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しおりを挟む立ち上がろうとしたした私の後頭部に何かを押し当てられた。
「……ここで何してやがる」
驚いて振り返るよりも先に、低い凄むような男の声が背後から発せられた。
今の状況整理とこれからのことを考えていた私は、中の話し声が止んでいるとにも人が近づいてきていることにも気づかなかった。ぶっちゃけ、考えることが面倒くさくなって気が抜けていたともいえる。
ゆっくりと振り向くと、鈍く黒光りする銃がこちらを向いていた。
私の知らない間に日本は銃の所持がOKになったの?
そんなまさか。いくら社畜でテレビ見る時間もないから世間のことに疎くなってたとしても流石に銃の所持OKになってたらいやでも耳に入ってくるわ。
あ、この人警察とか?いや、なんで警察が一般市民に拳銃向けてんの?
あ、どっきり?今流行りのヨーチューバー?的な?
ってことは……
「水鉄砲か!」
予期せぬ出来事に動揺してしまったのか、いろいろと面倒くさくなって気が抜けたままなのか、思ったことがつい口からポロリと零れた。
「……テメェの頭ぶち抜いてやろうかぁ?」
すると、拳銃を持った相手は少しの間とともに恐ろしい声で恐ろしいことを言いながら、グリっと私の額に拳銃の先を押し当てた。
「ごめんんさい」
「……チッ」
咄嗟に謝罪を返すと、盛大な舌打ちをした男は、立てと言いながら私の二の腕を掴んでグイっと引っ張り上げた。恐ろしい声の主と向き合う形で立たされる。
オフィスから漏れる明かりが逆光になっていて顔はわからないけど、身長が高くてスタイルがいい。一般人には到底着こなせそうにないスリーピースのスーツを着こなしている。
「んでぇ?んなところでなにしてんだ?」
「え、財布忘れたので取りに来ました?」
「あ?んな時間に?」
「30分前までここで残業してたんで。駅について出改札くぐろうとしたら財布忘れてるの気が付いて」
こんな時間に財布を取りに来たことに男がいぶかしげな声を上げる。
うん、普通はこの時間財布とりに会社に来たりしないよね。
でもあんたらもこんな時間にオフィスで何してんのよ、お互い様だろって感じだ。
男はしばし考えを巡らせているようだったが、またしてもチッと盛大な舌打ちをかまし私に向けていた拳銃をさげた。そして、ついて来いと二の腕を掴んだまま私を引きずるようにオフィスの中へと入っていく。
オフィスの中に入って一番に目に飛び込んできたのは、私の二の腕をつかんでいる男の髪だった。
光に当たってキラキラしている綺麗な銀髪だ。地毛なんじゃないかって思うほど全く傷んでない綺麗な銀髪。ぜひともヘアケアの仕方を教えて欲しい。
次に目についたのは、普段のきっちりと着込んだスーツにセットされた髪型とはかけ離れた上司の姿だった。
スーツは着崩れてボロボロでセットされていたはずの髪はボサボサになっている。極めつけは、顔にできた大きな痣に腫れあがった瞼、切れて血の滲む口。
明らかにここで何かありました、と上司の姿が物語っている。
ジッと上司を見ていると、こちらに気が付いた上司と目が合った。
男に二の腕を掴まれてはいってきた私を見て、腫れた目を大きく見開いているいる。
「な、なんでお前が……」
少ししゃべりづらそうに話す上司をガン無視して、男は私をデスクが並ぶあたりれ連れてくるとこちらを振り返った。
「んで?どこだよ?」
だが、私はそんな男の声なんて全く耳に入ってこず、ただただ驚くしかなった。
振り返った男の顔は、白くてすべすべな肌、スッと通った鼻筋に薄い唇、マッチじゃなくて綿棒が乗りそうなバッサバサなまつ毛に縁どられた瞳は少し紫がかったブルーだ。
そう、あんなに恐ろしい声を出して口が悪いのにこの男、超絶美人なのだ。
外を歩くと10人中10人が振り返るような美人だ。
なに、このギャップ。おかしいでしょう!
スタイルいいし、仕立てのいいスーツ着てるなって思ったから、そこそこなイケメンか強面のイケメンかと思ったけど、まさか女も羨むような美人だとは思わないじゃん。
「おい!聞いてんのかよブス」
男の容姿の美しさに見惚れていた私を泣く子も黙るような形相で私の額に銃を突き付けながら凄んでくる。
ハッとして自分のデスクをさすと、男は私の二の腕を掴んだままツカツカとデスクまで歩いて行き、ポツンとデスクの上に置かれていた私の財布を手に取った。
「いや、誰だよ?」
されるがまま男の行動を見ていた私の耳に突然、目の前の男でも床に座り込んでいる上司でもない声が聞こえてきた。
声が聞こえてきた方向に目を向けると上司空少し離れたデスクに腰掛けた美形がいた。
緩く結って肩に流した艶ややかな黒髪にキリッとした切れ長の目は黒い。
銀髪の男は養父な美人だが、黒髪の男はどちらかというと中華風な美形だ。
二人とも美人だし美形だけど、銀髪の男は人相も口も悪いし黒髪の男は目の下に濃い隈ができている。
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