42 / 51
第四十二話 仇討 その十
しおりを挟む
「大体、覚えました。方向は判るんですが階段とか坂にぶつかってみないと……」
「ノイ様は、見覚えあります――」
「ないない。あまりにも昔すぎる。今まで通った道もぜんぜん覚えていない」
ありえないとばかりに首をふった。
「そうですか、道中、何か思い出すかもしれません」
二人は赤い小鬼がつけた道をたどり始めた。
道は平坦で赤い子鬼たちのつけた足跡を追うのは容易いものだった。
しばらくすると単調なことが苦手なノイは愚痴を言いはじめた。
「なあまだか? あと、どの位歩けば良いんだ?」
「なんとも言えませんね。途中でノイ様が喜ぶ相手が現れてくれるといいですね」
ノイをなだめながらの道中になることを覚悟していた公一は機嫌を損ねないように言葉を選んだ。
いきなりノイは叫び声をあげた
「公一、良いこと思いついたぞ!」
「――敵が多く来る方に行けば良いんじゃないか。わざわざ時間をかけることはないぞ」
「ええっ! まさか、ここで大暴れして敵を呼び寄せるつもりじゃないですよね?」
ノイは舌打ちをした。
「私だって暴れたいよ。力さえ出せれば、今すぐにでも天井をぶち破って空を見せてやるよ」
「……」
「だが今は無理だ…… この忌々しい呪いのせいだ」
「でもノイ様は呪いが消えたとしても、ここを吹き飛ばさないでしょう?」
「当たり前だ。他にも生きている奴がいるんだし、私は作る方だからな」
「まあ言い換えれば壊すのではない。作り変える方だな」
力のない生き物にとって天変地異なのだから、巻き込まれたものには災難には代わりにはない。
なんの気負いもなくサラリと言ってのけたノイに、公一は一瞬だけ目をやった。
「仕事ですものね……」
「ああ、大事な仕事だ」
屈託のない笑顔と返事だった。
「ここを吹き飛ばす代わりに、毛皮を担いだ小鬼を見つけましょう」
「おお、そうだな。一番の悪がいる場所の見当がつくな」
「しっ、何か来ます。小鬼みたいですよ。やり過ごしましょう」
通路の奥からやって来たのは赤い小鬼で二人には見向きもしない。
「こいつら何も考えてないんだな」
「命令されたことしか出来ないみたいですね。恐れを知らないから一斉に攻めかかられると厄介ですよ」
「小鬼ごときを心配してどうする。お前は自分が前とは違うことを意識しろ。考えなしだと、この鬼と変わらんぞ」
「とっ、とにかく小鬼が来た方に道を取りましょう」
「ああ、わかったよ。上手く誤魔化したつもりでも。絶対に忘れるなよ」
公一は修行中に聞いた師匠の言葉を思い出して思わず苦笑いしてしまった。
心がけ次第で全ては変わると。耳にタコができるぐらいに聞かされた言葉を、違う世界にまで来て聞かされるとは夢にも思わなかったからだ。
「なにが可笑しい?」
「すいません。しっかりしますから、お小言はこの辺で勘弁を……」
「ホントだろうな。ダメだったら、お仕置きだぞ」噴出してしまった
ノイは公一を一瞬、睨めつけたが吹き出てしまった。
「さてと冗談はここまでにして、上手く行き先がわかると良いな」
「そうですね。今のところは、まず第一に大龍の眠る場所に行く。そして毛皮を集めている奴を探すですね。
「公一、少し違うぞ。探し出してぶん殴るだ」
ノイは笑って歩き出した。
道は曲がりくねっていたり通路から分かれる横道も多かったが道に迷うことはなかった。
二人は赤い小鬼達がつけた道を急いだ。途中で何匹かの小鬼とすれ違うが先を進む小鬼に追い付くことはなかった。
「いざ探すとなかなか居ないものだな」
「もしかして俺のせいかもしれません。毛皮集めしてた奴らを随分と巻き添えにしました」
「お前、最初に言えよ。真剣に探したじゃないか」
「すいません。力の加減がわからなかたので。助っ人が余りに強かったんです」
「まあ、いいか。ここに巣くっている連中には良い挨拶になったかもな」
「どんな挨拶ですか?」
「奴らが昔のままなら疑り深いはずさ。きっと手下が死んだ理由を調べているさ」
「少しは驚きますかね?」
「そりゃ驚くだろうよ。死んだ者を消す力と力自慢を皮一枚にする奴がいるんだぞ」
ノイはこれから起こる相手側の混乱を期待して目を光らせた。
「ノイ様は、見覚えあります――」
「ないない。あまりにも昔すぎる。今まで通った道もぜんぜん覚えていない」
ありえないとばかりに首をふった。
「そうですか、道中、何か思い出すかもしれません」
二人は赤い小鬼がつけた道をたどり始めた。
道は平坦で赤い子鬼たちのつけた足跡を追うのは容易いものだった。
しばらくすると単調なことが苦手なノイは愚痴を言いはじめた。
「なあまだか? あと、どの位歩けば良いんだ?」
「なんとも言えませんね。途中でノイ様が喜ぶ相手が現れてくれるといいですね」
ノイをなだめながらの道中になることを覚悟していた公一は機嫌を損ねないように言葉を選んだ。
いきなりノイは叫び声をあげた
「公一、良いこと思いついたぞ!」
「――敵が多く来る方に行けば良いんじゃないか。わざわざ時間をかけることはないぞ」
「ええっ! まさか、ここで大暴れして敵を呼び寄せるつもりじゃないですよね?」
ノイは舌打ちをした。
「私だって暴れたいよ。力さえ出せれば、今すぐにでも天井をぶち破って空を見せてやるよ」
「……」
「だが今は無理だ…… この忌々しい呪いのせいだ」
「でもノイ様は呪いが消えたとしても、ここを吹き飛ばさないでしょう?」
「当たり前だ。他にも生きている奴がいるんだし、私は作る方だからな」
「まあ言い換えれば壊すのではない。作り変える方だな」
力のない生き物にとって天変地異なのだから、巻き込まれたものには災難には代わりにはない。
なんの気負いもなくサラリと言ってのけたノイに、公一は一瞬だけ目をやった。
「仕事ですものね……」
「ああ、大事な仕事だ」
屈託のない笑顔と返事だった。
「ここを吹き飛ばす代わりに、毛皮を担いだ小鬼を見つけましょう」
「おお、そうだな。一番の悪がいる場所の見当がつくな」
「しっ、何か来ます。小鬼みたいですよ。やり過ごしましょう」
通路の奥からやって来たのは赤い小鬼で二人には見向きもしない。
「こいつら何も考えてないんだな」
「命令されたことしか出来ないみたいですね。恐れを知らないから一斉に攻めかかられると厄介ですよ」
「小鬼ごときを心配してどうする。お前は自分が前とは違うことを意識しろ。考えなしだと、この鬼と変わらんぞ」
「とっ、とにかく小鬼が来た方に道を取りましょう」
「ああ、わかったよ。上手く誤魔化したつもりでも。絶対に忘れるなよ」
公一は修行中に聞いた師匠の言葉を思い出して思わず苦笑いしてしまった。
心がけ次第で全ては変わると。耳にタコができるぐらいに聞かされた言葉を、違う世界にまで来て聞かされるとは夢にも思わなかったからだ。
「なにが可笑しい?」
「すいません。しっかりしますから、お小言はこの辺で勘弁を……」
「ホントだろうな。ダメだったら、お仕置きだぞ」噴出してしまった
ノイは公一を一瞬、睨めつけたが吹き出てしまった。
「さてと冗談はここまでにして、上手く行き先がわかると良いな」
「そうですね。今のところは、まず第一に大龍の眠る場所に行く。そして毛皮を集めている奴を探すですね。
「公一、少し違うぞ。探し出してぶん殴るだ」
ノイは笑って歩き出した。
道は曲がりくねっていたり通路から分かれる横道も多かったが道に迷うことはなかった。
二人は赤い小鬼達がつけた道を急いだ。途中で何匹かの小鬼とすれ違うが先を進む小鬼に追い付くことはなかった。
「いざ探すとなかなか居ないものだな」
「もしかして俺のせいかもしれません。毛皮集めしてた奴らを随分と巻き添えにしました」
「お前、最初に言えよ。真剣に探したじゃないか」
「すいません。力の加減がわからなかたので。助っ人が余りに強かったんです」
「まあ、いいか。ここに巣くっている連中には良い挨拶になったかもな」
「どんな挨拶ですか?」
「奴らが昔のままなら疑り深いはずさ。きっと手下が死んだ理由を調べているさ」
「少しは驚きますかね?」
「そりゃ驚くだろうよ。死んだ者を消す力と力自慢を皮一枚にする奴がいるんだぞ」
ノイはこれから起こる相手側の混乱を期待して目を光らせた。
0
お気に入りに追加
13
あなたにおすすめの小説
5歳で前世の記憶が混入してきた --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--
ばふぉりん
ファンタジー
「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は
「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」
この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。
剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。
そんな中、この五歳児が得たスキルは
□□□□
もはや文字ですら無かった
~~~~~~~~~~~~~~~~~
本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。
本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。
白の皇国物語
白沢戌亥
ファンタジー
一人の男が、異なる世界に生まれ落ちた。
それを待っていたかのように、彼を取り巻く世界はやがて激動の時代へと突入していく。
魔法と科学と愛と憎悪と、諦め男のラブコメ&ウォークロニクル。
※漫画版「白の皇国物語」はアルファポリス様HP内のWeb漫画セレクションにて作毎月二〇日更新で連載中です。作画は不二まーゆ様です。
勇者召喚に巻き込まれたモブキャラの俺。女神の手違いで勇者が貰うはずのチートスキルを貰っていた。気づいたらモブの俺が世界を救っちゃってました。
つくも
ファンタジー
主人公——臼井影人(うすいかげと)は勉強も運動もできない、影の薄いどこにでもいる普通の高校生である。
そんな彼は、裏庭の掃除をしていた時に、影人とは対照的で、勉強もスポーツもできる上に生徒会長もしている——日向勇人(ひなたはやと)の勇者召喚に巻き込まれてしまった。
勇人は異世界に旅立つより前に、女神からチートスキルを付与される。そして、異世界に召喚されるのであった。
始まりの国。エスティーゼ王国で目覚める二人。当然のように、勇者ではなくモブキャラでしかない影人は用無しという事で、王国を追い出された。
だが、ステータスを開いた時に影人は気づいてしまう。影人が勇者が貰うはずだったチートスキルを全て貰い受けている事に。
これは勇者が貰うはずだったチートスキルを手違いで貰い受けたモブキャラが、世界を救う英雄譚である。
※他サイトでも公開
「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます
七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。
「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」
そう言われて、ミュゼは城を追い出された。
しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。
そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
【完結】王子と結婚するには本人も家族も覚悟が必要です
宇水涼麻
ファンタジー
王城の素晴らしい庭園でお茶をする五人。
若い二人と壮年のおデブ紳士と気品あふれる夫妻は、若い二人の未来について話している。
若い二人のうち一人は王子、一人は男爵令嬢である。
王子に見初められた男爵令嬢はこれから王子妃になるべく勉強していくことになる。
そして、男爵一家は王子妃の家族として振る舞えるようにならなくてはならない。
これまでそのような行動をしてこなかった男爵家の人たちでもできるものなのだろうか。
国王陛下夫妻と王宮総務局が総力を挙げて協力していく。
男爵令嬢の教育はいかに!
中世ヨーロッパ風のお話です。
記憶を失ったらあなたへの恋心も消えました。
ごろごろみかん。
恋愛
婚約者には、何よりも大切にしている義妹がいる、らしい。
ある日、私は階段から転がり落ち、目が覚めた時には全てを忘れていた。
対面した婚約者は、
「お前がどうしても、というからこの婚約を結んだ。そんなことも覚えていないのか」
……とても偉そう。日記を見るに、以前の私は彼を慕っていたらしいけれど。
「階段から転げ落ちた衝撃であなたへの恋心もなくなったみたいです。ですから婚約は解消していただいて構いません。今まで無理を言って申し訳ありませんでした」
今の私はあなたを愛していません。
気弱令嬢(だった)シャーロットの逆襲が始まる。
☆タイトルコロコロ変えてすみません、これで決定、のはず。
屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。
彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。
父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。
わー、凄いテンプレ展開ですね!
ふふふ、私はこの時を待っていた!
いざ行かん、正義の旅へ!
え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。
でも……美味しいは正義、ですよね?
2021/02/19 第一部完結
2021/02/21 第二部連載開始
2021/05/05 第二部完結
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる