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17 真相4
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「何よ!ユセフィラをあたしが突き落としたって言いたいの?!あれは不注意よ!あんただって見てたんでしょ?!それともあたしが突き落としたって家の名にかけて言えるって言うの?!」
突然叫びだしたスウィーディーに、彼女を庇うように立っていた子息たちは驚いて彼女を見る。何が起こっているのか理解出来ない、したくないと言うように、大きく目を見開いて固まっている。
それはそうだ。
王太子の婚約者であり、自分より遥か格上の公爵令嬢に対して、あの女呼ばわりをしたのだ。スウィーディーは無意識だったのかもしれない。だからこそ、彼女のユセフィラに対する感情が見えるというものだ。
さらには大公令息をあんたと言った。どれだけ無礼を重ねるのだろう。
そんなスウィーディーや周囲を気にすることなく、ノヴァは告げる。
「未必の故意」
「はあ?」
「あるいは、認識ある過失」
「何言ってるの?」
ノヴァの言わんとすることが理解出来ず、スウィーディーは思い切り顔を顰める。
「未必の故意、とは、“こうなるかもしれないが、なっても構わない”、というもの。認識ある過失、とは、“こうなるかもしれないが、ならないだろう”、というもの」
ノヴァは一旦言葉を切ってから。
「階段を上りながら義従姉上を追い抜いたな」
「それが何よ」
「追い抜いた直後に、何故義従姉上の目の前に割り込み、勢いよく振り返った?」
スウィーディーは目を見開き、そっと視線を逸らす。
「そ、れは、ちょっと、急いでて。追い抜いてユセフィラ様だって気付いて慌てて謝ろうとしたのよ」
「謝る?何故?」
「自分より爵位が上の人間を挨拶もなしにすり抜けちゃったからでしょ。だから、ワザとじゃないわ」
「へえ?あくまでも不注意だと」
「ええ、ワザとじゃない」
「私が義従姉上を庇う際、キミの口元は笑っていたように見えたが」
「何それ!言いがかりじゃない!あたしを悪者にしたくて嘘を言ってるとしか思えない!」
頭に血が上ったスウィーディーは、噛みつくように答える。
「私は今、キミのことに関して家の名に誓っている。言いがかりではない。だが、これは証拠がないので、これ以上は水掛け論になる。とにかく私の目から見て、階段の件は不注意ではなく、未必の故意だと思っている、ということだ」
「やっぱり裏切り者じゃない!!」
堪りかねてさらに声を大きくして叫ぶスウィーディーに、ノヴァはゆっくり首を傾げた。
「何故」
「さっきからあたしを追い詰めるような言動しかしてないでしょ!」
ノヴァは呆れた目を向ける。
「キミの望み通りだ。“私には真実はわからない。私が見て感じたことしか話せない“と言った私に、”それでいいのよ“、と」
「だってあんた、あたしに復讐してやるって言ったじゃない!」
愛らしい顔が怒りに歪み、スウィーディーを囲んでいた者たちは、ゆっくり離れていく。そして、穏やかではない言葉に、周囲の潜めた声に緊張が孕む。
しかしコノアは淡々と答える。
「言っていない」
「はあ?何よ今更!逃げる気?!」
「違う。復讐するか、となら言った。言葉は正しく聞け」
「同じでしょ!」
「違う」
「何が!」
やれやれ、とでも言いたげに溜め息を吐いてコノアは言った。
*つづく*
突然叫びだしたスウィーディーに、彼女を庇うように立っていた子息たちは驚いて彼女を見る。何が起こっているのか理解出来ない、したくないと言うように、大きく目を見開いて固まっている。
それはそうだ。
王太子の婚約者であり、自分より遥か格上の公爵令嬢に対して、あの女呼ばわりをしたのだ。スウィーディーは無意識だったのかもしれない。だからこそ、彼女のユセフィラに対する感情が見えるというものだ。
さらには大公令息をあんたと言った。どれだけ無礼を重ねるのだろう。
そんなスウィーディーや周囲を気にすることなく、ノヴァは告げる。
「未必の故意」
「はあ?」
「あるいは、認識ある過失」
「何言ってるの?」
ノヴァの言わんとすることが理解出来ず、スウィーディーは思い切り顔を顰める。
「未必の故意、とは、“こうなるかもしれないが、なっても構わない”、というもの。認識ある過失、とは、“こうなるかもしれないが、ならないだろう”、というもの」
ノヴァは一旦言葉を切ってから。
「階段を上りながら義従姉上を追い抜いたな」
「それが何よ」
「追い抜いた直後に、何故義従姉上の目の前に割り込み、勢いよく振り返った?」
スウィーディーは目を見開き、そっと視線を逸らす。
「そ、れは、ちょっと、急いでて。追い抜いてユセフィラ様だって気付いて慌てて謝ろうとしたのよ」
「謝る?何故?」
「自分より爵位が上の人間を挨拶もなしにすり抜けちゃったからでしょ。だから、ワザとじゃないわ」
「へえ?あくまでも不注意だと」
「ええ、ワザとじゃない」
「私が義従姉上を庇う際、キミの口元は笑っていたように見えたが」
「何それ!言いがかりじゃない!あたしを悪者にしたくて嘘を言ってるとしか思えない!」
頭に血が上ったスウィーディーは、噛みつくように答える。
「私は今、キミのことに関して家の名に誓っている。言いがかりではない。だが、これは証拠がないので、これ以上は水掛け論になる。とにかく私の目から見て、階段の件は不注意ではなく、未必の故意だと思っている、ということだ」
「やっぱり裏切り者じゃない!!」
堪りかねてさらに声を大きくして叫ぶスウィーディーに、ノヴァはゆっくり首を傾げた。
「何故」
「さっきからあたしを追い詰めるような言動しかしてないでしょ!」
ノヴァは呆れた目を向ける。
「キミの望み通りだ。“私には真実はわからない。私が見て感じたことしか話せない“と言った私に、”それでいいのよ“、と」
「だってあんた、あたしに復讐してやるって言ったじゃない!」
愛らしい顔が怒りに歪み、スウィーディーを囲んでいた者たちは、ゆっくり離れていく。そして、穏やかではない言葉に、周囲の潜めた声に緊張が孕む。
しかしコノアは淡々と答える。
「言っていない」
「はあ?何よ今更!逃げる気?!」
「違う。復讐するか、となら言った。言葉は正しく聞け」
「同じでしょ!」
「違う」
「何が!」
やれやれ、とでも言いたげに溜め息を吐いてコノアは言った。
*つづく*
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