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 理解不能な判定方法で、私に魔王がとり憑いてる説は無しとなった。

 となると、聖女であるフィリアの『アイシャに魔王とり憑いてる』の言葉が怪しまれる事態となるのは。
 まあ当然の事である。

「聖女だって間違えることあるわよ!」

 が、その一言で終わりました!え~……。

 何だかなあ……と思いながら、私は相も変わらず快適な牢獄生活をおくっております。

 魔王騒動から数日。
 王都は何ら問題が起こる事もなく、平和に。
 私も平和……

「アイシャ~こんなとこ閉じこもってても退屈でしょ?どっか遊びに行こうよ」
「ロビー、私は幽閉されてるのであって、けして閉じこもってるわけでは……」
「アイシャ、少しは体を動かさないと鈍るぞ!ほらこうやって!フン!フン!」
「こんな狭い部屋でスクワットしないでください、ベリアト!暑苦しい!」
「う~ん、このスープ味がうっすいなあ~。俺はもう少し濃い味の方が……」
「それ私の昼ご飯んん~~~~~!!!!」

 最後はそばにあったクッションを思いっきり投げつけました。リューランドに。人の昼食をもっぐもぐ食べてる勇者に!何しとんねん!

 ぜんっぜん平和じゃないですね!

「ちょっと牢番!なんでホイホイこの人たちを中に入れるんですか!」
「いやあ……俺も楽したいからなあ。この人らが居ると俺もさぼれるし」
「ちょっとベリアト!この人の給料下げるよう国王に言っといて!」
「い~やああ~!!」

 嫌じゃないわ!こっちが叫びたいわ!

「まあどのみち俺が居る限り、出入りは自由なんだけどね」

 ロビーの言葉に皆がウンウン頷くのであった。くそう、魔力の無駄遣いめ!

 そこで私はリューランドを見る。投げつけられたクッションを頭に乗せた状態で、まだご飯を食べてますよこの人。私のお腹の虫を無視ですか。オヤジですか、すみませんね!空腹なんですよ!

「リューランド……魔王はどうなったんですか?」
「ん~?今のところ問題起きてないし、いいんじゃない?」

 良くないでしょ!何か問題起こる前に掴まえないでどうすんの!

 いいのか、勇者がこれで……。

「お国の人たちが心配してませんか?」
「あ~あっちは自分たちに被害が無ければそれでいいって考えの集まりだからねえ。この国と仲いいわけでもないから気にしてないんじゃない?」

 それでいいのか外交!

 とりあえず新しい昼食を用意してもらおうと牢番に声をかけようとしたその時だった。



ドゴオン!!



 とんでもない轟音と共に、揺れる部屋。いや、建物自体が揺れてるんだ。

「!?」

 ゴゴゴゴ……!という音と共に天井からパラパラと粉が落ちて来て……

「危ない!」

 不意にベリアトが覆いかぶさって来た。

「きゃあ!?」

 衝撃に悲鳴を上げれば、何かが落ちてくるのを感じた。

「ベリアト!」

 どうやら照明が落ちて来たようだ。けれど私の上にかぶさるベリアトが少し呻くのが聞こえただけで、私の視界は完全に覆われて何も見えなかった。

「ベリアト、ベリアト……!大丈夫ですか!?」
「よっと」

 動かないベリアトを心配して、その体を揺さぶって名を呼んでいたら。

 軽い感じの声と共に、視界が開けた。

 ロビーだ。魔法でベリアトの上に落ちて来た照明を退けてくれたようだ。

 それと同時にベリアトから解放される。
 見れば彼はちょっと顔をしかめて「いてて……」と呟きはしたが、大事なさそうだった。良かった。

「ありがとうございます、ベリアト。怪我はありませんか?」
「なに大丈夫さ。この部屋の照明は小さな物だからね。ちょっと痛かった程度だよ」
「そうですか」
「なごやかに話すのは後だよ。状況が分からないけど危ない感じだから外に出よう。ほら、俺に掴まって」

 ベリアトの様子を見てたら、ロビーが手を差し出してきた。

 その手をベリアトが握る。
 即座にペッと払われた。

「ちょっと!キミは俺の肩にでも触れとけよ。手を握るのはアイシャだ!」
「まあ遠慮せずに」
「遠慮する!俺にそんな趣味はない!ほらアイシャ」
「や~ありがと、ちょっくら頼むよ」
「ロビー殿、私もお願いしゃす!」
「だああ!くっつくな!手を握るな!暑苦しいぃっ!!」

 ベリアトに勇者に牢番に。
 モテモテですね、ロビー。

 で、私はどこに掴まればいいんだろう。
 悩んだ末に、控えめにロビーの服の裾を掴む事にしました。

 んじゃあ瞬間移動、よろしく~!


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