17 / 23
16、
しおりを挟む理解不能な判定方法で、私に魔王がとり憑いてる説は無しとなった。
となると、聖女であるフィリアの『アイシャに魔王とり憑いてる』の言葉が怪しまれる事態となるのは。
まあ当然の事である。
「聖女だって間違えることあるわよ!」
が、その一言で終わりました!え~……。
何だかなあ……と思いながら、私は相も変わらず快適な牢獄生活をおくっております。
魔王騒動から数日。
王都は何ら問題が起こる事もなく、平和に。
私も平和……
「アイシャ~こんなとこ閉じこもってても退屈でしょ?どっか遊びに行こうよ」
「ロビー、私は幽閉されてるのであって、けして閉じこもってるわけでは……」
「アイシャ、少しは体を動かさないと鈍るぞ!ほらこうやって!フン!フン!」
「こんな狭い部屋でスクワットしないでください、ベリアト!暑苦しい!」
「う~ん、このスープ味がうっすいなあ~。俺はもう少し濃い味の方が……」
「それ私の昼ご飯んん~~~~~!!!!」
最後はそばにあったクッションを思いっきり投げつけました。リューランドに。人の昼食をもっぐもぐ食べてる勇者に!何しとんねん!
ぜんっぜん平和じゃないですね!
「ちょっと牢番!なんでホイホイこの人たちを中に入れるんですか!」
「いやあ……俺も楽したいからなあ。この人らが居ると俺もさぼれるし」
「ちょっとベリアト!この人の給料下げるよう国王に言っといて!」
「い~やああ~!!」
嫌じゃないわ!こっちが叫びたいわ!
「まあどのみち俺が居る限り、出入りは自由なんだけどね」
ロビーの言葉に皆がウンウン頷くのであった。くそう、魔力の無駄遣いめ!
そこで私はリューランドを見る。投げつけられたクッションを頭に乗せた状態で、まだご飯を食べてますよこの人。私のお腹の虫を無視ですか。オヤジですか、すみませんね!空腹なんですよ!
「リューランド……魔王はどうなったんですか?」
「ん~?今のところ問題起きてないし、いいんじゃない?」
良くないでしょ!何か問題起こる前に掴まえないでどうすんの!
いいのか、勇者がこれで……。
「お国の人たちが心配してませんか?」
「あ~あっちは自分たちに被害が無ければそれでいいって考えの集まりだからねえ。この国と仲いいわけでもないから気にしてないんじゃない?」
それでいいのか外交!
とりあえず新しい昼食を用意してもらおうと牢番に声をかけようとしたその時だった。
ドゴオン!!
とんでもない轟音と共に、揺れる部屋。いや、建物自体が揺れてるんだ。
「!?」
ゴゴゴゴ……!という音と共に天井からパラパラと粉が落ちて来て……
「危ない!」
不意にベリアトが覆いかぶさって来た。
「きゃあ!?」
衝撃に悲鳴を上げれば、何かが落ちてくるのを感じた。
「ベリアト!」
どうやら照明が落ちて来たようだ。けれど私の上にかぶさるベリアトが少し呻くのが聞こえただけで、私の視界は完全に覆われて何も見えなかった。
「ベリアト、ベリアト……!大丈夫ですか!?」
「よっと」
動かないベリアトを心配して、その体を揺さぶって名を呼んでいたら。
軽い感じの声と共に、視界が開けた。
ロビーだ。魔法でベリアトの上に落ちて来た照明を退けてくれたようだ。
それと同時にベリアトから解放される。
見れば彼はちょっと顔をしかめて「いてて……」と呟きはしたが、大事なさそうだった。良かった。
「ありがとうございます、ベリアト。怪我はありませんか?」
「なに大丈夫さ。この部屋の照明は小さな物だからね。ちょっと痛かった程度だよ」
「そうですか」
「なごやかに話すのは後だよ。状況が分からないけど危ない感じだから外に出よう。ほら、俺に掴まって」
ベリアトの様子を見てたら、ロビーが手を差し出してきた。
その手をベリアトが握る。
即座にペッと払われた。
「ちょっと!キミは俺の肩にでも触れとけよ。手を握るのはアイシャだ!」
「まあ遠慮せずに」
「遠慮する!俺にそんな趣味はない!ほらアイシャ」
「や~ありがと、ちょっくら頼むよ」
「ロビー殿、私もお願いしゃす!」
「だああ!くっつくな!手を握るな!暑苦しいぃっ!!」
ベリアトに勇者に牢番に。
モテモテですね、ロビー。
で、私はどこに掴まればいいんだろう。
悩んだ末に、控えめにロビーの服の裾を掴む事にしました。
んじゃあ瞬間移動、よろしく~!
11
お気に入りに追加
1,357
あなたにおすすめの小説
うちの娘が悪役令嬢って、どういうことですか?
プラネットプラント
ファンタジー
全寮制の高等教育機関で行われている卒業式で、ある令嬢が糾弾されていた。そこに令嬢の父親が割り込んできて・・・。乙女ゲームの強制力に抗う令嬢の父親(前世、彼女いない歴=年齢のフリーター)と従者(身内には優しい鬼畜)と異母兄(当て馬/噛ませ犬な攻略対象)。2016.09.08 07:00に完結します。
小説家になろうでも公開している短編集です。
当て馬の悪役令嬢に転生したけど、王子達の婚約破棄ルートから脱出できました。推しのモブに溺愛されて、自由気ままに暮らします。
可児 うさこ
恋愛
生前にやりこんだ乙女ゲームの悪役令嬢に転生した。しかも全ルートで王子達に婚約破棄されて処刑される、当て馬令嬢だった。王子達と遭遇しないためにイベントを回避して引きこもっていたが、ある日、王子達が結婚したと聞いた。「よっしゃ!さよなら、クソゲー!」私は家を出て、向かいに住む推しのモブに会いに行った。モブは私を溺愛してくれて、何でも願いを叶えてくれた。幸せな日々を過ごす中、姉が書いた攻略本を見つけてしまった。モブは最強の魔術師だったらしい。え、裏ルートなんてあったの?あと、なぜか王子達が押し寄せてくるんですけど!?
転生したので猫被ってたら気がつけば逆ハーレムを築いてました
市森 唯
恋愛
前世では極々平凡ながらも良くも悪くもそれなりな人生を送っていた私。
……しかしある日突然キラキラとしたファンタジー要素満載の異世界へ転生してしまう。
それも平凡とは程遠い美少女に!!しかも貴族?!私中身は超絶平凡な一般人ですけど?!
上手くやっていけるわけ……あれ?意外と上手く猫被れてる?
このままやっていけるんじゃ……へ?婚約者?社交界?いや、やっぱり無理です!!
※小説家になろう様でも投稿しています
乙女ゲーのモブデブ令嬢に転生したので平和に過ごしたい
ゆの
恋愛
私は日比谷夏那、18歳。特に優れた所もなく平々凡々で、波風立てずに過ごしたかった私は、特に興味のない乙女ゲームを友人に強引に薦められるがままにプレイした。
だが、その乙女ゲームの各ルートをクリアした翌日に事故にあって亡くなってしまった。
気がつくと、乙女ゲームに1度だけ登場したモブデブ令嬢に転生していた!!特にゲームの影響がない人に転生したことに安堵した私は、ヒロインや攻略対象に関わらず平和に過ごしたいと思います。
だけど、肉やお菓子より断然大好きなフルーツばっかりを食べていたらいつの間にか痩せて、絶世の美女に…?!
平和に過ごしたい令嬢とそれを放って置かない攻略対象達の平和だったり平和じゃなかったりする日々が始まる。
変な転入生が現れましたので色々ご指摘さしあげたら、悪役令嬢呼ばわりされましたわ
奏音 美都
恋愛
上流階級の貴族子息や令嬢が通うロイヤル学院に、庶民階級からの特待生が転入してきましたの。
スチュワートやロナルド、アリアにジョセフィーンといった名前が並ぶ中……ハルコだなんて、おかしな
その断罪、三ヶ月後じゃダメですか?
荒瀬ヤヒロ
恋愛
ダメですか。
突然覚えのない罪をなすりつけられたアレクサンドルは兄と弟ともに深い溜め息を吐く。
「あと、三ヶ月だったのに…」
*「小説家になろう」にも掲載しています。
王命で泣く泣く番と決められ、婚姻後すぐに捨てられました。
ゆうぎり
恋愛
獣人の女の子は夢に見るのです。
自分を見つけ探し出してくれる番が現れるのを。
獣人王国の27歳の王太子が番探しを諦めました。
15歳の私は、まだ番に見つけてもらえる段階ではありませんでした。
しかし、王命で輿入れが決まりました。
泣く泣く運命の番を諦めたのです。
それなのに、それなのに……あんまりです。
※ゆるゆる設定です。
そして乙女ゲームは始まらなかった
お好み焼き
恋愛
気付いたら9歳の悪役令嬢に転生してました。前世でプレイした乙女ゲームの悪役キャラです。悪役令嬢なのでなにか悪さをしないといけないのでしょうか?しかし私には誰かをいじめる趣味も性癖もありません。むしろ苦しんでいる人を見ると胸が重くなります。
一体私は何をしたらいいのでしょうか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる