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9 では、復讐するか
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スウィーディーは肩を揺らした。
「あ、あの、は、はい、私が、ぶつかり、ました」
俯いて小さな声でそう言ったスウィーディーに、リスランは再度問いかける。
「本当に?」
「ほ、本当ですっ。私が、ユセフィラ様をっ。誰かを庇ったりなんてしていませんっ。ね、コノア、あの時、私とユセフィラ様しかいなかったわよね?」
両手でコノアの袖を握り締め、涙に濡れた目で縋るように見つめるスウィーディーに、コノアはやはり無表情で「ああ」と答えた。
リスランはジッと二人を見つめ、やがて何かを諦めたように息を吐いた。
「わかった。ユセフィラは療養のため、しばらく学園を休む。二人共帰って良い。ただ、オプト嬢は不可抗力とは言え、何らかの処罰が下るが受け入れてくれ」
「っはい、申し訳ありませんでした。あの、ユセフィラ様のお見舞いとか」
「それは不要だ」
「で、では、せめて謝罪を伝えてください」
「ああ、伝えよう」
「ありがとうございますっ」
「失礼いたします」
二人は退室しようとすると、思い出したようにスウィーディーがリスランを振り返る。
「あ、あのっ」
モジモジとして、その後が続かない。コノアをチラ、と見ると、コノアは片眉を上げてから、先に外に出ている、とスウィーディーを置いて退室した。
「何かありましたか?」
シュリが促すと、意を決したように、口を開いた。
「ユセフィラ様のこと、なんですけど、ちょっと、気になることがあって」
そうして話し終えると、
「もしこれが本当だったら、リスラン様に対して酷い裏切りだと思うんです」
そう言って、スウィーディーは怒りと悲しみがない交ぜになったような表情を浮かべた。
その話を聞いたリスランの周囲の温度が、かなり下がった。
「報告、ご苦労」
それだけ言うと、リスランは椅子ごと背を向けた。
「わかっていると思うが、他言無用だ、オプト嬢」
アサトにそう言われ、スウィーディーは少し顔を青くしながら部屋を後にした。
出て行くその背中を、側近候補の三人は、ジッと見つめた。
………
……
…
「コノア、本当に大丈夫?ごめんなさい、私の不注意でこんなことに」
生徒会室から出ると、コノアが待っていた。スウィーディーが側まで来ると、コノアは何も聞かず、歩き出した。スウィーディーが俯きながらコノアに謝罪をすると、大丈夫だ、とだけ返して、コノアは黙々と歩いた。スウィーディーも黙ってコノアの後ろをついて行く。
「聞いてもいいか」
周囲に誰もいないことを確認すると、やがてコノアは歩みを止めてスウィーディーを振り返る。そして、変わらない表情でスウィーディーに問いかけた。
「なあに?」
手で目元を擦る仕草をした後、スウィーディーは顔を上げて、泣いているように笑った。スウィーディーが、明るく元気な印象をみんなに持っていて欲しいと思っていることを知ってか知らずか、コノアはそれに気付かないフリをする。
少しの間の後。
「本当に不注意か?」
その言葉に、少しだけ、空気が冷たくなった気がした。
「や、やだ、コノアまで。あの場には私とユセフィラ様しかいなかったのよ?他の人を、見ていないでしょう?」
慌てたようにそう言うと、ますます冷たい空気を纏ったコノアが言った。
「そんなことを聞いているのではない。本当に不注意か、と聞いている」
スウィーディーは俯くと、意を決したように顔を上げた。
「そうよ。私の不注意。私が、ぶつかってしまったの。誰かを庇ったりなんて、していないわ」
コノアは溜め息を吐く。
少しして、コノアは呟くように言った。
「では、復讐するか」
*つづく*
「あ、あの、は、はい、私が、ぶつかり、ました」
俯いて小さな声でそう言ったスウィーディーに、リスランは再度問いかける。
「本当に?」
「ほ、本当ですっ。私が、ユセフィラ様をっ。誰かを庇ったりなんてしていませんっ。ね、コノア、あの時、私とユセフィラ様しかいなかったわよね?」
両手でコノアの袖を握り締め、涙に濡れた目で縋るように見つめるスウィーディーに、コノアはやはり無表情で「ああ」と答えた。
リスランはジッと二人を見つめ、やがて何かを諦めたように息を吐いた。
「わかった。ユセフィラは療養のため、しばらく学園を休む。二人共帰って良い。ただ、オプト嬢は不可抗力とは言え、何らかの処罰が下るが受け入れてくれ」
「っはい、申し訳ありませんでした。あの、ユセフィラ様のお見舞いとか」
「それは不要だ」
「で、では、せめて謝罪を伝えてください」
「ああ、伝えよう」
「ありがとうございますっ」
「失礼いたします」
二人は退室しようとすると、思い出したようにスウィーディーがリスランを振り返る。
「あ、あのっ」
モジモジとして、その後が続かない。コノアをチラ、と見ると、コノアは片眉を上げてから、先に外に出ている、とスウィーディーを置いて退室した。
「何かありましたか?」
シュリが促すと、意を決したように、口を開いた。
「ユセフィラ様のこと、なんですけど、ちょっと、気になることがあって」
そうして話し終えると、
「もしこれが本当だったら、リスラン様に対して酷い裏切りだと思うんです」
そう言って、スウィーディーは怒りと悲しみがない交ぜになったような表情を浮かべた。
その話を聞いたリスランの周囲の温度が、かなり下がった。
「報告、ご苦労」
それだけ言うと、リスランは椅子ごと背を向けた。
「わかっていると思うが、他言無用だ、オプト嬢」
アサトにそう言われ、スウィーディーは少し顔を青くしながら部屋を後にした。
出て行くその背中を、側近候補の三人は、ジッと見つめた。
………
……
…
「コノア、本当に大丈夫?ごめんなさい、私の不注意でこんなことに」
生徒会室から出ると、コノアが待っていた。スウィーディーが側まで来ると、コノアは何も聞かず、歩き出した。スウィーディーが俯きながらコノアに謝罪をすると、大丈夫だ、とだけ返して、コノアは黙々と歩いた。スウィーディーも黙ってコノアの後ろをついて行く。
「聞いてもいいか」
周囲に誰もいないことを確認すると、やがてコノアは歩みを止めてスウィーディーを振り返る。そして、変わらない表情でスウィーディーに問いかけた。
「なあに?」
手で目元を擦る仕草をした後、スウィーディーは顔を上げて、泣いているように笑った。スウィーディーが、明るく元気な印象をみんなに持っていて欲しいと思っていることを知ってか知らずか、コノアはそれに気付かないフリをする。
少しの間の後。
「本当に不注意か?」
その言葉に、少しだけ、空気が冷たくなった気がした。
「や、やだ、コノアまで。あの場には私とユセフィラ様しかいなかったのよ?他の人を、見ていないでしょう?」
慌てたようにそう言うと、ますます冷たい空気を纏ったコノアが言った。
「そんなことを聞いているのではない。本当に不注意か、と聞いている」
スウィーディーは俯くと、意を決したように顔を上げた。
「そうよ。私の不注意。私が、ぶつかってしまったの。誰かを庇ったりなんて、していないわ」
コノアは溜め息を吐く。
少しして、コノアは呟くように言った。
「では、復讐するか」
*つづく*
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