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28、あれ、悪役令嬢って戦闘員なの?
しおりを挟むガラスの割れる音に破壊音が響いたかと思えば──唐突に目の前にソレが現れた!
尖った耳に鼻も顔も全てがゴツゴツのデコボコな肌、目は真っ黒、体は小さく細いが動きは俊敏──これは……多分……ゴブリンじゃないかあぁぁぁ!!
そのゴブリンが小さいながらも一目で分かる武器──棍棒で私に襲いかかってきたのだ!
「うぎゃあ!」
すみません、令嬢らしからぬ声出ました!
すみません、思わず拳が出てカウンターでゴブリンぶっ倒しました!だって私の拳の方が先に届いちゃったんだもん!
「アンナ!私の後ろに!」
同じくかかってきたゴブリンを簡単にあしらったベルシュ様が私を庇うように背後に立たせた。が、あちこちで悲鳴があがり、特に弱い令嬢やご婦人が狙われては、騎士や武芸魔法の心得がある方達が対応している。
これは……まずいのでは?
なんでこんな事になったかは分からないが、まずい状況なのは分かる。
ガチャーン!とまたガラスが割れる音がして。そして見えた、見えてしまった。
翼を持った小鬼のような顔の──
「ガァーゴイルゥ!?」
ガーゴイルじゃあ~りませんか~!
「アンナ!」
「シンディ!」
見ると、半泣き顔のシンディが駆け寄ってくる。私達二人を確認したベルシュ様は、鋭い爪で飛びかかってきたガーゴイルを軽くいなす。おーうカッコイイ!
「ん?惚れた?」
「惚れてません」
キュンとなるのと惚れるのとは違うんですよ、ベルシュ様。
「それは残念」
余裕のある笑みのベルシュ様は、すぐに顔を引き締める。
「うーん、数が多いなあ、どうしてこんなに大量発生を……。ちょっと私一人でお二人を守るのは厳しいし……あそこ、魔道士達が結界を張り始めてるようですね。二人ともあちらへ!」
言われてみると、何人かが魔法を発動してる!その中の一人が声を張り上げた。
「我らで結界を張ります!非戦闘員の方々は急いでコチラへ!」
ここからは随分距離がある──この会場、無駄に広いんだから!
魔法使い達が詠唱を唱えており、薄い膜が見えた。あれが結界だろう。女性を中心に、非戦闘員の人々がその中に入っていくのが見えた。
詳しくは無いが、詠唱も終わりに近いのが何となく雰囲気で分かる。唱え終わると自動で結界は完成し──もう出ることも入ることも出来ない。
急がねば!
焦る気持ちとは裏腹に、ドレスが絡みついて邪魔をする。
後ろでは私以上にもたついてるシンディの姿が。
「シンディ!急いで!」
「アンナ、私のことはいいから貴女は先に行って!」
出来るか、そんなこと!
引き返して親友の腕をとる。と、その時。
「シンディ!──とアンナ様!」
呼ぶ声の方を見ると、珍しく緊迫した顔のロルスが走ってくるのが見えた。今私の事ついで扱いだったろ!
ロルスは完成しつつある結界に近い。
考えるより先に手が動いた。
ガッ!と、私はシンディの首根っこを掴む!
「え」
シンディの声は無視だ。
右手に全身の力をこめる!思い出せ、さっきの王妃様を!私もあんな風に強くなりたい、なるんだ、ならばやる事は一つ!
「ぬおおお!火事場のク〇ぢからぁぁ!!」
への突っ張りはあぁぁ!
「きゃあああぁ!?」
うなれ私の右腕!
気合いの叫びと共に。
私は思いっきりシンディをぶん投げた!!
※ ※ ※
シンディをナイスキャッチしたロルスと二人、無事に結界に入ると同時──詠唱が終わって結界は完成した。
よっしゃあ!
シンディを助けられたのはオッケー!自分が結界に入れなかったのは予定外!私非戦闘員なんだけどな!なんで父と兄は結界の中で「あれ、アンナって戦闘員だっけ?」とか言って手ぇ振ってんの?頑張れ~って声援か、ありがとう!じゃねーよ!娘が無能って知ってんだろーが!
「アンナ、私の後ろに!」
再びイケメンのベルシュ様。
「アンナ、俺の後ろに!」
なぜかゾルゼンスというイケメンその2に挟まれるの巻。
多分この場に居る中でトップ争いする実力者に守られてますが、ヒロインではありません。ヒロインじゃないけどなぜか守られてます。ほんと何で?
で、ヒロインどうした。忘れてたし。見ると結構近くにいるし。でもってなんか笑ってるし。
「おーほっほっほ!無能なモブはそこで大人しく震えてなさいな!見よ、聖女の実力を!清めの光ぃ!」
忘れてた、忘れてたかった、キミのこと!
記憶の片隅に追いやるのに失敗した存在が高らかに笑い、何かを唱えた。すると!
おおお、一瞬にして目の前の魔物が消え去った!やるな、ぶりっ子!
感動しながらツカツカとぶりっ子に歩み寄る。
そんな私にニヤリと嫌味な笑みを浮かべたぶりっ子は口を開いた。
「ふふん、どうよあたしの力は!これで分かったでしょ、あたしを大事にしないと──へぶしぃっ!」
が、最後まで言わせん!
王に食らわしたのと同じ右ストレートじゃあ!
無抵抗だったぶりっ子は勢いよくゴロゴロと転がっていき──ゴブリンの群れをなぎ倒していく!スットラーイク!!
「アンナ、端の一匹が倒れてない、残念」
「ぬおおお!」
悔しがってたらズカズカと勢いよくぶりっ子が歩いてきた。復活はえーな。
「っにすんのよ、あんたは!」
「ちょっとさあ、聞きたいことあるんだけど」
「まずはあたしに謝んなさいよ!聖女のあたし抜きでこの場が収まると思ってんの!?」
「いやだから聞きたいことがあるんだけど」
「あたしに詫びてひれ伏せえぇぇ!!」
「ぅうるっせぇぇー!!!」
スパーン!
ぶりっ子の頬がいい音を出す。
「ひゃ、ひゃにすんの……!」
「聞きたいことが!」
スパーン!
「ちょっ、やめ……!」
「あるって!」
スパパパパーン!!
「ひゃめろっへの……!」
「言ってんだろー!!」
スッパーン!!
きまったあ!渾身の平手打ち!ドレス着てるから足技出せないのが悔しい!
「あ……か……」
「質問があるんだけど」
も一度聞くと、コクコクと素直に頷いた。うん、人間素直が大事!
=====作者の独り言=====
魔物のイメージは作者の勝手なるイメージ。基本的なの調べてません(;´∀`)
この小説、懐かしネタを出す頻度多いな(汗
ちなみに筆者はかの名作の二世は読んでません…
※ただでさえ更新頻度が減ってますが、盆休み突入で家族サービスという名の拘束タイムフィーバーが始まりますので、更に亀になります。ごめんなさい<(_ _)>
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