では、復讐するか

らがまふぃん

文字の大きさ
上 下
31 / 33
番外編

それぞれの婚約者話 シュリ×スフレ

しおりを挟む
“フレイはオレだけの呼び方だからね。他の人に呼ばせたらダメだよ、フレイ”
婚約者になる前から、そう言ってスフレの特別になりたがったシュリ。婚約出来る歳になると、直ぐさまスフレの元へ求婚に走った。自身の釣書を手にして。

好き、という感情に、種類があると気付いたのはいつだったか。
シュリは気付いたときには、スフレが特別だった。

そんな日常が、突如変化する。
何か、どこか違和感のある女生徒が近付いて来た。
オプト伯爵家の娘、スウィーディー。
初めのうちは違和感だったものが、徐々に形を帯びてくる。
狙いはリスラン。
だが、リスランの何を狙っているのかが掴みきれなかった。
王太子の立場か、国の機密情報か、王太子妃の座か、リスラン自身か。あるいは、まったく予想だにしていない何かか。
それを見極めるために泳がせているのだが。

気持ち悪い。
気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪いっ!

スウィーディーに触れられる度、シュリは全力で顔を背け、青ざめて今にも吐きそうな顔でリスランに目で訴える。

もういいからコイツ殺そう。

今までの努力が水の泡になるから耐えろと、リスランだけではなくスフレにも言われ、吐き気と殺意を一生懸命抑えながら耐える日々。
スウィーディーのことがあった日は、スフレからのご褒美があったから耐えられた。
スフレからのご褒美。それは、ひとつだけ、シュリの望みを叶えるというもの。
あるときは膝枕を所望し、あるときは膝の上で抱っこしたままあーんしてもらい、またあるときは、鎖骨の下にキスマークをつけてもらい。
スフレ天国スウィーディー地獄のギャップに苦しみながらの、とにかく忍耐の日々であった。

スウィーディーアイツ、絶対あの世に送ってやる。
これ以上スウィーディーあんなものに時間を割いていたら、ワーテラー公爵令嬢様が足りなくなってしまうとリスラン様は考えているだろう。だから、一番被害を被っているオレに、刑の裁量を委ねてくれるはずだ。
オレの中で、アイツの刑は西の砦一択。
処刑なんて生温い。
散々苦しんでから死ね。

こうして数ヶ月に及んだ煩わしい日々からやっと解放され、シュリは戻って来た日常を謳歌する。

「フレイ、熱心に何を読んでいるのかな」
「シュリ様、ごきげんよう。これは、“世界の有名な石二十選”ですわ」
「石?宝石のこと?」
「いいえ。石です。例えばこれですが――」
スフレが読んでいた本は、歴史的に有名な石を紹介するものだった。何故有名になるに至ったか、その詳細が物語のように綴られた作品。大抵が、歴史に名を残すほどの人物の首を晒すために置かれていた石、とか、動かそうとすると何故か不慮の事故に遭う石、とか。
「フレイ、ストップ!いい、いい、もういい!何でそんな怖いモノ読んでるの?!」
「怖い、ですか?いえいえ、それは表面を捉えただけのものですわ、シュリ様。これらは、理由があって選ばれたもの故、有名になったのです。その選定理由がまた秀逸なのですよ」
シュリの婚約者は、見た目おっとり癒やし系のご令嬢。けれど、その頭脳は驚くほど多角的に物事を捉える才女だ。
スウィーディーの件も、様々な切り口から意見や提案をしてくれた、影の立役者である。国王たちには、時間をかけすぎと言われてしまったが、それでもスフレのおかげで、思ったよりも早い段階でノヴァを呼び寄せられたのだ。
「ホントにオレの婚約者殿は」
苦笑しながら、シュリはそっとスフレの髪を撫でる。
ほんのりと頬を染めて微笑むスフレのその顔が、シュリは一番好きなのだ。

「さて、愛しい婚約者殿。そろそろ本ではなく、オレに構って?」



*おしまい*
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ! 

タヌキ汁
ファンタジー
 国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。  これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。

タイムリープ〜悪女の烙印を押された私はもう二度と失敗しない

結城芙由奈@12/27電子書籍配信中
恋愛
<もうあなた方の事は信じません>―私が二度目の人生を生きている事は誰にも内緒― 私の名前はアイリス・イリヤ。王太子の婚約者だった。2年越しにようやく迎えた婚約式の発表の日、何故か<私>は大観衆の中にいた。そして婚約者である王太子の側に立っていたのは彼に付きまとっていたクラスメイト。この国の国王陛下は告げた。 「アイリス・イリヤとの婚約を解消し、ここにいるタバサ・オルフェンを王太子の婚約者とする!」 その場で身に覚えの無い罪で悪女として捕らえられた私は島流しに遭い、寂しい晩年を迎えた・・・はずが、守護神の力で何故か婚約式発表の2年前に逆戻り。タイムリープの力ともう一つの力を手に入れた二度目の人生。目の前には私を騙した人達がいる。もう騙されない。同じ失敗は繰り返さないと私は心に誓った。 ※カクヨム・小説家になろうにも掲載しています

基本一話完結集

らがまふぃん
恋愛
基本2~3000文字程度の一話完結の色々なお話を置いていきます。基本恋愛です。何も考えずに読んでいただく作品集となりますので、気まぐれにお話が増えていきます。どんな内容かは、タイトルで判断出来るかもしれないようにします(?)サブタイトルがタグだと思ってください。連載中表記ですが、基本一話完結ですので、お気軽にお立ち寄りください。

王子殿下の慕う人

夕香里
恋愛
エレーナ・ルイスは小さい頃から兄のように慕っていた王子殿下が好きだった。 しかし、ある噂と事実を聞いたことで恋心を捨てることにしたエレーナは、断ってきていた他の人との縁談を受けることにするのだが──? 「どうして!? 殿下には好きな人がいるはずなのに!!」 好きな人がいるはずの殿下が距離を縮めてくることに戸惑う彼女と、我慢をやめた王子のお話。 ※小説家になろうでも投稿してます

あなたの1番になりたかった

トモ
恋愛
姉の幼馴染のサムが大好きな、ルナは、小さい頃から、いつも後を着いて行った。 姉とサムは、ルナの5歳年上。 姉のメイジェーンは相手にはしてくれなかったけど、サムはいつも優しく頭を撫でてくれた。 その手がとても心地よくて、大好きだった。 15歳になったルナは、まだサムが好き。 気持ちを伝えると気合いを入れ、いざ告白しにいくとそこには…

【完結】婚約者を奪われましたが、彼が愛していたのは私でした

珊瑚
恋愛
全てが完璧なアイリーン。だが、転落して頭を強く打ってしまったことが原因で意識を失ってしまう。その間に婚約者は妹に奪われてしまっていたが彼の様子は少し変で……? 基本的には、0.6.12.18時の何れかに更新します。どうぞ宜しくお願いいたします。

美しい公爵様の、凄まじい独占欲と溺れるほどの愛

らがまふぃん
恋愛
 こちらは以前投稿いたしました、 美しく残酷な公爵令息様の、一途で不器用な愛 の続編となっております。前作よりマイルドな作品に仕上がっておりますが、内面のダークさが前作よりはあるのではなかろうかと。こちらのみでも楽しめるとは思いますが、わかりづらいかもしれません。よろしかったら前作をお読みいただいた方が、より楽しんでいただけるかと思いますので、お時間の都合のつく方は、是非。時々予告なく残酷な表現が入りますので、苦手な方はお控えください。 *早速のお気に入り登録、しおり、エールをありがとうございます。とても励みになります。前作もお読みくださっている方々にも、多大なる感謝を! ※R5.7/23本編完結いたしました。たくさんの方々に支えられ、ここまで続けることが出来ました。本当にありがとうございます。ばんがいへんを数話投稿いたしますので、引き続きお付き合いくださるとありがたいです。この作品の前作が、お気に入り登録をしてくださった方が、ありがたいことに200を超えておりました。感謝を込めて、前作の方に一話、近日中にお届けいたします。よろしかったらお付き合いください。 ※R5.8/6ばんがいへん終了いたしました。長い間お付き合いくださり、また、たくさんのお気に入り登録、しおり、エールを、本当にありがとうございました。 ※R5.9/3お気に入り登録200になっていました。本当にありがとうございます(泣)。嬉しかったので、一話書いてみました。 ※R5.10/30らがまふぃん活動一周年記念として、一話お届けいたします。 ※R6.1/27美しく残酷な公爵令息様の、一途で不器用な愛(前作) と、こちらの作品の間のお話し 美しく冷酷な公爵令息様の、狂おしい熱情に彩られた愛 始めました。お時間の都合のつく方は、是非ご一読くださると嬉しいです。 *らがまふぃん活動二周年記念として、R6.11/4に一話お届けいたします。少しでも楽しんでいただけますように。

ご期待に沿えず、誠に申し訳ございません

野村にれ
恋愛
人としての限界に達していたヨルレアンは、 婚約者であるエルドール第二王子殿下に理不尽とも思える注意を受け、 話の流れから婚約を解消という話にまでなった。 ヨルレアンは自分の立場のために頑張っていたが、 絶対に婚約を解消しようと拳を上げる。

処理中です...