1 / 4
1、
しおりを挟む「ミリアラ公爵令嬢、俺の我慢はもう限界だ!今ここにお前との婚約を破棄し、聖女シュリエットと婚約することを宣言する!」
「なぜですかアーサー様!わたくしの何がいけなかったのですか!?」
「自分の胸に手を当てて聞いてみろ!」
卒業パーティというめでたい場で、まさかの婚約破棄宣言。
明日から本格的に王太子妃となるための花嫁修業が待っていると覚悟していただけに、その宣言には少なからずショックを受けてしまった。
私の何がいけなくて婚約破棄に!?
けれど聞いても王太子アーサー様は答えてくれない。自分の胸に聞いてみろときたもんだ。
「自分の胸に手ですか……ちょっと豊かなので手に収まらないのです──が!!」
最後。
が!!
となったのは、衝撃を受けたからです。
後頭部に。
「痛い!」
どうやら殴られたらしく、痛くて涙目になりながら私は後ろを振り返った。そして予想通りの存在を目にして私は睨んで抗議する。
「何をするのですかシュリエット様!」
「お黙りなさい!ついでにその胸を凹ませなさい!」
黙れに対しては対処できますが、胸を凹ますってどうするの!?
「無理です!」
「お黙り!ちょっとばかし大きいからって嫌味なのよ、あんたは!」
公爵令嬢に対して『あんた』ときましたね。本来であれば不敬罪に当たる行為ですが、残念ながら彼女はその対象とはならないのです。
聖女シュリエットは、ある意味国で最も権力を持ってる存在なのだから。
男爵令嬢でありながら聖女としての力を発言させた彼女は、鳴り物入りで学園に編入してきた。
そしてあれよあれよと王太子を筆頭に高位貴族の令息たちの心を掴んだのだ。
もうね、グワシッと!
「あら嫌だ、男性の胸を掴むのは得意なシュリエット様。貴女自身の胸はちょっと掴むのに苦労しそうですわね」
「なあんですってえぇぇぇ!?」
キャー恐い!
聖女がそんな鬼の形相しちゃ駄目ですよー!
「まあまあ、そんな恐い顔をしないでくださいな。私なんてちょっと豊かなだけですよ。シュリエット様はちょっとペタンコなだけですよ」
からかいがいのあるシュリエット様は、見る見るうちに顔を真っ赤にするのだった。
言っておきますが、女性の胸は程々が良いと私は思ってるのですよ。
なので豊かな私自身のそれを嬉しいと思った事はありません。
「シュリエット様ほどペタンコだと、ある意味希少価値が出て重宝がられるのではありませんか?」
「よし表出なさい。勝負したるわ」
嫌ですよ。どうしてそんな事で勝負しなくちゃいけないのですか。
そもそも話がかなり逸れてません?
「二人とも……話、聞いてるか?」
ほらあ!
王太子が泣きそうな顔になっちゃってるじゃないですかあ!
「シュリエット様が茶々入れるから、話がねじ曲がっちゃって王太子が拗ねてますよ。ほら慰めて慰めて!」
「ち、めんどいわね。あんたが慰めなさいよ」
「嫌ですわシュリエット様。わたくし今婚約破棄されましたのよ?今は貴女が婚約者なのではなくて?」
「まあそうなんだけど。うじうじする男の相手はめんど……ごーほごほ!!」
王太子がジトッと睨んだもので、嘘くさい咳をしながら、シュリエット様は慌てて王太子の腕にその手を絡ませるのだった。
「アーサー様あん、拗ねないでくださいん。ちゃあんとお話聞いてましたよぉ?シュリエット、嬉しいですぅ!」
「きもっ!!」
王太子の鼻の下が伸びるのと同時に思わず出てしまった本音。あらやだ。
「表出なさいミリアラァッ!!」
「わたくしは表出ますから、シュリエット様は裏に出てくださいね!」
「意味わからんわ!!」
12
お気に入りに追加
88
あなたにおすすめの小説
四度目の正直 ~ 一度目は追放され凍死、二度目は王太子のDVで撲殺、三度目は自害、今世は?
