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「ミリアラ公爵令嬢、俺の我慢はもう限界だ!今ここにお前との婚約を破棄し、聖女シュリエットと婚約することを宣言する!」
「なぜですかアーサー様!わたくしの何がいけなかったのですか!?」
「自分の胸に手を当てて聞いてみろ!」

 卒業パーティというめでたい場で、まさかの婚約破棄宣言。
 明日から本格的に王太子妃となるための花嫁修業が待っていると覚悟していただけに、その宣言には少なからずショックを受けてしまった。

 私の何がいけなくて婚約破棄に!?

 けれど聞いても王太子アーサー様は答えてくれない。自分の胸に聞いてみろときたもんだ。

「自分の胸に手ですか……ちょっと豊かなので手に収まらないのです──が!!」

 最後。
 が!!
 となったのは、衝撃を受けたからです。
 後頭部に。

「痛い!」

 どうやら殴られたらしく、痛くて涙目になりながら私は後ろを振り返った。そして予想通りの存在を目にして私は睨んで抗議する。

「何をするのですかシュリエット様!」
「お黙りなさい!ついでにその胸を凹ませなさい!」

 黙れに対しては対処できますが、胸を凹ますってどうするの!?

「無理です!」
「お黙り!ちょっとばかし大きいからって嫌味なのよ、あんたは!」

 公爵令嬢に対して『あんた』ときましたね。本来であれば不敬罪に当たる行為ですが、残念ながら彼女はその対象とはならないのです。

 聖女シュリエットは、ある意味国で最も権力を持ってる存在なのだから。

 男爵令嬢でありながら聖女としての力を発言させた彼女は、鳴り物入りで学園に編入してきた。

 そしてあれよあれよと王太子を筆頭に高位貴族の令息たちの心を掴んだのだ。

 もうね、グワシッと!

「あら嫌だ、男性の胸を掴むのは得意なシュリエット様。貴女自身の胸はちょっと掴むのに苦労しそうですわね」
「なあんですってえぇぇぇ!?」

 キャー恐い!
 聖女がそんな鬼の形相しちゃ駄目ですよー!

「まあまあ、そんな恐い顔をしないでくださいな。私なんてちょっと豊かなだけですよ。シュリエット様はちょっとペタンコなだけですよ」

 からかいがいのあるシュリエット様は、見る見るうちに顔を真っ赤にするのだった。
 言っておきますが、女性の胸は程々が良いと私は思ってるのですよ。
 なので豊かな私自身のそれを嬉しいと思った事はありません。

「シュリエット様ほどペタンコだと、ある意味希少価値が出て重宝がられるのではありませんか?」
「よし表出なさい。勝負したるわ」

 嫌ですよ。どうしてそんな事で勝負しなくちゃいけないのですか。
 そもそも話がかなり逸れてません?

「二人とも……話、聞いてるか?」

 ほらあ!
 王太子が泣きそうな顔になっちゃってるじゃないですかあ!

「シュリエット様が茶々入れるから、話がねじ曲がっちゃって王太子が拗ねてますよ。ほら慰めて慰めて!」
「ち、めんどいわね。あんたが慰めなさいよ」
「嫌ですわシュリエット様。わたくし今婚約破棄されましたのよ?今は貴女が婚約者なのではなくて?」
「まあそうなんだけど。うじうじする男の相手はめんど……ごーほごほ!!」

 王太子がジトッと睨んだもので、嘘くさい咳をしながら、シュリエット様は慌てて王太子の腕にその手を絡ませるのだった。

「アーサー様あん、拗ねないでくださいん。ちゃあんとお話聞いてましたよぉ?シュリエット、嬉しいですぅ!」
「きもっ!!」

 王太子の鼻の下が伸びるのと同時に思わず出てしまった本音。あらやだ。

「表出なさいミリアラァッ!!」
「わたくしは表出ますから、シュリエット様は裏に出てくださいね!」
「意味わからんわ!!」

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