美しい公爵様の、凄まじい独占欲と溺れるほどの愛

らがまふぃん

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リカリエット王国編

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 残酷な表現があります。ご注意ください。

*~*~*~*~*

 「いいのか、あれ」
 引きつった顔でヴァイアツェルトが言うと、ライリアストは相変わらず微笑んだまま、
 「どうせ殿下の国にのまれるでしょう。そんな王族に何か配慮がいりますか?」
 そう言った。
 「私の国に?何を知っているんだ、おまえたちは」
 ライリアストもディアンもただ笑うだけ。ヴァイアツェルトは仕方なく成り行きを見守ることにした。
 一方、シャルアとミカレイラは戦慄する。他国の王太子を、何もしていない王太子を害するなど、あり得ない。この男は危険だ。
 何より確信している。
 エリアストは、確信しているのだ。自分たちがアリスに何かをしようとしていると。
 言葉など関係ない。何を言っても無駄だ。逃げるしかない。
 シャルアは踵を返すと走り出した。
 それは、肯定である。
 アリスを害そうとした、と。
 エリアストの体がぶれた。
 エリアストは逃げるシャルアに一瞬で追いつく。その後ろえりを掴むと、そのまま引っ張り後方へ投げた。シャルアはテーブルに乗り上げ、料理が派手な音と共に床に落ちる。勢い、シャルアも床に転げ落ちた。
 シャルアは急ぎ立ち上がろうと床についた手を、いつの間にかそこにいたエリアストに踏みつけられた。
 「いっ、あっ」
 シャルアは手を引き抜こうともう片方の手で引っ張るが、微動だにしない。それどころか、益々圧がかかる。そして。
 「ああああああ゛あ゛っ」
 骨が無数に折れる音がした。
 エリアストは踏みつけた右手の二の腕を、側の護衛から受け取った剣で床に縫い付ける。絶叫が響いた。
 エリアストの表情はない。
 足を離すと、今度は背中を踏みつける。ミシリと嫌な音がする。シャルアの顔は、痛みと恐怖からいろいろな液体が混ざって大惨事だ。構わずエリアストは、シャルアの左腕を持ち上げる。シャルアは背中を踏みつけられているため、足をバタバタとさせることしか出来ない。
 「やめ、やめろっ、やめてくれえっ」
 ゴキン。
 肩が外れたのではない。折れた。ついでとばかりに肘も折る。シャルアはあまりのことに、泡を吹いて意識を失った。それを見てエリアストはシャルアの腕から剣を抜くと、その両足の腱を切り裂いた。目覚めても逃げられないように。
 他国の人々は、逃げ遅れて見てしまった。そしてその容赦のなさに、躊躇ためらいいのなさに、震えた。動かない足を叱咤しホールから出ようとするが、体がいうことをきかない。中には倒れた者もいた。
 表情のないエリアストが振り向く。
 その目は、腰を抜かしてガタガタと震えるミカレイラを見た。シャルアの血が流れるままの剣を手に、コツコツと近付くエリアスト。それに、首を振って涙を流しながら、ミカレイラはズリズリと後退する。トン、と背中が壁に当たる。
 見誤った。完全に誤算だった。
 シャルアの残酷性に慣れていたが、自分が獲物となると、酷く恐ろしい。エリアストの静かな殺気もまた、恐ろしさに拍車がかかる。
 美しく残酷なディレイガルド。
 愛する妻が、逆鱗である。
 その噂は、本物であった。


*つづく*
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