青の雀
恋愛
一度目の人生は、婚約破棄され断罪、国外追放になり野盗に輪姦され凍死。
二度目の人生は、15歳にループしていて、魅了魔法を解除する魔道具を発明し、王太子と結婚するもDVで撲殺。
三度目の人生は、卒業式の前日に前世の記憶を思い出し、手遅れで婚約破棄断罪で自害。
四度目の人生は、3歳で前世の記憶を思い出し、隣国へ留学して聖女覚醒…、というお話。
婚約破棄された真の聖女は隠しキャラのオッドアイ竜大王の運命の番でした!~ヒロイン様、あなたは王子様とお幸せに!~
白樫アオニ(卯月ミント)
恋愛
「私、竜の運命の番だったみたいなのでこのまま去ります! あなたは私に構わず聖女の物語を始めてください!」
……聖女候補として長年修行してきたティターニアは王子に婚約破棄された。
しかしティターニアにとっては願ったり叶ったり。
何故なら王子が新しく婚約したのは、『乙女ゲームの世界に異世界転移したヒロインの私』を自称する異世界から来た少女ユリカだったから……。
少女ユリカが語るキラキラした物語――異世界から来た少女が聖女に選ばれてイケメン貴公子たちと絆を育みつつ魔王を倒す――(乙女ゲーム)そんな物語のファンになっていたティターニア。
つまりは異世界から来たユリカが聖女になることこそ至高! そのためには喜んで婚約破棄されるし追放もされます! わーい!!
しかし選定の儀式で選ばれたのはユリカではなくティターニアだった。
これじゃあ素敵な物語が始まらない! 焦る彼女の前に、青赤瞳のオッドアイ白竜が現れる。
運命の番としてティターニアを迎えに来たという竜。
これは……使える!
だが実はこの竜、ユリカが真に狙っていた隠しキャラの竜大王で……
・完結しました。これから先は、エピソードを足したり、続きのエピソードをいくつか更新していこうと思っています。
・お気に入り登録、ありがとうございます!
・もし面白いと思っていただけましたら、やる気が超絶跳ね上がりますので、是非お気に入り登録お願いします!
・hotランキング10位!!!本当にありがとうございます!!!
・hotランキング、2位!?!?!?これは…とんでもないことです、ありがとうございます!!!
・お気に入り数が1700超え!物凄いことが起こってます。読者様のおかげです。ありがとうございます!
・お気に入り数が3000超えました!凄いとしかいえない。ほんとに、読者様のおかげです。ありがとうございます!!!
・感想も何かございましたらお気軽にどうぞ。感想いただけますと、やる気が宇宙クラスになります。
わ、私がやりました
mios
恋愛
悪役令嬢の断罪中申し訳ありません。
それ、やったの私です。
聖女様を池に落としたり、階段から突き落としたフリをしたり、虐められたフリをした聖女様の演出は、全て私がやりました。
醜い私を救ってくれたのはモフモフでした ~聖女の結界が消えたと、婚約破棄した公爵が後悔してももう遅い。私は他国で王子から溺愛されます~
上下左右
恋愛
聖女クレアは泣きボクロのせいで、婚約者の公爵から醜女扱いされていた。だが彼女には唯一の心の支えがいた。愛犬のハクである。
だがある日、ハクが公爵に殺されてしまう。そんな彼女に追い打ちをかけるように、「醜い貴様との婚約を破棄する」と宣言され、新しい婚約者としてサーシャを紹介される。
サーシャはクレアと同じく異世界からの転生者で、この世界が乙女ゲームだと知っていた。ゲームの知識を利用して、悪役令嬢となるはずだったクレアから聖女の立場を奪いに来たのである。
絶望するクレアだったが、彼女の前にハクの生まれ変わりを名乗る他国の王子が現れる。そこからハクに溺愛される日々を過ごすのだった。
一方、クレアを失った王国は結界の力を失い、魔物の被害にあう。その責任を追求され、公爵はクレアを失ったことを後悔するのだった。
本物語は、不幸な聖女が、前世の知識で逆転劇を果たし、モフモフ王子から溺愛されながらハッピーエンドを迎えるまでの物語である。
婚約破棄!理由は、子ども?見た目は子供、頭脳は、大人 公爵令嬢セリカ!
