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23、抜かれた剣を悪役令嬢は折りたい

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 別にぶりっ子を擁護するつもりは無い。毛頭ない。毛一本もない。毛穴ほどもない。
 だが、事実だけを言うとすれば。
 ぶりっ子は容姿だけで言うなら立派にヒロイン顔なのだ。可愛い……というか、可愛いと美人が融合された容姿をしている。日本でなら十分モデルや女優になれるレベルだ。

 本当に、見た目だけなら。
 容姿は最高に良いと思う。

 なのに見事なまでにモテない。
 なぜか?

「なんであたしを選ばないのよう!?おっかしいでしょ、ずぇったいあたしが!世界で!一番!最高なのに!!」

 これだもんなあ。
 そんなだから皆逃げるんだよ。
 どっから湧いてくるんだよ、その自信。

 いいか、どんなに自分がイケてると思っても、それを表に出しちゃモテないんだよ。
 控えめに。
 謙虚一番!

「この世界滅ぼしてもいいわけ!?」

 お前一番に検挙されるわ。
 この世界が滅びに向かえば、真っ先にお前が容疑者な。

 聖女とは思えんセリフに唖然とする。もう何でもアリだな。脅迫とかいいのかそれ。

「ミサキ、僕──私はキミを愛してるよ!キミの魅力が分からない連中なんて放っておいて……さあおいで、私の胸に!」
「んな胸いるかあ!」

 はい、テリス撃沈。また床に「の」の字書いてますよ。いい加減めげない奴だな。もういっそ憐れすぎて応援したくなるわ。頑張れよ、明日があるさ。多分。

「ちょっとそこの国王!いい加減にしなさいよ、あんたそれでも王なわけ!?みんなになめられていいの!?」

 あ、それ言っちゃいます?それを言っちゃ王も奮い立たないわけにはいかないだろう。

 今現在、王は王妃にキャメル・クラッチをかけられてブッサイクな顔になってる。あれはむごい。若い頃はベルシュ様同様、美形だったはずのナイスミドル(見た目だけ)な王はどこへ。王妃様、王がブッサイクになってますよー。いいんですかー。一応惚れた相手っしょー?

「王は苦汁をなめる必要があるんです」

 技かけながらの王妃様の言葉が恐い。

 が。

 お?おおお?

 急に真っ赤な顔の王が動いた。
 どうにかこうにか動いて抵抗して──

「ぬおおおおおおっ!」

 逃げたー!
 なんと、王妃様の技から抜け出したのだ!やるじゃないか、王様!キミはやれば出来る子だったんだね!

「そうだああ!私は王なんだー!!!!」

 技から抜けての第一声がそれかあ……。残念な王だああ……。

 白い目でみんなが見つめる中、ハーハーと肩で息をしながら、王がすっくと立ちあがった。
 いそいそと身だしなみを整える。なんだ、何をする気だ。

 なんか雰囲気が変なので、王妃様に宰相をはじめ、皆が王の動向を見守った。

 そんな私達をグルリと王は見やり。
 そして──

「わしの決定に反論は許さん!聖女の夫が次の国王だ!これは──国王命令だあぁ!!!!!」

 国

 王

 命

 令

 !

 出たあああ!伝家の宝刀!
 かの某国殿下もたまに抜き放っては、野菜部隊がこれには逆らえないと涙する!

 あの!

 国王命令!

 それ出すかあ……出しちゃうかあ……。

「く……この卑怯者!」

 王妃様がみんなの思いを代弁してくださいましたよ。

「ふん、何とでも言え!わしは決めたのだ、この国は平和すぎてつまらん!ここらで一発ドカンとやるのだ!」
「ドカンとやってあげますよ」

 え。
 と誰かが言う間もなく。

 ドカンと爆発音と共に部屋の壁が無くなった。わ~見晴らし良くなったねえ!

 じゃねえわ!
 まさかのゾルゼンス魔法発動!

 よーく耳を澄ましてごらん。ほら聞こえるよ。

「あああああぁぁぁ……」

 遠のいていく王の声がね!

 え~っと……王様死んじゃわない?

「父上は浮遊魔法が」
「あ、使えるんですね」
「使えないからなあ」
「使えないんかい!」

 どうすんの、あれ!?

「大丈夫だ、ちゃんと戻ってくる魔法だから」

 どんな魔法なんだよ!

 ベルシュ様にゾルゼンスにとツッコミが忙しいですわ!











 こうして伝家の宝刀は抜き放たれ。

 強引にぶりっ子聖女争奪戦が始まった。

 まあ、主にテリスみたいな婚約者居ない連中が血眼になってるだけなんだけど。

 婚約者の居る男性と言えば──

「ねえねえベルシュ様あん、国王命令ですのよん?わたしのこと、欲しくありません?」
「あーはいはい、欲しいほしい干しほし、☆~」
「んもう、照れ屋さん☆」

「ゾルゼンス様あん、今夜浮遊魔法で星観測デートしませえん?」
「殴って頭の中に星を飛ばしてやろうか?」
「いや~ん、おうちで星降るデート!」

「ねぇえ~ん、ロルスぅん、何してるのお?」
「カブットゥー虫の世話だ。触るなよ、お前の体なんか簡単に持ち上げられてひっくり返されてしまうから。というか穢れるから触んなよ」
「あらん、そうねん、そんなの触ったらあたしが穢れちゃんわよねえん、やっさすぃ~!」

 塩対応、最高ですよー!
 ぶりっ子、お前すげーわー!

 見事にこの三人にロックオンしたぶりっ子聖女と。
 撃破したい男子三人。

 これ、収拾つくのかなあ……











=====作者の独り言=====

収拾つくのかなあ(苦笑

スケバンとか某国殿下とか……私の年齢がバレるバレる。
いやまて、今でも名作なんだし殿下はまだ続いてるし、どんな年代でも読んでるか?バレないか?(笑

小学生男子がいるせいか、生まれて初めてカブトムシとクワガタが家におわしますのでございます。
なんかもう…未知の世界すぎて…なんかもう…ほんともう…(;゚д゚)
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