに治ったのだが、、
でも私は見た!彼が私の膝小僧を舐めようとして、思い出した様な顔になり、魔法をかけた事を。

思い出さなかったら舐める気だったのですか!?殺す気ですか!?ビックリして私を殺す気ですか!?

私は人知れず今悶えている。

「あー!今回皆クラス一緒じゃん!」

アルの声で私は引き戻された。
イザベルが弾かれたように目を開き、クラス替えの用紙を凝視していた。

「やったぁぁぁ!!!」

悪役令嬢は歓喜した。
可愛いなと思っていたら、私に向かって走って来た。
このまま私を抱きしめるつもりだ。

不本意だろうが、彼女にとって私は勉強に関しては師匠だ。
二人三脚でやってきた。途中イサキオスが混じって三人四脚だったが。
だから、この行動も納得は出来るけど。

私を女と認識してるのは、一部の人だけだよー!!!声にならない叫び声を上げたが、もちろん彼女には届かない。
私は焦った結果、イザベルを綺麗に避けた。
目的の人が急に消え、つんのめったイザベルは、私の後ろにいたヘンリーに抱き付いてしまう。

ヘンリーは驚いていたが、まんざらでもない顔で彼女を抱きしめ、頭を撫でていた。

「良く頑張ったね。」

と言ったのが聞こえた。
イザベルは真っ赤な顔に涙目で私を睨んでいたが、私は悪くない。
あそこで私達が抱き合えば大事故だ。
わたしはその事を目と口パクで訴える。

悪いのはどっち?

、、伝わったかな??
私は満足して教室に入ったが、結局後から来たイザベルに扇子でしこたま叩かれた。

ねぇ、悪いのはどっち??

その日の昼休み、今日は女の子だけで集まっていた。
本当はヘンリーと今後の話しがしたかったのだけど、ニマニマ顔のイザベルとシャルロットに捕まったのだ。

「何?」

悪どい笑い方をする2人に、半眼で私は聞いた。
イザベルが先に口を開いた。

「ダンスパーティー誘ったの?」

あぁ、2人のニマニマはそれだったか。私の悩みも知らずに楽しみやがって。

「誘ってない。」

「「いつ誘うの?」」

2人の声が重なった。

「、、誘う前に誘われた。」

2人は今度はキョトンとする。

「はぁ?誘われた?」

「そう誘われた、、。」

「えっ?もう女ってバレたの?」

「バレてない。」

この答えにもう2人はパニックだ。

「えっ?クリスとして誘われてるのよね?男の子としてでしょ?えっ、タキシード同士で踊ろうぜって事?」

「、、そう。」

イザベルとシャルロットは見つめ合っている。
2人はイサキオスがクリスを好きな事は気付いているが、男同士の恋愛はやはり偏見がある。
親族が集まるようなダンスパーティーのパートナーに、自分からクリスを誘うのは想像していなかった。
しかも夏休み明けて初日。
彼はクリス以外眼中にないのだ。

2人が考えている間に、クリスの顔色はどんどん悪くなる。

「イサキオスは男しか愛せない人なんだよ、、。」

2人はギョッとする!

「チョット落ち着きなさいよ!!」

「僕は、僕は男装出来ても、男にはなれないんだよー!!!」

心に溜まっていたものが吐き出される。

「いや、イサキオスは男が好きなんじゃなくてあなたが好きなんでしょ?誰でも良いわけじゃないじゃない!」

私は2人を見た。

「それってどういう意味なの?性別なんてどっちでも良い、好きなものは好きって事??それってもう人間じゃなくても僕なら良いって事?むしろ僕の事人間って思ってない!?ワンコ的に好きなの!?」

