禁じられた遊び

らがまふぃん

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新しい話始めました。
ファンタジー要素薄めのダークファンタジーと言っていいのかよくわからない話ですが、どうぞお付き合いください。
タイトルには予告なく残酷表現や性的倒錯表現入ります。苦手な方はこのままお戻りください。


*∽*∽*∽*∽*


 一人の女性が死んだ。
 自宅敷地内の隅にある林の奥で、首を吊っていた。
 彼女の部屋には遺書が残されていた。
 家族と一人の友人に宛てたもの。
 彼女の懺悔が綴られていた。

 彼女の死によって、ひとつの国が滅びることになるとは、誰が予想出来ただろう。


*~*~*~*~*


 「マリーナ、今日中にこれを片付けておけ。わかったな」
 「あ、え?で、ですが、こちらの書類も」
 「マリーナ」
 圧のある声に、マリーナは口を噤んで俯いた。
 「なあ、マリーナ。私だって好きでおまえに仕事をさせているのではない」
 マリーナの肩に、その手が置かれる。
 「おまえに王太子妃になるための研鑽を積ませている。わかるな?」
 子どもに言い聞かせるように言う。
 「おまえは他の候補よりも劣る。だが、そんなおまえが私は可愛くて仕方がない」
 マリーナが少し顔を上げてチラリと見ると、冷たい目が見下ろしている。
 「候補でいられなくなったら、おまえを妃として迎えられなくなるではないか」
 肩に置かれた手が、ポンポンと軽く叩く。
 「おまえを妃にするためだ。私の隣に並んで欲しい。やれるな?」
 「はい、殿下」
 「さすが私のマリーナだ」
 言葉とは真逆の目が、部屋を去って行った。
 マリーナの口元に、笑みが浮かんでいることに気付かずに。


*~*~*~*~*


 魔法のある世界。
 けれど、戦ったり、あらゆる生活を便利にするような魔法があるわけではない。かつてはあった。そう。かつて。それは失われて久しい。今は、微かにその片鱗があるだけ。手のひらに火や氷を出せる者は、かなり魔力が強い部類だ。属性は一人一つ。色々あるが、四元素エレメントが主流となっている。
 だが、魔法の殆どが失われて久しい今、魔法を使うこと自体が酷く疲労を伴うため、余程のことがない限り、魔法を使うことはない。
 魔法を使うために必要な魔力の多い者は、身分が高い者に生まれやすい。

 ロウゼリア王国。肥沃な大地と穏やかな気候に恵まれ、大きな災害も起こらない、世界でも類を見ない豊かな国だった。
 現国王夫妻の三人の子どもは年子で、王子が一番上だ。王子は一人のため、王太子となるべく育てられた。
 ヴェルエルン・ロウゼリア。
 ヴェルエルンは魔力が強かった。少々魔法を使うくらいは問題ない程度に、適性もあった。
 そんなヴェルエルンが十三歳になると、三人の婚約者候補の名前が挙がる。
 ジーナ・アーロウス公爵令嬢十三歳。
 カリア・ジケイデア侯爵令嬢十四歳。
 そして、マリーナ・ハルベディ侯爵令嬢十四歳。
 しかしヴェルエルンは、天使と名高い、レム筆頭公爵家令嬢テレーゼが欲しかった。
 公爵家のパーティーでその姿を見て、ヴェルエルンは一目惚れをした。
 淡い金の髪に、ピンクダイヤモンドのような大きな瞳、桃のように色付く頬に、苺のように熟れた小さな唇。まさに天使だった。
 だが、候補にその名はない。
 なぜかと聞いても、諦めろとしか言われない。
 ヴェルエルンは非常に不満だった。
 王族である自分の望みが叶えられないことに、苛立ちを隠せない。王太子教育から、薄々わかってはいた。レム公爵家は、王家を凌ぐ権力と財力があるのではないか、と。王家の打診を断ることさえ可能なほどに。或いは、これ以上レム家に権力を持たせないために、最初から候補にさせなかった両親の判断か。
 いずれにせよ、ヴェルエルンにはそんなことは関係のないことだった。王太子となる人間の思考ではないが、ヴェルエルンは、どうしても、あの美しいテレーゼが欲しかったのだ。



*つづく*
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