34 / 41
34、
しおりを挟む「そしてここで朗報です」
「?」
間髪入れずに私はデッシュを追い詰めるべく言い放った。
「貴方たちが散々うちのお金を使い込んだ事は分かってます。そしてその用途は──その内訳は、綺麗にまとめておりまして。その金額は……まあ凄い金額ですね、ビックリですよ。」
本当にビックリだ。私とデッシュがまだ婚約関係にあった頃は、私が制していたので、私が許可した援助金しか無い。
だが家を追い出されて数ヶ月。
たった数ヶ月、されど数ヶ月。
何に使えばこんな金額になるの?と思うくらいのお金が、公爵家に流れていたのだ。何してくれとんじゃ。
内訳はある。調べれば呆気ないくらいに簡単に──それくらい堂々と使い込んでいたのだろう──調べはついた。本当にくだらないことにばかり使用されてて、泣きたいくらいだった。
領民のために存在するお金……必死で貯めて、そろそろ一気に整地でもしようかと思っていたのに!不便な街道を改善しようと思ってたのに!
ほんと、何してくれとんじゃーい!
「使い込んだお金、返して貰いますからね」
ほらね、朗報だったでしょう?
そう言って、もう慣れたもので作り笑いを届けてあげた。
なのにデッシュの顔は真っ青から蒼白へと変わるのだから……どうしたというのだろう。
「どうしたのデッシュ?」
「……わけないだろ」
「え?」
すみませんが声が小さくて聞こえませんでしたよっと。
もう少し大きな声で言っていただけませんかね?
問い返すと、バッと顔を上げて涙目になりながらデッシュは叫んだ。
「返せるわけがないだろう!!」
「でしょうねえ」
だが何を言われるかなんて予想済みだ。そして想定通り過ぎて笑うこともせず、私は真顔でまた別の書類をデッシュに渡すのだった。
「そんな貴方に更なる朗報で~す!!」
ピラッと見せたけど、どうせちゃんと読めないだろう。なので口頭で説明してあげよう!
「私では良いツテを持ってませんでしたので、ノウタム伯父様が用意してくださいました!とても割の良いお仕事ですよ!」
そう、よそ様のお金を盗んだも同然なのだから。ちゃんと返すべきだろう。
だが分かってる分かってる、私はちゃあんと分かってるよ。
すぐに返せるようなら、そもそもうちのお金を使い込んだりしないよね。
じゃあどうやって返す?
「働いて返してくださいな♪」
労働で返すべきでしょう!
子供でも分かることだよね!
ニコニコして私はその紙をデッシュに渡した。そこには詳細が書かれてるからだ。ちゃんと読んでおいた方がいいと思うよ。
「な、な……ぼ、僕に働けと!?」
「安心してください、貴方だけではありません。漏れなく貴方のご両親もお付けします」
三人で労働、まあなんて親切な返済計画なんでしょう!
とんでもない金額を使い込んでますからねえ、1人で返すのはさぞや大変でしょう。
でも!三人なら!