「ちょ、ちょっと落ち着きなさいよ。」

2人が私の背中を撫でる。

「ワンコって、ティーナはワンコじゃないでしょ?ワンコっぽいだけで人間よ!」

シャルロットは慰めているつもりだ。

「まぁ良いじゃない。とりあえずパートナーになったんだから。どうせこっちから誘っても、男のままで誘うつもりだったんでしょ?結果オーライじゃない。」

イザベルはめんどくさくなった様だ。

「違うもん、、パーティー会場に一緒に行こうって誘うつもりだったんだもん。ダンスを一緒にって誘うのは、当日全部打ち明けてからのつもりだったんだもん。」

イザベルは、腐った私を放り出して話題を変える。

「シャルロットはどうするの?誰かに誘われるのを待つの?」

シャルロットなら引く手数多だろう。
私は腐ったまま話しを聞く。

「そんな事しないわ。フフフッ。私誘いたい殿方がいるの。」

シャルロットのそんな話しは初めて聞く。

「「誰なの!?」」

私は復活した。

「フフフッ。カイト様よ。」

イザベルはしばらく考えて、誰だか分からないと言った。
私はキラキラした目になった。

「えっ!?カイト!!シャルロット、カイトが好きなの!?」

シャルロットは慌てる。

「ちょっとティーナ声が大きい!」

「だって、ビックリして。」

「分かるわ。彼あまり目立たないものね。」

「違う違う。カイトの事めちゃくちゃ可愛いと思ってたからビックリしたの!」

シャルロットの顔がほころんだ。

「えっ、ティーナ分かるの?」

「分かる分かる。キラキラした淡いブロンドの髪に、幼い顔立ちだけど整ってるし、眼鏡にそばかすなんて堪らんよね。」

カイトは入学からAクラスでずっといる。クラスでも1番真面目で、正義感が強く、とても優秀な人だと思う。
仲は良い方だし、小動物の様に可愛い彼は、私の癒しだった。

「そうなのそうなの。もう堪らな過ぎて、けしからん奴なの。」

イザベルが冷たい目で私達を見ている。

「あっ、でもカイト153㎝って言ってたよ?シャルロット160㎝ぐらい今あるよね?」

シャルロットはシュンとした。

「そうなの。ぺったんこのヒールを履いても私が高くなってしまうから、彼がダンスをリードするのが大変になってしまうわ。」

でも彼が良いのと言って、シャルロットが笑った。

恋には障害が付き物だ。
私は性別、シャルロットは背丈、イザベルは、、性格?

「よし!!頑張るぞ!!」

私は急に立ち上がった。
こんなに美しいシャルロットでも悩むのだ、私が悩むのは当然だと思えた。

急に元気を取り戻した私を、イザベル呆れ顔で見ていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

盲目のラスボス令嬢に転生しましたが幼馴染のヤンデレに溺愛されてるので幸せです

斎藤樹
恋愛
事故で盲目となってしまったローナだったが、その時の衝撃によって自分の前世を思い出した。 思い出してみてわかったのは、自分が転生してしまったここが乙女ゲームの世界だということ。 さらに転生した人物は、"ラスボス令嬢"と呼ばれた性悪な登場人物、ローナ・リーヴェ。 彼女に待ち受けるのは、嫉妬に狂った末に起こる"断罪劇"。 そんなの絶対に嫌! というかそもそも私は、ローナが性悪になる原因の王太子との婚約破棄なんかどうだっていい! 私が好きなのは、幼馴染の彼なのだから。 ということで、どうやら既にローナの事を悪く思ってない幼馴染と甘酸っぱい青春を始めようと思ったのだけどーー あ、あれ?なんでまだ王子様との婚約が破棄されてないの? ゲームじゃ兄との関係って最悪じゃなかったっけ? この年下男子が出てくるのだいぶ先じゃなかった? なんかやけにこの人、私に構ってくるような……というか。 なんか……幼馴染、ヤンデる…………? 「カクヨム」様にて同名義で投稿しております。

魔性の悪役令嬢らしいですが、男性が苦手なのでご期待にそえません!

蒼乃ロゼ
恋愛
「リュミネーヴァ様は、いろんな殿方とご経験のある、魔性の女でいらっしゃいますから!」 「「……は?」」 どうやら原作では魔性の女だったらしい、リュミネーヴァ。 しかし彼女の中身は、前世でストーカーに命を絶たれ、乙女ゲーム『光が世界を満たすまで』通称ヒカミタの世界に転生してきた人物。 前世での最期の記憶から、男性が苦手。 初めは男性を目にするだけでも体が震えるありさま。 リュミネーヴァが具体的にどんな悪行をするのか分からず、ただ自分として、在るがままを生きてきた。 当然、物語が原作どおりにいくはずもなく。 おまけに実は、本編前にあたる時期からフラグを折っていて……? 攻略キャラを全力回避していたら、魔性違いで謎のキャラから溺愛モードが始まるお話。 ファンタジー要素も多めです。 ※なろう様にも掲載中 ※短編【転生先は『乙女ゲーでしょ』~】の元ネタです。どちらを先に読んでもお話は分かりますので、ご安心ください。

【完結】ヒロインに転生しましたが、モブのイケオジが好きなので、悪役令嬢の婚約破棄を回避させたつもりが、やっぱり婚約破棄されている。

樹結理(きゆり)
恋愛
「アイリーン、貴女との婚約は破棄させてもらう」 大勢が集まるパーティの場で、この国の第一王子セルディ殿下がそう宣言した。 はぁぁあ!? なんでどうしてそうなった!! 私の必死の努力を返してー!! 乙女ゲーム『ラベルシアの乙女』の世界に転生してしまった日本人のアラサー女子。 気付けば物語が始まる学園への入学式の日。 私ってヒロインなの!?攻略対象のイケメンたちに囲まれる日々。でも!私が好きなのは攻略対象たちじゃないのよー!! 私が好きなのは攻略対象でもなんでもない、物語にたった二回しか出てこないイケオジ! 所謂モブと言っても過言ではないほど、関わることが少ないイケオジ。 でもでも!せっかくこの世界に転生出来たのなら何度も見たイケメンたちよりも、レアなイケオジを!! 攻略対象たちや悪役令嬢と友好的な関係を築きつつ、悪役令嬢の婚約破棄を回避しつつ、イケオジを狙う十六歳、侯爵令嬢! 必死に悪役令嬢の婚約破棄イベントを回避してきたつもりが、なんでどうしてそうなった!! やっぱり婚約破棄されてるじゃないのー!! 必死に努力したのは無駄足だったのか!?ヒロインは一体誰と結ばれるのか……。 ※この物語は作者の世界観から成り立っております。正式な貴族社会をお望みの方はご遠慮ください。 ※この作品は小説家になろう、カクヨムで完結済み。

