8 / 12
8 嘘を隠したまま好きと言おうとする女◇サクラ◇
しおりを挟む
6月12日の昼休み。
アンリ、メグミと3人で昼ご飯を食べたあと、自販機でジュース買おうってなった。
リュウ? 同じ中学出身のマキ、ダイチに呼ばれて、今日のお昼は久々に別行動。
クラスでは、間違いなく私がリュウの一番の仲良しで認知されてる。けど、誰も付き合ってると思ってない。
リュウが周りにも優しくなって、誰とでも仲良くなってきてる。輪の中心にいる。
そのリュウが私達を立ててくれるから、クラスはすごく居心地がいい。
「リュウとサクラは進展なしか・・」
「リュウって、サクラのこと好きな気がするんだけどな・・」
自販機の近くに来たとこで、リュウの声がした。
「・・最近は、元気出てるよ。気使わせてごめんな、マキもダイチも」
あまり人が来ない場所の自販機の先に曲がったとこ。要するに秘密の話をするとこから、聞き覚えがある3人の声がする。
私達3人は自販機にお金を入れず、足を止めて目を合わせた。
小声だけど、会話は聞こえる。
「リュウ、本当に元気になったよね」
「やっぱ、あの秋庭サクラ達の存在が、大きいみたいだな」
「うん。気落ちしてるときに、秋庭さんが声かけてくれたから、なんとか持ち直せた」
「ある意味、恩人なんだね」
「・・すごく感謝してる。グイグイと引っ張ってくれて、余計なこと考えずに楽しいときがある」
「・・よかった」
「あ、ごめんなマキ、それにダイチも・・。2人とも長いこと励ましてくれたのに」
「いや、いいよ。こういうのって、意外と当時の出来事とか知らない人の方が、うまく癒せたりするんだ」
「で・・余計なお世話かも知れないけど、リュウ・・」
「なに、マキ」
「秋庭さんと仲良くね」
「ああ、友達として、うまくやっていきたい」
リュウの『友達』がなんか刺さった。
「俺が冬美のこと・・忘れようとしてんのに分かってるみたい。秋庭さんって優しいんだ。だから、それも分かってて、一緒にいてくれる感じなんだよね」
「あ、その理由は・・」
「そうか、なんにせよよかった」
マキが、私がリュウを好きって言いそうだった。だけどダイチが止めた。
リュウはまだ、私の本当の気持ちは知らない。ダイチに止めてくれてありがとうって、言いたい。
「ところでリュウ・・明日のだけど」
「・・もう6月13日になるね」
「うん」
マキの声が、また真面目になった。
「俺、学校休んで冬美のとこいくよ」
え?
え、え?
メグミとアンリも、え?って顔。
あしたの13日、私の誕生日。リュウは元カノに会いに行く?
「リュウ、一人で大丈夫?」
「ありがとマキ、自分だけで行けるよ」
アンリ達を引っ張って、その場から離れた。
「何あれ・・」
「どういうこと?リュウの元カノって日本に帰ってきてるんかよ」
「じゃあ、先に約束があったから、サクラの誕生日断ったのか?」
「いいのかよ、サクラ」
「けど・・確かに、リュウと私、正式に付き合ってない。冬美さんへの思い残したままなんだよ。少し前から感じてる」
「けど、それずるく・・」
「私、気付いたんだ。この付き合いの図式に。私から告白したのに、私の方からデメリットなしで、リュウを捨てられるように形作ってある」
「だけどよ」
「そもそも私、リュウを騙そうとしたんだよ。リュウに知られてなくても、事実は消えない」
「あ」「うぐ」
メグミ達も、イタズラを仕掛けようとした仲間。良心に訴えると、言葉が出てこなかった。
◆◆
放課後、私はリュウと一緒に帰る約束をしていた。
複雑な気持ちで駅前を歩いている。
けど、聞かない訳にはいかない。
「リュウ、冷たいもの飲もうよ。おごるから」
「じゃあ、ゴチになろうかな~」
「よっしゃ、クッキーもつけるよ」
コーヒーショップに入り、周りに人がいない席が空いていた。
私は緊張を隠して、リュウの前に座った。テストの話、クラスメイトの話、矢継ぎ早に出てくる。
これだけでも嬉しくて楽しい。
だけど今日だけはリュウのペースを崩させてもらう。
「リュウごめん、話があるの」
「・・はいな」
私は、申し訳ないが話を断ち切った。リュウは驚くくらい真顔になって応じてくれた。
私はアホだ。
なぜ、リュウが告白前に小綺麗になったとか、自分が何をしたかとか考えてなかった。
元カノの冬美さんに、私の誕生日6月13日に会いに行くリュウに聞きたいことで、頭がいっぱいだった。
おそらく、何らかの形で冬美さんがフランスから日本に帰国してる。
2人が会う前に私が好きって伝えようと、そればかり考えてた。
「リュウ、私、先月の13日にリュウに告白したでしょ。だからね・・」
「ああ、そのことだね」
リュウのトーンが変わった。すごく軽くなった。
「嘘コクのことだよね、秋庭さん。もう1ヶ月近くなるし、そろそろ種明かしされる時期かな~って」
困った笑い方をしてるリュウを見ながら、頭の中が真っ白になった。
私、これから仕返しされるんだ・・
アンリ、メグミと3人で昼ご飯を食べたあと、自販機でジュース買おうってなった。
リュウ? 同じ中学出身のマキ、ダイチに呼ばれて、今日のお昼は久々に別行動。
クラスでは、間違いなく私がリュウの一番の仲良しで認知されてる。けど、誰も付き合ってると思ってない。
リュウが周りにも優しくなって、誰とでも仲良くなってきてる。輪の中心にいる。
そのリュウが私達を立ててくれるから、クラスはすごく居心地がいい。
「リュウとサクラは進展なしか・・」
「リュウって、サクラのこと好きな気がするんだけどな・・」
自販機の近くに来たとこで、リュウの声がした。
「・・最近は、元気出てるよ。気使わせてごめんな、マキもダイチも」
あまり人が来ない場所の自販機の先に曲がったとこ。要するに秘密の話をするとこから、聞き覚えがある3人の声がする。
私達3人は自販機にお金を入れず、足を止めて目を合わせた。
小声だけど、会話は聞こえる。
「リュウ、本当に元気になったよね」
「やっぱ、あの秋庭サクラ達の存在が、大きいみたいだな」
「うん。気落ちしてるときに、秋庭さんが声かけてくれたから、なんとか持ち直せた」
「ある意味、恩人なんだね」
「・・すごく感謝してる。グイグイと引っ張ってくれて、余計なこと考えずに楽しいときがある」
「・・よかった」
「あ、ごめんなマキ、それにダイチも・・。2人とも長いこと励ましてくれたのに」
「いや、いいよ。こういうのって、意外と当時の出来事とか知らない人の方が、うまく癒せたりするんだ」
「で・・余計なお世話かも知れないけど、リュウ・・」
「なに、マキ」
「秋庭さんと仲良くね」
「ああ、友達として、うまくやっていきたい」
リュウの『友達』がなんか刺さった。
「俺が冬美のこと・・忘れようとしてんのに分かってるみたい。秋庭さんって優しいんだ。だから、それも分かってて、一緒にいてくれる感じなんだよね」
「あ、その理由は・・」
「そうか、なんにせよよかった」
マキが、私がリュウを好きって言いそうだった。だけどダイチが止めた。
リュウはまだ、私の本当の気持ちは知らない。ダイチに止めてくれてありがとうって、言いたい。
「ところでリュウ・・明日のだけど」
「・・もう6月13日になるね」
「うん」
マキの声が、また真面目になった。
「俺、学校休んで冬美のとこいくよ」
え?
え、え?
メグミとアンリも、え?って顔。
あしたの13日、私の誕生日。リュウは元カノに会いに行く?
「リュウ、一人で大丈夫?」
「ありがとマキ、自分だけで行けるよ」
アンリ達を引っ張って、その場から離れた。
「何あれ・・」
「どういうこと?リュウの元カノって日本に帰ってきてるんかよ」
「じゃあ、先に約束があったから、サクラの誕生日断ったのか?」
「いいのかよ、サクラ」
「けど・・確かに、リュウと私、正式に付き合ってない。冬美さんへの思い残したままなんだよ。少し前から感じてる」
「けど、それずるく・・」
「私、気付いたんだ。この付き合いの図式に。私から告白したのに、私の方からデメリットなしで、リュウを捨てられるように形作ってある」
「だけどよ」
「そもそも私、リュウを騙そうとしたんだよ。リュウに知られてなくても、事実は消えない」
「あ」「うぐ」
メグミ達も、イタズラを仕掛けようとした仲間。良心に訴えると、言葉が出てこなかった。
◆◆
放課後、私はリュウと一緒に帰る約束をしていた。
複雑な気持ちで駅前を歩いている。
けど、聞かない訳にはいかない。
「リュウ、冷たいもの飲もうよ。おごるから」
「じゃあ、ゴチになろうかな~」
「よっしゃ、クッキーもつけるよ」
コーヒーショップに入り、周りに人がいない席が空いていた。
私は緊張を隠して、リュウの前に座った。テストの話、クラスメイトの話、矢継ぎ早に出てくる。
これだけでも嬉しくて楽しい。
だけど今日だけはリュウのペースを崩させてもらう。
「リュウごめん、話があるの」
「・・はいな」
私は、申し訳ないが話を断ち切った。リュウは驚くくらい真顔になって応じてくれた。
私はアホだ。
なぜ、リュウが告白前に小綺麗になったとか、自分が何をしたかとか考えてなかった。
元カノの冬美さんに、私の誕生日6月13日に会いに行くリュウに聞きたいことで、頭がいっぱいだった。
おそらく、何らかの形で冬美さんがフランスから日本に帰国してる。
2人が会う前に私が好きって伝えようと、そればかり考えてた。
「リュウ、私、先月の13日にリュウに告白したでしょ。だからね・・」
「ああ、そのことだね」
リュウのトーンが変わった。すごく軽くなった。
「嘘コクのことだよね、秋庭さん。もう1ヶ月近くなるし、そろそろ種明かしされる時期かな~って」
困った笑い方をしてるリュウを見ながら、頭の中が真っ白になった。
私、これから仕返しされるんだ・・
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
学園の美人三姉妹に告白して断られたけど、わたしが義妹になったら溺愛してくるようになった
白藍まこと
恋愛
主人公の花野明莉は、学園のアイドル 月森三姉妹を崇拝していた。
クールな長女の月森千夜、おっとり系な二女の月森日和、ポジティブ三女の月森華凛。
明莉は遠くからその姿を見守ることが出来れば満足だった。
しかし、その情熱を恋愛感情と捉えられたクラスメイトによって、明莉は月森三姉妹に告白を強いられてしまう。結果フラれて、クラスの居場所すらも失うことに。
そんな絶望に拍車をかけるように、親の再婚により明莉は月森三姉妹と一つ屋根の下で暮らす事になってしまう。義妹としてスタートした新生活は最悪な展開になると思われたが、徐々に明莉は三姉妹との距離を縮めていく。
三姉妹に溺愛されていく共同生活が始まろうとしていた。
※他サイトでも掲載中です。
雨上がりに僕らは駆けていく Part1
平木明日香
恋愛
「隕石衝突の日(ジャイアント・インパクト)」
そう呼ばれた日から、世界は雲に覆われた。
明日は来る
誰もが、そう思っていた。
ごくありふれた日常の真後ろで、穏やかな陽に照らされた世界の輪郭を見るように。
風は時の流れに身を任せていた。
時は風の音の中に流れていた。
空は青く、どこまでも広かった。
それはまるで、雨の降る予感さえ、消し去るようで
世界が滅ぶのは、運命だった。
それは、偶然の産物に等しいものだったが、逃れられない「時間」でもあった。
未来。
——数えきれないほどの膨大な「明日」が、世界にはあった。
けれども、その「時間」は来なかった。
秒速12kmという隕石の落下が、成層圏を越え、地上へと降ってきた。
明日へと流れる「空」を、越えて。
あの日から、決して止むことがない雨が降った。
隕石衝突で大気中に巻き上げられた塵や煤が、巨大な雲になったからだ。
その雲は空を覆い、世界を暗闇に包んだ。
明けることのない夜を、もたらしたのだ。
もう、空を飛ぶ鳥はいない。
翼を広げられる場所はない。
「未来」は、手の届かないところまで消え去った。
ずっと遠く、光さえも追いつけない、距離の果てに。
…けれども「今日」は、まだ残されていた。
それは「明日」に届き得るものではなかったが、“そうなれるかもしれない可能性“を秘めていた。
1995年、——1月。
世界の運命が揺らいだ、あの場所で。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
僕が美少女になったせいで幼馴染が百合に目覚めた
楠富 つかさ
恋愛
ある朝、目覚めたら女の子になっていた主人公と主人公に恋をしていたが、女の子になって主人公を見て百合に目覚めたヒロインのドタバタした日常。
この作品はハーメルン様でも掲載しています。
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
今日の授業は保健体育
にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり)
僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。
その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。
ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる