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3、復讐その1~異世界プロローグ後に復讐(1)

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「さて、それでは始めます」

 なんだか前世の世界であった『手術』なるものが始まりそうな言い方で。
 ランディは腕まくりをした。……それする必要あるのだろうか。気分か、そうかあ。

 私は先ほどまで横になっていたソファに再び腰かけた。

 膝掛けをして、横たわって目を閉じる。

「いいかな、フィアラ?」
「いつでも」

 私の同意の直後。
 唱えられる呪文。
 引っ張られる意識。

 そうして私は再び過去へと戻る。前世の私の世界……異世界へと──





「ちょおっとぉ!何これ死んでんじゃん!」
「おいおいふざけんなよ、どこまで迷惑かけりゃ気が済むんだ!」

 目を開くと、なぜか私は宙に浮いていた。
 足元──と言っても膝から下が存在してないことから察するに、私はどうやら霊体として存在してるようだった。

 そんな存在しない足の下……足元から話し声がしたので目を向けた。

 そこには屑人間が二人。
 つまり前世の私の妹郁美と、夫の明彦。

 一人寂しく死んでからどれくらいの時間が経過したのか分からないが、外はまだ暗かった。時計を見れば深夜。食事といちゃつきを終えて早々に帰って来たのだろうか。……それとも一日以上経過したのか?

 二人が部屋に入るなり見つけたのは、動かない屍となった私。前世の私の遺体だった。

 せめて悲しむなり後悔してくれたなら、少しは許せたのかもしれないけれど。

「あああ、もう!ほんっと使えない女!こんなのが姉なんて冗談じゃないわ!というかこんな奴のせいで殺人犯になるとか絶対嫌よあたし!」
「俺だって嫌だぞ!ちっ面倒だが仕方ねえ……埋めるか」

 はい、反省の色ゼロ~。お仕置き決定いたしました!

 でもこれどうしたらいいんだろ?

 試しに側にある物を触ろうと手を伸ばしたけれど、スカッと空を切ってしまった。う~ん、霊体は物を持てないのね。

 どうしたものかと思案してたら、脳裏に突如声が響いた。

(念じれば物を動かせるよ)

『うえ!?』

 驚いてキョロキョロ見渡すも、眼下の二人以外に存在する者は居なかった。

(落ち着いて、フィアラ。俺だよ)
『ら、ランディ!?』
(そう。良かった、声だけは届けられたみたいだね)

 さすが大魔導士、何でもありですね!
 さすがに肉体そのものは転移できないけれど、思念は飛ばせるらしい。もうそこまで魔法を進化させてるとは……さすが天才魔導士!

 声が聞こえるだけでも何だかホッとする。ちょっと心が軽くなったところで、私は周囲に目をやった。

 金食い虫がいるせいで、碌な物がない室内で。
 それでも必要最低限の物がある。
 その中の一つに私は目をつけた。

「とにかく暗いうちにとっとと埋めちまうぞ。幸い庭はある。こいつ一人くらい埋めれるくらいのスペースはあらあ」

 下衆旦那はそう言って、私の足を掴んで引きずるようにして運ぶ。

「おっもてぇなあ!こいつ見かけはガリガリだったくせに、なんでこんなに重いんだよ!?」
「ひょっとして隠れていいもの食べてたのかもね、ムカつくわあ」

 そう言って郁美が私の体を蹴った。

 瞬間、カッと頭に血が上るのを──今確かに肉体はないはずだと言うのに──私は感じた。

 迷わずそれに念を送り、動かして。

 私はそれを……包丁を、郁美に向けて飛ばした!


ザッ……!


 思いのほか深々と、包丁は郁美の手を突き刺して。

 一瞬の静寂の後──

「ぎいやあぁぁぁぁぁ!?!?!?」

 郁美の醜い叫び声が、部屋中に響き渡るのであった。


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