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本編
004
しおりを挟むわたしは無言でバカが飲んでいたロックグラスを掴むと、女の顔面に向かって中身を勢いよく掛けた。まだ、頼んで時間も経ってないから丸いロックアイスが入ってるって??知らない、当たっても死ぬわけじゃないんだしいいじゃない。
「ぎゃっ⋯⋯」
わたしが勢いよく掛けたロックグラスの中身は見事に女の顔面にヒットした。ちゃんと丸いロックアイスまで。そして女は、可愛らしい悲鳴なんかじゃなく結構ガチ目な悲鳴を上げてアイスの当たった鼻を押さえわたしをキッと睨んだ。
どうせなら歯にでも当たって折れてくれてたらよかったのに。
「っ⋯⋯にすんのよ?!!」
「何って、やられたからやり返しただけ、だけど。⋯⋯何か?文句でも?」
「文句でもって!あんたが最初に人の彼氏に抱きついて色目使ってたのがいけないんじゃない!!」
「ハァ⋯⋯あなた、頭んなか脳みそじゃなくてプリンかなんかが詰まってんじゃないの?さっきのどっからどう見たらわたしがこのバカに抱きついてるように見えるわけ??ね?このバカがひっついてきてただけなんだけど?ねぇ、頭だけじゃなくて目もイカれてんの?何その目って飴ででもできてんじゃないの?あとさぁここお店。他人様の迷惑とか考えて行動したらどう?つか、普通に考えてカクテルかけるのわたしにじゃなくてこのバカになんじゃないの?なんでわたしに掛けてんの?何様なのあんた。わたしより偉いわけ?ねぇ?どうなの?頭ん中プリンちゃん?ああ、脳みそ空っぽだから自分が遊ばれてたことにも気づかなかったの?自分がこのバカに愛されてるとか思っての?そんなわけないじゃない。どっからどう見てもこのバカはただのヤリチンゲス野郎じゃない?なんでわたしがそんな男にわざわざ色目まで使わなきゃいけないの?そんなの使わなくてもあなたと違っていくらでも男は寄ってくるし困ってないわよ」
「なっ⋯!!」
「ぶっ⋯⋯頭ん中プリンちゃん」
わたしの言葉に言葉に詰まってるバカ女から視線を外して、横で笑ってるバカに視線を向ける。そして、バカの顎をギュッと力の限り掴みこちらを向かせた。
「ねぇ、これで何度目だと思ってる?おまえも頭ん中すっからかんなの?何回、遊ぶ女は選べっていった?わたしを巻き込むなっていった?なんなの?おまえは鶏なの?3歩歩けば忘れるの?遊んでもいいけど最低限自分の女の躾はしっかりしろっていったよね?なのに、なんでわたし今こんなことになってるの?誰のせい?ねぇ?やっぱりもう去勢するしかないよね?知り合いに去勢手術が上手な動物病院の先生がいるの。確か、明日空いてるって言ってたから明日にでも早速その下半身にぶら下がってる汚いもの除けようか。それとも今からわたしがこの場で切り落としてあげようか??ねぇ、どっちがいい?」
「ひっ⋯⋯ちょ、XXXちゃん?落ち着こう?ね?話せばわかるから」
「ハァ⋯⋯何回、話してると思ってるの?」
わたしの言葉に顔を青くしながら、それでもどうどうなどとふざけた感じんで行ってくるバカにスッとさっきまでの怒りが冷める。
バカの顎から手を離して、カウンターの方に顔を向けると、幼馴染がタオルを差し出してくる。こういう所は、本当にいいやつなんだよね。面倒ごとがある時はわたしを助けてくれないけど。
差し出されたタオルを受け取りながら、注文をする。
「⋯⋯ありがとう。ねぇ、テキーラちょうだい?1番いいやつをボトルで」
「いいけど。なに?おまえが飲むの?」
「まさか?⋯⋯このバカが全部飲んで帰るから。ついでお会計も」
彼の言葉ににっこり笑顔で返し、まだ少し青顔をしてるバカを指差す。
「は?ちょっ⋯⋯XXXちゃん?俺明日朝から仕事なんだけど?」
「わたしも仕事だけど?ねぇ、飲まないの?」
にっこりと笑顔を向け、ちらりとバカの下半身へと視線を向ける。
「いや、いただきます」
「そう?よかった。⋯⋯それじゃ、わたしは明日も早いし帰るから。ごちそうさま」
「ああ、外にタクシー呼んでるから」
「さっすが~。どこかのバカとは大違いね。ありがとう」
濡れたところをタオルで軽く拭き、いつのまにか出されたテキーラをちびちびと飲んでるバカの肩をポンと叩き立ち上がるとカウンターの中から出てきた幼馴染にタオルを渡す。
いつのまにか忘れてた女の横を無言で通り過ぎて、店のドアまで歩くといつのまにか預けてたコートを持って幼馴染がドアの側で待っていた。
わたしにコートを羽織らせながら幼馴染は耳元でボソリと呟いた。
「なぁ、あの女。今後少し気をつけた方がいい」
「んー、やっぱり?まぁ、何かあればいつものように倍返し以上にして社会的に生きていけないようしてあげるから大丈夫よ~。そんじゃ、また飲み来るね」
幼馴染の忠告にへらりと笑って軽く答えると、カランとドアベルを鳴らしてわたしは店の外へと出た。
幼馴染が言ってたように外にはタクシーが1台止まっていた。それに、サッと乗り込む。いつも使ってるタクシーだから場所を言わなくても家まで行ってくれるのは本当に便利だ。
わたしは、窓の外の流れるネオンを見ながらふと帰り際に見たあのバカ女の顔を思い出す。いつもより、抑えめにしてきたつもりだけど彼女の目には殺意めいたものが浮かんでたような違うような?そんな感じがした。
まぁ、なんとかなるしなるようになるでしょう。
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