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15、
しおりを挟む「というわけで、まずは検証することになりました」
なにが「というわけで」なのか分かりませんが、とりあえず目の前に並んだものを私は目にして絶句した。
あれから数日。
何事もなく──頻繁にロビーの突撃を受ける以外は、この上なく快適に牢屋生活を送っていた私だったが。
いきなり呼び出されて来てみれば。
国王に王太子、聖女フィリアに勇者に。
国の中枢を担う貴族の重鎮。
あとはベリアトにロビーもオマケっぽくその場に居る空間に連れて来られた。
そして目の前には。
「ねえフィリア、これ何?」
「魔女かどうか検証する道具よ」
これだけ聞いたら、前世の歴史で学んだ恐ろしい魔女裁判を思い出すわけだけど。
そうじゃない。
さすがにそんな恐ろしい物では無かった。
んが!
ちょっとどうしたらいいのか分からない。
モフモフの。
犬や猫に熊、羊などなど。よく分からないのも含めて。
大量のぬいぐるみが山となって積まれていたから!
「え、本気ですか?これで?ぬいぐるみで?」
「ほ、本気だ!ゆ、勇者殿がこれを用意しろと……」
最後の方は小声になってますよ、ラルフ。
どうやら魔王がとり憑いてるかどうか分かる方法だと、勇者に言われたらしい。大丈夫か、この勇者。
「勇者様、本当に?」
本当にこれで私の中に魔王が居るかどうか分かるんですか?
ものすっごく疑い深い目で見たら。
大きく頷かれた。
「本気と書いてマジと読む!」
それ誰から聞いたの!?そんな台詞吐く勇者知りませんよ!
「ま、まあいいです。勇者様がそう言うなら……で、これどうするんです?」
とっとと終わらせるのが吉だと思い。
私は諦めて目の前のぬいぐるみに意識を戻すのだった。
「そうだな。まず手始めにこれを」
「犬……ですか」
真っ白でホワホワなぬいぐるみを渡された。毛が長くて気持ちいい。
「ギュッと抱きしめて!」
「へ!?あ、はい!」
厳しい声で言われたので、慌てて真剣に抱きしめた!
「どうでしょうか!?」
「うん、可愛い!」
……もうお前国に帰れ!即帰れ!
「真面目にやれ!」
さすがラルフ様。いいツッコミをなさる。
私の代わりに勇者の頭をバシッとやってくださいました。さすがに私には出来ないことなのでありがとうございます!
気を取り直して、私は他のぬいぐるみに目を向けた。
何となく気になった熊のぬいぐるみをヒョイと持ち上げた。
茶色の毛は短いが、フワフワな感触が気持ちいい。
「……何の反応もありませんねえ」
持ち上げてペタペタ触るも、何も起きなかった。
「これ、魔王がとり憑いてたら、どうなるんですか?」
「ボロボロになる」
「そうなの!?」
こんなに可愛いぬいぐるみが!?
信じられなくて勇者を見れば、真剣な顔をしていた。
「ぬいぐるみは人とは違えど器になる素質があるからな。しかも人と違って空っぽだ。余計な魂が入っていない。魔王は思わず入ろうとするだろうが、ぬいぐるみは人と違って脆いからな。少しでも魔王が入ろうとすればボロボロになる」
「なるほど……」
ボロボロにならなくて良かったね。
そう思って思わず熊をギュッと抱きしめれば。
「うはあ!最高!」
のけぞって親指立てる勇者に。
思わずぬいぐるみを投げてしまいましたよ。
ゴメン、熊。
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