返済も早いというものです。
「これまで散々遊んできたのですから。これからは汗水流して働くことをお勧めします」
もう言葉にならない様子で、デッシュはまた鯉のように口をパクパクさせるだけとなった。
パクパクしながら仕事内容を読んでるのだが……見る見るうちに血の気が引いていく。もう紙のような白さだ。ぶっ倒れるんじゃないかしら。
「バルバラ!」
読み終わったのだろう、瀕死の顔でデッシュは私の名前を呼んだ。私は親切ですからね、無視せず相手してあげますよ。
「何でしょう?」
「これ!この仕事内容!!」
「ああ……素敵な内容でしょう?楽しく気持ちよくお金が稼げます。良かったですねえ」
「正気か!?これのどこが良い仕事なんだ!!」
まあ分かってますけどね。
でも貴方達にまともな仕事……頭使ったり肉体労働だったりは無理だと思ったのです。そもそも真っ当な仕事では返済なんてろくに出来ないでしょう。それくらいの金額を使い込まれたのですから。
こちらとしては本気で返してもらう気ですからね。
なので相応の仕事を伯父様に用意してもらったのだ。
「娼館ってなんだよ!それも男娼だって!?」
「良かったわねえデッシュ。顔だけはそこそこ良い顔に産んでもらえて。きっと稼ぎ頭になれますよ?」
まあ稼ぎのほとんどは、こちらに返済として入るんですけどね。
「頑張って返済完了してくださいね。そしたら自由になれますよ」
返済完了するのが早いか、死ぬのが早いか……分からないけど。かなり過酷なところを選んだと、伯父様は言ってたもの。
声なき声は、デッシュには届かない。
ブルブル震えるデッシュにそっと近づいて、私は見下ろしながらニッコリ告げたのだ。
「さようならデッシュ。もう二度と会う事はないでしょう」
「ば、バルバラ……」
「私、本当は貴方の事……」
「バルバラ!!」
私の言葉が終わりに近づく頃。
気配を感じて私は一歩後ろに下がった。
代わりに誰かがデッシュの腕を掴んで立ち上がらせた。数人の屈強な男達。見た事ないけれど、おそらくは……伯父様を見れば頷かれたので、やはり伯父様の手の者ね。
「やめろ、離せ!僕は高位貴族なんだぞ、気安く触るな!」
女のような、か細い声で必死に叫ぶデッシュを無視して、男達はデッシュの体を掴んで無理矢理引っ立てて連れて行こうとした。
だから私は最後の言葉を投げる。
「デッシュ!私、本当は貴方の事……」
「ば、バルバラ、助けて……!」
涙と鼻水でグチャグチャになりながら、私を見るデッシュに向けて。
「反吐が出そうなくらいに大嫌いだったわ!」
満面の笑みで告げたのだった──
===筆者の独り言===
皆様からの優しい言葉に感謝しかありません。゜(゜´Д`゜)゜。
もうあと少しで完結です!
随分前置きが長かったせいか、ざまあ展開が書いてて楽しい
(・∀・)
あと少し、お付き合いください
<(_ _)>
67
お気に入りに追加
5,331
あなたにおすすめの小説
性悪という理由で婚約破棄された嫌われ者の令嬢~心の綺麗な者しか好かれない精霊と友達になる~
黒塔真実
恋愛
公爵令嬢カリーナは幼い頃から後妻と義妹によって悪者にされ孤独に育ってきた。15歳になり入学した王立学園でも、悪知恵の働く義妹とカリーナの婚約者でありながら義妹に洗脳されている第二王子の働きにより、学園中の嫌われ者になってしまう。しかも再会した初恋の第一王子にまで軽蔑されてしまい、さらに止めの一撃のように第二王子に「性悪」を理由に婚約破棄を宣言されて……!? 恋愛&悪が報いを受ける「ざまぁ」もの!! ※※※主人公は最終的にチート能力に目覚めます※※※アルファポリスオンリー※※※皆様の応援のおかげで第14回恋愛大賞で奨励賞を頂きました。ありがとうございます※※※
すみません、すっきりざまぁ終了したのでいったん完結します→※書籍化予定部分=【本編】を引き下げます。【番外編】追加予定→ルシアン視点追加→最新のディー視点の番外編は書籍化関連のページにて、アンケートに答えると読めます!!
婚約白紙?上等です!ローゼリアはみんなが思うほど弱くない!
