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第一部

11、吸血鬼とワイン(1)

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※血に関する表現ありますのでご注意ください





 
 
「そ、それは違う!」

 慌てて否定してきたのは公爵自身。
 生贄なんかじゃないと首を必死に横に振っている。

「でも血を吸うために私を迎え入れたのでしょう?」

 花嫁という生贄なんでしょう?

 そう言えば「違う、違うんだ!」と顔を青くして言ってる。何が違うんだろう。

 首を傾げてると

「スミマセン、血を飲まないと生きていけないのは本当ですが言い方が悪かったですね」

 と、ヨシュが頭をポリポリ掻いている。

「うーん、説明するより実演した方が早いかなあ」

 え、実演!?
 吸血シーンなんて見たくないんですけど!
 と、若干引いてしまった私を気にするでもなく、ヨシュは何やらゴソゴソし始めた。

 そして。

 デンッと取り出したるは、ヨシュの腰くらいの高さの一本足丸テーブル。そこに置かれたワイングラスにワインボトル……

 え、どこから出したのそれ!どっかのポケット!?

 と、突然の事に目を丸くしてたら

「ヨシュの3分クッキングー!」

 テレレッテッテ♪
 テレレッテッテ♪
 テレレッテッテッテッテ♪

 なんか音楽流れてきたー!
 どこから音楽聞こえるの!?

「えーさて、本日の献立は週に一度の定番メニュー、吸血鬼公爵のための血液入りワインでございます!」

 なんか始まりましたよ。狼男がなんか始めましたよ。

「さて、こちらは毎月王家より頂く献上金で購入いたしました、中級の赤ワイン♪」

 そこ、最高級じゃないんですか!
 王家から献上金もらってんの!?
 色々ツッコミたい!ムズムズするわ!

「これをグラスに注ぎまして~」

 トクトクトク

 あ、美味しそう。ワインなんてお高いもの、飲んだことないけど美味しそう。
 そういやあのハゲ親父が勝手に買って飲んでるのを見た時、その頭にぶっかけた事あったっけなあ。怒りにまかせてとはいえ、勿体ない事をしてしまった。

「はい、入りましたね。そしてここで最も重要な隠し味!」

 と言ったかと思うと、おもむろに針を出してきた。
 え!何するの!?

 ちょっとハラハラしてると

「こうやって軽くプスッと……」

 思わず手で目を覆って隙間からそっと見てると、針をツンと刺したヨシュの人差し指に、プクッと血が出てきた。

「そしてこうやって……」

 ポトッと一滴、ワインの中に血が落ちる。

「はい、完成!素晴らしい、3分かかりませんでしたね!」

 えええええ!
 え、何これ何これ!!
 どゆこと!?

 戸惑っている私をよそに、ヨシュがワイングラスをゼル様に渡した。

 え、え、まさか……

「はい、どうぞ!」
「いただきます!」

 物凄い気合いを入れて公爵はそのワインを

 グビイッ!

 と一気飲みした。一気飲みしたー!!!!

 そしてダンッ!と勢いよくグラスをテーブルに置いた。

「……っぶはあっ!!!!不味い!もう一杯!──いらない!!」
「いらないんかい!!!」

 たまらずつっこんだわ!!!














===作者の呟き=================

あの名曲を文字で表現するのって難しいですね……
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