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22 新たな君主
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お父様との睨み合いが続く。
革命家達はそれを後ろから静かに見守っていた。
「お父様。もう公務は懲り懲りだよ」
先に沈黙を破ったのはお姉様だった。
「私はね、ここ数年間。次期女王として毎日4時間睡眠で頑張って公務に臨んできたけど、やっぱり私は自分の時間が欲しい。自由になりたい!」
「フッ、王族のくせになにを言ってるのだ。我々がこの生活と権力を維持するためにはこの国の支配を確固たるものにしなければいかん。欲に塗れた者達にスキを与えないためには、王族はこれほどの公務を行う必要があるのだ」
「その権力を維持してなにになるの?私たちの暮らしがちょっと良くなるだけじゃん!?」
お姉様がお父様に反論した。
そこで私はちょっとだけ口を挟む。
「えっ、ちょっと待ってお姉様。贅沢な暮らしは必要なものよ。私はこれからも高級料理を食べて生きていきたいわ!」
するとお姉様が怖い表情でこちらを睨んでくる。目が言外に「黙って」と言っていた。
……ちょっと怖い。
なので私は慌てて口をつぐむ。
いつの間にか、お姉様の方が革命に熱心になってる気がした。
「とにかく、こんな体制を続けててもみんな幸せになんかならない!王族の権力を制限して議会を作るべだよ!」
「黙れぇ!平民どもの集まりに何ができる?すぐに他国からつけいられるぞ!この国を守るためにも、王政は必要なのだ!」
「ならば、その議会に私たちが助言をしてあげればいいよ!そしたら彼らだって上手くやると思うよけど?」
「そしたら、彼らに助言が必要なくなってきた時、我らの存在意義がなくなってしまうでわないか?」
「それでいいじゃん!この国を民衆達の任せちゃっていいじゃん!公務は全て議会に放り投げて、それで終わりでいいじゃん!」
ついにお姉様が癇癪を起こし始める。
……あぁ、こうなったら、もうお姉様は手がつけられませんわ。
「よくない!この国には王族の支配が必要だ!」
「このわからずや!!」
お姉様のあまりの性格の変わりように革命家の人たちも目を見開いていたが、彼女が目で合図すると、彼らは打ち合わせ通りに動き出した。
いよいよアレのお時間である。
次の瞬間、ベンが大声がその場に響き渡った。
「これより、我々は、この国の国民の代表として現国王を廃位し、新しく『シャルロット・フォン・ティーファ』を君主として迎えることを決定した」
それはあまりに非合法な権力の剥奪式。
普段なら絶対に認められないであろう暴挙。
だが、王都が民衆の手に落ちた今。
ひっくり返ったパワーバランスがそれを可能としていた。
その声は、城外の民衆にまで響き渡った。
お城の兵士、侍女、そして補佐官までもがその声を聞いていた。
しかし、誰もこれに異論を呈す者はいなかった
お父様がだけが、状況を飲み込めずにいた。
こうして、お姉様こと『シャルロット・フォン・ティーファ』は女王となった。
そんな彼女にベンが頭を下げる。
同時に、お父様を除いたこの場の全員が同じ行動をとった。
「「「王女陛下。御即位お祝い申し上げます」」」
すると、お姉様は恥ずかしげに笑う。
「なんか、みんなにそんな態度取られるとむず痒なぁ」
すると、周りにホッとした雰囲気が流れた。
そんな中、お姉様にベンがある申し出をする。
「さっそくですが陛下。我々民衆の議会を開くことを認めていただけますか?」
それは、自由を求めて続けた民衆達の悲願。
貴族の圧政に苦しめられる中見続けた夢。
そして今、これに新たな君主が応える。
「うん、私はあなた方民衆が議会を開くことを認め、その決定に従うことを誓うよ」
突如、ワッと歓声が巻き起こった。
それは、革命の成功を意味していた。
無くなる公務。
新たな自由。
新たな体制。
ここから、この国の新たな歴史が始まろうとしていた。
ーーーーーーーーーー
次回、最終話です。
革命家達はそれを後ろから静かに見守っていた。
「お父様。もう公務は懲り懲りだよ」
先に沈黙を破ったのはお姉様だった。
「私はね、ここ数年間。次期女王として毎日4時間睡眠で頑張って公務に臨んできたけど、やっぱり私は自分の時間が欲しい。自由になりたい!」
「フッ、王族のくせになにを言ってるのだ。我々がこの生活と権力を維持するためにはこの国の支配を確固たるものにしなければいかん。欲に塗れた者達にスキを与えないためには、王族はこれほどの公務を行う必要があるのだ」
「その権力を維持してなにになるの?私たちの暮らしがちょっと良くなるだけじゃん!?」
お姉様がお父様に反論した。
そこで私はちょっとだけ口を挟む。
「えっ、ちょっと待ってお姉様。贅沢な暮らしは必要なものよ。私はこれからも高級料理を食べて生きていきたいわ!」
するとお姉様が怖い表情でこちらを睨んでくる。目が言外に「黙って」と言っていた。
……ちょっと怖い。
なので私は慌てて口をつぐむ。
いつの間にか、お姉様の方が革命に熱心になってる気がした。
「とにかく、こんな体制を続けててもみんな幸せになんかならない!王族の権力を制限して議会を作るべだよ!」
「黙れぇ!平民どもの集まりに何ができる?すぐに他国からつけいられるぞ!この国を守るためにも、王政は必要なのだ!」
「ならば、その議会に私たちが助言をしてあげればいいよ!そしたら彼らだって上手くやると思うよけど?」
「そしたら、彼らに助言が必要なくなってきた時、我らの存在意義がなくなってしまうでわないか?」
「それでいいじゃん!この国を民衆達の任せちゃっていいじゃん!公務は全て議会に放り投げて、それで終わりでいいじゃん!」
ついにお姉様が癇癪を起こし始める。
……あぁ、こうなったら、もうお姉様は手がつけられませんわ。
「よくない!この国には王族の支配が必要だ!」
「このわからずや!!」
お姉様のあまりの性格の変わりように革命家の人たちも目を見開いていたが、彼女が目で合図すると、彼らは打ち合わせ通りに動き出した。
いよいよアレのお時間である。
次の瞬間、ベンが大声がその場に響き渡った。
「これより、我々は、この国の国民の代表として現国王を廃位し、新しく『シャルロット・フォン・ティーファ』を君主として迎えることを決定した」
それはあまりに非合法な権力の剥奪式。
普段なら絶対に認められないであろう暴挙。
だが、王都が民衆の手に落ちた今。
ひっくり返ったパワーバランスがそれを可能としていた。
その声は、城外の民衆にまで響き渡った。
お城の兵士、侍女、そして補佐官までもがその声を聞いていた。
しかし、誰もこれに異論を呈す者はいなかった
お父様がだけが、状況を飲み込めずにいた。
こうして、お姉様こと『シャルロット・フォン・ティーファ』は女王となった。
そんな彼女にベンが頭を下げる。
同時に、お父様を除いたこの場の全員が同じ行動をとった。
「「「王女陛下。御即位お祝い申し上げます」」」
すると、お姉様は恥ずかしげに笑う。
「なんか、みんなにそんな態度取られるとむず痒なぁ」
すると、周りにホッとした雰囲気が流れた。
そんな中、お姉様にベンがある申し出をする。
「さっそくですが陛下。我々民衆の議会を開くことを認めていただけますか?」
それは、自由を求めて続けた民衆達の悲願。
貴族の圧政に苦しめられる中見続けた夢。
そして今、これに新たな君主が応える。
「うん、私はあなた方民衆が議会を開くことを認め、その決定に従うことを誓うよ」
突如、ワッと歓声が巻き起こった。
それは、革命の成功を意味していた。
無くなる公務。
新たな自由。
新たな体制。
ここから、この国の新たな歴史が始まろうとしていた。
ーーーーーーーーーー
次回、最終話です。
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