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16.最終話
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「あんなの放っておいて良かったのに」
王宮の第一庭園。
アビアント家に鉄槌を下した翌日、シーナはそこでシスティアとお茶を楽しんでいた。
体ごと精霊界へ行けるようになり、そこからどこにでも行けるようになった。そうしてシスティアだけでなく、王家の人たちとも交流をし続けていたシーナ。
元々システィアからシーナの話を聞いていた王家の人たちは、お忍びでシーナに会いに行ったりもしていた。アビアント家に知られたくないので、あくまでも通過するときや近くに行ったときに会う程度であったが。
シーナと実際会って、シーナを知るほど王家のアビアント家への怒りは蓄積されていった。当の本人は然程気にしていないことが、余計に王家の怒りを買った。
こんなにいい子を蔑ろにしやがって!
こうして、アビアント家は破滅へのカウントダウンは始まっていた。
そもそもシスティアに出会う前のアビアント家での出来事を、何故システィアが知ったのか。
もちろん精霊たちだ。精霊たちが、システィアにアビアント家を何とかしろと騒いだのだ。シーナはもう関わらないから放っておけと言っていたが、システィアは赦せなかった。王家にご協力いただくほどに。
「わたくしのシーナを蔑ろにされて、黙ってなんていられないでしょう」
ぷい、とそっぽを向くシスティアに、シーナは抱きついた。
「あー、可愛い可愛い可愛い可愛いっ」
「離れろ」
システィアにくっついているケイに、引き剥がされる。
「何よ、クロスケ。いい加減ティアを独り占めしすぎるのは止めなさい。ティアはあなただけのティアではないの」
同席する二人の王子も、最初こそシーナと精霊王であるケイとのやり取りに肝を冷やしていたが、今ではその光景を微笑ましく見つめている。
「まあ、アビアント家のことでクロスケにも迷惑かけていたみたいだし、お礼は言っておくわ。ありがとうね、クロスケ」
顕現してシスティアの背後に取り憑いていただけだが、最強の護衛であったことは間違いない。シーナの礼に、素直に頷く。
「リュクス様もリュセス様も、ありがとうございました。後で、陛下と王妃陛下にもお礼をさせていただきたいです」
そう言ってシーナが微笑むと、リュクスもリュセスも、淡く頬を染めながら笑って頷いた。
「でも、ティアに危ないことをして欲しくはないから、もうアビアント家に関わってはダメよ?」
「もう関わることも出来ないでしょうけれど、またシーナに何かしようものなら容赦しなくてよ」
そう言ってまたもそっぽを向くと、ポソリと言葉を続けた。
「わたくしがもし同じ目に遭ったら」
「磨り潰す」
「…………」
システィアが言い終わる前に、シーナはとっても真っ黒な笑顔で一言宣い、ケイは聞いてはいけないことを宣っておりました。
「ああ、なるほど、こういう気持ちかぁ。これは嫌だな。ずっとティアに嫌な思いをさせていたのね。ごめんなさい、ティア。私、自分の事しか考えていなかったわ」
シーナは裏表が殆どない。自分の気持ちをストレートに伝えてくる。これは、大人になるにつれ、誰もが難しくなってくるもの。特に自身に非がある場合。悪いと素直に認められず、謝罪が出来ない。
精霊の加護云々よりも、この素直さを、王家の人たちはいたく気に入っていた。
「さて、それではアビアント家にもう用はないかしら?」
精霊たちと花冠を作っていた精霊女王レアが、四人に花冠を乗せながらそう尋ねる。
「ありがとうございます、精霊女王様。そうですね。システィーの加護を知った後も変わることのなかったあの家のことは諦め、宰相は別の者に水面下で引き継ぎを行っておりました」
「ありがとうございます、精霊女王様。国王の側近にしても、同様ですので、問題ありません」
花冠の礼と共に現状を伝えるリュクスとリュセスに、レアは満足そうに笑った。
「そう。ではもういいわね」
シーナは今後、王宮で過ごす。
精霊女王の加護のことは言わず、精霊王の加護を持つシスティアの願いでシーナは王宮にいる、という体で学園に通う。加護持ちであることは、必要であれば公開することにして欲しいと、シーナの願いだ。
もう、アビアント家は、必要ない。
「シーナ、止めてもムダよ?というより、もう止めないでちょうだいね?」
精霊たちもそうだが、レアだって我慢をしてきたのだ。ずっとずっと、我慢を。
「はい。えっと、あの、き、気を付けて?」
もう、それしか言えなかった。
*おしまい*
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
これにて本編は終了となります。
その後のアビアント家や学園での話、前世の話など、気まぐれに番外編で投稿していきたいと思っております。その際はお付き合いくださいますと、嬉しいです。
またお会い出来ることを願って。
王宮の第一庭園。
アビアント家に鉄槌を下した翌日、シーナはそこでシスティアとお茶を楽しんでいた。
体ごと精霊界へ行けるようになり、そこからどこにでも行けるようになった。そうしてシスティアだけでなく、王家の人たちとも交流をし続けていたシーナ。
元々システィアからシーナの話を聞いていた王家の人たちは、お忍びでシーナに会いに行ったりもしていた。アビアント家に知られたくないので、あくまでも通過するときや近くに行ったときに会う程度であったが。
シーナと実際会って、シーナを知るほど王家のアビアント家への怒りは蓄積されていった。当の本人は然程気にしていないことが、余計に王家の怒りを買った。
こんなにいい子を蔑ろにしやがって!
こうして、アビアント家は破滅へのカウントダウンは始まっていた。
そもそもシスティアに出会う前のアビアント家での出来事を、何故システィアが知ったのか。
もちろん精霊たちだ。精霊たちが、システィアにアビアント家を何とかしろと騒いだのだ。シーナはもう関わらないから放っておけと言っていたが、システィアは赦せなかった。王家にご協力いただくほどに。
「わたくしのシーナを蔑ろにされて、黙ってなんていられないでしょう」
ぷい、とそっぽを向くシスティアに、シーナは抱きついた。
「あー、可愛い可愛い可愛い可愛いっ」
「離れろ」
システィアにくっついているケイに、引き剥がされる。
「何よ、クロスケ。いい加減ティアを独り占めしすぎるのは止めなさい。ティアはあなただけのティアではないの」
同席する二人の王子も、最初こそシーナと精霊王であるケイとのやり取りに肝を冷やしていたが、今ではその光景を微笑ましく見つめている。
「まあ、アビアント家のことでクロスケにも迷惑かけていたみたいだし、お礼は言っておくわ。ありがとうね、クロスケ」
顕現してシスティアの背後に取り憑いていただけだが、最強の護衛であったことは間違いない。シーナの礼に、素直に頷く。
「リュクス様もリュセス様も、ありがとうございました。後で、陛下と王妃陛下にもお礼をさせていただきたいです」
そう言ってシーナが微笑むと、リュクスもリュセスも、淡く頬を染めながら笑って頷いた。
「でも、ティアに危ないことをして欲しくはないから、もうアビアント家に関わってはダメよ?」
「もう関わることも出来ないでしょうけれど、またシーナに何かしようものなら容赦しなくてよ」
そう言ってまたもそっぽを向くと、ポソリと言葉を続けた。
「わたくしがもし同じ目に遭ったら」
「磨り潰す」
「…………」
システィアが言い終わる前に、シーナはとっても真っ黒な笑顔で一言宣い、ケイは聞いてはいけないことを宣っておりました。
「ああ、なるほど、こういう気持ちかぁ。これは嫌だな。ずっとティアに嫌な思いをさせていたのね。ごめんなさい、ティア。私、自分の事しか考えていなかったわ」
シーナは裏表が殆どない。自分の気持ちをストレートに伝えてくる。これは、大人になるにつれ、誰もが難しくなってくるもの。特に自身に非がある場合。悪いと素直に認められず、謝罪が出来ない。
精霊の加護云々よりも、この素直さを、王家の人たちはいたく気に入っていた。
「さて、それではアビアント家にもう用はないかしら?」
精霊たちと花冠を作っていた精霊女王レアが、四人に花冠を乗せながらそう尋ねる。
「ありがとうございます、精霊女王様。そうですね。システィーの加護を知った後も変わることのなかったあの家のことは諦め、宰相は別の者に水面下で引き継ぎを行っておりました」
「ありがとうございます、精霊女王様。国王の側近にしても、同様ですので、問題ありません」
花冠の礼と共に現状を伝えるリュクスとリュセスに、レアは満足そうに笑った。
「そう。ではもういいわね」
シーナは今後、王宮で過ごす。
精霊女王の加護のことは言わず、精霊王の加護を持つシスティアの願いでシーナは王宮にいる、という体で学園に通う。加護持ちであることは、必要であれば公開することにして欲しいと、シーナの願いだ。
もう、アビアント家は、必要ない。
「シーナ、止めてもムダよ?というより、もう止めないでちょうだいね?」
精霊たちもそうだが、レアだって我慢をしてきたのだ。ずっとずっと、我慢を。
「はい。えっと、あの、き、気を付けて?」
もう、それしか言えなかった。
*おしまい*
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
これにて本編は終了となります。
その後のアビアント家や学園での話、前世の話など、気まぐれに番外編で投稿していきたいと思っております。その際はお付き合いくださいますと、嬉しいです。
またお会い出来ることを願って。
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