24 / 40
第一部
23、吸血鬼と妹(4)
しおりを挟むん何やっとんじゃ、貴様ぁ!
叫びそうになったのを必死に押しとどめたけど。
ホント何やってんのこの子!
「宜しくしてくださいね、お兄様ぁ」
とか。
語尾を伸ばすな!
鼻につく甘えた声だすな!
抱きつくな、腕を公爵の首にまわすな!
胸を押し付けるなあぁぁぁ!!!
ウェンティは私とは異なる存在感半端ない胸を公爵に押し付けながら、公爵に密着し続けてるのである。
殺意が抑えられない!
慌てて引き離そうとしたのだけど。
「離れろ、暑苦しい」
何の動揺もなく、べりッと公爵が引きはがしたのだった。
「あん」
あんじゃねーわ!全然可愛くないわ!ざけんな!
「フィーリアラ様、心の声が漏れてます」
あらやだ出てた?そりゃ失礼。
ヨシュに言われて口を押えたけど、幸い公爵は聞いてなかったようだ。
どうやらかなりイライラしてるみたい。
「何なのだお前は。私に気安く触るな」
「そんな冷たい事をおっしゃらないでくださいな。わたくし貴方の妹になるんですのよ?」
「義理でもお前のような妹はいらん」
気持ちいいわ~!公爵気持ちいいですよ!
気持ちいいくらいにバッサリ妹を切ってくれた!
「あ、フィーリアラ……すまない、キミの妹に」
「いえ、ありがとうございます!」
思わずお礼言っちゃうわ!
「そもそも買い物しに町に行ったはずなのに、何も買ってないとはどうしたんだ?そしてなぜキミの妹がいるんだ?」
いやホントにね。私も聞きたい。なんで妹が居るのか。
「何も買ってないってことはないですよー。見てください、この立派な肉を!」
マイペースに肉を袋から出してかざすのは、ヨシュだ。
肉を買えた事がよっぽど嬉しかったんだろうなあ。狼の耳と尻尾が出てますよ。パタパタ動いて気持ちよさそうですよ!
「そうかそうか、それは良かったな」
良かったなとか言いながらヨシュの尻尾モフモフする公爵ってどうよ。
可愛い絵図だなこれ。
ああ、余裕が出来たら映像記録魔道具欲しいなあ。
などと思わず考えていたら。
「もう!私のこと忘れないでください!」
また邪魔が入った。
本当に邪魔だ。邪魔でしかない。もう帰れお前。
「ウェンティ、公爵への挨拶も済んだ事ですし、今日のところは帰りなさい」
「え、どうやって?」
「え、歩く以外どうするの?」
歩いて帰る以外の選択肢ないと思うんだけど?
私最初にここ来るとき、森の中をエミリーと共に頑張って歩いたよ。お前も歩けよ。
「か弱いわたくしが歩いて帰れるとでも?」
「いや歩けよ」
か弱いって誰のことやねん。
お前いっつもツケで買い物しに出かけてたやないか。伯爵家御用達の馬車、なんていいもの無いから、自力で歩いて買いに行っとったやないか。歩きまくっとったやないかあ!!!
思わずとある地域の言葉使いになってしまったよ。
己の欲のためなら苦労もいとわぬくせに!
何非力アピールしてんだ。
「ひどい!お姉さま酷いです!もう夜も更けてきましたのよ!?か弱い私を危険な森に放り出す気ですか!?」
「うん、放り出した……いげふんげふん」
「いげふんげふんて何ですの」
ほんと何だろうね。本音がダダ洩れしすぎてるから、ちょっとセーブかけちゃったよ。
でもまあ確かに夜の森は危険かな。
町への往復で、時刻はすっかり夜になっていた。
お腹空いた、夕飯のメニュー何かな。
じゃないや、ウェンティどうすっかな。
頑として私が受け入れようとしないからだろう。
ウェンティはまたもターゲットを公爵へと絞る。
「お兄様、しばらく泊めていただけませんか?」
いや「しばらく」て何なの。何泊する気なの。
「え、いやだ」
「え」
「え」
安定のバッサリ拒絶!惚れちゃいますよ、公爵!
21
お気に入りに追加
1,846
あなたにおすすめの小説
男性アレルギー令嬢とオネエ皇太子の偽装結婚 ~なぜか溺愛されています~
富士とまと
恋愛
リリーは極度の男性アレルギー持ちだった。修道院に行きたいと言ったものの公爵令嬢と言う立場ゆえに父親に反対され、誰でもいいから結婚しろと迫られる。そんな中、婚約者探しに出かけた舞踏会で、アレルギーの出ない男性と出会った。いや、姿だけは男性だけれど、心は女性であるエミリオだ。
二人は友達になり、お互いの秘密を共有し、親を納得させるための偽装結婚をすることに。でも、実はエミリオには打ち明けてない秘密が一つあった。
【完結】傷物令嬢は近衛騎士団長に同情されて……溺愛されすぎです。
早稲 アカ
恋愛
王太子殿下との婚約から洩れてしまった伯爵令嬢のセーリーヌ。
宮廷の大広間で突然現れた賊に襲われた彼女は、殿下をかばって大けがを負ってしまう。
彼女に同情した近衛騎士団長のアドニス侯爵は熱心にお見舞いをしてくれるのだが、その熱意がセーリーヌの折れそうな心まで癒していく。
加えて、セーリーヌを振ったはずの王太子殿下が、親密な二人に絡んできて、ややこしい展開になり……。
果たして、セーリーヌとアドニス侯爵の関係はどうなるのでしょう?
運命の番なのに、炎帝陛下に全力で避けられています
四馬㋟
恋愛
美麗(みれい)は疲れていた。貧乏子沢山、六人姉弟の長女として生まれた美麗は、飲んだくれの父親に代わって必死に働き、五人の弟達を立派に育て上げたものの、気づけば29歳。結婚適齢期を過ぎたおばさんになっていた。長年片思いをしていた幼馴染の結婚を機に、田舎に引っ込もうとしたところ、宮城から迎えが来る。貴女は桃源国を治める朱雀―ー炎帝陛下の番(つがい)だと言われ、のこのこ使者について行った美麗だったが、炎帝陛下本人は「番なんて必要ない」と全力で拒否。その上、「痩せっぽっちで色気がない」「チビで子どもみたい」と美麗の外見を酷評する始末。それでも長女気質で頑張り屋の美麗は、彼の理想の女――番になるため、懸命に努力するのだが、「化粧濃すぎ」「太り過ぎ」と尽く失敗してしまい……
天才と呼ばれた彼女は無理矢理入れられた後宮で、怠惰な生活を極めようとする
カエデネコ
恋愛
※カクヨムの方にも載せてあります。サブストーリーなども書いていますので、よかったら、お越しくださいm(_ _)m
リアンは有名私塾に通い、天才と名高い少女であった。しかしある日突然、陛下の花嫁探しに白羽の矢が立ち、有無を言わさず後宮へ入れられてしまう。
王妃候補なんてなりたくない。やる気ゼロの彼女は後宮の部屋へ引きこもり、怠惰に暮らすためにその能力を使うことにした。
【完結】冷酷眼鏡とウワサされる副騎士団長様が、一直線に溺愛してきますっ!
楠結衣
恋愛
触ると人の心の声が聞こえてしまう聖女リリアンは、冷酷と噂の副騎士団長のアルバート様に触ってしまう。
(リリアン嬢、かわいい……。耳も小さくて、かわいい。リリアン嬢の耳、舐めたら甘そうだな……いや寧ろ齧りたい……)
遠くで見かけるだけだったアルバート様の思わぬ声にリリアンは激しく動揺してしまう。きっと聞き間違えだったと結論付けた筈が、聖女の試験で必須な魔物についてアルバート様から勉強を教わることに──!
(かわいい、好きです、愛してます)
(誰にも見せたくない。執務室から出さなくてもいいですよね?)
二人きりの勉強会。アルバート様に触らないように気をつけているのに、リリアンのうっかりで毎回触れられてしまう。甘すぎる声にリリアンのドキドキが止まらない!
ところが、ある日、リリアンはアルバート様の声にうっかり反応してしまう。
(まさか。もしかして、心の声が聞こえている?)
リリアンの秘密を知ったアルバート様はどうなる?
二人の恋の結末はどうなっちゃうの?!
心の声が聞こえる聖女リリアンと変態あまあまな声がダダ漏れなアルバート様の、甘すぎるハッピーエンドラブストーリー。
✳︎表紙イラストは、さらさらしるな。様の作品です。
✳︎小説家になろうにも投稿しています♪
悪役令嬢ですが、ヒロインが大好きなので助けてあげてたら、その兄に溺愛されてます!?
柊 来飛
恋愛
ある日現実世界で車に撥ねられ死んでしまった主人公。
しかし、目が覚めるとそこは好きなゲームの世界で!?
しかもその悪役令嬢になっちゃった!?
困惑する主人公だが、大好きなヒロインのために頑張っていたら、なぜかヒロインの兄に溺愛されちゃって!?
不定期です。趣味で描いてます。
あくまでも創作として、なんでも許せる方のみ、ご覧ください。
身代わりの公爵家の花嫁は翌日から溺愛される。~初日を挽回し、溺愛させてくれ!~
湯川仁美
恋愛
姉の身代わりに公爵夫人になった。
「貴様と寝食を共にする気はない!俺に呼ばれるまでは、俺の前に姿を見せるな。声を聞かせるな」
夫と初対面の日、家族から男癖の悪い醜悪女と流され。
公爵である夫とから啖呵を切られたが。
翌日には誤解だと気づいた公爵は花嫁に好意を持ち、挽回活動を開始。
地獄の番人こと閻魔大王(善悪を判断する審判)と異名をもつ公爵は、影でプレゼントを贈り。話しかけるが、謝れない。
「愛しの妻。大切な妻。可愛い妻」とは言えない。
一度、言った言葉を撤回するのは難しい。
そして妻は普通の令嬢とは違い、媚びず、ビクビク怯えもせず普通に接してくれる。
徐々に距離を詰めていきましょう。
全力で真摯に接し、謝罪を行い、ラブラブに到着するコメディ。
第二章から口説きまくり。
第四章で完結です。
第五章に番外編を追加しました。
【完結】身を引いたつもりが逆効果でした
風見ゆうみ
恋愛
6年前に別れの言葉もなく、あたしの前から姿を消した彼と再会したのは、王子の婚約パレードの時だった。
一緒に遊んでいた頃には知らなかったけれど、彼は実は王子だったらしい。しかもあたしの親友と彼の弟も幼い頃に将来の約束をしていたようで・・・・・。
平民と王族ではつりあわない、そう思い、身を引こうとしたのだけど、なぜか逃してくれません!
というか、婚約者にされそうです!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる