上 下
22 / 23

22 新たな君主

しおりを挟む
 お父様との睨み合いが続く。
 革命家達はそれを後ろから静かに見守っていた。

「お父様。もう公務は懲り懲りだよ」

 先に沈黙を破ったのはお姉様だった。

「私はね、ここ数年間。次期女王として毎日4時間睡眠で頑張って公務に臨んできたけど、やっぱり私は自分の時間が欲しい。自由になりたい!」
「フッ、王族のくせになにを言ってるのだ。我々がこの生活と権力を維持するためにはこの国の支配を確固たるものにしなければいかん。欲に塗れた者達にスキを与えないためには、王族はこれほどの公務を行う必要があるのだ」
「その権力を維持してなにになるの?私たちの暮らしがちょっと良くなるだけじゃん!?」

 お姉様がお父様に反論した。
 そこで私はちょっとだけ口を挟む。

「えっ、ちょっと待ってお姉様。贅沢な暮らしは必要なものよ。私はこれからも高級料理を食べて生きていきたいわ!」

 するとお姉様が怖い表情でこちらを睨んでくる。目が言外に「黙って」と言っていた。

 ……ちょっと怖い。

 なので私は慌てて口をつぐむ。
 いつの間にか、お姉様の方が革命に熱心になってる気がした。

「とにかく、こんな体制を続けててもみんな幸せになんかならない!王族の権力を制限して議会を作るべだよ!」
「黙れぇ!平民どもの集まりに何ができる?すぐに他国からつけいられるぞ!この国を守るためにも、王政は必要なのだ!」
「ならば、その議会に私たちが助言をしてあげればいいよ!そしたら彼らだって上手くやると思うよけど?」
「そしたら、彼らに助言が必要なくなってきた時、我らの存在意義がなくなってしまうでわないか?」
「それでいいじゃん!この国を民衆達の任せちゃっていいじゃん!公務は全て議会に放り投げて、それで終わりでいいじゃん!」

 ついにお姉様が癇癪を起こし始める。

 ……あぁ、こうなったら、もうお姉様は手がつけられませんわ。

「よくない!この国には王族の支配が必要だ!」
「このわからずや!!」

 お姉様のあまりの性格の変わりように革命家の人たちも目を見開いていたが、彼女が目で合図すると、彼らは打ち合わせ通りに動き出した。

 いよいよアレのお時間である。

 次の瞬間、ベンが大声がその場に響き渡った。

「これより、我々は、この国の国民の代表として現国王を廃位し、新しく『シャルロット・フォン・ティーファ』を君主として迎えることを決定した」

 それはあまりに非合法な権力の剥奪式。
 普段なら絶対に認められないであろう暴挙。

 だが、王都が民衆の手に落ちた今。
 ひっくり返ったパワーバランスがそれを可能としていた。

 その声は、城外の民衆にまで響き渡った。
 お城の兵士、侍女、そして補佐官までもがその声を聞いていた。
 しかし、誰もこれに異論を呈す者はいなかった

 お父様がだけが、状況を飲み込めずにいた。

 こうして、お姉様こと『シャルロット・フォン・ティーファ』は女王となった。
 そんな彼女にベンが頭を下げる。
 同時に、お父様を除いたこの場の全員が同じ行動をとった。

「「「王女陛下。御即位お祝い申し上げます」」」

 すると、お姉様は恥ずかしげに笑う。

「なんか、みんなにそんな態度取られるとむず痒なぁ」

 すると、周りにホッとした雰囲気が流れた。
 そんな中、お姉様にベンがある申し出をする。

「さっそくですが陛下。我々民衆の議会を開くことを認めていただけますか?」

 それは、自由を求めて続けた民衆達の悲願。
 貴族の圧政に苦しめられる中見続けた夢。

 そして今、これに新たな君主が応える。

「うん、私はあなた方民衆が議会を開くことを認め、その決定に従うことを誓うよ」

 突如、ワッと歓声が巻き起こった。
 それは、革命の成功を意味していた。

 無くなる公務。
 新たな自由。
 新たな体制。

 ここから、この国の新たな歴史が始まろうとしていた。

ーーーーーーーーーー

次回、最終話です。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

魔王を倒したが、無実の罪を着せられた俺は、これから好きに生きる

竹桜
ファンタジー
勇者召喚され、魔王を倒した飛山 翼は、無実の罪で、牢獄にいれられた。 この世界に召喚した者達は、俺を用済みと判断したようなので、主人公は、これからは、好きに生きることにした。

ダンジョン探索の前に付与付きのお花は如何ですか?ダンジョン前の花売りは今日も冒険者に大人気です

まったりー
ファンタジー
主人公は、花屋のトレーラーショップを開業したその日、異世界に飛んでしまい途方に暮れていました。 戻る手段が分かるわけもなく、生きていくには花を売るしかないと悟り、人のいる場所に向かいます。 一人は寂しい事もあり、途中で出会った獣付きの子供を仲間にして、ダンジョン都市でお店を開きましたが、主人公の扱う品には素晴らしい付与が付いた為大人気となります。

愛され系公爵家令嬢に転生したはずなのに、齢8歳にして辺境送りになっちゃった(一発ネタ)

うみ
ファンタジー
妄想と奇行が激しい私だけど、無双しちゃうんだからね! 幸せが約束された公爵令嬢に転生したサエコーヌだったが、何故か辺境に送られることに。 彼女が辺境に送られた知られざる事実とは……?

生まれる前から好きでした。

BL
極力目立たないように静かに暮らしてきた高校生の相澤和真の前に突然現れた年下の容姿端麗な男、三峰汐音。彼は前世の記憶があり、和真を自分が前世で護衛をしていた王女の生まれ変わりなどだと打ち明ける。王女の面影を追って和真を一途に慕う汐音に和真の生活は乱されていく。汐音の出現で和真の唯一の友人である福井奏の様子もどこかおかしくなってきた。年下男から一途に愛される生まれ変わりラブ。

茶番には付き合っていられません

わらびもち
恋愛
私の婚約者の隣には何故かいつも同じ女性がいる。 婚約者の交流茶会にも彼女を同席させ仲睦まじく過ごす。 これではまるで私の方が邪魔者だ。 苦言を呈しようものなら彼は目を吊り上げて罵倒する。 どうして婚約者同士の交流にわざわざ部外者を連れてくるのか。 彼が何をしたいのかさっぱり分からない。 もうこんな茶番に付き合っていられない。 そんなにその女性を傍に置きたいのなら好きにすればいいわ。

お母さん冒険者、ログインボーナスでスキル【主婦】に目覚めました。週一貰えるチラシで冒険者生活頑張ります!

林優子
ファンタジー
二人の子持ち27歳のカチュア(主婦)は家計を助けるためダンジョンの荷物運びの仕事(パート)をしている。危険が少なく手軽なため、迷宮都市ロアでは若者や主婦には人気の仕事だ。 夢は100万ゴールドの貯金。それだけあれば三人揃って国境警備の任務についているパパに会いに行けるのだ。 そんなカチュアがダンジョン内の女神像から百回ログインボーナスで貰ったのは、オシャレながま口とポイントカード、そして一枚のチラシ? 「モンスターポイント三倍デーって何?」 「4の付く日は薬草デー?」 「お肉の日とお魚の日があるのねー」 神様からスキル【主婦/主夫】を授かった最弱の冒険者ママ、カチュアさんがワンオペ育児と冒険者生活頑張る話。 ※他サイトにも投稿してます

魔女ですが、人間に苛められたので皆殺しにしたい「旧題・少女は其れでも生き足掻く」

峯松めだか(旧かぐつち)
ファンタジー
 時代設定としては中世ヨーロッパなファンタジー、魔女狩りと傭兵団の略奪がある地獄です。  一人の少女から始まります。  作者としては、10年前にプロット出して放置していた物です、ボツ供養の類ですが、今更書いたら意外と繋がりました。  短い予定ですが、よろしかったらお付き合いください。

贖罪の幼女

偽物道化師@アルファポリス
ファンタジー
____2150年 突如、現れた異形の生物『エグリアルマティアス』。 銀色に輝く瞳と圧倒的な力、 そして桁外れの身体能力を持つ彼らの侵略に、 人類はなす術もなく蹂躙をされる。 全世界人口の大半を殺害、 または、繁殖の繭にされてしまった現在、 人類は彼らの内臓組織を体内に取り入れることによって『アルマ』と呼ばれる半人半異形の人間を造り出し、狭い、かつて『日本』と呼ばれていた島で、 『エグリアルマティアス』の脅威に怯え、戦いながら生きることを余儀なくされていた。 そんな中、人類が世界を取り戻すために組織された機関。 半人半異形組織『アルマティアス』 ──通称、『アルマ』。 そのひとつ、『アンヘル・ネメシス』に所属する 時雨 瑠璃(しぐれ るり)は、 相棒の幼刀・向日葵(ひまわり)と共に、 『エグリアルマティアス』に立ち向かっていく__。

処理中です...