(笑)
恋愛
あ異世界に転生した5歳の公爵令嬢セリカは、天才的な頭脳を持ちながらも、国家の大きな運命に巻き込まれる。彼女はその知恵と力を駆使して困難に立ち向かい、国を発展させるべく奮闘する。策略や陰謀が渦巻く中、セリカは自らの道を切り開いていくことができるのか――。
婚約破棄はまだですか?─豊穣をもたらす伝説の公爵令嬢に転生したけど、王太子がなかなか婚約破棄してこない
nanahi
恋愛
火事のあと、私は王太子の婚約者:シンシア・ウォーレンに転生した。王国に豊穣をもたらすという伝説の黒髪黒眼の公爵令嬢だ。王太子は婚約者の私がいながら、男爵令嬢ケリーを愛していた。「王太子から婚約破棄されるパターンね」…私はつらい前世から解放された喜びから、破棄を進んで受け入れようと自由に振る舞っていた。ところが王太子はなかなか破棄を告げてこなくて…?
私は王子の婚約者にはなりたくありません。
黒蜜きな粉
恋愛
公爵令嬢との婚約を破棄し、異世界からやってきた聖女と結ばれた王子。
愛を誓い合い仲睦まじく過ごす二人。しかし、そのままハッピーエンドとはならなかった。
いつからか二人はすれ違い、愛はすっかり冷めてしまった。
そんな中、主人公のメリッサは留学先の学校の長期休暇で帰国。
父と共に招かれた夜会に顔を出すと、そこでなぜか王子に見染められてしまった。
しかも、公衆の面前で王子にキスをされ逃げられない状況になってしまう。
なんとしてもメリッサを新たな婚約者にしたい王子。
さっさと留学先に戻りたいメリッサ。
そこへ聖女があらわれて――
婚約破棄のその後に起きる物語
追放された聖女の悠々自適な側室ライフ
白雪の雫
ファンタジー
「聖女ともあろう者が、嫉妬に狂って我が愛しのジュリエッタを虐めるとは!貴様の所業は畜生以外の何者でもない!お前との婚約を破棄した上で国外追放とする!!」
平民でありながらゴーストやレイスだけではなくリッチを一瞬で倒したり、どんな重傷も完治してしまうマルガレーテは、幼い頃に両親と引き離され聖女として教会に引き取られていた。
そんな彼女の魔力に目を付けた女教皇と国王夫妻はマルガレーテを国に縛り付ける為、王太子であるレオナルドの婚約者に据えて、「お妃教育をこなせ」「愚民どもより我等の病を治療しろ」「瘴気を祓え」「不死王を倒せ」という風にマルガレーテをこき使っていた。
そんなある日、レオナルドは居並ぶ貴族達の前で公爵令嬢のジュリエッタ(バスト100cm以上の爆乳・KかLカップ)を妃に迎え、マルガレーテに国外追放という死刑に等しい宣言をしてしまう。
「王太子殿下の仰せに従います」
(やっと・・・アホ共から解放される。私がやっていた事が若作りのヒステリー婆・・・ではなく女教皇と何の力もない修道女共に出来る訳ないのにね~。まぁ、この国がどうなってしまっても私には関係ないからどうでもいいや)
表面は淑女の仮面を被ってレオナルドの宣言を受け入れたマルガレーテは、さっさと国を出て行く。
今までの鬱憤を晴らすかのように、着の身着のままの旅をしているマルガレーテは、故郷である幻惑の樹海へと戻っている途中で【宮女狩り】というものに遭遇してしまい、大国の後宮へと入れられてしまった。
マルガレーテが悠々自適な側室ライフを楽しんでいる頃
聖女がいなくなった王国と教会は滅亡への道を辿っていた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる