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 侯爵家に生を受けて17年。
 思えば短い青春だった。いや、青春あったっけ?

 本来なら貴族向けの学園に通ってる年齢のはずなのに、何もしない父の代わりにと執務をこなし始めたのが運の尽きだったのかもしれない。

 まあ出るわ出るわ……領地内の問題が山積み!よく爵位剥奪にならなかったね、ってくらいに父は仕事をこなしてこなかった。

 領地内の皆、優しいなあ……。そう心底思った。それくらい酷いものだった。

 とにかく一つ一つこなしていこうとやってたら。
 いつの間にか私なくして侯爵家は立ちいかないようになってしまったと。

 でもまさか10代の娘が仕切ってるなんてバレたら体裁が悪いからってことで、父が私に両手を合わせて言ったのは……いつだったか。

『バルバラちゃん、悪いけど全部父様がやってる事にしてもいいかな?きっとキミがやってるとバレたら悪いやつに付け込まれると思うのね?でも父さまは一応男だし、現当主だし。舐められる事はないと思うのね?だから私が執務をこなし、ハリシアが補佐してるって事にした方がいいと思うのね?』

 という『思うのね?』攻撃をくらったのは本当にいつだったか。

 とにかくまだ執務にてんてこ舞いで目が回る忙しさだった私は、どうでもいいよとその提案に頷いてしまったのだ。執務はやらないくせに、そういう悪知恵だけは働く馬鹿父。

 そしてあれよあれよというまに、気付けば父がバリバリと執務をこなし、そんな父をサポートする優秀な姉という図式が出来上がってたのだ。

 忙しさが一段落ついて正気を取り戻した頃には全て遅かった。今更訂正したところで虚しいだけという理不尽な状況となり。

 優秀な侯爵家当主と長女。
 引きこもって何もしない、無能な妹。

 という図式が完成してたのであった。

 おかしいなあ、色々な交渉、私が全部やってるはずなのに。
 姉のハリシアの姿見た事ある人は手を上げて!って言っても、絶対挙手数ゼロのはずなんだけどなあ。

 首を傾げてたらリラが調べて教えてくれた。

 なぜか動いてる私は、姉のハリシアだという事になっている。
 妹が後ろ指差されるの可哀想で、妹の名前を使って仕事してるって事になってるらしい。

 ──何それ!!

 もう全てが馬鹿らしくなった。
 でも領地を、執務を放棄するわけにもいかない。

 馬鹿父も姉もどうでもいいが、困るのは奴ら以外の人間なのだから。

 なもんで頑張り続けた結果が。

 婚約破棄からの家追い出し。

 ということでした。

 ちょっとグレてもいいですかね?


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