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「三人だけど空いてる?」
「奥の席にどうぞ!」

 今日も今日とて元気よくお客様を席に案内するトワロ君。
 公爵家を弟に任せて出てきたって……そんなにカレンが好きだったの?ってビックリしたのが昨夜のこと。

 七歳で別れたからなあ……。

 正直言って私はキミのことは、もうどうでもいいのだよ。なのにトワロはすっかり初恋を拗らせてしまっていたのだな。

 憐れトワロ。
 だが私はさすがに19歳も年上と結婚したいとは思えないので。
 潔く帰ってもらいたい。はよ帰れ。

 どう帰らせたものかと思案しつつ、お母さんの食器洗いを手伝っていたら。

バーーーーーン!!!!

 バーンと扉が勢いよく開きましたよ!そんな激しく開けんなよ、壊れるじゃないか!!

 ギロッと睨んだ先。
 扉で一人の男が腰に手を当てて仁王立ちしていた!

「ふはははははは!!見つけたぞ、トワロ、カレン!さあ我と共に帰るのだああああ!」
「うるっせえええ!!!!」

 ゴーン!!

 見事に父の投げた鍋の蓋が当たりました。男、気絶しました。チーン……

 なんなのだ、一体?という空気の中。

 私とトワロだけが、青い顔をしていたのだった。

 なぜって?
 だって今気絶した馬鹿。

 それ、私の兄──前世の兄王子ですからね!!




※ ※ ※




『何をしてるカレン!もっと祈らないか!』
『お兄様、少し休ませてください……もう三日もろくに寝ておりません。それに食事も……。髪もベタベタしてて気持ち悪いのです。どうか……』
『甘えた事を言うな!お前はこの国がどうなっても良いと言うのか!?お前が怠けてる間に空腹で死ぬ者が出るやもしれんのだぞ!?緑は失われ動物も木々も減っていき、魔物が徘徊する……そんな世界にしたいのか!?なんという恐ろしい奴だお前は!!』
『そんな……そんな風には思っておりません。ですが少し、少しでいいのです、休ませてくだ──』
『黙れ!この怠け者め!』

 そう言って、兄は私に殴る蹴るの暴行をするのだった。
 そんな事をされても回復薬を飲めば治ってしまう。

 肉体は治っても、精神はズタボロのまま……私は祈る事を強要されるのだった。



 ────うん、屑だな。ゴミだな。

 思い返すも腹立たしい。
 兄は本当にカスだった。

 国のため国のためとか言ってるけどさあ。

 あいつ、本当は緑豊かになった元砂漠の一帯に、でっかい屋敷建てるつもりだったんだぜ?
 何のためにって?聞いて驚け、まさかのハーレムだってよ!

 ハーレム!!

 妹が死にそうになりながら必死で祈ってるというのに!

 豊かになった国民から税金搾り取って!

 ハーレムて!!

 もうお前死ねやって本気で思ったよね──生まれ変わってから。

 前世の私は、疲れすぎてまともな精神状態じゃなかった。だから言われるがまま、ひたすら祈り続けたのだが。

 本気出せば呪い殺せたと思う。聖女だって必要とあらばそれくらい出来る。

「こいつちょっと呪い殺していい?」
「アイノ、気持ちは分かるがまだ駄目だ。とりあえず要件聞いてから。あとやはりキミはカレンだな」
「今そういうのいいから、とりあえずコイツの髪の中心部を抜いてやるかな」
「さすがアイノ、中心だけ抜いて周りは残しとくとか、優しいな!」
「それ優しさなの?」
「おい二人とも。よく分からんが、邪魔だからそのゴミ、裏に捨てとけ」
「あ~いお父さん!」
「さすがお父様、これがゴミだとよくお分かりで」
「お父様って呼ぶんじゃねええ!!」





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