親友と共に異世界転生したら親友が元親友になった件

3、

　
　
　人生何が起こるか分からない。

　そんな事を、目の前の光景を見つめながら、私はしみじみ思ったりする。

「アイシャの髪は光にあてると微かに金がかってるのだな、珍しい」

　そう言って、私の髪をひと房つまむイケメン。
　王太子ラルフだ。王族にありがちな、金髪碧眼が麗しい。というか、眩しい。

「そうでしょうか？ラルフ様の光の化身のごとき金色の髪にはとても及ばないと思いますが……」
「そんなことはない、とても綺麗だよ」

　目が腐ってんじゃないですか？

　などとは死んでも言わないけど。
　言ったら最後、同じくそばにいる真っ赤な頭の騎士団長子息──つまりはベリアトに一刀両断だ。淑女らしく無言で微笑んでおくに限る。

　ベリアトはそんな私を優しく見つめている。その目がこそばゆい。

　そう思ってたら、私の横に……王太子が居る側とは反対に、ドッカと座り込む人が。

「そっかな～？俺は金には見えないけど。でもサラサラで気持ちいいよね、アイシャの髪は。俺はクセ毛だからなあ。羨ましい」

　そう言ってやっぱり私の髪をつまむのは、歴代最強の魔法使いと呼ばれるロビー。水色の髪は確かにクセ毛だけど、いい感じにセットされてるがごとく、バランスの良い形になってる。紫の瞳がクルクル動いて可愛いなあ。同い年だけど。

　さて、そういうわけで先日ベリアトと話すようになってから。
　なぜかこうなった。
　つまりは……え、これ逆ハーか！？これ乙女ゲーの世界なの！？

　と頭パニック状態なんだけど、顔はいたって平静を装う。一応16年間、令嬢やって来たからね。作り笑いなんて簡単だ。内心冷や汗ダラダラなんですけどね。

　なんで学園の中庭で、楽しいお昼の時間にイケメンに囲まれてるんでしょうね、私。ベリアトが呼んでると来てみたら、なぜか王太子が居たときたもんだ。そして更にお友達だとかでロビーもやって来て。

　あとどれくらいイケメンが出てくるんだろう。いや、出ないにこしたことはないのだが。

　などと頭の中がグルグル回っていたら。

「アイシャ？」

　第三者の登場に、心底ホッとしたのである。

「あ、フィリア！」

　戸惑うフィリアの手を強引に引っ張って。

「友達とご飯食べてきますので、これにて失礼致します」

　と言ったらば。

「アイシャのお友達？たしか君は侯爵家の……」
「フィリアでございます、王子様」

　さっき名前を呼んだからか。見覚えがあるのか。すぐに侯爵家令嬢と気付いたのはさすがですね。

　そうしてフィリアが一通りの挨拶を終わらせたので、さて行こうかとすれば。

「じゃあ一緒に食べようよ！」

　とロビーの提案で全ての目論見が消え去りました。

　内心頭を抱えながら、明日からお弁当やめて学食で食べようと決意するのであった。いつも腕によりをかけてくれる料理長、ごめんね。