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学園編
勇者との出会い
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その日の授業が終わり、皆が帰りの支度を始めていた。
この学園に通う半分の生徒は寮生で、半分ぐらいが通いの生徒だ。
「ライズ帰ろ?」
「ふぁ~。うん、帰ろうか。」
眠そうに目をこするライズを愛でながら、私は教室を後にした。
ルルド学園は全生徒600人程、一学年ごとに6クラスあり、ABCと成績によりクラスが分かれている。
私は学園長の娘という事で、幼少期から素晴らしい教育を受ける環境下に恵まれていた。
私がAクラスに入れた事は必然であり、当たり前にこなさなければいけない事だ。
首席をエミリアに奪われるなど本当はあってならないのに。
「リリー?ほら行くよ?」
「うん。」
ライズは寮生だ。
通えない事も無いと思うのだが、叔父さん夫婦に一人暮らしを経験したいとお願いしたとか。
もしかしたら学園を卒業したら叔父さん達の元へは戻らず、そのまま家を出る来なのかもしれない。何となくそんな気がする。
「もう、ほら。」
またぼんやりしてしまった私の手をライズが握りしめた。
こうやって手を握る事を許してくれたのはいつだっただろうか?
「ライズ、ありがとう。」
「…??」
やたらニコニコしながらどさくさに紛れて腕を組んだ私をライズは退けたりしなかった。
どこまでなら許してくれる?私はいつもこうやって彼との距離を計っている。
その時廊下の向こうを見た事ない人が歩いてきたのが見えた。
その横にはタイル先生が何やら真剣な顔で説明しながら寄り添っている。
「あぁ、君達ちょうど良かった。」
「「???」」
タイル先生に手招きされ、私達は小走りで向かった。
「突然だが明日からAクラスに入る事になったグラム君だ。仲良くしてあげなさい。」
「グラムです。よろしくお願いします。」
そう挨拶してきた彼の容姿に驚いた。
美しいブロンドに私より少し明るい空色の瞳、彫りが深くはっきりした顔立ちなのにそこに爽やかさが加わって…当然ライズの方がカッコ良いけど。
背も高く180は超えているだろうか?
身体も鍛え抜かれている事がうかがえる。
「ルルド・リリアンよ。よろしくね。」
「…ロドニー・ライズ。です。」
私達が揃って挨拶すると、グラムは心から嬉しそうに笑いながら私の手を握ってきた。
「リリアンさん!何て綺麗な人なんだ!」
私の右手をしっかり両手で握り込んだグラムは嬉しそうにブンブンと振ってくる。
「ちょ、ちょ、ちょっと!」
あまりの勢いに私が慌てていると、ライズの手がグラムの手を激しく払い除けた。
「嫌がってるだろ。」
「ライズ…。」
私の前に立ちはだかった彼の背中から禍々しい黒いオーラが見えた気がしたが、きっと気のせいだろう。
ライズがどんな顔をしているのか分からないが、グラムが険しい顔でライズを睨み付けている。
「こらこら君達、これから同じクラスで過ごすのだから仲良くしたまえ。」
タイル先生の一声でその場に漂う不穏な空気が霧散した。
「リリー、もう行こう。」
「えっ、あぁそうね。では皆様さようなら。」
ライズは先生に挨拶もせずに私の手を引っ張りながらズンズン進んで行く。
グラムが名残惜しそうな顔をしていたが、先生に連れられて彼もその場を後にした。
「ライズ、ねぇ待って!少し早い!」
学園の入り口を出てもまだライズは前を向いたまま私を引っ張っていた。
嬉しいけど、その背中が何だか少し怖くて私はたまらず声を上げていた。
「…あぁ、ごめん。」
そう言うとライズの足取りが段々ゆっくりなものへと変わっていく。
少し元気なくうなだれた彼の顔を覗き込むと、今まで見た事ない様な顔をしていた。
「ライズ?落ち込んでいるの?」
「…分からない。何だろう、この気持ち。」
「ライズ…。ねぇ聞いて?私、ライズが大好きよ?」
「…知ってる。」
緊張した面持ちで伝えた言葉をライズはあっさりと肯定した。
嫉妬じゃなかったのだろうか?
