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12、なんですか、この少女漫画のような展開は

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 朝、教室に入る。

 クラスメートと挨拶を交わしながら席に向かう。途中、楽し気に会話をしているキュリアス様とシュリエッタ様にも挨拶をする。毎朝シュリエッタ様に会いに来られるとか、ラブラブですな。ほほえましい。

 私の前の席に座るチェイシーにも勿論挨拶をする。可愛い笑顔!眩しくてクラクラするわ!

 そして
「のいてください」
「私に挨拶なしとは随分偉くなったものだな」
「オハヨーオハヨーコケッコー」

 ズザッッッ!!!

 言っておきながら、瞬時に後ずさる!もう私のホッペを自由にはさせませんよ!

「もう一度言います。そこは私の席なので退いてください、ヘルンドル様」
 果敢に言い募ると
「挨拶すれば退いてやる」
 と言われた。いや私の席だし。なんで人の椅子を占拠してる貴方が上から目線なんですか。

「そもそも何で毎朝いるんですか、ここは一年生の教室ですよ、実は留年したんですか」

 しまった逃げ遅れた、ホッペが痛い。

「キュリアス様の付き添いだ。そしてお前が変な事をしないか監視だ」
「席、結構離れてますよ!どう見ても私の監視がメインのようですが!?」
「キュリアス様はああ見えて私より強いからな。付きっきりで見てなくても大丈夫だ。そもそも学園内では危険がないように防御壁が張られてる」
「じゃあヘルンドル様いらないでしょ!」
 帰れ!

 言外に叫んでやる。ん、声出てたか?ホッペが更に痛い気がする。

 もう疲れた。入学してから1ヶ月、毎日毎日ヘルンドルの相手をしてる気がする。ため息も出るわ!
 最初こそは止めていたチェイシーも、もう諦めたのかクスクス笑うだけで何も言わなくなった。お願い助けて、ヘルンドルより強いのは貴方かキュリアス様たちだけなのだから!――ちなみにメンテリオスはヘルンドルが苦手のようで、極力顔を合わさない。あれか、同族嫌悪ってやつか。

 学校ではメンテリオスとはあまり会わないが、ヘルンドルは異常なまでに会う。原作強制力が心配なので関りたくないんですが。というか、私は避けたいのに向こうから来るんだ。一応侯爵家子息のヘルンドル、伯爵令嬢の私が無下に出来るわけがない。ひどい話だ。

「ヘルンドル、それくらいにしてあげなよ。本当にキミはアイシュラ嬢の事が好きなんだねえ」
「やめてくださいキュリアス様、一瞬自死を考えたくらいにショックです」

 なんだそれは、私に失礼だなおい。
 なんかムカついたので、キュリアス様に乗っかってやる。

「え、ヘルンドル様は私の事が好きでちょっかい出してきたんじゃないんですか?愛されすぎて辛いとか思ってたのに、あら残念」

 ……………………

 ちょっと待って、何で沈黙。

 ん、え、ちょ……待って
 その反応は予想外、困る。

 何その赤い顔。メガネが赤いサングラスに変わったのかと思ったわ。

「へ、ヘルンドル様……?」
「……」
「おーい、ヘルンドル様~?」

 真っ赤な顔で目が点になってる。目の前で手を振ると、ハッとした顔になって抜けかけた魂が戻ってきた。

ガターンッッッ!!!

 ものっそ激しい勢いでヘルンドルは立ち上がった。私の椅子を倒さないでください。

「ば、馬鹿な事を言うな!!!」

 叫んでダッシュで教室を出て行ってしまった。
 え、なにこれ……

「あ~あ」
 チェイシーがため息をつく。
「ヘルンドルはツンデレさんですわね」
 いつの間にそばに居たの、シュリエッタ様。
「彼は素直じゃないからねえ。いや可愛いじゃないか」
 ニヤニヤしながら何言ってるのキュリアス様。

「え~~~っと……」

 困惑して三人の顔を見回すと、一斉にポンっと肩に手を置かれた。
 美形三人に触れられてあら幸せ。じゃない、それどころじゃない!

 これはひょっとして……まずいことになった?

 関わるべきじゃない、関わっちゃいけない。そう思っていたのに現状のぬるま湯が心地よすぎたんだ。

 どう考えてもヘルンドルルートなるものに突入してる状況に、私はひたすら頭を抱えるのであった。

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