志波 連
恋愛
伯爵令嬢として生まれたローゼリア・ワンドは婚約者であり同じ家で暮らしてきたひとつ年上のアランと隣国から留学してきた王女が恋をしていることを知る。信じ切っていたアランとの未来に決別したローゼリアは、友人たちの支えによって、自分の道をみつけて自立していくのだった。
親たちが子供のためを思い敷いた人生のレールは、子供の自由を奪い苦しめてしまうこともあります。自分を見つめ直し、悩み傷つきながらも自らの手で人生を切り開いていく少女の成長物語です。
本作は小説家になろう及びツギクルにも投稿しています。
婚約破棄された公爵令嬢は本当はその王国にとってなくてはならない存在でしたけど、もう遅いです
神崎 ルナ
恋愛
ロザンナ・ブリオッシュ公爵令嬢は美形揃いの公爵家の中でも比較的地味な部類に入る。茶色の髪にこげ茶の瞳はおとなしめな外見に拍車をかけて見えた。そのせいか、婚約者のこのトレント王国の王太子クルクスル殿下には最初から塩対応されていた。
そんな折り、王太子に近付く女性がいるという。
アリサ・タンザイト子爵令嬢は、貴族令嬢とは思えないほどその親しみやすさで王太子の心を捕らえてしまったようなのだ。
仲がよさげな二人の様子を見たロザンナは少しばかり不安を感じたが。
(まさか、ね)
だが、その不安は的中し、ロザンナは王太子に婚約破棄を告げられてしまう。
――実は、婚約破棄され追放された地味な令嬢はとても重要な役目をになっていたのに。
(※誤字報告ありがとうございます)
他の人を好きになったあなたを、私は愛することができません
天宮有
恋愛
公爵令嬢の私シーラの婚約者レヴォク第二王子が、伯爵令嬢ソフィーを好きになった。
第三王子ゼロアから聞いていたけど、私はレヴォクを信じてしまった。
その結果レヴォクに協力した国王に冤罪をかけられて、私は婚約破棄と国外追放を言い渡されてしまう。
追放された私は他国に行き、数日後ゼロアと再会する。
ゼロアは私を追放した国王を嫌い、国を捨てたようだ。
私はゼロアと新しい生活を送って――元婚約者レヴォクは、後悔することとなる。
お言葉を返すようですが、私それ程暇人ではありませんので
結城芙由奈@12/27電子書籍配信中
恋愛
<あなた方を相手にするだけ、時間の無駄です>
【私に濡れ衣を着せるなんて、皆さん本当に暇人ですね】
今日も私は許婚に身に覚えの無い嫌がらせを彼の幼馴染に働いたと言われて叱責される。そして彼の腕の中には怯えたふりをする彼女の姿。しかも2人を取り巻く人々までもがこぞって私を悪者よばわりしてくる有様。私がいつどこで嫌がらせを?あなた方が思う程、私暇人ではありませんけど?
婚約を解消してくれないと、毒を飲んで死ぬ? どうぞご自由に
柚木ゆず
恋愛
※7月25日、本編完結いたしました。後日、補完編と番外編の投稿を予定しております。
伯爵令嬢ソフィアの幼馴染である、ソフィアの婚約者イーサンと伯爵令嬢アヴリーヌ。二人はソフィアに内緒で恋仲となっており、最愛の人と結婚できるように今の関係を解消したいと考えていました。
ですがこの婚約は少々特殊な意味を持つものとなっており、解消するにはソフィアの協力が必要不可欠。ソフィアが関係の解消を快諾し、幼馴染三人で両家の当主に訴えなければ実現できないものでした。
そしてそんなソフィアは『家の都合』を優先するため、素直に力を貸してくれはしないと考えていました。
そこで二人は毒を用意し、一緒になれないなら飲んで死ぬとソフィアに宣言。大切な幼馴染が死ぬのは嫌だから、必ず言うことを聞く――。と二人はほくそ笑んでいましたが、そんなイーサンとアヴリーヌに返ってきたのは予想外の言葉でした。
「そう。どうぞご自由に」
こういうの「ざまぁ」って言うんですよね? ~婚約破棄されたら美人になりました~
茅野ガク
恋愛
家のために宝石商の息子と婚約をした伯爵令嬢シスカ。彼女は婚約者の長年の暴言で自分に自信が持てなくなっていた。
更には婚約者の裏切りにより、大勢の前で婚約破棄を告げられてしまう。
シスカが屈辱に耐えていると、宮廷医師ウィルドがその場からシスカを救ってくれた。
初対面のはずの彼はシスカにある提案をして――
人に素顔を見せることが怖くなっていたシスカが、ウィルドと共に自信と笑顔を取り戻していくお話です。
無能と呼ばれ、婚約破棄されたのでこの国を出ていこうと思います
由香
恋愛
家族に無能と呼ばれ、しまいには妹に婚約者をとられ、婚約破棄された…
私はその時、決意した。
もう我慢できないので国を出ていこうと思います!
━━実は無能ではなく、国にとっては欠かせない存在だったノエル
ノエルを失った国はこれから一体どうなっていくのでしょう…
少し変更しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる