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26話 ダンジョンに向かった

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「えっと……お金もかなり貯まっててさ、来年のアリアの依頼の分で取っておこうよ」
 
「……良いのかなぁ? 面倒を見てもらっちゃってるのに……悪いよぉ……」
 
「え!? 魔獣の討伐を一緒にしてるし、家事もやってもらって逆に俺が面倒を見てもらっちゃってるって」
 
「えへへ……♪ ユウくんのパーティなので、当然だよっ♪」

 
 そう言われて嬉しくて、ありあの頭を撫でてるとミーシャも近寄ってきた。

 
「……わたしも……討伐をガンバってるー」

 
 ガンバってるアピールをしていたのでアリアが頭を撫でていた。

 
「ユウちゃんも撫でてー」
 
「えぇー!? ミーシャちゃん、わたしじゃ不満なのぉー?」
 
「アリアちゃんだけ、ずるーい!」
 
「むぅ……分かったぁー。あとで交代ねぇー」
 
「待ってるー」

 
 アリアが頬を膨らませているのが可愛いが、不満たっぷりそうだった。

 
「アリアは、無報酬で良いのか?」
 
「うん。大丈夫だけどー? ご飯も食べれてるし、寝れる家もあるからって言ったでしょ? それに欲しい物も特にないよ?」

 
 交代をしてミーシャの頭を撫で終わると、ダンジョンに向けて出発した。

 
「ダンジョンって、どんな所だろうね~?」

 
 アリアが楽しみそうな顔で聞いてきた。俺の知っているダンジョンだと……暗い洞窟の中で魔物や魔獣がウジャウジャ現れて、トラップとかあったりって感じかな……?

 
「暗い洞窟で、魔物や魔獣がいっぱい出て襲ってくる感じじゃないかな?」
 
「うん。同じ事を言われたー。だから近寄っちゃダメっだってー」

 
 アリアが、そう言われて少し残念そうにしていた。

 
「ん? アリア? 残念そうだけど?」
 
「魔物や魔獣が襲ってくるだけだったら、夜の森と同じだなぁ……って思って」

 
 あぁ……言われてみればそうだなぁ……。でも普通の人からすれば、かなり危険な所なんだけどなぁ。いや、冒険者にとっても危険なところだな。囲まれたら退路も断たれる訳だし……

 
「アリア、普通の人どころか冒険者にとっても危険な場所だぞ? 進むのはダメージや体力を考えずに進めるけど、帰りの事も考えないと帰れなくなるし。ケガを負っても安全な外に直ぐに逃げられるわけじゃないし。囲まれたら退路を断たれて、ほぼ一本道で他の通路へ逃げ込んだら迷って出られなくなるんだぞ」
 
「うわぁ……そうなんだぁ……こわぁーい」

 
 アリアが不安そうな表情に変わり俺の服を掴んできた。

 
「でも、ユウくんが居れば問題ないねー♪」
 
「……まぁ……ね」

 
 今、恐がらせる為に言った事は転移、バリアで解決が出来る……それにケガを負ってもアリア本人が治癒魔法、回復魔法を使えるし。当然、俺も治癒魔法、回復魔法も使える。

 後ろに付いたアリアを振り返ると……あれ?不安そうな表情は? 俺に気を使って恐がった振りをしてくれてたみたいで、いつものアリアで目が合うとニコッ♡ と可愛い微笑み返してきた。

 ダンジョンが近くなってくると魔獣と魔物が徐々に増え始めてきた。

 
「ホントに多くなってきたな……大丈夫かー?」
 
「なにがー?」
 
「大丈夫だよぉ?」

 
 ここ数日で魔法の威力で引かれたり差別をされる事がないと分かると、安心して力を抑えずにアリア本来の魔力で魔法を放つようになっていて別人のような強さになっていた。
 ミーシャも俺の付与がキッカケを作ったらしく、レベルが急激に上昇して安定をした強さと俊敏性を得られた。ミーシャは、ネコ科の猫族で狩りをする側なので、元々持っていた天性のスキルを目覚めさせたらしい。教えてもいない技やフェイントを使い、急所を知っているかのように狙い討伐を進めていた。
 だが……フェイントというのは、敵が目で追えるスピードじゃないと意味が無いぞ? ただの体力の無駄になってるって。

 
「あぁ! あれだよ。あれー! ダンジョン」

 
 ミーシャが指を差す方向を見ると、木々に覆われた岩山に人が2、3人並んで入れる大きさの洞窟が口を開けて待っていた。

 
「わぁ……本物のダンジョンだね……」
 
「まぁ……今日は様子見だし。無理しないように進んでみてダメだったら帰ろ。帰ったら作戦会議でもしよっか」
 
「わ~冒険者っぽいね」
 
「さくせんかいぎー♪」

 
 ミーシャは、アリアが楽しそうに言ったので意味は分からず楽しそうに言っているだけっぽい。今、住む獣人の村には冒険者ギルドや冒険者を知る者は少ないし。作戦会議という言葉は使わないと思うし……多分。使っていたとしても村のお偉いさんくらいじゃないか?

 ダンジョンの周りを彷徨いていた魔獣を、あっさりとアリアが最小限で放った魔力弾を放つと音も立てずに討伐に成功した。

「……アリア? いつ覚えたの?」
 
「ん? 何を?」
 
「その極小の音も立てずに放った魔法だよ」
 
「……んっと……10歳の時かな……村の空き地で一人で遊んでて、石を並べて魔力を抑える魔法の練習をしてたら、どんどん小さくなって魔力弾の小さいのを放てるようになったの……えへへ……」

 アリアが目を逸らして気不味そうに話してくれた。
 
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