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しおりを挟む一国を簡単に滅ぼす能力をもった魔王と。
世界最強の魔力をもった大魔導士と。
そんな二人が全力でぶつかったらどうなるか!?──世界崩壊するわ!
下手したら、戦闘終わる頃には二人を残して全人類・全魔物消滅とかなっとるわ!
それはまずい!
非常にまずい!
前世で早死にして今世でも早死にとか笑えない!
みんな仲良く一緒に全滅とか泣くに泣けない!
結果、やる事は一つだった。
私は走り出した!
多分、自分史上最速だったと思う!牢屋に入れられてたので、動きやすい軽装だったのも良かったのだろう。
走って走って……二人の魔力がぶつかりそうになったその瞬間!
「ダメえええ!!!!」
渾身の力で。
「ぐふぉっ!?」
魔王リューランドに……タックル!するのだった!!
・
・
・
・
・
思えばとてつもなく無謀な事をした自覚はあります。
巻き込まれ死になってもおかしくないことを、よくやったなと。後から血の気が引いた。
「ふはふちゅーはっはんへす(無我夢中だったんです)」
「何言ってるのか分からないよ」
じゃあその手を離してくれませんか、ロビーさんや。
わたくし、ただいま絶賛ほっぺた引っ張られ中。ロビーに。
「な・ん・で!あんな危ないことするかなあ!」
ギリギリと聞こえそうな……いや、実際聞こえるくらいに強くほっぺをつねられて、痛みで涙が出てきた。
「おい、アイシャが泣いてるだろ。今すぐその汚い手を離せ」
「あ゛?」
あ、に濁点ついてるし!
私の頬をまだ掴んでるロビーの手を、ガッとつかむリューランド。また一触即発だ。
ので、私はバンバンとロビーの手を叩いた。
「ち……」
仕方ないなと言う感じで、ようやく頬を解放してくれるロビー。あああ、痛かったあぁ!
「うう……ほっぺが、私のほっぺが……」
「オカメほっぺになってるぞ」
この世界にオカメあるの!?という謎の疑問は置いといて。
私は赤くなった頬をさすりながら、周囲に目をやった。
ドラゴンによる破壊活動は完全に止まっていた。というか魔王が止めたのだ。
先ほど、無我夢中でリューランドにタックルした私。
私達は……二人して仲良く地面に転がった。
そんな私の行動を問題視したドラゴンが、即座に私を敵と認識して襲い掛かろうとするのを、リューランドが止めた。
そして。
「何をやってるアイシャ!?危ないだろうが!」
「駄目!世界が滅びちゃいます!ロビーと戦うなんて絶対ダメ!!」
そういって、私はリューランドにしがみつく腕に力を更にこめた。
ギュッと抱きつくように。
「この世界は確かに醜い人間も存在してますが、それ以上に美しいものがいっぱいあります!清い心の人間は溢れる程にいます!」
「だがお前の友は簡単にお前を売っただろうが!?」
「それはそうですが……ですが、彼女にだって事情があったんです!フィリアにだっていいところあるんです!」
「例えば!?」
「……」
「出ないじゃないか!」
咄嗟に出なかったけど!
なんか聖女とかになってからおかしくなっちゃったけど!
元のフィリアは──理沙は思いやりがあって楽しい子なんです!
「面白い子なんです!」
「まず出たのがそれとか!」
反応したのは、リューランドではなかった。
呆気にとられて動けずにいた背後のロビーだった。
すっかり闘争心が無くなったとばかりに、お腹を抱えて笑っていた。
それで完全に脱力したのか、フッと力を抜いてリューランドは地面に仰向けに倒れ込んだ。
「わ!」
まだその体にしがみついたままだった私も、当然のように引っ張られてその上に倒れ込んでしまった。
う、この体制は色々と……色々だ!
「まったく……」
どうしたものかと戸惑っていると、頭にポンと手の感触。
「戦意喪失した」
「そうですか、それは良かった」
「いいのか?」
「何がですか?」
「せめてお前を陥れた奴ぐらいは消そうと思っていたのだが」
「それは遠慮したいですね」
「あの女もそうだが……お前を裏切った友に、お前に酷い事をした貴族たちも?」
「そうですね」
人だって魔物だって何だって過ちは犯します。ただ、機会が与えられるのなら、やり直すチャンスはあっていいと思うんです。
それでも何度も過ちを犯すなら……人間の法で罰を与えるのも考えなくちゃいけないかもしれないけど。
とにかく、魔王の手によっていきなり殺すとかは止めて欲しいなと思った。
それを言ったら仕方ないなと苦笑する気配を感じて、顔を上げれば。
優しく私を見つめるリューランドと目が合った。
今や黒髪と赤となった瞳。
だが不思議と、その方が彼に似合ってると思った──
少しドキッとした瞬間。
「ぐえ!?」
いきなり首根っこを引っ掴まれて引き起こされて。
すぐさま頬に走る痛み。
私はロビーにほっぺを思い切り引っ張られる、という事態になったのだった。
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退会済ユーザのコメントです
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