「じゃぁ、どうしたの?」
優しく問いかけてみたが、ライズはフルフルと首を振った。
綺麗な黒髪が彼の頭の動きに合わせてサラサラと流れるのをぼんやり見ながら、私は少し落胆していた。
結局ライズの秘密を教えてはくれないのだ。
きっとその事が今回の事に繋がっているのだと思う。
「帰ろっか?」
「…うん。」
今度は私からライズの手を優しく握った。父に頼み込んで私も寮生活を送っているので、あと少しだけ一緒に歩くことができる。
「ねぇ、ライズ。」
「…何?」
「いつか私に話してね。」
「…。」
ライズは答えなかったけど、でもいつか答えてくれるという確信が私の中にあった。
だってライズが人間らしい表情をするのは私の前だけだから。
この学園に通う半分の生徒は寮生で、半分ぐらいが通いの生徒だ。
「ライズ帰ろ?」
「ふぁ~。うん、帰ろうか。」
眠そうに目をこするライズを愛でながら、私は教室を後にした。
ルルド学園は全生徒600人程、一学年ごとに6クラスあり、ABCと成績によりクラスが分かれている。
私は学園長の娘という事で、幼少期から素晴らしい教育を受ける環境下に恵まれていた。
私がAクラスに入れた事は必然であり、当たり前にこなさなければいけない事だ。
首席をエミリアに奪われるなど本当はあってならないのに。
「リリー?ほら行くよ?」
「うん。」
ライズは寮生だ。
通えない事も無いと思うのだが、叔父さん夫婦に一人暮らしを経験したいとお願いしたとか。
もしかしたら学園を卒業したら叔父さん達の元へは戻らず、そのまま家を出る来なのかもしれない。何となくそんな気がする。
「もう、ほら。」
またぼんやりしてしまった私の手をライズが握りしめた。
こうやって手を握る事を許してくれたのはいつだっただろうか?
「ライズ、ありがとう。」
「…??」
やたらニコニコしながらどさくさに紛れて腕を組んだ私をライズは退けたりしなかった。
どこまでなら許してくれる?私はいつもこうやって彼との距離を計っている。
その時廊下の向こうを見た事ない人が歩いてきたのが見えた。
その横にはタイル先生が何やら真剣な顔で説明しながら寄り添っている。
「あぁ、君達ちょうど良かった。」
「「???」」
タイル先生に手招きされ、私達は小走りで向かった。
「突然だが明日からAクラスに入る事になったグラム君だ。仲良くしてあげなさい。」
「グラムです。よろしくお願いします。」
そう挨拶してきた彼の容姿に驚いた。
美しいブロンドに私より少し明るい空色の瞳、彫りが深くはっきりした顔立ちなのにそこに爽やかさが加わって…当然ライズの方がカッコ良いけど。
背も高く180は超えているだろうか?
身体も鍛え抜かれている事がうかがえる。
「ルルド・リリアンよ。よろしくね。」
「…ロドニー・ライズ。です。」
私達が揃って挨拶すると、グラムは心から嬉しそうに笑いながら私の手を握ってきた。
「リリアンさん!何て綺麗な人なんだ!」
私の右手をしっかり両手で握り込んだグラムは嬉しそうにブンブンと振ってくる。
「ちょ、ちょ、ちょっと!」
あまりの勢いに私が慌てていると、ライズの手がグラムの手を激しく払い除けた。
「嫌がってるだろ。」
「ライズ…。」
私の前に立ちはだかった彼の背中から禍々しい黒いオーラが見えた気がしたが、きっと気のせいだろう。
ライズがどんな顔をしているのか分からないが、グラムが険しい顔でライズを睨み付けている。
「こらこら君達、これから同じクラスで過ごすのだから仲良くしたまえ。」
タイル先生の一声でその場に漂う不穏な空気が霧散した。
「リリー、もう行こう。」
「えっ、あぁそうね。では皆様さようなら。」
ライズは先生に挨拶もせずに私の手を引っ張りながらズンズン進んで行く。
グラムが名残惜しそうな顔をしていたが、先生に連れられて彼もその場を後にした。
「ライズ、ねぇ待って!少し早い!」
学園の入り口を出てもまだライズは前を向いたまま私を引っ張っていた。
嬉しいけど、その背中が何だか少し怖くて私はたまらず声を上げていた。
「…あぁ、ごめん。」
そう言うとライズの足取りが段々ゆっくりなものへと変わっていく。
少し元気なくうなだれた彼の顔を覗き込むと、今まで見た事ない様な顔をしていた。
「ライズ?落ち込んでいるの?」
「…分からない。何だろう、この気持ち。」
「ライズ…。ねぇ聞いて?私、ライズが大好きよ?」
「…知ってる。」
緊張した面持ちで伝えた言葉をライズはあっさりと肯定した。
嫉妬じゃなかったのだろうか?
「じゃぁ、どうしたの?」
優しく問いかけてみたが、ライズはフルフルと首を振った。
綺麗な黒髪が彼の頭の動きに合わせてサラサラと流れるのをぼんやり見ながら、私は少し落胆していた。
結局ライズの秘密を教えてはくれないのだ。
きっとその事が今回の事に繋がっているのだと思う。
「帰ろっか?」
「…うん。」
今度は私からライズの手を優しく握った。父に頼み込んで私も寮生活を送っているので、あと少しだけ一緒に歩くことができる。
「ねぇ、ライズ。」
「…何?」
「いつか私に話してね。」
「…。」
ライズは答えなかったけど、でもいつか答えてくれるという確信が私の中にあった。
だってライズが人間らしい表情をするのは私の前だけだから。
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