悪役令嬢は冷徹な師団長に何故か溺愛される

未知香
恋愛
「運命の出会いがあるのは今後じゃなくて、今じゃないか? お前が俺の顔を気に入っていることはわかったし、この顔を最大限に使ってお前を落とそうと思う」 目の前に居る、黒髪黒目の驚くほど整った顔の男。 冷徹な師団長と噂される彼は、乙女ゲームの攻略対象者だ。 だけど、何故か私には甘いし冷徹じゃないし言葉遣いだって崩れてるし! 大好きだった乙女ゲームの悪役令嬢に転生していた事に気がついたテレサ。 断罪されるような悪事はする予定はないが、万が一が怖すぎて、攻略対象者には近づかない決意をした。 しかし、決意もむなしく攻略対象者の何故か師団長に溺愛されている。 乙女ゲームの舞台がはじまるのはもうすぐ。無事に学園生活を乗り切れるのか……!

美醜逆転世界でお姫様は超絶美形な従者に目を付ける

朝比奈
恋愛
ある世界に『ティーラン』と言う、まだ、歴史の浅い小さな王国がありました。『ティーラン王国』には、王子様とお姫様がいました。 お姫様の名前はアリス・ラメ・ティーラン 絶世の美女を母に持つ、母親にの美しいお姫様でした。彼女は小国の姫でありながら多くの国の王子様や貴族様から求婚を受けていました。けれども、彼女は20歳になった今、婚約者もいない。浮いた話一つ無い、お姫様でした。 「ねぇ、ルイ。 私と駆け落ちしましょう?」 「えっ!? ええぇぇえええ!!!」 この話はそんなお姫様と従者である─ ルイ・ブリースの恋のお話。

転生悪役令嬢、物語の動きに逆らっていたら運命の番発見!?

下菊みこと
恋愛
世界でも獣人族と人族が手を取り合って暮らす国、アルヴィア王国。その筆頭公爵家に生まれたのが主人公、エリアーヌ・ビジュー・デルフィーヌだった。わがまま放題に育っていた彼女は、しかしある日突然原因不明の頭痛に見舞われ数日間寝込み、ようやく落ち着いた時には別人のように良い子になっていた。 エリアーヌは、前世の記憶を思い出したのである。その記憶が正しければ、この世界はエリアーヌのやり込んでいた乙女ゲームの世界。そして、エリアーヌは人族の平民出身である聖女…つまりヒロインを虐めて、規律の厳しい問題児だらけの修道院に送られる悪役令嬢だった! なんとか方向を変えようと、あれやこれやと動いている間に獣人族である彼女は、運命の番を発見!?そして、孤児だった人族の番を連れて帰りなんやかんやとお世話することに。 果たしてエリアーヌは運命の番を幸せに出来るのか。 そしてエリアーヌ自身の明日はどっちだ!? 小説家になろう様でも投稿しています。

美幼女に転生したら地獄のような逆ハーレム状態になりました

市森 唯
恋愛
極々普通の学生だった私は……目が覚めたら美幼女になっていました。 私は侯爵令嬢らしく多分異世界転生してるし、そして何故か婚約者が2人?! しかも婚約者達との関係も最悪で…… まぁ転生しちゃったのでなんとか上手く生きていけるよう頑張ります!

誰からも愛されない悪役令嬢に転生したので、自由気ままに生きていきたいと思います。

木山楽斗
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢であるエルファリナに転生した私は、彼女のその境遇に対して深い悲しみを覚えていた。 彼女は、家族からも婚約者からも愛されていない。それどころか、その存在を疎まれているのだ。 こんな環境なら歪んでも仕方ない。そう思う程に、彼女の境遇は悲惨だったのである。 だが、彼女のように歪んでしまえば、ゲームと同じように罪を暴かれて牢屋に行くだけだ。 そのため、私は心を強く持つしかなかった。悲惨な結末を迎えないためにも、どんなに不当な扱いをされても、耐え抜くしかなかったのである。 そんな私に、解放される日がやって来た。 それは、ゲームの始まりである魔法学園入学の日だ。 全寮制の学園には、歪な家族は存在しない。 私は、自由を得たのである。 その自由を謳歌しながら、私は思っていた。 悲惨な境遇から必ず抜け出し、自由気ままに生きるのだと。

処理中です...