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学園編
始まり
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「ライズ!やっぱりこんなとこにいたのね!」
黒髪が美しい青年がベンチの上で気持ち良さそうに寝転んでいる。
私がこの世で1番大好きな人、ロドニー・ライズだ。
何て可愛いらしいのかしらと悶えそうになるのを我慢しながら、私は頑張って怒った風を装っていた。
「…ん?あれ?リリー??あぁ、寝ちゃってたんだ…。」
ムニャムニャと言いながらゆっくりライズが身体を起こすのを、鼻を押さえながら見つめる私。
慌てて鼻血が出てないか確かめたけど、どうにか持ち堪えたみたい。
本当にどうしてくれようかと思うぐらいライズは可愛いのだ。
「寝ちゃってたじゃないわライズ!1限目からずっと探してたのよ?もうお昼になっちゃってるじゃない。一体いつから寝てたわけ?」
呆れた感じを出しつつも、私の目はライズをしっかりとらえたままで瞬きすらしていない。気だるそうな彼はいつもよりアンニュイで可愛らしく眼福である。
「あぁ、可愛い…。」
いけない。本音が漏れてしまった。
その声はライズの耳にしっかり届いたようだが、いつもの事なので苦笑いで済まされてしまった。
悔しいがそんな顔も可愛い。
「リリー、よだれ出てるよ?」
「えっ!?よだれ!?」
よっこらしょと立ち上がったライズがおもむろに私の頬に右手を添えた。
そのまま彼の親指が私の口端を何度か行き来するものだから、呼吸も忘れて呆然とその光景を見つめるしかなかった。
「フフッ、見過ぎ。さて、食堂に行こう。」
ライズが微笑んでいる。これは夢かと頬をつねってみたけど、しっかり痛かった。
「…………痛い。」
「???」
人の感情にやたら鈍いライズは、頬をつねれば痛いでしょと、首を捻りながら私のことを不思議そうに見つめていた。
やめて、そんなに見つめられたら今度こそ鼻血が出てしまう。
頬と鼻を押さえる滑稽な私を見て、ライズは声を上げて笑った。
「ハハッ!!本当リリーは昔から変な人だよね。あーお腹空いた。さぁもう行こう?」
差し出された手を震える手で掴むと、思ったより強く握り返された。
一見華奢に見えるライズだが、その手はしっかり男の人の手だ。私の手をすっぽり包むその手は少しかさついて、ゴツゴツしている。
「ライズ、あなた剣も振るっているの?」
尋ねたつもりだったが、私の声が小さ過ぎてライズに届かなかったようだ。
「…何で。」
私の足が遅くなったので、ライズが振り返り不思議そうにしていた。
「どうかしたの?」
優しく聞いてくれたけど、私は口をパクパクさせるばかりで答えることが出来なかった。
「変なリリー、ほら行くよ!」
いつもなら辛抱強く私の答えを待ってくれるのに、お腹がもう限界なのだろう。グイグイと私の手を手を強く引っ張りライズはまた歩き始めてしまった。
「あっ…。」
(聞きたかったのに。タイミングを逃してしまったわ…。ライズ、それ以上強くなってどうするつもりなの…?)
不安で胸が潰れそうだったけど、結局彼に尋ねる事が出来ない。
目の前で揺れる彼の美しい黒髪を見つめながら、私はライズとの出会いを思い返ていた。
黒髪が美しい青年がベンチの上で気持ち良さそうに寝転んでいる。
私がこの世で1番大好きな人、ロドニー・ライズだ。
何て可愛いらしいのかしらと悶えそうになるのを我慢しながら、私は頑張って怒った風を装っていた。
「…ん?あれ?リリー??あぁ、寝ちゃってたんだ…。」
ムニャムニャと言いながらゆっくりライズが身体を起こすのを、鼻を押さえながら見つめる私。
慌てて鼻血が出てないか確かめたけど、どうにか持ち堪えたみたい。
本当にどうしてくれようかと思うぐらいライズは可愛いのだ。
「寝ちゃってたじゃないわライズ!1限目からずっと探してたのよ?もうお昼になっちゃってるじゃない。一体いつから寝てたわけ?」
呆れた感じを出しつつも、私の目はライズをしっかりとらえたままで瞬きすらしていない。気だるそうな彼はいつもよりアンニュイで可愛らしく眼福である。
「あぁ、可愛い…。」
いけない。本音が漏れてしまった。
その声はライズの耳にしっかり届いたようだが、いつもの事なので苦笑いで済まされてしまった。
悔しいがそんな顔も可愛い。
「リリー、よだれ出てるよ?」
「えっ!?よだれ!?」
よっこらしょと立ち上がったライズがおもむろに私の頬に右手を添えた。
そのまま彼の親指が私の口端を何度か行き来するものだから、呼吸も忘れて呆然とその光景を見つめるしかなかった。
「フフッ、見過ぎ。さて、食堂に行こう。」
ライズが微笑んでいる。これは夢かと頬をつねってみたけど、しっかり痛かった。
「…………痛い。」
「???」
人の感情にやたら鈍いライズは、頬をつねれば痛いでしょと、首を捻りながら私のことを不思議そうに見つめていた。
やめて、そんなに見つめられたら今度こそ鼻血が出てしまう。
頬と鼻を押さえる滑稽な私を見て、ライズは声を上げて笑った。
「ハハッ!!本当リリーは昔から変な人だよね。あーお腹空いた。さぁもう行こう?」
差し出された手を震える手で掴むと、思ったより強く握り返された。
一見華奢に見えるライズだが、その手はしっかり男の人の手だ。私の手をすっぽり包むその手は少しかさついて、ゴツゴツしている。
「ライズ、あなた剣も振るっているの?」
尋ねたつもりだったが、私の声が小さ過ぎてライズに届かなかったようだ。
「…何で。」
私の足が遅くなったので、ライズが振り返り不思議そうにしていた。
「どうかしたの?」
優しく聞いてくれたけど、私は口をパクパクさせるばかりで答えることが出来なかった。
「変なリリー、ほら行くよ!」
いつもなら辛抱強く私の答えを待ってくれるのに、お腹がもう限界なのだろう。グイグイと私の手を手を強く引っ張りライズはまた歩き始めてしまった。
「あっ…。」
(聞きたかったのに。タイミングを逃してしまったわ…。ライズ、それ以上強くなってどうするつもりなの…?)
不安で胸が潰れそうだったけど、結局彼に尋ねる事が出来ない。
目の前で揺れる彼の美しい黒髪を見つめながら、私はライズとの出会いを思い返ていた。
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