13 / 23
12、
しおりを挟む「あっはっは!おっもしろ!すんごい面白いね、キミら!聖女もやばいけど、その聖女と言い合うなんて……キミ、面白すぎ!」
涙流しながら笑ってるよこの人。
勇者は剣を収め、魔物から足をどける。
全然返り血浴びてないとか凄いですね。でも剣はちゃんと血を拭いてから仕舞った方が良かったと思うんですけど。
「いいよ、借り物だから」
「いいのか」
借り物なら尚更ちゃんと綺麗にして返さないといけないんじゃないでしょうか!?
どうでもいい事を心配してると。
気付けば目の前に勇者が立って居た。
右にロビー。
左にベリアト。
正面に勇者──リューランド。
なんだこのイケメンパラダイスは!
どこを見てもイケメン溢れてて、視線をどこに向ければいいのか分からなくて。
最終的に俯いたのだけど。
クイッ
はい、アゴクイされました!
顎を!クイッと!持ち上げられて。
朱色の瞳が血のようだなあ……なんて思ってたら、随分近いなと気付いて。
「はあ!?」
「な……!!」
ロビーとベリアトの叫び声が聞こえた気がした。
けれど私はそちらを見ることが出来ず。
言葉を発する事も出来ず。
ただ、その感触に目を見開いていた。
その感触──唇に触れる、その……唇の感触を……。
ふに……
そんな柔らかさ。
男性の唇って柔らかいのね。なんてそんな事を思いながら。
ただ、動けずにいた。
それは一瞬か、永遠か。
誰もが微動だに出来ないまま、それは終わった。勇者の顔が離れたのだ。
……て、ちょっと待て。今何された?今何が唇に触れた?あ、なんか両親が……特にお父様が真っ赤になってプルプル震えてる。怒ってるわあ~……
「ってちょっと待てえええぇ!!!!」
ついに出た言葉!
ようやく呪縛が解けたように動いた私は。
直後。
一歩前に出て、思いっきり手を振りかぶって。
その手を──勇者に向けて……振り下ろしたのだ!!
※ ※ ※
「いやあ、なかなかいいビンタだったねえ」
「そりゃどうも」
「アイシャ、勇者殿は多分褒めてない」
「いや、褒めてるよベリアト殿。アイシャの行動は最高だ」
「そりゃどうも」
「アイシャ、目が死んでるよ」
「ロビー殿、何を言うんだ。見てごらん、このアイシャの目を。美しき眼を。彼女の目は生きてるよ!」
「いや勇者、そういう意味じゃ……」
なんだこれ。
なんで私はイケメン三人に囲まれながら牢屋に入ってるのだろうか。
あの後、勇者に思いっきりビンタをくらわした私は。
当然のように牢屋に逆戻りとなりました。
まあそれはいい。良くないけどいい。むしろその方が平和になるならと思ったのだけど。
なぜかイケメン三人が付いてくるから、国王始め重鎮貴族が大慌てだ。
今も牢屋の前でわめいてる。
「勇者殿、早く離れてください!その女は危険です!」
「そうですぞ!聖女だけでなく勇者殿にまで暴力振るうとは!絶対魔王がとり憑いております!早く成敗を!」
うんうん、もうどうでもいいから静かにしてくんない?私、もう一生この牢屋生活でいいからさ。
早くイケメンズを連れて行ってくれ!
だが相手が相手だけに強硬手段にいけないのだろう。
あまりにうざいので、とりあえず私は一つずつ疑問を解決する事にした。
「ねえロビー」
「ん~?」
「どうして私を大広間に連れてったんですか?」
それがそもそもの発端だ。
私をあのまま牢屋に入れておいてくれたら、こんな事にはならなかったのに!
そう言えば、ニコッと微笑むロビー。
「だってあのままだと、アイシャが魔王で決着付きそうだったんだもん。そうなったらアイシャの知らないとこで死刑決定してたよ。それは嫌でしょ?」
「嫌ですね」
嫌に決まっとるわい!せめて裁判して!反論させろ!
「でしょ?だから呼びに行ったんだ~」
だ~とか言われましても。勝手な話ですが、この状態になるなら呼びに来ないで居てくれた方が私的には平和だったのかも知れない。
以前にも言ったけど、私はモブ希望なんだよ!陰から見守り隊なんです!
だからくっつくな、暑い!
「ちょ、ベリアト、暑い!離れて!」
「嫌だ、愛車は俺が守る!」
素敵なセリフだが脳内変換で誤字ってるので、全然ときめかない!
「リューランド様」
ベリッとベリアトを引き剥がし、次は勇者を向く。
「なに?」
ニコニコ無邪気に笑ってますけどね。
魔王の魂どうなった。て聞くのは野暮なんだろうか。聞いちゃ駄目ですか。空気読め?空気って何だ。
「あれはセクハラだと思います。次やったらぶっ飛ばします」
「もうビンタしてるよね」
「せくはら?」
ロビーとベリアトのそれとないツッコミはこの際聞かなかったことにしておこう。
11
お気に入りに追加
1,361
あなたにおすすめの小説
逃げて、追われて、捕まって
あみにあ
恋愛
平民に生まれた私には、なぜか生まれる前の記憶があった。
この世界で王妃として生きてきた記憶。
過去の私は貴族社会の頂点に立ち、さながら悪役令嬢のような存在だった。
人を蹴落とし、気に食わない女を断罪し、今思えばひどい令嬢だったと思うわ。
だから今度は平民としての幸せをつかみたい、そう願っていたはずなのに、一体全体どうしてこんな事になってしまたのかしら……。
2020年1月5日より 番外編:続編随時アップ
2020年1月28日より 続編となります第二章スタートです。
**********お知らせ***********
2020年 1月末 レジーナブックス 様より書籍化します。
それに伴い短編で掲載している以外の話をレンタルと致します。
ご理解ご了承の程、宜しくお願い致します。
モブはモブらしく生きたいのですっ!
このの
恋愛
公爵令嬢のローゼリアはある日前世の記憶を思い出す
そして自分は友人が好きだった乙女ゲームのたった一文しか出てこないモブだと知る!
「私は死にたくない!そして、ヒロインちゃんの恋愛を影から見ていたい!」
死亡フラグを無事折って、身分、容姿を隠し、学園に行こう!
そんなモブライフをするはずが…?
「あれ?攻略対象者の皆様、ナゼ私の所に?」
ご都合主義です。初めての投稿なので、修正バンバンします!
感想めっちゃ募集中です!
他の作品も是非見てね!
転生したので猫被ってたら気がつけば逆ハーレムを築いてました
市森 唯
恋愛
前世では極々平凡ながらも良くも悪くもそれなりな人生を送っていた私。
……しかしある日突然キラキラとしたファンタジー要素満載の異世界へ転生してしまう。
それも平凡とは程遠い美少女に!!しかも貴族?!私中身は超絶平凡な一般人ですけど?!
上手くやっていけるわけ……あれ?意外と上手く猫被れてる?
このままやっていけるんじゃ……へ?婚約者?社交界?いや、やっぱり無理です!!
※小説家になろう様でも投稿しています
女性の少ない異世界に生まれ変わったら
Azuki
恋愛
高校に登校している途中、道路に飛び出した子供を助ける形でトラックに轢かれてそのまま意識を失った私。
目を覚ますと、私はベッドに寝ていて、目の前にも周りにもイケメン、イケメン、イケメンだらけーーー!?
なんと私は幼女に生まれ変わっており、しかもお嬢様だった!!
ーーやった〜!勝ち組人生来た〜〜〜!!!
そう、心の中で思いっきり歓喜していた私だけど、この世界はとんでもない世界で・・・!?
これは、女性が圧倒的に少ない異世界に転生した私が、家族や周りから溺愛されながら様々な問題を解決して、更に溺愛されていく物語。
モブに転生したので前世の好みで選んだモブに求婚しても良いよね?
狗沙萌稚
恋愛
乙女ゲーム大好き!漫画大好き!な普通の平凡の女子大生、水野幸子はなんと大好きだった乙女ゲームの世界に転生?!
悪役令嬢だったらどうしよう〜!!
……あっ、ただのモブですか。
いや、良いんですけどね…婚約破棄とか断罪されたりとか嫌だから……。
じゃあヒロインでも悪役令嬢でもないなら
乙女ゲームのキャラとは関係無いモブ君にアタックしても良いですよね?
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる